カイザーとの出来事からまた少し日付が経つ。
その間、やはりいろいろなことが起きた。
なんでもない日常の数々や...エデン条約にかかわること。
無人島にも行ったりした。
事件はあれど...総じて私は再び青春をみんなと味わっていた。
そんなある日、私は偶然ホシノ先輩と出会い、お茶にすることにした。
お茶を飲みながら雑談する。
それだけですごく楽しい。
「そういえば最近のシロコちゃんはすごく楽しそうだよね」
そんなことをホシノ先輩は言い出した。
「楽しそうって...たしかに楽しいけど、改まって何?」
「昔はさ...そんなことなかったよ?
たしかに楽しんでるときもあるけど...それでも心ここにあらずって感じでさ
まあ、大方シロコちゃんが隠してることが関係してるんだろうなって想像はついたよ」
「ん...それは...」
「ああごめん...別に無理に聞こうとはしてないからね
その隠し事で別にアビドスを乗っ取るとかそういう類いじゃないってのはわかってるからさ
それにおじさんだって隠し事はあるからさ...
何がそこまでシロコちゃんを必死にさせるか気にはなるけど...追及はしないよ...」
「ん...ありがとう...」
「それと、先生と仲良さそうでおじさんも嬉しいよ」
別ベクトルから攻撃を受け、飲んでいたお茶を吹き出しそうになる。
「んぐっ...げほっ...なんのことかわからない」
「うへえ...わかりやすい...図星だねえ」
「......意味が分からない」
口元を拭う際、ホシノ先輩の顔を見るがニヤニヤしていた。
「なに...本当に何もないって」
「...おじさん仲いいとしか言ってないんだけど」
「......」
「先生のこと...好きなんでしょう」
「.......うるさい」
「青春だねえ」
ニヤニヤ笑うホシノ先輩を無視してお茶を飲み続ける。
「そういうホシノ先輩こそどうなの」
「うへ...おじさん?」
「そう...先生のこと、どう思ってる?」
「んー...嫌いじゃないよ?
でもシロコちゃんみたいに恋愛感情はないかなー...」
「一言余計」
「まあ...先生に限らず誰だって持たないかもね...」
「......まだ疑ってる?」
「...ちょっぴりね」
私の指摘に申し訳なさそうな顔でホシノ先輩は頷いた。
「何度も助けてもらってるのに...」
「わかってるよ...でもこれは長年の影響というかなんというか...」
実際、ホシノ先輩も何度も助けられている自覚はある。
だからいまだに信用しきれないことに罪悪感を持っているのだろう。
ホシノ先輩の過去を考えれば当然ではあるが...
少し悲しい気持ちになる。
「でも...信じきれてないのも事実だけど、先生のことはどの大人よりも信用してるのも事実だよ」
「ん...それもわかってる」
「だからおじさんにももう少し時間が欲しいかな...」
「ん...それもいいと思うよ」
「もし先生のこと好きになったらおじさん容赦なくいくよー」
「わ、私には関係ない...」
「えっ...じゃあおじさんが先生と付き合ってもいいの?」
「それはだめ!」
「...食い気味じゃん」
「あっ...」
なんてこともない恋バナ...ホシノ先輩としたのはいつ以来だろうか...
そもそも初めてな気もする。
ホシノ先輩も私も恋愛なんてするタイプではないし...
い、いや別に私だって先生のことは好きじゃない...
なんて考えているとホシノ先輩の携帯にアヤネから電話が来た。
『ホシノ先輩、今どこにいますか!?』
「今シロコちゃんと一緒にカフェでお茶してるけど...どうしたの!?」
『緊急事態です...ハイランダーの生徒が攻めてきました!』
「...ハイランダー?」
『はい...今日はたまたま先生も来てらっしゃったので対策を考えているところです
至急、シロコ先輩と一緒に来てください』
「わかった、すぐに行くね
...ってことだけど...シロコちゃん?」
ハイランダーといえば...列車砲の事件だろうか...
それにしては早すぎる...
プレナパテス...は私と先生なので襲撃がないのは当然なの考えないでもいいが...
それにしたって時期が早すぎる...これはいったいどういうことだろうか?
「...ちゃん...シロコちゃん!」
「あっ...どうしたの、ホシノ先輩」
「どうしたのってこっちのセリフだよ...ぼーっとしちゃって...」
「あっごめん...」
ハイランダーの襲撃...それ自体は元の世界でもあった。
だが、それはもう一カ月くらいは先の話だ
そもそもあれは契約の日付もかかわってきたはずなのだが...
考えれば考えるほど不自然なことが出てくる。
だが正直、今何を考えたところで何か答えが出るわけでも対策もできない。
起きたことは事実、それならしっかり動かないといけない。
「急ごう...いくら先生がいてもさすがに私たちがいないと人数も少ないしきついと思う」
「そうだね...
まったく...せっかく平和になってきたのにねー」
会計を済ませて店を出る。
「あれ、天気もよくないね」
「...今日は快晴だったはずなんだけど」
「そうだよね...
......なんか、嫌な予感がするね」
「ん...やめよう、縁起でもないし」
ホシノ先輩のいう通り、空模様が怪しい。
まるでこの先を暗示しているような...
いや、気にしすぎだろう。
今は急がないと...
ホシノ先輩と一緒にアビドスに戻る。
何かが崩れ始めた気がしながらも...
結局、アビドスに戻ってからの展開は元の世界と特に変わらなかった。
いや...一点だけあった。
契約の日付が変わっていた。
もしかして私の行動が歴史を変えた?
私が...崩壊を早めている?
いや、この考えをやめよう。
でなければ結局答えは何も変えられないということになる。
それでは今までの行動は無駄になるし...それに...
私はまたみんなの死を見届けないといけないのか...?
"シロコ、大丈夫?"
「うわ...先生!?」
"なにか困った顔してるけど..."
「ん...今日のことについて考えてた...」
"突然でびっくりしたね...でも大丈夫だよ、今回も何とかなるよ"
「...そうだね」
話してて思い出した。
そうだ...次の事件はシャーレの爆破だ!
先生のこともだが...先生さえいればホシノ先輩の今後の暴走も止められるはずだ。
「先生、しばらく私の家に泊まって」
"えっ...ええ...!?"
「理由は...説明できない
けどこれは大事なこと...お願いだからせめて総会が終わるまでは私の家に止まって!」
"...わかった...すごい真剣なのは伝わったよ...とりあえず今から荷物だけ取りに行くから先に帰ってて?"
「ん、わかった」
今のタイミングで思い出せてよかった。
これで先生はシャーレが爆破されても平気だ。
「じゃあ私、買い物をして帰るね...今日はご馳走にするから」
"おっ...じゃあ期待して待ってるね"
「うん...あっシャーレ出たら連絡して、私もそっちに行くから」
"わかった、それじゃ後でね"
先生と別れて私はスーパーに向かう。
料理に関しては特に得意というわけではないが...それでもできる限り美味しいものを作ろう。
そう思っているといつの間にか籠はパンパンになっていた。
正直、浮かれているのが分かった。
まだ確定したわけではないがこれで先生の死は回避できるはずだ。
そんなの...嬉しくないわけがない。
だから足取りが軽やかでスーパーを巡る。
ふと、一つのコーナーで足が止まる。
夜の営みで使うものがひっそりとおかれていた。
いやまて...それが目的なわけじゃない...だからこれは買うべきではない...
雑念を消して買い物を進める。
......あれは念のため買うことにした。
「先生...遅いな...」
買い物を終えて家に帰るが不思議と先生からの連絡がこない。
約束を忘れて今こっちに来ているのだろうか...?
心配になってくるが、電話がなった。
「......もしもし、どうしたの...アヤネ」
「大変です、シロコ先輩!」
「どうしたの...慌てすぎ、少し落ち着いて...」
「シャーレが何者かによって爆発されました!
先生も爆発に巻き込まれて現在意識不明です...!」
「...えっ?」
アヤネの連絡に思わずスマホを落としてしまった。
「もしもし、シロコ先輩!?」
「ご、ごめん...スマホ落とした...
それで先生は!?」
「先ほども言いましたが、今は意識不明です...
体への傷がひどいようです...」
「今からそっちに行く...病院の場所送って...」
「わかりました...」
なぜだ...なぜこうなった...
先生を助けるために頑張ってきたはずだ...
先手だって打った...だが、歴史は私の世界とは違う進み方をしている。
ハイランダーの襲撃もそうだが、シャーレの襲撃が早すぎる。
まるで私の先回りに先回りをされている気がする...
考えがまとまらないが気づいたら病院についていた。
病室にはすでにアヤネとセリカ、ホシノ先輩がいた。
「シロコ先輩!」
アヤネに声をかけられたがなんて返事をしたかわからない。
先生の姿は...ひどいものだった。
もろに爆発の影響を受けて死んでないのが不思議だった。
「先生...ごめん...私がもっと」
思わず先生の前に崩れ落ちて嘆く。
だが...一つ気が付いた。
「......そういえば、ノノミは?」
そう、ノノミがいないのだ。
「ノノミ先輩ですか?
連絡がつかないんです...もう寝てるのでしょうか...」
「なんでもっと焦らないの!?
先生がこんな状況なのに...せめて家に行くとか...」
「アヤネちゃんに当たってもしょうがないよ、シロコちゃん
こんな状況だからこそじゃない?
冷静な判断を出来てないんだよ」
「そういうホシノ先輩は何でそんなに」
「私だって冷静じゃないよ...現に今シロコちゃんに言われるまでわかってなかった」
「......ごめん...でも、今すぐにノノミに合わないと...」
そうだ...先生のことで抜けてしまっていたがノノミはほぼ同時期で誘拐されるはずだ。
起きてしまったことは仕方ない。
だが、まだすべてが終わったわけじゃない。
ノノミの誘拐が防げればきっとまだ挽回できるはずだ。
「ホシノ先輩、ついてきて...ノノミの家に向かう」
「...まって、シロコちゃん
ノノミちゃんの家に行く、それはいいんだけど...何をそんなに焦ってるの...?」
「......詳しくは話せない...けど、たぶんノノミが危ない」
「...わかった、行こう」
ホシノ先輩はそれだけで信じてくれたようだった。
「急ごう、たぶんそこまでもう時間がないかも」
先生を一瞥して病室を出る。
仕方ないとはいえ、冷静に頭が回るなのが自分でも嫌だった。
「ノノミ、いる!?」
「ノノミちゃーん?」
ノノミの家について声をかけるが返事がない。
同じくホシノ先輩も声をかけるが返事がない。
私は扉を蹴破ってノノミの家に入る。
「ちょっ...シロコちゃん!?」
私の強硬にホシノ先輩は驚くが無視して部屋に入るがやはりノノミは家にいなかった。
「...遅かったか」
「ノノミちゃん、こんな時間になんでいないんだろう」
「ノノミは...たぶん誘拐された...」
「...どういうこと?」
ホシノ先輩の表情が変わる。
「探しに行かないと...けどどこを...」
ノノミが連れ去られたのはどこだろうか。
相手はネフティスなので実家だろうか。
考え事をしていると強い衝撃とともにホシノ先輩によって壁に叩きつけられた。
「いい加減にしてシロコちゃん!
ノノミちゃんが誘拐されたってどういうことなの!?」
鬼気迫る表情で私に詰め寄る。
ああそうだ...ホシノ先輩にとってユメ先輩を失ってから支えてくれた存在なのだ。
だからこうも必死になるのだろう...少しでも手がかりを持ってそうな私に対して...
なんて説明したものか...
「今日来てた大人たちは一枚岩じゃない...それぞれの思惑がある...
ネフティスもそう...ネフティスの復興を考えてノノミを誘拐して、少しでも自分たちの有利な方に持っていきたいんだと思う
たぶん明日...連絡が来る」
「なんでそんなことがわかるの...」
「.......ごめん、先生のことで手がいっぱいになってた
私がしっかりしてれば防げたはずなのに」
「質問の答えになってないよ!
どうしてシロコちゃんはそんなこと知ってて、黙ってたの!」
「理由は言えない」
「どうして!」
「アビドスの...みんなのためだから!」
「......」
私の言葉にホシノ先輩は力を緩めて私を離す。
「ホシノ先輩...これからネフティスに行ってみようと思う
詳しい場所はわからないけどきっとノノミもそこにいると思う...
一応明日の総会には出てくるはずなんだけど、先手を打つ」
「...それはやめておきな
なんだかんだ、あそこはノノミちゃんの家なんだし...誘拐じゃないって世間的にはごまかされるかもしれない
そしたら私たちは不法侵入者になる」
「...明日まで待つの?
でもそれだと...」
「シロコちゃんは先に帰ってな...」
「...アビドスから抜けて一人で行く気?」
「やっぱりわかるんだね...」
「そんなこと、させない...」
やはり、これは想像通りの結果だ。
アビドスを抜けて一人でノノミを助け...私たちだけで総会に出席させる気だ。
「...また、止めに来る気?」
「ん、当たり前...その道はだめだよ、ホシノ先輩」
お互い睨みあう。
同時にどうしてこうなるのかとも考える。
私はみんなを守りたい。
ホシノ先輩もそれは同じだ。
同じ想いなのに私たちはぶつかる。
「わかった...じゃあ明日総会より前の時間にアビドスに来なよ」
「えっ...?」
「私だって準備があるし...そっちだって必要でしょ?
それなら...少し時間おいて万全な状態でやろうか」
「...ん、わかった」
「私は先に帰るよ...準備のためにも」
「...じゃあ私も」
そういうとホシノ先輩は私の横を通り過ぎて先に一人で帰り始める。
その際、何か言われた気がしたが聞き取れなかった。
また...なにも変えられずにこの状態になってしまった...
けれど、仕方ない。
それに私は...この時のために強くなってきたのだ。
今回はホシノ先輩を止めて見せる。
私も帰って準備を進めよう。
その前に...もう一度先生の顔を見に行こう...
ああ...そうだ...二人にも、声をかけよう。