歳月の半神にそっくりな少女をオンパロスに投入してみた実験作   作:SUMI

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イベントよかった……次は夢で終わらずに違う形でわちゃわちゃしたいぜ。


第10話

「何故知っている?答えろ」

 

その声は腹部を貫かれて息も絶え絶えの上に吐血によってほとんどかすれるほどに小さい声のはずなのに、確実に止めを刺そうとした刃が止まる。自分の正体を知っている事に驚愕しているのだろう、今まで自分以外の時を巻き戻せる人は誰一人もいなかったのだから。

 

でもやっぱりと言うべきなのか突き刺されてた傷は間違いなく致命傷で悠長に話している時間なんてない。息をしようとするだけで命が消えていく。

 

「あたしね…記憶…持ち越せるの」

 

伝えるどころか単語すらも怪しいけど今生での力を振り絞り伝えていく。

 

「いつかは……わからないけどオンパロスにいたの…そこで…生きて死んで…また戻って、繰り返してく…途中で…出会ったわ。その剣の中…キュレネに頼まれたの…あなたを助けてって」

 

咳き込みながら血を吐き出していく。もう身体の感覚は消え動かすことなんて出来るわけもなく、私の終わりが近い事を示していた。

 

「もう、時間……みたい…約束して」

 

カスライナはそれを優しく抱えながらただ静かにでも真摯に聞いていた。もっと聞きたい事が尽きないほどにあるだろう筈なのにそれでも耐えて耳を傾けている。

 

「オロニクスの…前で…次は…待ってる、から…「また明日」会おうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

腕の中の抱えられた少女が力尽きる。自分にとっては2度目の、もう一つの意味では数えきれない程に経験してきた事だ。とうの昔に慣れてしまった出来事の筈なのにこの込み上げてくる感情は何だ?

 

「そうか、まだ僕は泣けるんだ」

 

だが涙は流れない、その身に宿った熱が涙そのものが蒸発して流すことすら許されない。それでも泣き出してしまうほどに心を掻き乱している。

 

突如、腕に抱いた少女の遺体が燃え上がる。涙すらも蒸発させる熱が少女の身体を発火させたのだ。炎が少女を焼いていく、それは次へと行けるように祈る送り火のよう。カスライナは見届けながら己に火が燃え移ろうとも、遺体が燃え尽き灰に帰るまでずっと離さずに抱え続けていた。

 

残ったのはオロニクス(「歳月」のタイタン)の火種。彼女は己の内にずっと隠していたのだろう、再創世を成させない為に。すれ違いこそあれど間違いなくカスライナの味方だったのだから。

 

「エリシア……君は寄り添おうとしてくれたんだな」

 

世界を巻き戻せば全てがリセットされる。とある輪廻では全ての仲間が仇として敵対した事もあり、それは新しい自分(ファイノン)すらも例外ではなかった。それでもたった1人で戦い続けたこともあった。仲間だったものの残骸を踏み越えた数は数える事すら億劫になるほどに積み上げてきた。

 

彼女だけが例外でいてくれた。彼女だけがずっと味方で居てくれた。彼女だけだこの永劫回帰を越えてくれたのは。

 

「すまない、そんな君を果てのない永劫回帰に巻き込んでしまった事を」

 

次に湧き上がるのは罪悪感だ、今まで結末を変える為に行動を起こしてきたが全ては変わらずに無為に帰してきた。きっとこれからもそうだろう。この果ての無い牢獄を撃ち破る力がカスライナにはないのだから。

 

その地獄だとは知らずに引き摺り込んでしまった事が心苦しい。

 

それでも2人は信じてずっと待っているならばこんなことで諦めるわけにはいかない。一体どれだけの時間を佇んでいたのか分からないけどほんの少しだけ自分を慰めることは出来た

 

「彼女と会う為にも次の輪廻に行かなければ……ああそうだ、これまでもこれからも変わらない、いつものことだ」

 

今回も全てが徒労に終わるとしても、何一つ世界に影響を及ぼせないとしても。約束は続いてるのだから。これが33500000回目の輪廻の終わりだった

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

次の輪廻で約束の場所にたどり着いた時にはそれなりの時間に経っていた。どうしてすぐに向かわなかったと疑問に思うかもしれない。それには理由があるのだ

 

事の始まりは次の輪廻で目が覚めたら一も二もなくカスライナと約束した場所、ヤヌサポリスへと向かおうとした時に気づいたのだ。なんだかいつもより街道を巡回する兵士たちが多い事に。

 

ほんの少し疑問に感じながらも目的地に向かおうとしたら兵士に尋ねられたのよね。そしたら今までには聞いた事のない預言が告げられていたのだ。

 

大雑把に言えば私が目覚める時期にオクヘイマに「歳月」を担う黄金裔の少女が、現れるって内容だった。

 

「それにしてもここでは見ない顔ですし、しかもその髪色……もしかしてあなたが預言にうたわれた黄金裔なのかもしれませんね」

 

その問いかけを曖昧にはぐらかしながら兵士と別れた後、どうして私に関する預言が告げられたのかに疑問が渦巻いているし、さらに嫌な悪寒を酷く感じる。ふと視線を逸らしてしまった瞬間に

 

「……あっ」

 

誰かと目が合った様な気がした。一瞬だけ気のせいだよね、そうよねと無理やり納得させながら気づかれてないよね?と祈りつつもそそくさと離れようとした時に聴き慣れた声が聞こえた気がした。普通だったら分からないほどに遠くな筈なのに分かってしまう。

 

ファイノンだ。気のせいではなく、あの一瞬で私と彼の視線が交差したのをお互い感じ取ったんだと。

 

もう反射的に私は駆け出して逃げ出した。火追いの旅に言及されたのならあなたが動かない訳はないよねと妙な納得感があった。

 

そこから三日三晩に及んで逃走は続いた、祈言や神跡を駆使して追手を撒こうとするがファイノンだけはもはや執念すら見えるほどに諦めずに追いかけ続けたのを振り切るにはとても時間がかかったのだ

 

最終的には前の輪廻でカスライナを封じ込めるためにやった神跡を用いた過去の空間に逃げ込むことで振り切ることに成功したけどそれでも数日間はかかってしまった。

 

何度も踏み入れた筈なのに緊張する。一歩一歩の足取りが重い、頭に様々な不安な考えが過って仕方がない。それでも意を決して足を踏み入れる。

 

オロニクスへの謁見台に彼は居た。

 

その姿は黒衣に包まれた姿ではなく私にとって見慣れたファイノンの服。まるでオクヘイマにいた時によくしていた待ち合わせと同じ様な錯覚を覚えてしまう。違いはいつもはある微笑みがなく、無表情なくらいだろう

 

その後ろ姿は悠久にも等しい時間を待ち続けた重みにも今し方辿り着いたとも言えるような気軽さも両方持ち合わせた様な私が知ってる筈なのに知らない様な奇妙な感覚。言いたいことなんて山程あるのに何を話したらいいのか言葉に出来ない。

 

「やっと……やっと、逢えたね。えっと、その待たせちゃったかな」

 

ようやく出てきたのはありきたりな言葉。余りにも素っ気なさにちょっとどうかなと思いながらもカスライナは

 

「そうだな……必ず来るって信じられるならばこの位なら待った内には入らない。それに、僕も……君とまた出会えるとは夢にも思いはしなかった」

 

変わっていた。あの優しげな声はなく、無機質な程に低い。それに加えて瞳の色が青空の様な青ではなく炎の様な黄金。他の黄金裔が見れば別人だと感じるほどに。

 

「あなたを探してたのに大変だったのよ、でもやっと出会えた。話したい事が沢山あるんだから」

 

「すまない、君もこの地獄に抗っていた事に気づく事が出来なかった。そして君を護れずに辛い思いを強いてきた「僕たち」を許してくれ」

 

まず最初にカスライナからの謝罪の言葉だった。それにまるでトリビー先生のような一人称を使う事に訝しみながらも言葉を続けていく。

 

それは余りにも途方もつかないほどの苦難と挫折に満ちた徒労の旅だった。繰り返しの最初期の頃は仲間が犠牲にならないように立ち回りはしたが全部が失敗に終わり、そこから千、万単位で試行錯誤を繰り返したが成果は全くなく徒労と集めた火種が積み重なっていくばかり。

 

そして数多の火種がカスライナを焼き尽くす限界を迎えかけた時ある方法を取る事にした。それは死に慣れた自分ですら狂気と言わしめてしまう程の壮絶さ。

 

それは輪廻を重ねる毎に新しい自分へと火種と記憶を受け継がせていたんだと、それは目の前に居るカスライナが私が今まで出会ってきたファイノンでもあることを示していた。

 

「今まで僕たちは受け継がれていた。共に過ごした優しい日々も力及ばずに死なせた後悔も全部憶えている……何故泣いている?」

 

「どうしてってあたし、あなたの助けになるどころかあなたを傷つけてばっかりじゃない。あたしも憶えているわ。死の間際に向けた哀しみや間に合わなかったあなた自身への怒り。一つ残らず全部、あたしは憶えてる」

 

そうだ私が悲しんでいるのは彼を傷つけてしまったこと。助けになると言いながらその実彼の重みになっていた事に対する自責の念に胸が詰まる。

 

「違うんだ、エリシア。君の言う通り僕を傷つけたのかもしれない、それでも僕は嬉しかったんだと感じていたんだ」

 

カスライナは優しく否定する。今までの積み重ねは無駄じゃなかったんだと先程までの無機質な声などなく、優しく穏やかな言葉だった。

 

「数多の繰り返しでは何一つ変わらなかった中、君が訪れてくれたお陰で変化が生まれた。それが極僅かだとしても何も成せなかったとしても、天外から現状を変えてくれる何かが訪れるんだと再び信じられるようになったんだ」

 

もう積み重ねた歳月は数知れず、重ねたものは無意味に終わり、果てのない徒労を繰り返すだけの闘いだった。今目の前にいるキュレネと鏡合わせの少女が来てくれるんだと証明してくれた。その事実だけも壊れかけたカスライナを奮い立たせるには十二分だ。

 

「エリシア……君は既に僕の助けになってくれたんだ。オンパロスに来てくれて、そしてこんな僕に寄り添おうとしてくれてありがとう」

 

そう断言したカスライナのにはほんの僅かなだけど笑みを浮かべていた。その笑みは私の知っているファイノンと同じだった。




エリシア:想像を遥か上をいく旅路にガチ泣き。でも否定しないで泣いてくれてるのでカスライナには大分救いになってる。この後、自分とカスライナの違いに凄いすれ違いが多すぎる事に驚愕する

ファイノン:最後の半神が現れると知り、率先して動いた結果、キュレネそっくりなエリシアちゃんを発見して追いかけたものの大真面目かつ全身全霊で逃走されて相当凹む模様。

カスライナ:思ったより待たされた人、これもエリシアちゃんがお互いの巻戻り地点が違うのを気付いてないのが悪い。だけど今までに比べれば一瞬だし来てくれると信じられるので苦ではなかったし、約束通り来てくれたので意外とテンション上がってるの同時に思った以上に彼女の一周が短い事にちょっぴり安堵している

どっかの機械:待つのは得意だし、歳月ルートを補完できる存在ではあるのでこうして圧かけておけばいつかは折れるでしょうとたかを括っている。想定しても致命的な変数に変ずる可能性は皆無に等しいので圧をかけて待ちの姿勢。前回の最後には念入りに破壊された模様(無意味)
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