歳月の半神にそっくりな少女をオンパロスに投入してみた実験作   作:SUMI

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まさか公式でなのか曇らせを実行されるとは恐れ入ったぜ(忘却がトラウマな娘に忘れ去られてひとりぼっちにさせる)

3.6にて明かされた設定にてずれが生じたので修正


第13話

世界の命運を賭けた勝負は意外な形であっさりと決着がついた。

 

ファイノンの一撃によってエリシアの手から儀礼剣を弾き飛ばし、首元に突きつける。武器の喪失によって決着がついたのだ。

 

「どうしてなんだ」

 

直接剣を合わせたファイノンには分かってしまったのだ。何度も戦場で剣を奮ったからこそ感じ取れてしまった。

 

「教えてくれ、どうして……僕を殺そうとしなかったんだ。再創世を阻むならもっとやりようはあったはずだ。なのにどうして?!」

 

エリシアの剣に殺意が込められていないからだ。いや、最初からこうなると理解しての戦いを挑んだのだろう。有り体に言って憤慨していた、ヒアンシー達を殺すのに躊躇いはなかったのに自分だけが特別扱いされてる事に。

 

「困ったわね、説明してもいいのだけどちょっと長くなっちゃうのよね」

 

何かを待ってるようななんて答えたらいいのか困っているように苦笑いではぐらかす。

 

「頼む、ふざけないでくれ。本気なんだ、どうしてこんなことをしたんだ」

 

まるで、それは……

 

「やっと来てくれたわね」

 

後ろから気配を感じる。皆で足止めしていたはずのフレイムスティーラー(処刑人)追いつかれてしまったのだから。それは間違いなく皆が負けたことを示していた。

 

「っ!? 処刑人!」

 

「もう、遅いじゃない。それとも彼らとゆっくり遊んでいたのかしら?」

 

そこで悟った、彼女の目的は時間稼ぎだったのだろう。そうだ、目的は再創世を阻むことだから手を組む余地は十分あったんだろう。だが、あの悲劇を経験した上で? 思考にノイズがはしる。

 

利害だけで感情を隠しながら手を組むのはよくあることだ。故郷を滅ぼした相手にそうやって組むのは理解はできる。

 

「ええ、分かってるわ。みんな英雄だもの、いつだって一筋縄ではいかないのは百も承知よ」

 

だが、彼らの関係はそうとは見えない。処刑人は何も話さない、それなのに僅かな仕草で何を言いたいのか汲み上げて分かってくれてる。それはまるで長年寄り添ってきたパートナーのようで。

 

「一人ひとりしっかりと相手してきたのなら時間が掛かっても仕方ないわね」

 

何か黒いモノを燃料に炎が燃え上がっていく。

 

「場は整えてあげたわ。後はお願いね」

 

そうして処刑人に微笑んで、それはいつも僕へと向けていた心からの信頼が込められていた笑みを、今度は彼に向けて後ろに下がっていった。どうして? あいつは故郷を、双子の姉(キュレネ)を殺したのに。何であんな笑みを向けれるんだ? あいつが憎くはないのか? あの何気なくとも大事な日々を燃やしたのに?

 

「いや、そんなことよりもお前を倒して再創世を成し遂げる。そのための篝火にしよう。処刑人」

 

違う、今の僕は救世主だ。皆が命を掛けて託してくれたんだ。やらねばならぬ事はフレイムスティーラーを打ち倒し、再創世を成し遂げる事でこの終末を乗り越える事なんだ。処刑人に打ち勝てば、エリシアだって諦めてくれるはずだ。

 

お互いが剣を構える、奇しくもその構えは鏡写しのようでもあった。

 

 

 

 

 

 

 

戦いはいつも通りの何千万回と繰り返した決着を迎える。勝ち得たものは答えを贈り、同時に数々の疑問に解かれていく。

 

「そうか、そう言う事だったのか」

 

いつも通りに記憶の継承は滞りなく行われた。そこで理解できた。

 

何故エリシアがフレイムスティーラーにあそこまでの全幅の信頼を置いていたのかを、なんてことはない。最初から彼女は自分たちの味方をしていたんだ。前の僕も、今の僕のどちらにも。敵に見えたのはただ僕がそう見えていただけ。裏切ってなんかいなかったんだ。

 

「今回も無事に受け継ぐことが出来たのね」

 

そこで新しい疑問が湧き上がる。受け継いだ記憶には存在してなかったもう1人の幼馴染のことだ。永劫回帰を共にした彼女と、ただの村娘であった少女は本来ならば交わるはずがない。目の前のエリシアは間違いなく前者であるはずなのに、継承する前は後者だと完全に信じていたことに違和感を感じる。

 

「言わなくてもわかるわ、ある意味あなたと同じよ。違いは受け継いだのではなくて、受け取った」

 

その告げられたことは衝撃だった。

 

「エリュシオンのエリシアはあの日死んだわ。あなたが感じた通りにね、あなたが記憶を継いでそうなるように、あたしもあの娘の記憶を受け継いだのよ。だから、あたしはあたしであるけど、あの娘にもなるのかしら」

 

今し方記憶を受け継いだのだから理解できる、それは劇物だ。自身の自我の境界が壊れかねない、それどころか最悪自我が混じり合って正気を失うだろう。とある周回で指摘された、自分だけの自我がないからこそ耐えれる事を何気なくやったというのだ。

 

うちに溜めた火種の炎によって器が耐えきれないカスライナとは違い、彼女はその必要がない筈なのに。

 

「きっと、あの娘はあたしがいたからこそ生まれた存在、その生きた証をあたしだけが受け取れるなら、何度でも受け取るわ」

 

今のカスライナなら理解できる、それは大切な人の証を無意味にしたくないんだと。それは今までの自分たちが抱えてきた記憶と同じように。

 

「ありがとう、彼女の生きた証を受け取ってくれて」

 

「ふふ、いいのよ。あなただってこれの比じゃないくらい受け継いでるじゃない」

 

揺れが強くなっていく、地下深くにある創世の渦心もじきに崩落していくだろう。オンパロスは亡び、この場所以外の全てが暗黒の潮に呑まれて消え失せた。

 

「暫しの別れだ、次の僕も……そうだな、言うまでもないか」

 

この世界にあった12の火種は彼のうちへと納められた、ならばやるべきことは一つ。

 

「『また、明日』、会いましょう。カスライナ」

 

彼を発端して世界が光に包まれていく。この世界に終わりでもあり、回帰への始まり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっと、少々お待ちください。少しばかりあなたとお話ししなければならないことがありますので」

 

その直前、とある存在によって呼び止められた。まるで忘れ物を思い出したような、取ってつけられた急停止。

 

白を基調として紫のアクセントを散りばめられた細身の人形。最大の特徴として肉は一切なく、その全てが機械で構成されたアンティキシラ人と呼ばれるアンドロイド。

 

名をリュクルゴス、あるいはライコス。神礼の観衆と自評する火追いの旅においては中立の立場の傍観者。

 

そう、オンパロス(・・・・・)ではそう言う立場を取っているだけの話、世界の外に視線を送れば何もかもが違ってくる。

 

目の前の存在こそが全ての原因。オンパロスを創造し、その目的の為に全て徴収する管理人。私たちの敵。ある目的の為にカスライナを収穫しようとする。私たちが新なる再創世を迎える為に乗り越えなければならない存在。

 

「あら、珍しいわね。あなたから話しかけるなんて、こんなしがない小娘に用事でもあるのかしら?」

 

だが今の私はかの存在からすれば木端も同然、本命はカスライナであたしは彼を諦めさせるための都合のいい駒程度の存在でしかない。

 

「今回については少しばかりあなたに尋ねたいことがありまして、こうして留めていただきました」

 

「あら、5000回も変わらぬ事を繰り返してきたあたしに話すことなんてあったのかしら?」

 

「実のところ此度の永劫回帰にはとある事が起こりまして。それに付随して、あなたに素敵なものを用意いたしました。その様子だと、無事に受け取ってもらえたようですね」

 

僅かな考えの後に気づいた。どうしてあの子が産まれた経緯を察した事に、ライコスからまるで出来の良い生徒がすぐに気づいた事を褒めるような視線に歯噛みする。既に拒否する事はできず、ただ受け入れるしかないのだから。

 

「あなたはこのオンパロスに永く根付きながらも馴染みきれてない様子でしたので。僭越ながら、私が微力をもって手助けを致しました」

 

激情には流されない。いくら目の前にいるライコスを破壊しても意味なんてない事はよく知っている、ただの端末でしかないのだから。それに感情の任せても相手の思う壺でしかないのだから。

 

「その贈り物であたしを運命に押し込める気なのね」

 

永劫回帰において全ての人の行動が自由になるわけではない。どうしたとしても必ず起きる事はある。カスライナ曰く3350万の永劫回帰の中で強く干渉しても結果的に皆滅びる事に繋がる。どれだけ干渉をしようとある一点に収束することは痛いほどに実感させられてる

 

運命から大きく逸脱する事は出来ないことが永劫回帰にて証明されている。初めから過去が存在しなかった私が例外なのだから。

 

それを危険視し始めたライコスはエリュシオンのエリシアという過去を創り出すことでその運命の枷を嵌める気なんだろう。

 

「ご明察です。このオンパロスには侵入者を阻む障壁がありながら、あなたはこのオンパロス内部に何の痕跡を出さずに出現しました。それには興味深く、彼を挫折へと導く変数になると思いまして観察を続けていましたが、馴染みながらもその根本だけは何一つ揺るがない自己を確立し、この永劫回帰に耐えうる精神力を得たことには驚嘆しました。もっともあなたの過去を創り出すにはここまで時間はかかりましたのは少しばかり予想外ではありましたが」

 

ライコスの予想では認識してある程度は見てはいた。だが他に入り込んで消えていったものと同じ結論になるだろうと、違いはカスライナの負荷になるから手出しをしてなかっただけ。よもや、(浮黎)の一瞥を受けるだけの存在になるとは驚異的な成長を成し遂げたのだから。

 

「私の予想ではあなたは時間の流れに耐えきれないと考えてましたからね」

 

「よく言うわね。本当はあなたがあたしを直接どうにかする事なんて出来ないのは知っているわよ」

 

ここまで迂遠な手段を取るのに理由はある。直接干渉をしようとしてもオンパロスの根底に埋め込まれた最終協定と呼ばれる管理人ですら変更できないルールがある為に態々こうしたのだろう。

 

「それにまだたったの5000回なんでしょ?カスライナに較べればそんなの瞬きと同じよ。帰りなさい」

 

一切の揺らぎがないことに確認した途端に説得を諦めてた。そうだ、ライコスは何千万回と待っているのだ。この程度ならばまだ待てば自ずと折れるだろうと時間によって風化される事を選んだのだ。

 

「ふふ、でしたら私は待ちましょう。あなたたちが諦めるまで何時迄も。時は私の味方ですので」

 

話は終わったと言わんばかりにライコスを破壊する。分かってる、何もならない八つ当たりに等しい事だって。それでもこれがあたしの抵抗の意思表示。

 

「私が訪れた様に、待ち望む英雄が訪れる事を待つわ。何時迄も、ずっとね」

 

 

 

 

 

 

 

そして世界は巻き戻り、何度も繰り返したように彼と巡り合う。

 

「また、あなたとの再会は奇跡? それとも、必然なのかしら」




エリシア:ライコスによって嵌められたことを悟る、でも諦める気は一切ないし、記憶を受け取らないことはしない。

ファイノン:フレイムスティーラーに幼馴染が信頼を向けたことにピキる。でも実際は両方とも自分だったので納得はした。後は記憶を受け取ることに少し心配している。

ライコス:将を射んとする者はまず馬を射よを実行する。先に彼女が折れれば、連鎖的に折れるでしょと
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