一つの人影が、静かに進む。
しかし、違和感がある。あまりにも、ソレは静かすぎるのである。何故か?簡単だ。
……その人影には、足が無かった。本来足が伸びているべき、その端がボロボロになってしまっている黒のロングコートの下には、何も無かった。
人として生きているのならば立てられるべき物音も一つとして無く、まるでそこには何も、誰も居ないかのように、ソレはただ進む。
その両腕には、少女だったモノが抱えられている。カラフルな毛先に白髪で、ポップな柄の服装。常にその虹彩異色症の瞳をキラキラ輝かせ、鼻歌混じりに、間延びした喋り方をする、絵描きの少女。だったモノ。
その胸元には一つの穴があり、その周りと、その後ろ側や髪は、べっとりと鮮やかな赤色で彩られて。その眼は、二度として開かれる事は、きっとない。
ソレは、両腕にそれを。他の二本は、まるでそこに何か大事なものが乗せられているように、受け皿の形で。更に他の三本は何かを持っており、残る一本でそっと扉を開け、進んで行く。そうして、何も居ない道を行き、玄関ホールに辿り着いた。
大きく開け、幅高さ共に十メートルはあろうそのホールでソレは───徐ろに宙に浮かんでいった。その様は、霊が天に昇るようにも、天使が空へ帰るようにも見えた。
そうして天井に到達すると。ソレは空いた一本を伸ばした。すると、シャンデリアの光も届かぬその一角が、開いたのだ。
そして開け切ると、ソレはその空間へ入りその戸を閉じた。
暗闇に掻き消え、白昼夢だったかのように、そこには何も残っていなかった。
打って変わってソレの入った屋根裏部屋。そこはこじんまりとした、しかしキッチンダイニングは整っている、とても生活感のある部屋だった。
その部屋をソレは素通りし、唯一見える扉を開ける。そこは、いくつものベッドが並べられた物々しい空間が広がっていた。
どうやら、ソレには寝かせる場所にこだわりを持っているようだ。ベッドは沢山あるにも関わらず、それらを無視してその内の一つ目指して向かう。
そして目的と思しきベッドへ着いた後、優しく置いた。
それからソレは確かに頷いて、何かを持った三本の内の一本を器用に動かして準備を始めた。受け皿としている二本を除いた六本を動かし針と糸と何かを取り出して、ちくちく、ちくちくと、次は作業を始めた。
ソレは、一心不乱に、その六本を忙しなく動かす。
部屋に音は一つ。
ソレと、ベッドを一つ挟んで後ろのベッドで寝かされている、黒髪の少女の心音だけであった。
製品版楽しみだね。
BAD END全部一応見てみたけど
やっぱ運営人の心ないよ。