「ホシノ先輩...どこよ」
砂漠を行く中、疲れた声でセリカは文句を言う。
アヤネは文句を言わな...いや、あれは言わないじゃなくて言えないだ。
「少し休憩しよう...」
「シロコ先輩、私はまだ...」
「ん...焦ったところでいい結果は生まれない
この後ホシノ先輩と戦うわけだし...」
「すみません...」
「気にしないでいい...限界なのはアヤネだけじゃないし」
私は少し離れて水分補給をする。
「シロコちゃん」
ノノミが私の隣に座ってきた。
「この先、どうなっちゃうんですかね
ホシノ先輩、本当にこのままアビドスを...」
「...大丈夫、そんなことはないし、させない」
不安がるノノミを元気づけるために声をかける。
もっとも...ホシノ先輩はアビドスを去る前に...いや、これはやめておこう
「シロコちゃんはこの先、どうなるかわかってるんですか?」
「......わからない」
その答えに嘘をついた。
だが、これを嘘にしないようにしないと。
休憩も終えて私たちは再び走り出す。
そして生徒会の谷へと近づいていた。
「シロコちゃん!」
「わかってる...戦ってるね...」
銃声が聞こえる。
ハイランダーのスオウとホシノ先輩が戦っているだろう。
もっとも...この戦いでホシノ先輩が負けることはない。
それくらい2人には実力差があるのは知っている。
少しでもホシノ先輩が体力を消費してくれないかと淡い期待を抱く。
「いたわ!」
セリカが声をあげるとホシノ先輩とスオウがいた。
決着はもう着いたようでスオウは膝をついていて、ホシノ先輩はそれを見下ろしていた。
「ホシノ先輩!」
「......追いつかれちゃったか」
「もうやめよう...ホシノ先輩...」
「ここまで来たのに今更止められないよ
それに...私は....」
「大丈夫、まだ引き返せる...だから」
「...引き返さない...アビドスを...みんなを守るために」
自分の中で苛立ちを覚えるのを感じた。
「この...ホシノ先輩のわからず屋!」
私は...銃を構える。
「...何考えてるの、シロコちゃん」
「ん、バカな先輩を連れ戻す方法!」
「そういう事じゃなくてさ...」
ホシノ先輩が困惑するのもわかる。
私達は痛いほどホシノ先輩の強さを叩きつけられた。
様々な作戦をとり、試行錯誤を繰り返してもその全てが届かない。
そんな私が取った行動は...ただの突撃だった。
作戦もなにもない、馬鹿正直な一点突破。
「作戦とかなにもないの?」
「ない...そんなの考えたところで無駄ってのが結論
だったら...真正面から全てを叩き込む」
「随分...舐められたものだね...
そんなやけっぱち、私には届かないよ!」
ホシノ先輩のいう通り、私の攻撃はいなされ、反撃を叩き込まれる。
「やあああああ!」
「...ノノミちゃん!?」
だが、私に気を取られていたのかノノミの攻撃には少し反応が遅れていた。
「私だっているわよ、ホシノ先輩!」
「セリカちゃん...!」
2人に挟まれながらもホシノ先輩は的確に攻撃を捌いていた。
「まだまだ!」
「くっ...!」
さらに私が体勢を整えて突撃する。
ホシノ先輩は私が参戦しても攻撃を捌いていた。
流石だと思いつつも、その表情には余裕が見えない。
「ホシノ先輩!」
「あ、アヤネちゃん!?」
ホシノ先輩が驚いた声をあげる。
それもそうだ...普段戦闘に参加しないアヤネまで銃を持ってホシノ先輩に突撃するのだ。
「ホシノ先輩、いい加減にしてよ!」
セリカがホシノ先輩に声を荒げる。
「いつまでも意地を張らないでください、ホシノ先輩!」
ノノミがホシノ先輩をつかむ。
「ホシノ先輩!」
アヤネがホシノ先輩の諭そうとする。
「帰ってきて、ホシノ先輩!」
私がその手を掴む。
「.......うああああああ!」
だが、ホシノ先輩は雄たけびを上げて私たちを吹き飛ばしながら正確に全員の急所を狙い撃つ。
一瞬静寂...そこにはホシノ先輩が立っているだけだった。
「はあ...はあ...」
戦いの結果は火を見るよりも明らかだった。
私たちの思いはすべて拒絶されて、ホシノ先輩は独りだった。
「ごめんね...みんな...
みんなを傷つけてるのはわかる...けど、あれは存在しちゃいけないんだよ
だから、私は私を犠牲にしてでも...みんなを守る...それは譲れない」
そう言い放つホシノ先輩は...辛そうだった。
「ほし...の...先輩...」
「ほんと...シロコちゃんには何度も驚かされるよ...
なんどひやりとしたことか...こりゃ、本格的に抜かされるね
けど、それは今じゃない...
私が去ったあと...みんなを守るために私なんか超えてよね」
ホシノ先輩は振り返って列車砲へ向かう。
私たちを見ないようにしながら。
けれど。
「どこに行くの...ホシノ先輩
私は...まだ立っているよ」
私は立ち上がり、ホシノ先輩をにらみつける。
「おかしいな...もう立てないはずなのに」
「立つよ...何度でも...ホシノ先輩を止めるために」
ホシノ先輩は呆れたような顔をしていた。
「うおおおおおお!」
私は雄たけびを上げながら突撃する。
「それはさっきも見たよ」
そんな攻撃はホシノ先輩は軽くいなし、お返しに私の額に銃を放った。
少し額が割れ、血があふれたけれど...それがなんだ...
「ホシノ先輩...」
構わず私は突撃し、被弾覚悟でホシノ先輩に突っ込む。
無理な突撃でホシノ先輩に銃弾を浴びせることに成功した。
だが、ホシノ先輩はその何倍も私に銃弾を浴びせる。
「ホシノ先輩...」
ホシノ先輩は泣きそうな顔をしていた。
その顔を見たところで足は止まらない。
いや...そんな顔を見たからこそ、止まれない...ホシノ先輩は...絶対に一人にしない...
「ホシノ先輩!」
再度、ホシノ先輩に手を伸ばす。
瞬間、ホシノ先輩の動きが止まり、力を抜いたのが見えた。
「頑固だな...シロコちゃんは...
...私の負けだよ」
脱力したホシノ先輩は私の銃弾に吹き飛ばされた。
「えっ...」
目の前の光景が信じられなかった。
ホシノ先輩が私の銃弾によって倒れていた。
「ホシノ先輩」
「...私の負けだよ...シロコちゃん...みんな」
倒れたまま、ホシノ先輩はそう呟いた。
「負けって...」
「負けは負け...みんなの熱意が凄すぎてさ...もう、無視するのも辛くなってさ」
「じゃあ...もう...」
「もう...1人ではいかないよ
列車砲をどうにかしたいんだけど...みんな、力を貸してくれる?」
その言葉を聞いて私は泣いていた。
「ちょっとシロコちゃん...なんで泣いてるのさ...」
「だって...だって...」
言葉を紡げなかったが...嬉しい気持ちがこみあげてきた。
「行こう、ホシノ先輩...みんなで一緒に」
私はホシノ先輩に手を差し出す。
ホシノ先輩はその手を取ろうとする。
けれど...
「勝負はまだついてないぞ、小鳥遊ホシノ!」
慌てて後ろを振り向くと列車砲が起動していた。
そして列車砲にはスオウが乗っていた。
「なっ...!?」
「...あれは」
「小鳥遊ホシノ、列車砲を止めたければ私を追ってこい!」
スオウはそのまま列車砲に乗って去っていく。
ホシノ先輩は武器を手に取って立ち上がる
「ホシノ先輩...!」
私は慌ててその手を取るが...
ホシノ先輩は辛そうな顔で私を見て...
「ごめん...シロコちゃん...」
銃で私を撃ち抜いて吹き飛ばし...1人列車に乗って行ってしまった。
呆然としてしまう。
まただ...
また、この展開だ。
差異はあれど変わっていない。
また、ホシノ先輩は行ってしまう。
「シロコちゃん!」
ノノミが慌てて私のもとに来る。
「ありがとう、ノノミ
それより急いで追わないと」
泣き言は言ってられない。
私たちも慌てて追跡を開始する。
「けど、これホシノ先輩に追いついてどうするの?
今だって止められないわけだし」
「そうですね...せめてホシノ先輩並みに強い人がいないと戦いにならないのが...」
「ホシノ先輩と戦えるほど強い人...」
ダメなことではあるが、色彩の力を得た私ならおそらく該当するだろう。
だがそんな力は使ってはいけないし使えない...
そういえば先生は...この世界ではどうやってホシノ先輩に追いついたのだろう。
時間が空いて忘れている...そう思っていると電話が来た。
知らない番号だった。
「...もしもし?」
「砂狼シロコの電話であってるかしら...」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
この声は確か...
「...この声...ゲヘナ風紀委員会の空碕ヒナ!?」
私の声に全員が驚いた声を上げる。
「なんで私に...」
「昨日先生から依頼があったのよ...
こっちもいろいろ立て込んでて連絡が遅れて悪かったわね
大体の状況はわかってるわ...小鳥遊ホシノを止めるんでしょ?
先生から依頼されたわ...あとは私にまかせて」
「待って!」
電話を切られそうになって慌てて止める。
「なに...そろそろ小鳥遊ホシノと会うんだけど...」
「私たちが合流するまで時間稼ぎに徹して」
「無理よ」
私の頼みはきっぱりと断られた。
「あなただって小鳥遊ホシノの力は知ってるでしょ
そんな相手、いくら手負いとはいえ私だって脅威よ
そんな相手に手を抜いたらこっちが負けるわ
だから...自分たちで何とかしたいって思ってるあなたたちには悪いけど小鳥遊ホシノは私が倒すわ」
「ちが...そういうことじゃ...」
「それが嫌なら急いで合流することね」
そういうと通話が切られてしまった。
「ノノミ、急いで!」
「し、シロコちゃん!?
わかりました」
だめだ...この展開、思い出してきたがどんどん私が知ってる通りの展開になっている。
このままでは...ホシノ先輩は...いや、焦っても仕方がない。
焦りつつも私たちはホシノ先輩を追う。
列車を乗り継ぎ、砂漠を走って列車砲を追うと...ホシノ先輩と空碕ヒナの姿が見えた。
ホシノ先輩は跪いて、空碕ヒナはホシノ先輩に銃を向けていた。
「間に合った...?」
そう思った瞬間、爆発が起きた。