歳月の半神にそっくりな少女をオンパロスに投入してみた実験作 作:SUMI
オンパロス、それは12の神々が世界を見守る世界。ファンタジーもかくやのこの世界に気付けば私は存在していた。21世紀の日本人であった自分が生活を出来るかと心配だったが神々の奇跡による恩恵によって元の生活と同じどころかそれよりも便利な部分もあったのは望外だったのだが、一つ誤算があった。
「はぁい、今日もこのかわいい歳月の美少女司祭エリシアちゃんがやってきたわよ」
それは自分が全く違う姿になっていたのだ、具体的には綺麗なピンク髪でCV井上麻里奈な美少女と自画自賛してもいいくらいな美少女になっていたのだ。更には神々の権能も一部を扱えるようになってのだから活用させて持ってる。
「今回はこれを修復するのね……こほん、『記憶の幕を取り払い、過去のさざ波を呼び起こせ』」
私が厳かさを持った言葉を宣言した瞬間、目の前にあった壊れた物体がまるでビデオを逆再生するかのように巻き戻っていく。まるで神の奇跡を体現したような光景こそ私が扱える権能、歳月を司る神、いえ、タイタンが一柱オロニクスの奇跡。
某ネコ型ロボットに出てくるタイム風〇敷と言えばわかりやすいだろう、しかもこれを歳月の司祭として扱えるのは限られているらしいので重宝してもらっている。
正直、これをなんとなく扱えたからこそ仕事にありつけたけど、司祭様に許されたことだと後に知ったから笑顔が凍りかけてしまったのだ。普通に考えればこんなすごい権能なんて権益は囲うしかないのは当然だった。いわば私はどっかからやってきた権益の盗人なので排除するかない。
ただ私のいるオクヘイマ以外は大絶賛滅亡の危機になってるみたいで日に日に難民たちが押し寄せている。それは暗黒の潮と呼ばれるみたいで見たことがないから波みたいに押し寄せてるのかなと場違いな感想を抱いてる。
そんな割と世紀末な世情も後押ししていろいろと流民が増えてきてるからか私のような身分が不明な美少女でも貴重な技能を持ってた為にこうして職と住処を得られたのは不幸中の幸いだったかもしれない。偏見はあれどきっかけさえあれば頑張って働けば信用も得れるのだから。
そんな毎日の生きる糧を得るために働き。オンパロスはかつての地球とは違い神々との距離がかなり近くて存在どころか恩恵すらも段違いで生活に根付いて切り離せないくらいに様式が違いすぎるこの都市の生活に四苦八苦しながらも溶け込み始めた頃、私にはもう一つ新しい悩みが出来たといえるかどうかはわからないけれど。
「やあ、エリシア。この辺りで料理店をやってるシェフから新作の料理の試食会に是非来てほしいって招待を受けたんだ。もしよければ一緒に行かないかい?」
私に執着心が伝わるほどに一緒に居ようとする黄金裔、それは世界に迫る暗黒の潮に対抗するために火種と呼ばれる神の権能を継ぎ、世界を救う英雄たちの通称である。その一人である笑顔がとても似合いそうな優し気な白髪の少年、ファイノンが目下の悩みだ。正直なところちょっとオロニクスの祝詞を扱えることとかわいい美少女以外は得体のしれない難民と火種を追う黄金裔の英雄では立場や身分が違いすぎる。さらには彼はオクヘイマの市民たちから絶大な人気を誇るお人好しなために彼が連れまわすと四方八方から嫉妬の視線が突き刺さるのがいくら私が美少女でもちょっと辛い。
「ファイノン様のお誘いなら、喜んで着いてまいりましょう」
それでも私は彼を無下には出来ない。人目があるからこそ礼儀を持って返答する私に彼はフランクに接してほしいのか不満げであるがそれ以上に嬉しそうだ。
「それは良かった、じゃあ早速行こうかエリシア。実のところ約束の時間までもうちょっとなんだよ」
「ファイノン様!? 誘うのでしたらもう少しお早めにお願いします」
最初に彼と出会ったのはオクヘイマに移住してそこそこ経ってようやく馴染めはじめたかなと思い始めたころだった。私には馴染みがなかった人だかりができていたのだ。それは私にとって天上の人ともいえる黄金裔の凱旋であり、大地獣と呼ばれる象と同じくらいの巨大な体躯を誇りながらもその気性はとても穏やかなオクヘイマの人たちにはかけがえのない友と言える獣に乗りながら笑顔を絶やさずに人々の歓声に応える英雄の姿だった。その時偶然なのか運命なのかは私には判断がつかないけれど目があったのだ。その時の彼の顔が記憶に残ってる、迷子の子供が母親を見つけた様な、ずっと無くなっていた宝物を見つけた様な安堵と困惑が入り混じった、奇跡を信じたくもありそんな訳ないと否定する二律背反を孕んだ表情を
そこからだ、ファイノンとの関わり合いが始まったのは。最初は私のことをある人とおそらく彼にとって大切な人であろう人と重ねているのかよく呼び間違うこともあったりしてひと悶着ありながらも彼に振り回されてながらも過ごす毎日はとても、輝いていた。
時には彼の趣味の鑑定に付き合い、壊れたお宝を前にしょんぼりしたのを見てられなくてオロニクスの祝詞で直したら子供のように喜んでくれたり。
ある時は彼のライバルである黄金裔とちょっとしたことから競争になり両方とも負けず嫌いなために最後には共倒れになって私が介護することになったことも
たった一人でここに迷い込んで独りぼっちだった私の世界が彩られていく、慌ただしくも楽しい日々だった。
そのままもう少しこの関係が続くと思っていた。でも現実は無常だ、私をここに放り込んだようにあっけなく崩壊の足音は後ろにまで迫っていたのだ。
「エリシア!!返事をしてくれエリシア!!」
炎に包まれたオクヘイマを背景にファイノンが私を抱えて叫んでる。その呼びかける声は悲痛に満ちていた。
事の始まりはファイノンが黄金裔の使命の一環としてヤヌサポリスという場所からオクヘイマに避難民を護送するために離れていた時だった。平和だったはずのオクヘイマに敵が侵攻してきたのだ。その侵攻してきた存在はオロニクスと同じタイタンのニカドリー、司る神権は紛争、その権能の一部として純然たる暴力を備えた人ならざる石像を自身の眷属として攻めてきたのだ。もちろんオクヘイマにも兵たちはいるのだが強力なタイタンの眷属には押されてしまう。市民を襲っていく惨劇の中、逃げ遅れた戦う力がない人たちを護るために微力ながら抵抗をしてはいたが
「……ファイ…ノン…?帰って、きたのね」
結局は私も戦う力のない人達と同じだった故にこの結末は必然だったのだろう。人々を逃がす事ができただけでも奇跡そのものだった。だがその対価は凶刃に私の身を貫かれた事。
「遅くなってすまない……でも、もう大丈夫だ。すぐに治療するから待っててくれ」
彼はそのタイタンの眷属を一太刀で切り捨てた後に私を見るその瞳に移る感情は英雄としての責務じゃない執着。どんな対価を払ってでも絶対に死なせないと狂気を宿していた。
「もう、いいのよ。あたしの……ことは分かっちゃうの」
「違う!まだ間に合う、だから諦めないでくれ!!」
タイタンの眷属から受けた傷は致命傷なのだから。身体に力なんてちっとも入らないし、感覚なんてすでになくて彼の声でようやく理解できるほどに手遅れなのだ。私を抱えてる彼の手は血で濡れている。
「そう、ね……最後に、一つ……だけ……」
「話さなくてもいいんだ!治療すればそんな機会はいくらでも訪れる!!だから、だから諦めないでほしいんだ!!」
ああ、タイタンたちよ。今際だからこそ彼のために残せる唯一のモノ、彼にこの言葉を贈ることをお許しください、この言葉で彼が英雄として立ち上がれなくなるかもしれません。それでも彼に残せるものだから
「あなたは……自分を、愛してもいいんだよ」
人々からみんなを助け、英雄だって称賛されているけど、本当は自分を愛せないからこその代償行為なんだっていつの日か気づいてしまった。無意識に彼から漏れ聞いてしまった過去を聞いてわかってしまったの。
「自分のために……泣いて…怒っても、いいんだよ」
サバイバーズギルト、それは災害などによって一人残されてしまった人が患う病気。暗黒の潮によって彼の故郷は彼を残して皆死んでしまったんだろう。それ故に自分を空っぽなんだろうと思い込んでしまったんだろう。きっとほかの黄金裔だって気づいていない彼の本音を見過ごす事なんて出来ない。すでにあなたは頑張ったんだよ。だから…
「ファイノン、あなたは……」
自分を許したっていいんだから……
「エリ……シア……?」
英雄が腕に抱えた少女の命は尽き、粒子となり空へと霧散していく。黄金裔の一部は死すると霧散してしまう運命にある。エリシア自身も知らぬことだったが彼女もまた黄金裔だったのだから。だがそれは無常にも彼女の死に向き合う権利すらも奪ってしまう残酷な結末なのだから。
「あ……うあ……」
英雄だった男はただ、嗚咽を漏らすのみ。彼女は自分を許してくれた、だけどももっとも取り零してはならない人を抱えられなかったこと故に許すことなど出来ようはずがない。彼女を護りきってこそ初めて許されることだと勘違いしているのだから。
「あ…ああ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」
燃え盛るオクヘイマにただ一人の少年の絶望に慟哭が響くのみ。いつだって彼は取り零す。徒労を課されることこそが運命なのだから
とある少女:どっからか飛来してきた魂がオンパロスに入る前ちょっとお外にいる少女と接触した結果、お姿などを借りることになった人、この接触は覚えてはないがループ物に巻き込まれる模様。その様子は何にもない場所にいる少女に記録として届けられる模様。もう一つの特徴として小さくてか弱いもの、略してちいかわである
ファイノン:なんだかんだで物語を考えたら余計お労しくなることになった救世主。ここで一度絶望するが、彼女が途中編入組だとしってさらに絶望する模様。なんでやさしくしたかって?そら、曇らせって落差がないとカタルシスなくなっちゃうじゃん。だけどもある種の希望にもなる(天外から訪れの証明)にもなるので折れることは絶対ないしむしろ奮起する心の超強い英雄
どっかで見てる機械:これは折るために利用できそうだから見逃そ(節穴)