もし、過去に戻れたのなら   作:ツキ0912

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4話 最初の壁

先生がやって来て数日が経った。

アビドスはその間も色々起きた。

便利屋と出会ったり、ゲヘナの風紀委員がやってきたり...柴関ラーメンが爆破されたり...

セリカが誘拐事件も起きた。

それらは全て前の世界同様、問題なく解決して先生はみんなに認められ始めた。

ここまでは問題ない...次に起きるのはホシノ先輩がアビドスを去ろうとすることだ。

前の世界では、置手紙を残してひっそりと行ってしまった。

そして、私達はそれを助けに向かう。

いつも通り...前の世界をなぞるだけだ。

けれど...心はもやもやする。

前の世界をなぞれば、問題なく事件は解決する。

けれど...ホシノ先輩は辛い思いをする。

本当はセリカの誘拐事件でも思っていたが...未然に防ぐことはできないのか?

道を逸れないことで同じルートを辿れても...わざわざ辛い思いをさせる必要があるのだろうか。

もしかしたら...必要なのかもしれない。

けれど、それは今考えても誰も答えてくれない。

だとしたら...私は抗ってみたい。

出来るなら辛い思いをさせたくない。

 

「こんな遅くまで何をしているのかな...シロコちゃんは...」

「ん...ホシノ先輩を待ってたから」

 

今まさにアビドスを出て行こうとするホシノ先輩の前に立ち塞がる。

ホシノ先輩はどこか私が来るのをわかっていたような表情をする。

 

「そっかそっか...でもごめんね...おじさん今日は用事があるから1人で帰ってほしいな」

「用事ってカイザーコーポレーションに?」

「.......鋭いね」

「やっぱり...」

「なんでわかったのかなー...」

 

私は何も言わないでホシノ先輩の前に立つ。

ホシノ先輩の表情が変わった。

 

「でもそっか...やっぱシロコちゃんは止めに来るか...」

「私が来るのもわかってたの?」

「確信はなかったけど、なんとなく来るかなーって思ってたよ

シロコちゃん...いつもどこか遠い目をしてるし...私達を見てるけど、どこかずれてると言うかさ...

まるですべてを知ってるみたいにね...

...この前のセリカちゃんの時も、焦ってないでしょ」

「ホシノ先輩だって...」

「私は焦ったよ...隠してたんだよ

けど、シロコちゃんは焦ってない...

この0と1の差は大きいよ、シロコちゃん

...セリカちゃんがどうでもいいとは思ってないはずだし...だとしたらセリカちゃんが誘拐されるのも、その後どうなるかも知ってた...とかかな」

「......」

「今更敵かどうかは疑ってないよ...ちゃんとアビドスの仲間なのはわかってる

けどやっぱ...色々謎なんだよね...シロコちゃんは」

「......私は」

「いいよ、なにも聞かないから

出来たらそれは...今後もみんなのためにお願いね?」

「がっ...!?」

 

気付いたときにはホシノ先輩は私のすぐ目の前に来て、的確に急所を狙って私の意識を奪おうとする。

 

「ほし...の...せんぱい...」

「なんとなくシロコちゃんが来るかなって思ってたからすぐに鎮圧できるように動きを考えてて正解だったよ

うん...シロコちゃんは仲間だからこうして私を止めに来てくれたんだよね...それは嬉しかったよ

だから...私1人でみんなを守れるなら,,,私は自分の身なんていくらでも差し出せるんだ

ありがとう...シロコちゃん...みんなをお願いね」

「だめ...いっちゃ...ほし...の...せん...ぱ...」

 

体が揺さぶられている。

私を呼ぶ声が聞こえてくる。

 

"シロコ、起きて!"

「シロコちゃん、起きてください!」

 

目を開けると先生とノノミが私の傍にいた。

セリカとアヤネも少し離れた位置で私を心配そうに見ていた。

 

「先生...ノノミ...

はっ...今何時!?

ホシノ先輩は!?」

「時間は8:30です...

ですが...ホシノ先輩は...」

 

ノノミの反応から察するにもうホシノ先輩は去ってしまったようだ。

置き手紙もみんな見ているだろう。

 

「ノノミ、みんな...今から会議を緊急で始めよう

議題はホシノ先輩を取り戻す方法で」

「わ、わかりました!」

 

私の呼びかけで緊急会議を開く。

 

「それでは、これより緊急会議を開きます

まず...ホシノ先輩はどこへ行ったのでしょうか」

「それはわかってる...カイザー...

ホシノ先輩は自分の身を犠牲にしてアビドスの借金を返すつもり......だと思う」

 

危ない...今の言い方ではホシノ先輩が言うように全部わかってるような言い方だった。

 

「随分詳しいのね...シロコ先輩...」

「えっと...」

「昔からシロコちゃんは勘が鋭いと言うか...不思議なところが多いんですよ」

「そう...」

 

セリカが怪しむが、ノノミの無意識なのか分からなかったがフォローでとりあえずその場は切り抜ける。

 

「んで...多分今回...敵になるのは大きく2つになるはず」

「えっ...カイザーだけじゃないの!?」

「それは...私も初めて聞きますね」

「......私も、アビドスの借金返済のために色々調べて最近知った

ホシノ先輩がここを出て行ったのは恐らく、こいつの『契約』を結んだから

私達が弱い...大人の戦い方をしてくる相手

それがカイザーとは違うもう1つの敵...黒服」

 

大人の戦いと聞いて全員が暗い顔をする。

そう、この戦いは武力だけでなんとかなるものではない。

闇雲に戦って、最悪矯正所に全員で行くことも考えられる。

 

「どうすればいいのよ...それ」

「これじゃホシノ先輩を取り戻すことが...」

「けど...こっちにも大人が着いている」

「...そっか...先生は大人ですね」

"よく気付いたね、シロコ"

「先生...お願いしていい?」

"任された...それで、これからどうする?"

「本当は先生が黒服をなんとかしてからがいいんだろうけど...私は待ってられない

今すぐにホシノ先輩を助けに行きたい...」

 

私の言葉に、みんなが頷いた。

 

「はい、行きましょう!」

「今度は私達が助ける番ね!」

「帰ってきたらうんと叱りましょう!」

 

みんなが意気揚々と声を上げる。

 

「ってことで...先生、やっていい?」

"いいよ...今回の契約自体無効だし...順番にこだわる必要もないよ"

「ありがとう、先生

カイザーは契約の有無にかかわらず抵抗するはずだからみんな、戦闘準備して行こう

会議は以上!」

 

会議の終了宣言と同時にみんなが一斉に動き出す。

私も準備をしていると、ノノミが傍に来ていた。

 

「ノノミ、どうしたの...そんなに時間ないよ」

「シロコちゃんは...どこまでわかってるんですか?」

「ただの予想...わかってるわけじゃない」

「...嘘ですよね...ホシノ先輩が言ったようにシロコちゃんは......」

「大丈夫だよ、ノノミ」

 

ノノミの言葉を遮る。

 

「私は...アビドスの味方だから

正直に言うと...隠してることってのは確かにある...

けれど、それだけは本当だから...包み隠さずに言える」

「...まっすぐな目ですね

ホシノ先輩はよく相手の目を見てますが...私もそれに倣って...シロコちゃんを信じてみます」

「ありがとう、ノノミ

大丈夫、きっとうまく行くから」

 

準備を終え、先生に声を掛けようとすると先生はどこかへ電話をしていた。

 

「何してるの...先生?」

"ちょっとした秘密兵器

さっ...こっちの仕込みも終わったし...ホシノを助けに行こう"

「うん...」

 

若干気になるが気にしても仕方ないので無視してみんなと一緒にカイザーへと向かう。

カイザーの元へ向かうと、相手も予測していたのか...大量の兵士と共に私たちの前に立ち塞がった。

 

「これはこれはアビドス生徒の諸君...お揃いでようこそ

それで、今回は何の用かな?」

「白々しいわよ、さっさとホシノ先輩を返しなさい!」

 

白々しい態度のカイザー理事にセリカがかみつくが...ニタニタと笑いながらカイザー理事も答える。

 

「何を言うか...小鳥遊ホシノは自分から進んで契約を結んでカイザーの元へ来たのだよ

それを返せだなんて...どういうことかな?」

「うるさい、そんなの認められないんだから!」

「はっはっは...!

威勢はいいが...これは事実だ!

それなのに小鳥遊ホシノを奪いに来るのだから...こちらとしては正当防衛として迎え撃つしかないな...?」

 

待ってましたとばかりにカイザー理事は言い放つ。

だけど...

 

"いや、確かにその契約は認められない"

「...誰だ、貴様」

"シャーレの先生だよ...

もう一度言うね、その契約は認められない...ホシノを返してもらうよ"

 

先生の名前を聞いて、カイザー理事が動きを止めた。

 

「そうか...シャーレか...

これは面倒だな」

「そうよ...私は正直わかんないけど、先生が言うには契約は認められないんだからさっさとホシノ先輩を返しなさいよ!」

 

だが、カイザー理事はまたも不敵に笑う。

 

「いいや...返せないな

......何故なら...今日、シャーレとアビドスの諸君はここに来なかった...これが今日の出来事なのだからな」

「な、なんですって!?」

 

カイザー理事はあくまでも徹底抗戦をする気だ。

だが、そんなことは分かっている。

不敵に笑うカイザー理事だが、次の瞬間、爆発音が響き渡った。

 

「なにごとだ!?」

「ゲヘナの風紀委員とトリニティの砲撃部隊が攻めてきました!」

「な...なにい!?」

 

それを聞いていた先生が笑っていた。

やはり、そうか...

手順は少々違ったが、元の世界通りにゲヘナとトリニティの協力も得られた。

 

「理事、どうしますか!?」

「おのれ...おかしいぞ...

なんなんだこれは...あまりにも出来すぎではないか!?」

 

そうだ...今回は私がいる。

出来る限りホシノ先輩を早くに救出するために動いていて、第三者には不気味に覚えるだろう。

 

「理事、ご指示を...ゲヘナ、トリニティ双方止まりません!」

「ええい、全軍半分に分かれて各個撃破せよ!

ここは少数でいい、こっちはたかが4人と戦えない大人一人だ!

この作戦の要はアビドスの連中だ...そこさえ潰せば我々に風が向くはずだ!」

 

意外にもテキパキとカイザー理事は指示を出して行く。

 

「案外冷静だね」

「やかましい...はらわた煮えくり返ってるわ!

だが、これくらいの逆境...何度でも乗り越えて今の地位を手に入れたのだよ!

それに...私にも最終兵器がある!」

 

そういうと、背後にあった巨大な兵器...ロボに乗り込んだ!

 

「さあ、この新型兵器、ゴリアテの威力を思い知るがいい!」

 

カイザー理事は意気揚々と宣戦布告をする。

だが、それくらい予想済みであり、攻略済みだ。

私の敵では無い。

 

"とりあえず、ここは焦らずにいこう

まずはノノミ..."

「ん、ここは私1人で十分...みんなは取り巻きをお願い

先生はみんなのサポートをして」

"ちょっ...シロコ!?"

 

みんなが私を止める声が聞こえるが無視してゴリアテに向かう。

みんなの言いたいことはわかるが私にはゴリアテとの戦闘経験がある。

これくらい、1人で倒せないと後々困る。

それに...一刻も早くホシノ先輩を救わないと...

 

「この...ちょこまかと!」

 

ゴリアテの周りを私は動き回り、翻弄する。

新型というだけあって理事も操作に慣れてない様子だ。

 

「ん、こっちだよ」

「この...大人をからかったらどうなるか徹底的に教える必要があるな!」

 

煽るように言葉をかける。

理事は目論見通りに怒っている。

 

「ええい、もはや全て吹き飛ばしてくれる!」

 

ついに我慢できなくなったのか、頭に付いてる巨大な砲台にエネルギーが集まっていく。

 

「シロコ先輩、大丈夫かしら...」

「心配ですねえ...焦ってるように見えますけど」

 

ノノミや後輩たちが心配する。

何故だろう...こんなに順調なのに...

 

「吹き飛べ!」

 

エネルギーが溜まりきり、発射される。

 

「待ってた!」

 

私は隠し持っていたホシノ先輩の盾を取り出し、それを防ぐ。

そして反動で動けなくなったゴリアテに近づく。

だがその瞬間、私の体は凄まじい衝撃とともに吹き飛ばされた。

 

"シロコ!?"

「はーはっはっは!

言ったろう、大人をからかったらどうなるか教えると!

おっと、こんなもんじゃすまないぞ?」

 

吹き飛ばされ、痛みで悲鳴をあげる体に鞭打って立ち上がる。

どういうことだ...私の知ってるゴリアテはこれで倒せるはずだが。

いや...どちらにせよ...私の勝ちはもう決まっている。

 

「どうした、今更怖気づいたか?」

「ん...私の勝ちを確信してた」

「なに?」

 

カイザー理事が不審に思った瞬間、ゴリアテが内部から爆発し始めた。

 

「なにい!?」

「さっきの砲撃の後にできた硬直の時間に砲台からたくさんグレネード投げ入れておいたよ」

「おのれ...こんなああああ!」

 

カイザー理事は断末魔を挙げながらゴリアテが爆発する。

...すこし入れすぎただろうか。

まあ...死にはしないだろう。

だが不思議だ...今までの出来事と差異はあれど...今より大きな差異はなかったはずだが...だが、今はいい

 

「終わったね...みんな、早くホシノ先輩のところに急ごう」

「待ってください、シロコちゃん!」

 

ノノミが私の腕を掴み、止める。

腕に鈍い痛みが走る...恐らく、ヒビが入ったのかもしれない。

ノノミは泣きそうな声だった。

 

「なに、ノノミ...もう障害物もないんだから早くホシノ先輩を助けに行こう」

「それでも...少しだけ...一呼吸だけでもいいので足を止めてください!」

 

意味が分からない...もう何も邪魔はないのになぜ休む必要があるのか。

 

「必死になるのはわかります...

けど、そうやって1人で突っ走って大けがまでして...私は見ていてすごく悲しいです

ホシノ先輩だってそうやって助けられても嬉しくないと思います!」

「でも...」

「シロコちゃんがそこまで必死になる理由がわかりません

私たちだってホシノ先輩は大事で、助けるのには必死ですが...シロコちゃんの気持ちは私たちの比較にならないのがわかります

それでも...私たちは仲間ですよ」

「わかってる...わかってるからはやく...」

「...少しは落ち着いて、後ろを見てください

戦いが始まってから...一度もちゃんと目が合ってませんよ」

 

そう...だったろうか...

逸る気持ちを抑え、振り返る。

たしかに...ノノミの言うとおりだった。

ずっと焦って、1人で突っ走っていた。

多分...みんなと一緒に戦っていたらこの怪我もなかったかもしれない。

あらためて振り返ると、泣いているノノミ、少し怒ってるセリカ、心配そうなアヤネ、それを見守っている先生がいた。

 

「ごめん...たしかにそうかも

この怪我の応急処置だけはして...終わったらみんなでホシノ先輩を迎えに行こう」

「はい...そうしましょう!

アヤネちゃん、手伝ってください」

「わ、わかりました」

「まったく...突っ走りすぎよ...」

"まあ...何はともあれ...お疲れ様"

 

応急処置も終わり、ゲヘナとトリニティもカイザーの軍勢を制圧したという話を聞いた。

これにてこの戦いは私達の勝ちだ

 

「それじゃ、迎えに行こうか」

「そうですねー」

 

カイザーの建物に入って、暗がりを進んでいく。

進んだ先にはホシノ先輩が縛られていた。

 

「すごいね...シロコちゃん...

まさかカイザーを退けて私を助けに来るなんて...」

「ん、頑張った...」

「そうだね...そんな怪我までして...」

「それくらい、ホシノ先輩が大事だから...」

「...私...間違えすぎたんだけどね

こうやって、私が犠牲になれば借金も改善するかと思ったんだけど...借金どころかアビドスを潰す気だったみたいだし...ほんと...私って...

それに私はシロコちゃんにだって...」

「間違いなんて、誰にでもある」

 

そう...誰にも...私も間違いだらけだった...

 

「大事なのは...間違った後だと思うよ

だから...帰ってきて、ホシノ先輩」

 

みんなも後ろで肯定する声が聞こえてくる。

先生は言いたいことを全て言われてしまったと呟いていた。

 

「シロコちゃん...みんな...」

「ほら、なにか言うことあるでしょ」

「...うへへ...ただいま、みんな」

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