もし、過去に戻れたのなら   作:ツキ0912

11 / 12
11話 繰り返す結末

それから私は仮面を被って過ごす。

たとえどれだけ心が跳ね上がりそうなほど嬉しくても。

どれだけ泣きそうになりながらも。

時には今考えれば恥ずかしいなと思う行動も...すべて私は以前の通りに真似をする。

けっして歴史を変えないように...

すべてを守るために...私は私を演じる。

そのおかげか...先生が来るまで特に変わったことは起きない。

日常の繰り返し...

人によっては苦痛に感じるかもしれないが、私にとっては真逆だ。

失ったものを再度手にすることができる...ただそれだけで私は幸せだった。

何度も泣きそうになる心を押しとどめて仮面を維持する。

みんなを救うと考えればなにも無理はなかった。

たとえセリカが誘拐されたとしても私は変わらない。

だって救えるのはわかってるから。

ホシノ先輩がアビドスを去っても慌てない。

だって戻ってくるのはわかってるから。

感情を切り捨てて...ただなぞるだけだ。

何も難しいことはない。

 

「シロコちゃん...シーローコーちゃーん!」

 

いつもと変わらない日常。

そんな中、ホシノ先輩が私に声をかけてきた。

 

「ん...どうしたの、ホシノ先輩...」

「この後暇?

おじさんとお茶しない?」

 

こんなイベントはあっただろうか。

まあでも...私だってすべてを覚えているわけではない...これはきっと、忘れていただけの些細な日常の一コマなんだろう。

 

ホシノ先輩に連れられてカフェに来る。

アビドスにある数少ないカフェ...柴関ラーメンとはまた違う気分の時に来る。

 

「今回はおじさんのおごりだよ

好きなの頼んでいいよ」

「じゃあこれ」

「.......おっけー」

 

ホシノ先輩の顔が引きつった。

まあ、かなり高いものだしそうなるだろう。

これも以前の私のやっていたことだ。

注文をして品物が届くまで軽く雑談をする。

すぐに話した内容を忘れるほど軽い雑談。

そんな中、ホシノ先輩の目つきが変わった。

 

「ところでシロコちゃん...最近、どう?」

「どう...とは?」

「ほら、いろいろ起きたじゃん...先生が来たり...セリカちゃんが誘拐されかけたりさ」

「ああ...ホシノ先輩がアビドスを抜けそうにもなってたね」

「うぐっ...」

 

痛いところを突かれた顔をしていた。

けれどすぐに気を取り直した。

 

「ま、まあ...最近どたばたしてて...シロコちゃんはどうかなーって思ってさ...」

「それ、ノノミやセリカ...アヤネも聞いてるの」

「セリカちゃんは聞いたよ

ほかの2人は聞いてないよ」

「まあ...セリカは誘拐された側だしね

...どうして私だけに聞くの」

 

私の質問にホシノ先輩の表情が変わる。

 

「シロコちゃんは...何を考えてるのかな...」

 

...さすがというべきか...

警戒心の強いホシノ先輩は私の仮面に気づいていたのだろう。

けれどここでバレるわけにはいかない。

 

「何を考えてるかって...回答に困る...

ただ楽しく過ごしてるだけだよ...」

「楽しく過ごしてる...ね...」

 

その言葉にホシノ先輩は再度表情を変える...けれどどこか、悲しそうだった。

 

「...本当にそう思ってる?」

「そうだけど...

さっきからホシノ先輩が言いたいことが分からない」

「楽しんでるっていうけどさ...」

 

ホシノ先輩は持っていたカップをおいて一呼吸する。

 

「じゃあどうして...常に今にでも泣きそうなほどつらい顔をしているの?」

 

私はスマホを取り出して自分の顔を見る。

やはりホシノ先輩の言うことはわからない。

そこに映っているのはいつもの私だ。

ただの砂狼シロコだ。

完璧なはずだ。

 

「どうしてそこで否定よりも先に自分の顔を隠してるの?」

 

その指摘に言葉が詰まる。

 

「...単純にどんな顔か気になっただけ」

「......シロコちゃん」

 

注文したものを食べ終えて私は荷物を持って席を立つ。

 

「ちょっと、シロコちゃん!」

「...ご馳走様...ホシノ先輩」

 

これ以上はいけない。

ホシノ先輩は勘が鋭い。

そんな相手にこの話はよくない...すぐにぼろが出されてしまう。

慌てて家に戻り、鏡を見る。

 

「...ひっどい顔」

 

そんな感想が漏れた。

なるほど...私はこんな顔を隠していたのか。

うまく隠せているのだろうか...

正直、勘が鋭すぎるホシノ先輩は当てにならない。

ノノミたちはどう思ってるのか...

先生は気づいているのか...

ふらふらとリビングに戻り、カレンダーを見る。

前に戻った時、ループした時に起こった列車砲の事件の日はとっくに過ぎていた

代わりに最初の世界での事件の日が近づいてきた

ベッドに身を投げ出す。

その日に備えて私は眠る。

 

「そろそろ...か...」

 

しばらくして、運命の日がやってきた。

ハイランダーの襲撃、総会等...色々起きた。

だが、それはすべて想定通り。

このここまですべて私が知っていることだ。

本番はこれから...今度こそ未来を...みんなを救って見せる。

 

「先生...ちょっと待って」

 

とりあえず会議も終わり、シャーレに戻る先生を呼び止める。

 

"なんだい、シロコ?"

「突然で悪いけど、シャーレに戻らないで私の家に泊まって?

今日だけじゃなくて...列車砲の事件が解決するまで」

"えっ!?"

 

突然のことに先生は驚く。

まあ...当然だろうがここは意地でも通さないといけない。

 

"な、なんで急に...さすがに生徒の家に泊まるって"

「事情は説明できない...

けど、今日からしばらく絶対にシャーレには戻らせない

抵抗するなら...拉致してでも私の家に連れていく」

 

先生は少し落ち着いた表情で私を見つめている。

 

"事情が...あるんだね..."

「...話せないけどある」

"...わかった...それならシロコの言うとおりにするよ"

 

希望が...見えた瞬間だった。

 

「ほ、本当...!?」

"まあ、こんなことで嘘はつかないし..."

 

私は嬉しさのあまり、食い入るように先生にしつこく確認する。

 

「よかった...これですべてが変わる...みんなを...」

"何の話?"

「う、ううん...なんでもない...」

 

危うく口が滑りそうになったので慌てて止める。

これで未来が変わるはず。

だが、油断はできない...これからは完全に未知の世界だ。

なにが起こってもいいように対応しなければならない。

 

「じゃあ先生...買い物行こう...ご飯の買い物とかしないと」

".......うん"

「どうかしたの?」

"ああいや...なんだかすごく嬉しそうだなって思って...

私が見た中で一番楽しそうにしているから..."

 

ああ...そうか...私...浮かれているんだ...

けれど...少しだけ...いいんじゃないだろうか。

せっかく事態が好転しているんだ...

警戒はしつつも...少しだけ、楽しんでもいいんじゃないだろうか

 

「...もしかしたらそうかも

けど...うん...たぶんこれからもっと楽しくなると思うよ」

 

明るい未来...

私にだって見る権利はあるはずだ。

 

"ねえ...さすがに買いすぎじゃない?"

「そんなことない」

 

買い物かごを見て先生がつぶやく。

そんなに量は多くないはずだ。

まあ...買い物かごからあふれそうになっているのも事実だが。

 

"本当にこれ全部買うの?"

「ん、買う

それで二人だけでもパーティーする」

"食べきれるかな..."

 

...ああ...楽しい。

ここまで楽しんだのは今回のループではこれが初めてだ。

私は...乗り越えたんだ...それだけで全てが明るく見える。

そうだ...列車砲の事件が終わったらホシノ先輩にも話さないと。

心配をかけてしまった。

...とりあえず今日は...たくさん料理を作らないと。

買い物を終えて私は先生と帰路に着く。

たわいもない雑談をしていると、素行の悪そうな生徒が見えた。

少し嫌なものを見た気持ちになるが、私は先生を引っ張って端によって、かかわらないようにする。

移動した瞬間...金属音のようなものが聞こえた気がした。

 

「ん...?」

 

それは...手榴弾だった。

すれ違った生徒のカバンからたまたま零れ落ち、ピンが外れた。

私は動けなかった。

その生徒も呆然としていた。

ただ一人、先生だけは私を庇うように動いた。

 

「...先生?」

 

煙と爆発音で状況がわからない。

だが、嫌な予感がする。

 

「先生...返事して?」

 

答えは返ってこない。

爆発音で耳がやられてるだけだ...きっとそうだ。

 

「お願い...先生...これじゃ...また...」

 

煙が晴れて視界が広がる。

先生は...私を守るようにして覆いかぶさり...血だらけになっていた。

 

「先生...先生!」

 

何度も声をかけるが先生から反応がない。

爆弾を持っていた生徒たちも呆然としている。

そうだ...彼女たちだって悪意があったわけじゃない。

たまたま...そうなってしまったのだろう。

 

本当に...?

 

作為的なものを感じる。

けど...いったい何が邪魔をしているのだ...?

それとも...ただ私が現実逃避をしたいだけだろうか?

けれど先生はまた...形は違えど爆発に巻き込まれた

 

「.......またなの?」

 

またダメなのだろうか...

私は失敗するのだろうか...

とりあえず...救急車を呼ばないと...

このままでは先生が死んでしまう

 

「あっ...」

 

ふと考えてしまう。

もし...ここで先生が死んだらどうなるのだろうか?

さすがにホシノ先輩も止まってくれるだろうか。

先生は...なんて言うんだろうか...

事情を話せば...許してくれるかな...

ああ...きっと先生は許してくれる...

そういう人だからこそ...あの選択を迷いなくする...

......私はいったい何を考えているんだろうか。

 

「先生、今救急車呼ぶから...絶対死んじゃだめだよ!」

 

追い詰められて危うく道を踏み外しそうになるところだった。

私が目指すのは全員の生存...最悪の犠牲は私だけでいい。

もう、死んでもいいくらいには私はもらった。

なら、死んでも全員を助け出す。

 

「...まだ...諦めない」

 

私は再び、仮面を被る。

感情をすべて捨てて...砂狼シロコを演じる。

まだ、終わっていないはずだ...先生も死んでいないなら...きっと...

 

「きっとどこかで、まだ何かを変えられるはず...」

 

再度私は私を演じながら過去をなぞる。

ノノミがネフティスに誘拐され、ホシノ先輩が一人でアビドスを出て行ってしまう。

何も変わらない...過去の繰り返し。

私はセリカとアヤネを連れ添って走り出す。

総会の会場についてノノミを連れ出し、そのまま砂漠へ行き、ようやっとホシノ先輩と対峙する。

 

「...しつこいなあ...みんな」

「そういうホシノ先輩こそ頑固...戻ってきて...」

「...ふうん」

 

なぜだかホシノ先輩の表情が冷たい。

まるで私を軽蔑しているかのようだった。

 

「じゃあ、始めようか」

 

ホシノ先輩の合図とともに戦闘が開始する。

私はこれまで通り、本気でホシノ先輩を止めにかかる。

 

「えっ...」

 

けれど、私の銃弾は不思議なほどホシノ先輩を捉えない。

防御すらしてくれない。

 

「な、なんで...」

 

少し焦りながらも私は戦うが...

 

「私の勝ちだね」

 

私たちはあっという間に制圧されてしまった。

 

「そんな...なんで...」

 

なぜだ...いつもならここでは一度はホシノ先輩は止まるはずだ。

それなのになぜ、こんな展開になったんだ...

 

「...それじゃ、私は行くね」

 

私たちに背を向けてホシノ先輩は歩き出す。

 

「...待って!」

 

その背中に向かって叫ぶ。

溜息をつきながらもホシノ先輩は振り返ってくれた。

 

「絶対に...行かせない...」

 

再度溜息をつきながらホシノ先輩は口を開く。

 

「みんな私を止めるために必死だよね...

ノノミちゃん、セリカちゃん、アヤネちゃん...みんなの気持ちが伝わるよ

大事な後輩たちの思い...足を止めそうになるけど...大切だからこそ、私は行かなきゃいけない...そんな思いを3人には抱くんだよね」

 

3人...?

自惚れるわけではないが...私はどうしたんだろうか?

 

「けど、悪いけど...シロコちゃんにはそんな気持ちは湧かないだよね」

「な、なんで...」

「...本気でわからない...?」

 

軽蔑するかような目をして、ホシノ先輩は私を見る。

 

「薄っぺらいんだよ...シロコちゃんの全部が...声も...感情も...何もかも」

 

何も言えなかった。

私は...ホシノ先輩の言う通り、仮面を被って過ごし...どこか俯瞰して見ていた。

その結果、ホシノ先輩には伝わり、不信感を抱かれた。

そして...信用してもらえず、私の言葉が届かない。

 

「ノノミちゃんが今のシロコちゃんみたいに立ち上がって説得してくるんだったら私、また揺らいでたけど...」

「ちが...そうじゃ...私は...」

 

返す言葉が見つからない。

きっと、何を言っても届かない気がする。

 

「ただ...私は...ホシノ先輩を...みんなを守りたいだけ...」

 

消え入るような声で呟くが...私はその場に崩れ落ちる。

ホシノ先輩はそんな私に銃を突きつける。

だが、結局...撃たないで歩き出した。

ホシノ先輩の顔は見えなかった。

 

「ノノミちゃん、アビドスを頼んだよ...」

 

似たようなことを以前聞いた気がする。

その時、託されたのは私だったはずだ。

それからしばらく、私の記憶がない。

呆然としたまま動き、元の世界をなぞり...そして...

 

「あっ...」

 

私はまた...ホシノ先輩を殺していた。

 

「また...」

 

変わらない。

 

「私は...」

 

ホシノ先輩は私が殺して。

 

「何一つ...」

 

セリカは連れ去れて。

 

「変えることが...」

 

アヤネはセリカを失ったことに耐えらず。

 

「できなかった」

 

ノノミもみんなの後を追った。

そして先生までも私のために死んだ。

 

「どう...して...」

 

なにがいけないのだろうか。

どうして変えられないのだろうか。

 

「認めない...」

 

そんなことは認められない。

こんな結末...絶対に...

 

「絶対に認めない!」

 

全てが終わった世界で私は再度刃物を手に取る。

刃物を首筋に当てる。

目の前のプレナパテスと化した先生はゆっくりと私に手を伸ばしていた。

まるで止めようとしているようだった。

 

「ごめん...先生...

目の前で自殺なんて...先生も辛いよね

でも...私はいつか...先生を...みんなを死なせない世界を作るから...」

 

二度目の自殺。

あの時はほぼ衝動的にやったが...今回は仮面を被っていた影響かまだ理性がある。

どうせまた生き返るとは思うが...さすがに怖い。

それに、まだ生き返れるかも確定しているわけでもない。

だが...この結果が死に繋がるのならそれはそれでいいだろう。

覚悟を決めた直後、先生の手が私の頬に触れた。

 

「...行ってくるね、先生」

 

その瞬間、私は首筋に当てた刃物を動かした。

鮮血が舞って、私の体がその場に倒れる。

痛みはなかった。

ただ熱がどんどん冷めていく感覚があるだけだった。

先生は私を見下ろしていた。

目は見えないはずだが...その顔は悲しそうだった。

泣いているようにも見えた。

大丈夫だよ、先生...

私がきっと...

みんなを救うから

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。