星見雅のクソデカ感情強火限界厄介オタク 作:湿度百倍!クソデカ感情!
「漸く会えたなァッ……!!」
「むっ?」
俺が、あの日星見雅と言う女に完敗した日から数週間。俺はとあるホロウ中で、彼女と再び相まみえることが出来た。
それまでの間に、俺は星見雅について調べ上げた。何でも、名高い武術一家の跡取りで期待のニューホープとして注目されている人物らしい。
まぁ、付随する賞賛は立場なんて物は俺にとってはどうでも良くて……俺が見ていたのはアイツの力だ。
これは、ただ動きが速いだの刀の出来だのと、そんな話をしている訳ではない。
星見雅……アイツの刀には、切っ先には、俺にはないものが合った。
積み上げてきた物、受け継いできた意志、彼女自身の意地、譲れない思い、悲しさも醜さも一緒くたに力へ変えた……一言で表すならば『信念』がアイツの刀にはあった。
反対に俺はどうだ?
俺の剣には何もない。
仰々しい力や魔剣なんて歯の浮いた二つ名はあれど、あるのはそれだけだ。
かつて旧都が崩壊しホロウに飲まれたあの日……俺はこの魔剣をエーテリアスと成りかけていた亡骸から手に入れた。ただ、俺を追いかけてくるエーテリアスと戦う力が欲しくて。
恐らくは、その骸は元は俺と同じホロウレイダーだったのだろうが……俺は何も知らない。この魔剣の過去も前の持ち主のことも、その前の持ち主のことも、何も知らない。何も受け継いじゃ居ないのだ。
俺の振るう剣にあるのは、蓄積も、意志も、悲しさも、醜さもない。ただ『負けたくない』って意地一つだけ。それが悔しくて堪らなくて……そのある種の嫉妬が俺の星見雅への勝利欲を底上げしていった。
そこからの俺の行動は、面倒くさがり屋にしては随分なものだったと思う。星見雅について、自分やインターノットの知り合いに調べてもらったり。
このホロウに来たのはただの偶然。きっと、星見雅がこのホロウに来たのも偶然なのだろう。偶然で2回も環境の変化を続けるホロウ内部で出会えるとは。
俺は占いの類が大っきらいだが、どうにもこんな偶然の重なり方には、センチメンタリズムな運命を感じずには居られない。神も信じちゃいないが、これは、剣を交えろって言う神からのお告げなんじゃないかとも思える。
「お前は…………」
「ははっ、俺みたいなゴロツキ覚えてる訳がねぇよな。いいんだよ、それで良いんだ。」
「……いや、覚えているとも。」
「気を使うなよ、ほぼ初対面みたいなもんだ。だが、そんなのは関係ねぇ……星見雅。俺はテメェに喧嘩を売りに来た。」
「話を聞かないな……覚えていると言っている。ホロウの内部で私の刃を手掴みで退けた者など、そうそう忘れるものか。」
どうやら、気遣いとかではなく本気で覚えていたらしい。俺は剣を抜いて星見雅へと向けた。
「そうかよ……だが、今はそんな事どうだっていい」
「発言が矛盾を尽くしているぞ。」
「星見雅ィ……俺はこの日を待っていたァ!」
「話を聞かないか。」
この時の俺は、相当にテンションが上がっていて……誤解を恐れない言い方をするなら、ハイになっていた。まぁ、それだけ俺の魂に火をつけた相手って事だ。
「お前流に行ってやるよ!いざ、尋常に勝負ってなァッ!」
……だが、そこで俺はあることに気づいた。
星見雅の後ろ……その瓦礫の陰に怯えながら隠れる人影が二つ。一人はまだ幼い少女で、もう一人はその母親らしい女性だった。
「お前……後ろのは誰だ?知り合いか?」
「いや、このホロウに迷いかねた一般人だ。」
「へぇ……一般人ねぇ。」
俺はスタスタと歩き星見雅の横を通り抜けて、恐れる彼女達を見る。
「ひっ……」
「……。」
母親か……俺にゃあそんなのは物心付いた時から居なかったな。なんて事を思ってしまう。生まれた時から独りで、奪う奪われるの人生を過ごしてきた。
親って存在自体、両手の指で数える程度しか見たことがない。それだけ、俺は荒み果てた世界で生きてきた。自分の身は自分で守るしかない、そんな世界で。
そんな物珍しい親って存在をまじまじとなんの気無しに眺めていると、後ろから星見雅の鋭い声が響く。
「おい。」
俺がその言葉に後ろを振り向くと、星見雅は既に抜刀寸前の構えを取っていた。その殺気は尋常ではない、立っているだけで仰け反りそうになるほどのものだ。
「何を考えているのかは検討つかずだが……もしも、彼女らに危害を加えるつもりなのならば……」
星見雅はそう言って腰に携えた刀を抜く。
……まさか、コイツは俺が人質とって何かするとでも思っているのか?だとするなら……
「舐めんな。」
思っていた言葉が思わず口に出てしまう。
すると、星見雅の表情が少し動く。
「何?」
「俺はただお前と戦うのに一般人が邪魔だって思ってるだけだ。危害どころか興味もねぇ。早くどっかに連れてけよ。んで戻って戦え。」
俺がそう言うと、彼女は更に驚いた表情を見せた……なんでだよ。
「まさか一般人がいる状態で戦おうってのか?」
「いや、そう言う訳ではない……が。」
「いいか、テメェと俺との闘いにゃ余計な楔は必要ねぇ。一般人が邪魔で戦えねぇだの、一般人護りながら戦って負けただの、そんなクソみてぇな言い訳は必要ねぇ。」
白熱する俺は拳を握りしめながら言った。
「一対一。なんのしがらみも無くお前を倒す。でなきゃ、お前と戦う意味がねぇ!」
俺はただお前に勝ちたい訳じゃない。完全完璧、楔も何もない状態……完全なフリーな状態でお前と闘いたいんだ。
「わかったらそこの親子さっさとホロウの外にでも出してこい!んで戻ってこい!キャロットは持ってんだろ?」
「あぁ、持っていた。」
だったら早く出て親子逃がして俺と戦え!まぁ、流石にキャロット持たずにホロウに入るなんて自殺行為はしてねぇだろうからな……
……んっ?持っていた?
「……なんで過去形なんだよ。」
「実は、先程エーテリアスと接敵していてな。」
「おう。」
「相手こそ野花を摘むような容易い相手だったのだが……」
「おう……おん?」
ちょっと何言ってるのか分かんなかったが……まぁ弱かったって意味か?
「その最中、端末が……」
すると、星見雅はキャロットが入っているであろう端末を取り出す。次の瞬間、それは真っ二つになった状態で地面に落ちる。
「……こうなってしまった。」
「……じゃあお前がここに居た理由って……キャロットデータの入った端末壊れて立ち往生してたってか?」
「そうなるな。」
「だぁ……」
俺は思わず頭を抱える。なんでそうなるんだよとか色々ツッコミ所はあるが……そうなると少しヤバい。そんな長い時間ホロウの中に居たわけではないだろうが、ホロウ内にはエーテル侵食と言うリスクがある。
ホロウ内部のエネルギー、エーテルが人体、機械に悪さを働きエーテリアス化させると言うリスクだ。
そうなると、うかうかはしてられない。
「だぁ!!俺がキャロット入った端末持ってるから付いてこい!!外まで出してやる!」
「!!良いのか?」
「良いも何も、テメェにこんな所でエーテリアスになられてもリベンジ出来ねぇだろうが!」
ったく!とんだ面倒事だ!!災難だ!やってらんねぇ!
「おら!そこの親子!」
「は、はいぃ!」
「テメェらも立て!早くこっから出るぞ!」
「わ、分かりました!」
「お母さん……ここからでれるの?」
「うんっ!うんっ!……出れるよ……良かった……」
娘の素朴な質問に、母親は涙を浮かべながら答える。その様子を、星見雅は物憂げな目で見ていた……こういう雰囲気が大の苦手な俺は、気まずさをごまかすようにキャロットを確認する。
すると、星見雅が俺に感謝の言葉をかけてくる。
「ありがとう……
「勘違いすんな、助ける義理はねぇが見捨てる意味がもっと無かっただけだ。」
星見雅……なんだこいつその目は。生暖かい目で見やがって、俺が善意でこんな事してやってると思ってんのか?
だとしたらお笑い草だぜ。ここでお前を助ければ借りができる……そうすればお前と合法的に戦いができるって寸法だ!!親子?あんなもんはついでだ。物の荷物にもなりゃしねぇ。
当時の俺は、そう考えいた……これが、この行為が、後へ尾を引くとんでもない失態だとは考えてすら居なかった。
―――現在。
「タツヤは竹馬の友であると共に恩人でもある。ホロウで路頭に迷った私と親子の命を救ったほどの男だ。」
「課長を……ですか?」
「そりゃあまた、世に知れ渡ったらちょっとした騒ぎになりそうですねその話題。」
「タツ兄ってやっぱりいい人なんだね!」
「だぁれが竹馬の友だ!だぁれが恩人だ!だぁれがいい人だァァァァ!!!!」
クソッ!?なんでだ!俺は今日星見雅へ勝負を挑みに来ていたはずだ!
それがなんで頂き物の果物を一緒に食ってんだ!?なんでご丁寧に俺の分の皿出してんだよ!?部外者だぞ俺!
「ふざけた事ばっかり抜かしやがってぇ!おい蒼角!食べ方雑!口元汚れてるだろうが!」
「んっ!拭いて!」
「そんぐれぇテメェでやれ!!」
「蒼角、いくらタツヤとは言え何から何まで甘えてはいけませんよ。」
「おい月城柳!タツヤとは言えってどういう意味だゴルァ!?」
「世話焼きなのも大抵問題であるな……」
「星見雅!誰が世話焼きだ!つかいいからオレと勝負しろ勝負!!」
「……休憩が終わったらな。」
「仕事始まんだろうが仕事しろ仕事!」
「タツヤ……やっぱり君が良い人じゃないは無理があるんじゃないかな?」
「浅羽悠真!まずはテメェから叩き斬ってやる!」
「僕、弱いんで遠慮しておきまーす。」
こ、こいつら……人を舐めやがって……!!!
いつか絶対に全員ぶっ倒してやるからなぁ!!