もし、過去に戻れたのなら   作:ツキ0912

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2話 二度目の人生

過去に戻ってから数日が経った。

特になにかめぼしいことは出来てない。

意気込んだはいいが...特にやれることが思い浮かばなかったのだ。

こういう時に先生がいればなと思ってしまうが無理な話だ。

実は未来から来た...なんて言っても信じてはくれないだろう。

未来の事を下手に教えてコントロールが出来なくなっても困る。

なのでとりあえずは以前と同じような生活を送って日常をなぞることにした。

そのため、軽く1年はやることがなかった。

少々ヤキモキしながらもその日々は悪くなかった。

過ごした日々を全て覚えているわけではないので、完全に過去をなぞっているとは言えない。

だが、その日常は確かに私を満たしていた。

もう諦めていた砂狼シロコとしての日常を、ホシノ先輩と歩めるだけで私は嬉しかった。

そのため...もう少しこの幸せに浸っていたいと思っていた。

だから私は...今日も晴れやかな気持ちでアビドスに向かう。

今日は...正式に私とノノミがアビドスに入学する日だ。

 

「えっ...ホシノ先輩本気ですか?」

「本気本気...シロコちゃん、あの時本気出せてなかったみたいだし...本気のシロコちゃんが気になってね」

「わ、私には確認しなかったのに...」

「ノノミちゃんはまだまだね

素質はあるから...もう少し鍛錬しようか」

「はい...」

 

教室に入るとなにやら騒がしかった。

 

「ん...おはようノノミ、ホシノ先輩

何の話...?」

「あ、おはようシロコちゃん

突然でわるいんだけどさ...

おじさんと勝負しようよ...本気でさ」

 

ホシノ先輩との本気の勝負。

唐突な提案だった。

 

「な、なんでまた...?」

「いや...シロコちゃんのちゃんとした全力を知っておきたくてさ...

最初に戦ったときって怪我とかでコンディションよくなかったでしょ

今なら大丈夫そうだと思ったけど...どう?」

「でも、今日入学式で...」

「もちろん、終わった後だよ

それに...これはおじさんなりの入学祝だと思ってよ」

 

不敵な笑みをホシノ先輩は浮かべていた。

だが、興味が引かれないと言ったら嘘になる。

色彩とかそういうのを除いても私は元の世界のよわシロコよりは強くなっている。

今は多少条件が違うが...この実力でホシノ先輩に追いつけたのか...

はたまた追いつけなかったとしてもどこまで食らいつけるようになったのか...

私も知りたくなった。

 

「いいよ、やろうか...ホシノ先輩

やるからには無論、勝つ気でいくよ」

「そう来なくっちゃ」

「えっ...ええっ...?」

 

私とホシノ先輩の雰囲気にノノミは焦っていた。

そういえば元の世界ではこんなイベントは起きなかったな...と思いながら入学式を始めた。

こちらでは元の世界と同じノノミと並んで写真を撮った。

若干頬が緩んでいた気はするが。

そしてそのまま戦闘準備をする。

今の体には少し大きい銃を持ってグラウンドに出る。

その先には盾とショットガンを構えたホシノ先輩が立っていた。

 

「2度目の戦闘だね、シロコちゃん

今度はちゃんと手加減して傷あんまり作らないようにするよ」

「ん、心配しないで...今度勝つのは私だから」

 

私達は一定の距離を保って対峙している。

ノノミは少し離れた場所で心配そうな顔で見ている。

会話も終わり、少し間を睨みあうと、2人同時に駈け出す。

接近し、ホシノ先輩の顔を目掛けて蹴り上げる。

それは盾で防がれるが...ホシノ先輩が驚いた顔をしていた。

 

「どうしたのホシノ先輩...予想よりも強かった?」

「そうだね、びっくりしたよ...でもこれなら楽しめそうだ」

 

盾を動かし、攻撃を逸らされる。

一瞬、動きが止まる私にホシノ先輩が追撃として銃を放つが距離を取ってそれらを躱す。

 

「いい動きじゃん...やっぱこの前のはすごく弱ってたんだね」

「ん、当たり前...それにまだまだ、全力じゃない」

 

軽く言葉を交し、グラウンドを再度駈け出す。

今度はホシノ先輩を直接狙うのではなく、その周りを走る。

 

「...速いね...おじさんの全速力に近いんじゃないかな

それで、こっからどうするのかな...速いけど、それだと全然追いつけるよ?」

 

ホシノ先輩の言葉は事実だ。

その目は確かに私を捉えていた。

そんなホシノ先輩を無視して加速しながら突撃をする。

再度蹴りを叩き込みながら、銃でホシノ先輩を狙い撃つ。

背後にある、秘密兵器を隠しながら。

 

「なにか隠してるね」

 

私の猛攻を盾と少しの反撃だけでホシノ先輩はいなしながそう声を掛けてくる。

ホシノ先輩の戦い方はまるで私の実力を測るのが目的で、本気の戦闘とは違う。

たしかに私はまだ本気を出してないし、実力で言っても届くかどうかの元の私よりもさらに弱体化している状態だ。

相対的に考えればホシノ先輩にはまだ届かない。

それでも、今回は私に利がある。

ホシノ先輩は私の動きをまだ知らない。

知らないはずなのに初見で今のところいなされているが...こちらだってまだ動ける。

そして私はホシノ先輩の動きを知っている。

ホシノ先輩の反撃は、経験からで対応している場面もある。

ホシノ先輩も読まれたことには気づいている様子だったが...

この2点は大きなアドバンテージだ。

それに...秘密兵器もある。

 

「ほらほら、まだまだ甘いよ、シロコちゃん...そろそろおじさんも本格的に反撃しちゃうよ」

「ん...その余裕をまずは崩す」

 

私は猛攻を止め、横に逸れる。

その瞬間、私の秘密兵器であるドローンが姿を現し、ホシノ先輩を襲う。

 

「うへっドローン!?」

 

ホシノ先輩は慌てながらも盾で防がれる。

その間私は背後に回り、無言で攻撃をする。

だが、ホシノ先輩は私の攻撃は躱して反撃として銃を放ち、位置を変える。

せっかくの初見+前後で実質2VS1の状態に作ったが防がれた。

これで落とせるとは思ってなかったが...これも完璧に防がれるとは思わなかった。

 

「...やるじゃん、シロコちゃん...おじさん少し喰らっちゃったよ」

 

ホシノ先輩を見れば頬に銃弾が当たった後が着いていた。

 

「いや...これでもう少し喰らってほしかった...

せっかくの初見のアドバンテージだったのに」

「いやいや...実際驚いたよ

ほんと、強いねシロコちゃん...おじさん楽しくなってきたよ

それじゃ、続きと行こうか!」

 

今度はホシノ先輩から攻めて来た。

少しの攻防しかしていないはずなのに的確に私の弱いところを狙ってくる。

 

「ん、攻撃がいやらしい...」

「相手の弱点を突くのは戦闘の基本だよ?」

 

精度、速度、威力...どれを取っても今の私の上を行ってる。

やはりこの姿の私にはここまでなのだろうか...

せめて、もう1年体が成長しないとダメなのだろうか...

 

――ふと、1つの景色が浮かんだ。

それは...地獄だった。

崩壊したキヴォトス、死にゆく生徒たち。

そして、私が殺したホシノ先輩。

 

「...うわああああ!」

「なっ...!?」

 

無理矢理ホシノ先輩を突き飛ばし、距離を取る。

これはただの試合である。

ここでの勝ち負けに意味はない。

だが...甘えるな。

 

「...目つきが変わったね、どうしたの?」

「気にしないで...本気で行くだけだから...」

「手を抜いていたの?」

「そうじゃない...勝てないと思って、少し気が抜けただけ...もう大丈夫」

 

きっと、私の雰囲気が変わったのもホシノ先輩は気づいて声を掛けてくる。

そう...甘えるな...

「今は勝てない」を繰り返した結果、私はあの時、1人で全てを終わらせようとするホシノ先輩を止められなかった。

その結果はホシノ先輩をこの手で殺し、生まれたのは地獄だ。

あまりにも高すぎる壁だが...常に乗り越える気でいろ。

もっと、強くなれ...でなければ、繰り返すだけだ。

声にならない叫びをあげて、ホシノ先輩に突っ込む。

多少の被弾は無視して、ホシノ先輩にひたすら攻撃を当て続ける。

ホシノ先輩も、先ほどより目つきが鋭くなっていた。

 

「どうしたのシロコちゃん...動きにキレが出てきたのはいいけど...目つきが怖いよ」

「ただ、全力なだけ...」

「...それだけじゃないね...すごく必死な目だ

.......まるで誰か大切な人でも失ったことがあるような目だよ」

 

ホシノ先輩の指摘に動揺し、足が止まる。

ホシノ先輩はその隙を見逃さずに足払いを掛けて私を倒し、銃弾を浴びせてくる。

私は焦り、銃弾を受けながらも受け身を取って後ろに下がる。

距離を取って、再度駈け出し、今度はドローンを前に出す。

 

「今度はどうやって来るのかな?」

 

前を飛ぶドローンに足場にし、私は飛び上がる。

 

「飛んだところで空中じゃ動けないから狙い放題だ.......」

 

ホシノ先輩の言葉が止まる。

 

「...なるほど、太陽を背にしたんだ

しかもドローンも...」

 

太陽を背に、ホシノ先輩の目を眩ませながら上空から銃弾の雨を降らせる。

ホシノ先輩は目を細めながらこちらを見て反撃として銃を放つが精度が悪い。

急所以外は無視しながら私は急降下しつつ、勝負を決めに行く。

 

「あっ...」

 

だが、私は着地ミスをしてグラウンドを転がる。

いつの間にか体が小さいことを忘れて動いてしまった。

その結果の着地ミスだった。

それが勝負を分け、私の頭に銃を突きつけられる。

 

「ストップ、シロコちゃん

これ以上はお互い大怪我しそうだし...今日はこれくらいにしようか」

「ん...わかった...」

 

こうして...私はホシノ先輩に敗れた。

その後はノノミによって治療を受けた。

その際、やはり実力差を痛感する。

大きな怪我はないものの、私は怪我自体は非常に多かった。

対してホシノ先輩はそんな怪我自体も少なかった。

やはり...もっと強くならないと...

 

「さて...実力は大体わかったよ...

強いね、シロコちゃん...すっごく強いよ....これじゃすぐにでもおじさん抜かされそうだね...

...でも、色々隠してること、あるよね」

 

ホシノ先輩はじっと私を見据えている。

 

「な、なんのこと...?」

「記憶喪失って言ってたけどさ...あれ、微妙に嘘だよね

まず、さっきの戦い...私が知る限りだとシロコちゃん、実戦でドローンなんて初めてだよね

なのにすごい上手いよ...まるで戦い慣れてるみたいにさ」

「それは...」

 

言葉に詰まる。

否定してもきっと、意味がない。

上手い反論も浮かばない。

 

「それにさっきの目...とても記憶喪失でなにも知らない子がしていい目じゃないよ」

 

なにも答えられない。

どうすればいいのだろうか...解決策が浮かばない...

 

「ま...いいや...」

 

だが、ホシノ先輩はあっさりと引き下がった。

 

「い、いいんですかホシノ先輩!?

なにか隠してることがあるなら問い詰めないで...敵かもしれないんですよ!?」

「落ち着きなよ、ノノミちゃん

そりゃ...ノノミちゃんの言いたいこともわかるけどさ...

シロコちゃんのこと、見なよ」

 

ホシノ先輩に促されてノノミは私を見る。

私は今...どんな顔をしているのだろうか。

ノノミは...何を感じてるのだろうか。

 

「どう、ノノミちゃん...シロコちゃんのこと、どう見える?」

「...すごく怯えてるような」

「敵意は?」

「感じ...ない...です」

「そう...シロコちゃんは確かに色々隠してる

けどね...出会って数日、一切敵意を向けてきたことはないよ

あの戦いだってそう...仮にどこかの刺客だとしたら...私が言った目をしながら敵意を向けないなんて器用なことは無理だと思うんだ

だから...秘密があるだけなら敵でもないし、いいかなって」

「...そう...ですか

確かにホシノ先輩の言う通り...敵意はないですし...

シロコちゃん...ごめんなさい...ずっと疑っていて」

「ん...大丈夫...」

 

ホシノ先輩とノノミの優し気な顔に安堵する。

 

「とりあえず、今日はもう帰ろうか...

帰りにラーメン屋寄ろうよ

おじさんのおごりだよ」

「わあ、じゃあ全部乗せラーメン食べたいです!」

「...ちょっとは遠慮して欲しいかなー」

 

私はホシノ先輩とノノミの後に続いて、学校を後にする。

 

「ああそうだ...改めてだけど...大事なことを1つ言わせて?」

「なに?」

「なんでしょうか?」

「2人とも、入学おめでとう」

 

ホシノ先輩の言葉に私のノノミは嬉しそうに返事をした。

ひと騒動あったが、私とノノミは無事にアビドスに入学をした。

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