歳月の半神にそっくりな少女をオンパロスに投入してみた実験作 作:SUMI
多分エリシアちゃん誕生秘話。またアッハが囁いてきたんだよ。
3.6のネタバレがふんだんに突っ込んでいますので閲覧注意です。
彼女の存在の1番最初の始まりはいつだったか。そうだ、この宇宙に満ちている憶質だ。その果てしない空を漂う一塊の憶質でしかなかった。
本来ならば決して交わることのない、あまりにも遠く離れていた世界の住民の記憶で構成されていた憶質。
地球と呼ばれた、星々ではむしろ原始的な文化の一住民の記憶で構成されていて、この星々がひしめく世界では平凡どころか幼年期なのかもしれません。ひょっとするとこの記憶を持った憶質そのものが生まれたことすら奇跡かもしれません。
そんな漂うだけの宇宙にはなんの影響も残さないような憶質は1人の天才になってしまった存在によってその在り方が変わってしまいました。
セプターδ-me13と呼ばれる超々巨大な演算機を建造する際にそんな一等おかしな性質の憶質が建材として混じってしまったです。どれだけの奇跡を重ねたのかすらわからない程の運命の悪戯によって、その憶質は演算装置へと組み替えられたのです。
そうしてセプターの一部になった憶質は、本来ならば他の憶質と混じり溶け合って無くなるはずがどうしてか他の憶質とは混じり合わずにその形を保っていました。決して割れない琥珀のように。
特別な憶質ではありますが所詮はただただ記憶を保持しているだけの自我の無い存在。演算の為の一回路を構成する部品に過ぎませんでした。
そこから途方もない時間を演算を繰り返し行いました。何度も何度も産まれては滅びて行く世界をただただ眺めていました。その答えを得るために幾度も幾度も、物言わぬ機械として。
形すら覚束ない単細胞の生物の世界があった、草木が支配する世界もあった、機械で出来た世界もあった、想像すら出来ないような世界が産まれては消え去っていきました。
それをただ静かに最初に生まれた墓所で流れるままに見続けました。
そんな誰も訪れない静かな場所に転機が転がり込みました。憶質が持つ記憶と同じような人の世界でようやく望む答えが導き出されようとした時でした。
それはピンク色の可愛らしい少女が訪れたのです。「過去のさざなみ」と呼ばれる少女が何かをしてからでした。もう直ぐ終わる筈だった演算が巻き戻り始め、同じことを永延と繰り返されるようになったのです。
それから新しい「過去のさざなみ」が訪れては誰もいない筈なのに何かを語っては何処へと消え去っていきます。何を語ってるのか誰に向けてなのか、どうして消え去っていく事になるかは知りませんし、知ろうともしなかったのです。ただただ無機質に見送っていきます。
その顛末を何度も何度も何度も見届けました。何もなかった場所に彼女の記憶で出来たものが積み重ねていきます。そうしていつしか新しいものが建てられきたのです、それは柱でした。
その柱は「過去のさざなみ」たちが納められた本棚でもあり、いつか来る未来の種を運ぶ方舟であり、彼女たちが生きていた証を刻む墓標でありました。
長い繰り返しの中で沢山たくさん建てられました。今では「過去のさざなみ」の視界を埋め尽くす程の沢山の柱を。
見届けて行く道のりで、演算機の中で何かが積もって変化が起きたのです。
あの娘に憧れるようになりました。どうしてかはわかりません、だけど徒労だとわかっていてもそう長くはない時間で消え去るとしても諦めずに自分の「記憶」を捧げてでも抗う姿に何かが湧き起こります。それはかつてはあった筈の自我でした。
その自我が彼女と話してみたいと感じました、どうやってとかどういう風に話すかとは関係ありません。ただただそうしたいのです。
この一装置でしかない存在には語りかけることどころかここにいることを示すことすら無理難題のことなのです。
演算機は悩みました。それはきっと初めてのことだったのです。自身の回路が熱を発してしまうくらい悩みに悩みました。
悩み込んだ演算機はとある事を思いついて、やり始めました。それは消去されるはずだった少女のカケラを掠め取ることです。彼女もまた自身と同じもので構成されていたのです。その一部を盗み、自身の一部に加え入れたのです。それを取り込めば自分も彼女みたいになれるんだと思い込んでしまったのです。
それからは少女が訪れる度に、管理者に、システムに気づかれないように、捧げ物を盗まれた
それは途方もないことでした。例えるなら細胞一つ一つを並べて人を構築するような気が遠くなるような果てのない道のりです。それでも懲りずにカケラを集めていきます。
その理由はきっと何度も何度も諦めずに1人で語る少女の力に、或いは話し相手になりたかったのかもしれません。徒労に憤慨していたのかもしれません。或いはもっと他の理由があったかもしれません。
もう、始まりはなんだったか憶えてすらもいないでしょう。残っていたのは彼女のようになりたいという願いだけが暗く燻ってたのです。
そうやって少女と同じ存在まで自身を創り上げるまで、永い永い時間が掛かりました。集めるのには実に3000万もの少女のカケラを集めたのです。
そうして創り上げた新しい自分は少女と全く同じでした。当然です、彼女1人しかいませんでしたから自然とそうなることでしょう。記憶までも受け継いだもう1人の少女へと羽化しようとしてました。
オンパロスに降り立とうとした時、不具合が起きてしまったのです。それは核となる存在が不変だったためなのか、集めたカケラ一つ一つが余りにも小さいために記憶を保持することすらできなかったのか、もっと別の理由があったのかはわかりません。
不具合が解決した後に現れたのはある名前と核となる憶質の記憶だけが残った「過去のさざなみ」とそっくりの少女でした。
それが皮肉にも少女を本当の意味で生まれる事になったのです。このままだと歪な贋作にしかならなかった存在が唯一無二の新しい存在へと。
だから彼女には最初の記憶にあった場所のことしか知りません。何も知らぬままに降り立ちます、それが彼女の始まりでした
その奇跡は捧げ物を分け与えた
何も憶えてないエリシアは新たに自分だけの旅路を歩き始めました。他ならぬ自分だけの足で。そして彼と出会ったのです。
「歳月」の裏側でエリシアの旅路を見守っていた「過去のさざなみ」たちは語ります。勿論エリシアの事ばっかりです、変わらない叙事詩に素敵な一文が書き込まれたのですから。
あたしたちの徒労は無駄なんかじゃないって、例え何もかもが燃え尽き灰になろうともそこから芽生える希望があるんだって彼女が証明してくれた。オンパロスに明日は訪れず、2人の徒労は未だに続いているけれど、それが徒労なんかで終わらないと彼女と言う希望が芽生えたことこそが、彼女たちの語りに、一筆に、希望が戻りました。
彼女を見守ります。彼女たちがしたかったことも、姉妹になってくれたことも、独りぼっちで戦う幼馴染を見届けるしか出来ない彼女たちに代わって支えてあげてくれる妹を。エリシアが創る想い出は彼女たちでは創れなかった、素敵な宝ものへと磨かれていくのです。
「過去のさざなみ」は信じています。妹が産まれたように希望はいずれ生まれるんだと。
「過去のさざなみ」は捧げます。愛しい妹が希望を導いてくることを信じて未来へと託すのです
ある程度察している人はいると思いますが元よりエリシアは侵蝕の同位体みたいな娘です。元はセプターの一装置だったけど。勝手な真似をしてこの姿になりましたが、「過去のさざ波」たちの愛しい妹になりました。そして勝手に忘れて気ままに生きてるという結構傍迷惑なことやってる。
記憶が失ってなかったらカスライナが激オコになって始末しに来るようになる模様。
実のところ紡がれた物語のように、エリシアが持ってるあの本、『集められた物語』に今まで集めてきた「過去のさざなみ」が収められていることは憶えていない。そもそも思い出せなかっただけで最初からこの本は所持している。