【リメイク版】ズッ友宣言してきた子の距離感がおかしい   作:猫好きの餅

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 糖度のターン


ズッ友は最高の特効薬

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ウソでしょ?」

「……はぁ、はぁ……どうですか?」

 

 シトラリは驚愕していた。

 

 昨日弟子入りを申し込んで来た流泉の衆の青年。境遇を聞いてこちらにメリットが多いのでその申し出を承諾し、氷元素の扱いを教えることになった。

 

 幻目との日々を邪魔されるのかと頷いてから心配したが、泊まり込みで修行するため合法的に彼を自分の家に連れ込めたのは良かった。

 

 そうして教え始め、今日で3日目になる。目の前で疲れた顔をしている青年、ウルは手にした氷をシトラリに見せつけた。

 

 それを地面に落とす。普通なら粉々に割れるところなのだが……。

 

 ゴッ!

 

 シトラリがやって見せた時のように地面にめり込む程じゃないが、十分に圧縮できている氷が出来上がっていた。

 

「……貴方、良くここまで圧縮を…」

「な、なんとかここまでは出来るようになりました。………まぁ、時間がかかりすぎなのでアレですけど」

 

 そうだとしても、初めて3日でこの氷を作るのははっきり言って異常だ。

 

「一体、どういうカラクリ?……貴方一昨日は全然だったじゃない」

「一昨日、感覚は人それぞれって言ってましたよね。どうやら俺とシトラリさんの感覚が近いみたいで、色々試してたら少しずつできるようになったんです」

 

 「握らない程度に握る感じ」と聞いた時は首を傾げていたウルだったが、今となっては頷ける。要は元素を一気に集めるのではなく、軽く握るようにその場に留める感覚。それを発見してからは、手の中に出来る雪の玉が段々と氷へ近づいて行ったのだ。

 

 そうウルから説明されたシトラリは「へぇ」と面白いものを見るような顔で腕を組んだ。

 

「……でも、まだ拳大の大きさを作るのに30分もかかってる。それを繰り返して速度を上げていきなさい」

「はいっ」

 

 返事をして圧縮を始めるウルを尻目に家に戻ると、中に居た幻目が微笑んでいた。ちらりと外のウルを見ると彼の袖を引っ張る。

 

「何かイれ知恵でもしたわけ?」

「いや。僕は取材として彼とムアラニのことを聞いてるだけだよ。ただそれが彼にとっていい刺激になっているみたいだね」

 

 まずは気が枯れるまで鍛錬をする。その後に幻目と話してムアラニへの想いを再確認。そうしたら鍛錬のモチベーションが向上する。ウルはここで暮らし始めてからそんなループに入っていた。ウルがムアラニのことを考えると、やる気は無限に湧いてきた。

 

 ただ、その弊害と言うべきか───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………ムアラニに会いたいッ!!!

 

 手の中の氷元素を集めながら、俺は内心で叫んだ。

 

 この3日、幻目さんの取材を使ったムアラニサイクルで俺は驚くべき速度でスタートダッシュを切った。……切りはしたんだけど。

 

「……ぁ〜、……やっべぇなんか知らねぇ状態になってる今…」

 

 とりあえず、頭からムアラニが離れない。……あ〜、また抱きしめてぇとか思ってる自分を殴り飛ばしながら、氷元素を圧縮することに専念する。

 

 シトラリさんの感覚を真似してどうにか硬い氷を作ることには成功したけどいかんせん時間がかかる。今日は圧縮の速度を上げ…ムアラニ今何してんのかなぁ……って違う違うっ!!

 

 俺は頭をかきむしった。もうダメだ、何を考えるにしてもムアラニが出てきちゃう。頭の中でもくっそかわいいな。好きです。

 

 こういうのをなんだ、脳を焼かれたとか言うんだっけ?まさにその状況すぎて笑えてくる。

 

「………ムアラニ、今何してんだろ。………まぁ、俺の他にも友達いっぱいいるだろうし、気にしてねぇか」

 

 そうだズッ友のことを考えればいいんだ。そうしてるとなんだか元気なくなってきた。やっぱ俺ダメかもしれん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ウル、今日も居ない…」

 

 ……うぅ、どこいっちゃったのぉ〜?

 

 ウルの家のドアを叩いたあたしは、今日も帰ってこない返事にため息をついた。

 

 もう今日で3日目だよ。あんなに顔を合わせるのが恥ずかしかったあたしでも、流石にウルに会いたくなってきた。……ううん、会うだけじゃダメ。声も聞きたいし、さ、触りたいし…。

 

 3日前、あたし以外に泳ぎを教わろうとしてたウルを見てヤキモチ妬いちゃって、その時に抱きついたのが最後。集落の人に聞いてもみんな知らないって言うし…。何してるんだろ。

 

 そんなことを考えながら歩いているうちに自分の店についた。椅子に座って、脚をぱたぱたさせながらやっぱりウルのことを考える。

 

 今何してるんだろ……、なにか危険な目にあってたりしないよね?

 

 もうあたしも重症だよ。ウルことが好きって自覚してから、もう何をするにもウルのことが気になっちゃう。

 

「……ウル…」

 

 また、抱きつきたい。抱きついたら首筋に顔を埋めて匂いを嗅ぎたい。ウルにも抱きしめられたい。ぎゅーって、ちょっと苦しいくらいに抱きしめて欲しい。

 

「会いたいよぉ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……くそっ」

 

 あれからさらに3日経った。………が、状況は芳しくない。

 

 4日目くらいから、目に見えてペースが落ちた。圧縮の速度は少しずつ上がってきたんだけど、問題は次のステップ。その氷を手以外で作るというところ。

 

 そしてペースが落ちてきた理由は……。

 

「ムアラニ……」

 

 ムアラニの取材を受ける度に、彼女とのエピソードを思い出し続けた結果、もう俺はムアラニがいないとダメなんだと強く認識した。だから今、俺はダメです。

 

「調子はどうだい?」

「難航してます……」

 

 見かねて様子を見に来てくれた幻目さんに、そう返す。

 

「どうも手から離したあとに圧縮するのが凄く難しいです」

「シトラリもそこが鬼門って言ってたよ」

 

 暇がある限りずっと鍛錬してるのに、できる気配がしない。

 

 幻目さんが執筆に家の中へ入ったあとも俺はずっと鍛錬を続ける。もう手は氷元素を浴びすぎて感覚がない。凍傷になる前に手をぬるま湯に突っ込んで元に戻す。

 

 もうムアラニが頭から離れないけど、もうそれすらも利用して鍛錬を始めた。

 

 

 

 

 翌日

 

 

 

「あ〜………」

 

 詰まった。

 

 昨日まで出来てたことが今日、何故か出来なくなった。色々方法を試しすぎたせいか最初の圧縮さえ出来なくなってる。これにはシトラリさんも見かねて「ま、ちょっと休みなさいよ」と言ってくれた。今日まで寝る間も惜しんでやってきた分、できなくなった時のダメージがでかい。

 

 そして今、俺は氷の神の目も外して空を見ながらぬぼーっとしている。

 

 修行を初めて1週間。こうして見ると短いけど、もう長いことムアラニと会ってないように感じた。

 

 ムアラニに会いてぇなぁ。

 

「………ぁ」

 

 ってダメだダメだ。修得するまで帰らねぇって約束だろ。せっかく教えてくれてるんだし、そこは曲げちゃダメだ。

 

「……ぅ………る……?」

 

 それに、こんな所で終わってられない。せめて元素は使いこなして戦えないと、ムアラニに釣り合う男に………。

 

「……ウルっ?」

「………え?」

 

 俺はここでようやく、下に人が立ってるのを認識した。

 

 シトラリさんちは川のスタート地点の湧き地のちょっと上にある。俺はそこに腰掛けてぬぼーっとしてたわけだけど、そこから見下ろせる川の横に1人、人が立っていた。

 

 その人物が誰かを認識した俺は目を見開いた。

 

「………ウル……、こ、ここにいたんだ…」

「……ムアラニ」

 

 何故かどうしてか、俺の想い人が俺と同じく目を見開いていた。

 

「………ウル………っ!」

「っ」

 

 訪問者……ムアラニは、我に返るや否や、俺の方に走り寄ってくる。

 

 やばい、黙ってここに来たの怒ってるかなとか、神の目外しといてよかったとかぐるぐる考えている間に、ムアラニはどこか鬼気迫った顔で俺の方に来ると、腕を広げ………ようとして、俺の前に急ブレーキ。

 

「………ムアラニ?」

「……ずっと、ここにいたの?」

「……あ、ああ」

「……ばか。……一言くらい、言ってくれてもいいじゃん」

「ごめん」

 

 俺の前に立ち止まったムアラニは、俺のお腹をグーでぽすっと叩いてくる。ちょっと下を向いた顔の頬が膨らんでるのが可愛すぎて変な顔になりそうだった。

 

 俺の空返事のようなごめんに、ムアラニはグーで追撃に入る。

 

「……ばか、ばかっ」

「いてっ、ごめんってば」

「一週間も帰ってこなくて、誰もどこいったか知らなくて、……あたし心配したんだよ?」

「あ〜…そうだよな。ごめん」

「……」

 

 すりっ。

 

 指先に触れた感触にそちらを見ると、俺の指先にムアラニの指先が触れていた。

 

 そんな手を繋ぐ未満の行動。それでもムアラニと会いたくて会いたくて仕方がなかった今の俺には効きすぎる。

 

 はーぁ、なんでこんなこの子可愛いの?なんかもう目の前の悩みとか全部どうでも良くなったんだけど。

 

「……手…冷たい」

「…っ、……さっき川で顔洗ってたから…。……その、ムアラニはあったかいな」

「……っ、……ぅ……」

 

 完全に惰性でここまで口に出すと、俯いたムアラニは、指先だけ触れていた手を、ゆっくりと重ねてくる。右手が彼女の両手に包み込まれ、俺の心臓が破裂しそうだ。

 

 なんだこれ。なんだこれっ。可愛すぎるだろ。俺なんでこれより近い距離間で耐えれてたの?いや耐えれてねぇわ。毎回悶絶してるわ。

 

 俺は、危うくそのままムアラニを抱きしめそうだった身体を間一髪止める。バカ野郎いきなり抱きついたらセクハラで捕まるわ。1回ハグ成功してるからって逆上せんな俺っ!!

 

「………と、ところで…ムアラニはなんでここに?」

「ウルが見つからなくて心配だったから、おばあ様に占ってもらおうと思って……えへへ、でも良かったぁ。……ウルの方こそどうしてここにいるの?」

 

 ……やっべ、今の「えへへ」で意識飛んでた。俺はもう本当に末期らしい。ここに来る前よりもムアラニが好きになってると本当に理解した。

 

 で、どう答えたもんか。氷元素を使えるのはちょっと俺のちっぽけな意地でまだ秘密にしたい。

 

「……実は、幻目さんの書いた小説に感銘を受けて、ちょっと弟子入り的な?」

「え、えええっ!?……そうなのっ?」

「お、おう。あとシトラリさんの巫術もちょっと……?」

「巫術もっ?……そうだったんだ……、だったら、尚更言ってくれれば…」

 

 そう言って再度むくれるムアラニに平謝り。視線を感じて振り返るとふたりが顔を覗かせていたのでそのまま話を合わせてもらった。

 

「いやごめんね。ウルを借りちゃって」

「ううん、あたしに謝ることじゃないよ。……でも、まさかシトラリおばあ様が弟子を取るなんて…」

「ま、まぁね」

 

 そこまで会話が続いたところで、ムアラニが俺の方をチラチラと見だした。可愛い。

 

「……ど、どうした?」

「……それで、ウルはいつくらいになったら流泉の衆に帰ってくるの?」

「……うーん、どうだろ…」

 

 俺は顎に手をやりながらちらりとシトラリさんを見るが、「まぁ、キミ次第ね」と肩を竦められた。視線を戻すと、どこか不安そうなムアラニの顔。

 

「…………あと、2週間…くらい?」

「2週間……長いね」

「ごめん」

「…あ、ううん。ウルが謝ることじゃないよ……その、頑張ってね?……ね、ウル」

 

 ムアラニは遠慮がちに手を伸ばして、さっきみたいに俺の指先に触れた。たったそれだけなのに高鳴る俺の心臓を他所に、上目遣いで俺を見る。

 

「あたし、これからここに来ちゃだめ?」

「え」

「ウルが頑張ってるのに、あたしも協力したいし……だめ?」

「………」

「なんでこっち見るのよ」

 

 だって貴方の家ですもんここ。

 

 ま、まぁ?さすがに毎日は来ないだろうし…、俺も正直会えたら修行を頑張れる。

 

「……うん。むしろ来てくれたら嬉しい…かな」

「え…そ、そうなの…?……えへ、そうなんだ…」

 

 さっきから、指先に触れるムアラニの手が擦れて凄く擽ったい。

 

 さっきの仕返しも兼ねて、俺もムアラニの手を包み込んでみる。ぴくっと反応したムアラニはちらりと俺を見ると、まるで自分との手の大きさの違いを確かめるようにすりすりと指を絡ませる。

 

「じゃあ、また来るね?」

「ああ。その、楽しみにしてる」

「…うんっ」

 

 何だこの状況。お互いちゃんと顔見ながら会話してるのに、手だけはすごい絡まってる。

 

「…えっと、ムアラニはこの後…」

「…ううん、この後は何も無いよ…?」

「じゃあ…さ」

「…うん」

 

 やばい、ムアラニが可愛すぎる。こっちを見上げるその顔が綺麗すぎて、うるうるしてる瞳が美しすぎて、目が離せない。

 

「………んんっ」

「「っ!?」」

 

 そんな時に横から咳払いが聞こえ、俺たちはバッと音が出そうな勢いで離れた。それでも指先に名残惜しい感触が残ってる。

 

 横を見ると、ちょっと頬が赤いシトラリさんが何やら手で顔を仰いでいた。幻目さんはメガネを光らせでメモ帳に高速で筆を走らせている。唐突に、シトラリさんが口を開いた。

 

「…ムアラニ」

「は、はいっ」

「…今日、トまっていきなさい?」

「えっ?」

「えっ」

 

 ちなみに1人目のえっはムアラニ、そのあとが俺だ。

 

 ぱちくりと瞬きをする俺達にシトラリさんは腰に手を当てる。

 

「せっかく再会できたんだし、積もる話もあるじゃない」

「で、でもお邪魔じゃ…」

「ワタシと幻目は同じ家でモーマンタイよ。2人はそっちの天幕使いなさい」

「で、でもっ」

「……それに、2人揃ったらネタの宝庫どころか泉だしね」

「ちょっと最後のが本音でしょう!?」

 

 俺はムアラニは嫌がるんじゃないか!?と心配して彼女の方を見た。すると上目遣いのムアラニの目が合う。当然俺は死ぬ。

 

「……あたしたち、前もこんなことあったし…いいよ?」

「え、でもそれは」

「……むしろ……な、なんでもないっ、…とにかあたしはいいって事っ!」

「ハイそれで決まりね。じゃあそういうコトで。買い出しにでも行きましょ幻目」

「ああ。……じゃあ2人はごゆっくり」

「えっ、あのっ」

 

 なんかどんどん話が進んで行ってる。俺達が声を上げるのを他所に、ふたりはさっさと行ってしまった。通り過ぎる時に幻目さんから「後で詳しく聞かせてね」とだけ言われる。

 

「……」

「………えっと」

 

 そして残された俺たちは当然2人きりだ。そう考えると気恥ずかしくて突っ立ってる俺の手の指先に今一度触れる感触。

 

「……ね」

「……ああ」

 

 1文字だけで何となく何がしたいのか伝わった。半ば理性が働かず、惰性で動いてる頭と身体を止める術は今ここには無い。

 

 ムアラニに引っ張られるままに天幕の中に入る。立ったまままま向き合った状態で、ちょっと俯いたムアラニが口を開いた。

 

「……ね、あたしたちって友達だよね」

「……うん」

「……と、友達なら…再会の…は、ハグくらい、するよね…?」

「そうだな」

 

 もうここまで来ると、身体が勝手にムアラニを求めて動いた。

 

 あれ、前はどっちからだったっけ、まぁいいや。

 

 俺はムアラニの脇に手を通して優しく抱きしめる。

 

「……んぅ……んふふ……」

 

 ムアラニも俺の首に腕を回してぎゅっと抱きついてきた。そのまま俺の首筋に顔を埋める。

 

「……ぁ…っ」

 

 そうして彼女と密着した瞬間、俺の言語野は彼方まで吹き飛ばされた。

 

 ……な、なんだこれっ…!ヤバすぎるだろっ!?

 

 ただのハグ。それなのに俺の五感が幸福を次々と訴えてくる。

 

 息を吸うと彼女の陽だまりのいい匂い。身体の前面には暖かく柔らかい感触。そして力を入れたら折れそうなくらい華奢な肩や腕にかかる柔らかい三つ編み。

 

「……すぅ…ん……はぁ…」

「…っ、ごめん、苦しいか?」

「……んーん、……へいき……えへへ……んっ」

 

 そう俺の耳元で囁くもんだから、思わずぎゅっと力が入る。ムアラニは「ん〜〜」と声を上げながら俺の首筋にぐりぐり顔を押し付けていた。

 

 首にかかるムアラニの息が擽ったくて、でも気持ちよくて、気付けば俺は右手でムアラニの頭を撫でていた。柔らかくて細い白い髪が指の間からを通り過ぎ、ムアラニの腕の力が増したように感じる。

 

 やばい、永遠にこのまま過ごせる。

 

 だけど、このまま立ってるのもあれなので一旦離れようとムアラニの肩に両手を置く。

 

「……ゃ、もうちょっと…」

「でも…立ったままだし、一旦座ろう?」

「……うん」

 

 そう言うと渋々離れるムアラニ。その様子が可愛すぎて抱きしめそうになるのを必死に堪えながら、俺はベッドに座った。隣に座れるように、横にズレようとしたその時。

 

「…うるっ」

「えっ」

 

 座ってる俺の太ももの横に、ムアラニが膝を乗せた。そのまま俺の両肩を置いて、もう片方の脚も俺の太ももの横…要は俺の足を跨ぐようにベッドに乗ってくる。

 

 そして俺が口をパクパクしてる中、俺の膝の上に向かい合うように座った。

 

 膝の上に柔らかい重みが乗っかる。脚の上に乗られた事で身長差が逆転し、目の前にムアラニの細い首と、その下にしっかりと実った双丘が見える。

 

 そのまま恐る恐る見上げれば、なんだか息が荒く、余裕がなさそうなムアラニの顔。心配になった俺が声を掛けようとしたところで。

 

「……ウル…これならいいでしょ?」

「ムアラニ…」

 

 そしてそのまま抱きついてくる。俺は為す術もなくムアラニの首筋に顔を埋められた。当然彼女の胸は俺の首筋辺りに着弾する。

 

 もう、何も言うまい(天国)。

 

 それで今度は俺の頭が撫でられてる。俺の顔が当たってる首筋からも、甘い匂いが漂ってる気がして思わず食いつきそうになった。

 

 身体の位置が変わったせいで、俺の腕がムアラニの腰にまわる。

 

 ぎゅっと抱き寄せるとムアラニも俺に寄りかかってきた。もう全身がムアラニと密着してて緊張と幸福感と興奮で頭がくらくらしてくる。

 

 もう何も考えられない。ただひたすらに、目の前の好きな女の子を抱きしめることに集中する。

 

 ただ、こうもずっと頭を撫でられて顔の下半分を胸に埋めれていると邪な気持ちとかよりも安心する気持ちの方が上回って来そうだけど、顎から下に着弾するお胸の感触が即座に精神を男に戻してくる。ついでに太ももに乗るムアラニの柔らかな重みでも追加ダメージだ。

 

「……あたし、重くない?」

「自分から乗っかってきて?……めっちゃ軽いよ」

 

 一旦身体を離してそう聞いてきたかと思えば、すぐさま抱きつき直してくる。最早このハグがなんなのかとかもどうでも良くなってきてる俺は、しっかりと抱きしめ返して存分にムアラニを補充した。

 

「……ん、んっ」

「ちょっ」

 

 ムアラニが体重を掛けてきて、傾いた上体を支えるために出した右手を取られた。当然そのまま俺はムアラニ共々ベッドに仰向けになる。

 

 ムアラニに取られた手、その指の間にするりと彼女の指が入った。俺の上に乗っかったままのムアラニはまた首筋に顔を埋めてくる。俺は俺で離れないようにムアラニの腰を抱き寄せる。

 

 あー、もうずっとこの時間続かねぇかな。ムアラニとくっついてる所柔らかいし、指が絡んだ手も凄く気持ちいい。幸せすぎる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やばい、やばいよぉ。幸せすぎてこのまま動きたくない。離れたくない。

 

 だいすきなウルの胸の中で、彼の首筋に顔を埋めて深呼吸。1週間ぶりのウルの匂いは、あたしをどんどん変な女の子に変えて行っちゃった。

 

 なんやかんやあってシトラリおばあ様の横の天幕にウルと泊まることになっちゃった。おばあ様と幻目さんは買い出しに行っちゃって、ウルと2人きりになったあたしは我慢できずに彼に抱きついた。

 

 それからもう1時間くらいこうして抱き合ってるけど、全然飽きないよぉ。…ウル〜♡

 

 ウルの方もドキドキしてる。それは抱きついてるのがあたしだから…なのかな?

 

 だから、あたしはウルの手に指を絡ませて握った。恋人繋ぎっていうコレ、初めてやったけどすごくドキドキする。

 

 あぁ、…だめだぁ。だめだよ。このままじゃあたし、止まらない……。

 

「……ウル」

「……ムアラニ?」

 

 あたしは流れのままウルの顔に自分の顔を近づけようとして、はっとなってやめる。だめだよっ、ウルは今弟子入りして頑張ってるんだから……。

 

 で、でも…………あ。

 

 

 

 

 多分、あたしはウルに再会しておかしくなっちゃってたんだと思う。

 

 だから、本当に今更になってあたしが今ウルに乗っかって何をしようとしてるのかに気がついた。いや気付いてはいたんだよ?気付いてはいたんだけど、今のあたしの体勢が何を意味するのかを今更になって理解した。

 

 あたしはゆっくりと自分の身体を見下ろす。あたしの身体はベットに腰掛けたウルの上に乗っかってる。それでそのままあたしが押し倒したから、今はウルの足の付け根。ちょうど腰の部分に跨ってて、左手はウルの右手と恋人つなぎ。右手はさっきまでウルの顔の横に肘をついてて後ちょっと進めれば完全に……。

 

「……ぁ、…あたし……っ」

 

 あ、あああたし、ウルに何してるのっ!?

 

 さっきまでは頬の熱さが心地いいくらいだったのに、今は爆発しそうなくらい熱い。

 

 あたしは、慌ててウルから離れようとした。……でも、恋人繋ぎした手は簡単に外れない。

 

 ………現に、ウルの方は離してくれなかった。

 

「……ムアラニ、大丈夫か?……真っ赤だけど」

「えっ、……ぁ、…だ、大丈夫…だよ?…だからもっとぎゅってして?」

 

 あたし何口走ってんの!?

 

 あたしの意思に関係なく口から飛び出したのはただの求愛だよ!?

 

「……っ、…ああ、わかったよ」

「……んぅ……」

 

 そんな内心大騒ぎのあたしを、ウルが優しく抱きしめた。ウルの肩に顎が乗って、女のあたしとは違う、力強い身体があたしを抱き寄せる。

 

 そんな感触をこんな情緒で感じさせられて、あたしの中の何かがドロドロと溶けだしていく。

 

 ……すき。

 

 すきぃ……。

 

 ウルはあたしを心配して抱きしめてくれてるんだろうけど、あたしは全然違う。邪な気持ちが100%だよっ。

 

 だから、ちょっとだけ身体を押し付けてもいいよね?……だって、今はまだ友達だから言い訳できるし。……これはただの再会のハグだもん。偶然なら、いいよね……?

 

 自分でも何を言ってるか、幸せすぎてもうわかんない。でも、今はウルと……。

 

 

 あたしはそのままおばあ様たちが帰ってくるまで、大好きな人を堪能し続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 幸せすぎてモノローグがグダグダになるのを表現してみました。

今回を読んで

  • 砂糖吐き散らかした。
  • 身を捩った
  • コーヒーないなった
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