【リメイク版】ズッ友宣言してきた子の距離感がおかしい 作:猫好きの餅
奇しくもリメイク前と同じサブタイ
翌朝。
……静寂に包まれた部屋の中に、すぅすぅとウルの寝息が響く。
あたしをぎゅってして眠る彼とは裏腹に、あたしは全然寝れなかった。…寝れるわけないよぉ!
それでもあたしはウルに抱きつき続けた。息を吸うとウルのいい匂いがして凄く落ち着くし、すごくどきどきする。
「……ふへへ、…ウル〜」
だめ。もうだめだよこんなの。
ウルにくっつくと、体がぽかぽかして変な気分になっちゃう。今だってウルに抱きしめられて、あたしも抱き締めて。もう癖になっちゃいそう。
あ〜、だめだぁ〜……あたし、ウルにギュッてするの大好きになっちゃってるよぉ。
それに、さっきはあたしどうかしてた。
ウルとごろごろしてたのは楽しかったんだけど、途中から自分でも何やってんのかわからなくなってきちゃった。
そ、それでね。途中ウルの首に顔を押し付けてた時に………。
ウルの香りがいーっぱいに広がって……、その時あたしの中の何かが壊れる音がした。
「……ウル……」
あたしの目の前にウルの寝顔がある。それを見てるときゅーっと胸苦しくなって、あたしはたまらずに抱きついた。
ああ〜、…やばいよぉ…、あたしもうダメになっちゃった。もうウルから離れたくない。
あたし、ウルのこと……多分大好きになっちゃってる。さっき思わずキスしちゃいそうになったし。
あたしは眠るウルの胸に顔を押し付けて深呼吸。……はぁ〜…♡
なんだろ、ウルの匂いを嗅ぐとすごく安心して、反対にすごく胸が苦しくなる。それがすっごく気持ちよくて、あたしは何度も何度もウルの匂いを嗅いだ。
ウルはすごい。古名と神の目はないけど、何よりも心が強いひと。あたし、君と友達になる前からずっと見てたんだからね?
最初は流泉の衆の人なのに泳げないんだ。あたしが教えてあげようかなぁ?水遊び楽しいのにもったいないよ?って遠くから眺めるだけだった。
でも、時が経つうちにウルの人となりがわかってきた。ウルは泳げないことをすごく嫌に思っていて、毎日水に慣れようと頑張っていたこと。漁に出られない代わりに、討伐依頼を頑張ってこなして、その儲けの大半を集落に入れてたこと。
戦争の時も、流泉の衆に魔物たちが入らないように常に最前線で戦っていたこと。
────ウルがあたしのお店を魔物たちから必死に守ってくれたことも。
そんなウルを見ているうちに、だんだん目が離せなくなってきた。ウルの行動がいちいち気になって、彼と話すとヤなことなんてサッパリ忘れちゃう。今もこうして抱きついているとドキドキが止まらない。
──────あぁ。
あ、あたし………ウルのこと、だいすきなんだ。
「………ぁ、……うぅぅ〜」
自覚したら、なんだかすっごく恥ずかしくなってきた……!
自分の行動を思い返してみたけど、あ、あたし結構すごいことしてたよねっ!?
……う、ウルに変な女の子って思われたかな?…よ、よく考えたら男女で温泉入るのも……あ、アウトじゃない?
「……ん、ムアラニ……?」
「わっひゃあ!?」
それでもなんか離れるのがイヤでギューってし続けてたらウルが起きちゃったっ!?
あたしは叫びながら離れ、ベッドから落ちた。強かに打った背中を摩っていると、びっくりしたウルもベッドから起きて心配そうに覗き込んでくる。
「…だ、大丈夫か?」
「だ、だだだ大丈夫っ!!」
やばい、起きて話すウルが、すっごくかっこいい。やばい(語彙力)。
あたしはウルの顔が見られなくて、座ったまま後ずさり。
「ほ、ほんとに大丈夫か?……顔真っ赤だし、もしかして熱とか…?」
「ほ、ほんとに大丈夫だからぁ!……あ、あたしっ、先出てるねーっ!」
「ちょ、おいっ!」
もうだめぇ!あたしは立ち上がって荷物を持つと一目散に部屋から走り出た。
「…はぁっ……はぁ……!……あ、あたし……なんで…?」
宿自体は入る時にお金払ってるから大丈夫。走って走って、聖火闘技場を出たあたしは胸を抑えて荒い息を吐いた。
トクトクと爆発しそうなくらいの速度で早鐘を打つあたしの心臓。さっきの心配そうに見てくるウルの顔を思い出したら、さらに加速する。
「……あ、あたし、………ウルのことだいすきなんだ…………えへっ」
両頬に手を当てながら、そう呟いたあたしはニヤニヤしながら、ウルに追いつかれないように流泉の衆に向けて走り出した。
「……起きてるウルにハグされたら、あたし死んじゃうかも…」
数日後。
「……しにたい」
ムアラニと革命的な夜(言い方)を過ごしたあと。
逃げ出したムアラニの後を追って集落に帰った俺は、彼女に会いに行こうとした。
行ったんだけど。
『…おーい、ムアラニー?』
『えっ!?あっ、う、ウルッ!?』
『…えっと、ムアラニさえ良かったら』
『ごごめんあたし用事あるからっ!…じゃぁねっ!』
『えっ』
また逃げられた。
でも、俺は次の日も会いに行った。俺は聞きたかったんだ。ムアラニは、俺のことどう思ってるのかって。
あの日の夜にムアラニとしたことは夢じゃなかった。未だに彼女が抱きついた感触が思い出せるし、あの時の彼女の顔が脳裏に刻まれて頭から離れない。
だから、思い切って聞いてみたかったんだ。
だけど、もう3日も避けられててまともに話せなてない
「……しにたい」
そうして現在、自分の部屋で撃沈中です。
これはあれだ、もしかして嫌われちゃったかなぁ。そういえばあの抱きしめた件を始めたのは俺の方だし、もしかしてずっと嫌だったとか?……でも一緒には寝てくれたし……。折衷案で仕方なくなのかなぁ?
でも、だったらなんで避けるんだ?
それを確かめたいのに避けられて会えないし。
俺は悶々とした気持ちのまま起き上がってため息を吐く。
「……やっぱ、神の目も使えない俺じゃ釣り合わないのかな」
未だに使い方がわからんこれ。やっぱり俺に足らんとこといえば強さだし。なんかもう気分的になにかに打ち込みたい気分だ。1回本気で修行してみようか。
アテと言えば無くはない。……が、望みは薄い。
とりあえず修行するには結構な時間流泉の衆から出なくちゃならない。
という訳で俺は外に出ると族長の家に向かう。長い間外に出る時はこうして言いに行く必要があるんだ。
そこで、族長のアテナさんから衝撃の事実が伝えられた。
なんと、俺に古名が継承された。
なんでこのタイミングかわからないけど嬉しいものは嬉しい。古名があると『夜魂の加護』という、元素とは違う強化が得られる。何でも外の国だと効果が落ちちゃうんだけど、ナタの中なら半永久的に使える力だそうだ。
「おめでとう。ウルの古名は『ラフィキ』ね」
「…ラフィキ……、おお、なんかしっくりくる」
今になって神の目だけじゃなくて古名まで。モチベが上がりまくった俺が笑顔で立ち上がりながら、ふと気になったことを聞いてみた。
「あの、ラフィキの意味ってなんですか?」
「……あー、えっとね。昔の言葉で『友人』だってさ」
馬鹿にしてんのか。
「……うぅー、あたしのばかばかばかぁ〜!!」
また今日もウルと話せなかった。せっかく逢いに来てくれたのに。
あ、会う意味なんか違う気がするけど、いいや。だって好きだし。
そう、すき。すきなの。
好きなんだけど、なんかあれからウルと顔を合わせるとすっごく恥ずかしくなっちゃって、気がついたら逃げるようになっちゃった。
あたしもウルと話したいんだけど、やっぱりダメ。視界にウルが入ると、もうウルがカッコよすぎて顔が火山が噴火したみたいに熱くなっちゃう。
「……うぅー、だめだぁ…。ウルカッコよすぎでしょ。なんであたし前まで近くに居れたのぉ?」
今になってみると、ほんとに自覚なかったんだなぁって思う。だってあたし、多分結構前からウルのこと好きだったもん。でもずっも友達との違いがわからなくて、ウルも友達として大好きだって、当時は間違いなく思ってた。
でも、この前のハグであたしの何かが完っ全に壊れたよっ!もうウルのことしか考えられない。店番してても、サーフィンしててもウルが視界に入ればそっちばっか見ちゃう。サーフィンしてた時は派手にすっ転んだ。うぅぅ。
「……よ、よしっ!こうなったらあたしから会いに行くもん!」
あたしは自分のほぼを両手で張る。ジーンとした痛みのまま、ウルを探して家を出た。
歩きながら探していると、すぐに見つかった。どうやら、友達と話してるみたい。ウルにバレないようにこっそり後ろから近付くと、少しずつ声が聞こえてくる。ウルと話してるのは豊穣の邦のディルガっていう茶髪の男の子。ヴァレサちゃんと仲が良くて、ウルの親友なんけど…。
「……うーん、確かにそれは深刻だな。……まだ俺こっちにいるし、泳ぎの練習付き合うか?」
「マジ?助かるわ」
ぇ。
ディルガの提案に安心したようにウルは返事をする。
それを聞いて、ウルがあたし以外の人と泳ぎの練習するのを想像して、なんかすっごいイヤだなって思った。
まるで、あたしの取り皿にとっただいすきな料理を誰かに勝手に食べられる感じ。
胸がきゅーって苦しくなったあたしは、この3日間ウルを避けてたことも忘れて───。
「………やだぁっ!」
「…うわっ!?」
嬉しいんだか、馬鹿にしてるのかわからん古名を貰った帰りに遭遇したディルガと話していた俺は、突如背中に感じた柔らかい感触と、どストライクすぎる可愛い声が耳元に響いてびっくりした。
俺が声を上げたと同時に俺の背中に腕が回って背中から抱きしめられる。
「…う、ウルはあたしと泳ぎの練習するんだもんっ!」
「む、ムアラニ?」
肩越しに振り返ると、慌てたような、焦ったような顔のムアラニと目が合った。俺が言い淀むと抱きつく腕の力が強くなる。
「……ね?ウル…そうでしょ?…あたしだけに教わるって言ったじゃん…」
あれ、そんなこと言ったっけ?
俺の瞬きが高速化すると同時に、ムアラニの頬がだんだんと膨らんでくる。あ、その顔くそかわいい。
俺はもうこくこくと頷くしか無かった。
「……こ、こっちっ!」
「お、おう。……ディルガ。悪いけどまたな」
「……はいはい。………お幸せにー」
なんか甘そうな顔をしてるディルガに見送られながら、俺はムアラニに引っ張られた。
ちょっと離れたところの内陸まで来ると、するりとムアラニが背中から離れる。その直後、俺の胸に飛び込んできて、ぎゅーっと抱きしめてきた。な、なな、なんなんだ!?
「……ムアラニ?」
「……すーっ、……はぁ〜」
なんかすごい深呼吸して、顔をぐりぐり押し付けてくる。何が何だかわからないけど、視界が可愛すぎて考えがまとまらない。
思わず俺も抱きしめ返そうとしたところで。
「……っ!…ぁ、ぁ……ま、またねっ!!」
「えっ、ちょ。……おいっ!」
ぱっと離れたムアラニが、この前のように一目散に去っていった。
伸ばした手のまま固まり、静寂に包まれる。
俺は手を下ろすと、しゃがみこんで真っ赤な顔を両手でおおった。
「………どういうこと……??」
次回、私の作品『隣に住んでる美少女は、ばぁちゃんらしい』のキャラが出てきます。良かったら読んでみてね。
ムアラニのバックスタブの威力
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5割
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瀕死
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即死