マギアレコード A world rewound 巻き戻された世界 作:ジャックノルテ
□2 神浜市内 新西区 調整屋 夜
調整屋に設置されたベッドの上で横になっている桐野紗枝。
その脇に調整屋である八雲みたまが紗枝の様子を見ていた。
隣の部屋には観鳥令と常盤ななか、都ひなの、髪を短髪にした七海やちよが集まっていた。
ひなのからの報告を受けて神浜市の各地区のリーダー格の魔法少女が急遽、臨時会合の為に調整屋に集まっていた。
東のリーダーである和泉十七夜はバイトが抜けられない為に今回は観鳥令が代理として出席していた。
エミリーもひなのに促されて帰宅させられていた。
夜であるため、水波レナと秋野かえでも帰宅した後だった。
七海やちよ「あなたが見たのは確かにドッペルだったのね?」
ひなの「ああ。間違いなくドッペルだった」
観鳥さん「ひなのさんが言うなら確かだよ。ひなのさんは前に知り合いの魔法少女がドッペルを発動したのを目撃しているからね」
マギウスの翼の白羽根だった観鳥さんはかつてドッペルを暴走させた春名このみをひなのとエミリーの目の前で回収した事があった。
常盤ななか「ドッペルシステムは無くなったと聞いていますが?」
既に各地区のリーダー格の魔法少女には調整屋でマギウスの翼に関する説明会が行われており事前の知識を得ていた。
やちよ「それは確かな筈よ。アリナ・グレイとの最後の戦いの後、神浜市内で誰もドッペルを発動していないわ。でも・・・・・。ここ数日は違っていたわ」
常盤ななか「はい。私の方でもドッペルを発動したと言う噂話を何件か聞いています」
ひなの「アタシも聞いてはいた。流石に半信半疑だったがこの目で目撃したからな」
観鳥さん「もしドッペルが発動できるなら・・・・・・。魔女にならずに済んだ子もいる筈ですよ」
観鳥さんの言葉に一同は押し黙る。
ここ数日において神浜市内から自動浄化システムが消滅した事は調整屋を通して市内の魔法少女に発表がされた。
ドッペルの事を知っている者も知らなかった者にも魔女化を防いでいたドッペルシステムが無くなった事は大きな衝撃を与えていた。
直近においてドッペルシステムを作っていたマギウスの翼と言う組織が自動浄化システムを広げる為に神浜市を犠牲にしようとした事なども元羽根の魔法少女から漏れていた。
その事が原因となり元羽根の魔法少女に魔女化を防ぐドッペルシステムが無くなった事を攻める動きが起きていた。
観鳥さん「観鳥さんが把握しているだけでも既に5人は魔女化してしまった・・・・・。それに一人、行方不明者も出ていますね」
やちよ「ええ。だからこそ神浜マギアユニオンの結成とリーダー格である私達の方からも説明会をしなければならないわ」
ひなの「ああ。だがこの情報はどうする?余計に混乱を招くだけだと思うが」
常盤ななか「ですが話さないのは更なる悪手だと思います。私は都さんが話した宝石の仮面を付けた魔法少女が気になります」
やちよ「ドッペルが出現した場所に居合わせたのも偶然とは思えないわ。まるでドッペルを吸収する事を狙っていた様に思えるわ」
そこへ紗枝の治療を終えたみたまが部屋に移動して来る。
みたま「終わったわぁ~。魔力の痕跡からして確かに紗枝ちゃんはドッペルを発動したみたいね~」
やちよ「確かなのね?」
みたま「ええ。それに隣の部屋から話は聞いていたわぁ~。その宝石を付けていた魔法少女の事だけど~。心当たりがあるわぁ~」
常盤ななか「どういう事ですか?」
みたま「その魔法少女と思われる相手は大きな宝石の付いた仮面をしていたのよね~?」
ひなの「そうだ!ただ本当に魔法少女なのかどうかは私にも分からないが・・・・・」
みたま「その宝石が私の知っている物と同じならドッペルが出現した事にも説明が付くわぁ」
観鳥さん「どういう事なのかな?」
みたま「マギウスのお三方はかつて神浜市にのみ展開している自動浄化システムを神浜市外に広げる実験の為にエンブリオ・イブの一部を使って実験をしていたわ」
やちよ「一部!?まさかその一部って宝石状じゃ」
みたま「そのまさかよ。確か宝石をあしらったブレスレットだと聞いているわ。仮面では無かったわねぇ。ただその時は実験が上手く行かなかったからそこで実験を打ち切ったと聞いていたわぁ」
ひなの「もしかして実験が実は成功していたと言う事か?」
みたま「確かにマギウスが私に全ては話していたとは限らないわぁ。でもエンブリオ・イブの一部を使用しているのなら大本が無くなったのに消滅していないのはおかしな話よぉ。でもね・・・・・。一つだけ仮説があるの」
常盤ななか「どんな仮説ですか?」
みたま「エンブリオ・イブは半魔女だった。半分とは言え魔女である事に変わりない。そしてエンブリオ・イブの一部を利用したブレスレットは魔女から分裂した使い魔の様な物だとしたら?」
観鳥さん「そうか。それなら話の筋が通る」
みたま「恐らく宝石の仮面を付けた魔法少女はエンブリオ・イブの一部に操られているんじゃないかしら?」
やちよ「使い魔だとすると目的が絞れるわね」
みたま「ええ。ドッペルを吸収したのは極度に圧縮し純度の高い感情エネルギーと穢れを効率的に収集するため」
ひなの「何の為にエネルギーの収集を?」
みたま「使い魔の様な物なら親である魔女の様になる為。完全に同一では無いけどエンブリオ・イブへ戻ろうとしているんじゃないかしら?」
全員「!!」
やちよ「確かにエンブリオ・イブが魔女と仮定すれば、その一部は使い魔と言えるかも知れないわ」
常盤ななか「厄介ですね。その宝石を付けた魔法少女が使い魔に取り付かれているとして・・・・・」
ひなの「その使い魔が成長すればエンブリオ・イブになってしまう」
観鳥さん「でも自動浄化システムを復活させる為の手掛かりでもある」
やちよ「いずれにしても来週行う神浜マギアユニオン発足に関する説明会で他の魔法少女にも説明をしましょう。これは神浜の魔法少女全体に関わる問題だわ」
みたま「調整屋さんも・・・・・。忙しくなりそうね」
それから暫くの後に治療中の桐野紗枝を置いて他の魔法少女達は帰宅した。
みたま「もう出て来て良いわよぉ~」
みたまの声に応じてドアを開いたが、まるで風で開いたかのように人の姿は無かった。
みたま「姿を見せても大丈夫よぉ~」
まばゆ「そうでしたね」
そう言って黄色いローブを纏った愛生まばゆは姿を見せた。
光学迷彩魔法でまばゆは姿を隠していたのだ。
みたま「やちよさん達には他にも治療中の子がいると言っていたから気付かれていないわよぉ~」
まばゆ「・・・・・・。話は聞いてました。自動浄化システム。復活するんですか?」
みたま「それは何とも言えないわね~。せめてその宝石を入手出来れば手掛かりになるかも知れないわぁ~」
まばゆ「・・・・・・・」
みたまの言葉を聞いてもまばゆの表情は晴れないがみたまはその理由を悟っていた。
みたま「あの事はあなたのせいじゃないわ」
まばゆ「でも・・・・・。私がもっと速く戻っていれば・・・・・」
みたま「過去は変えられないわ。それはわたし達、魔法少女が契約を行った後で最も思い知らせれている事の筈よ」
まばゆ「そうでした・・・・・。そうなんですよね・・・・・」