歳月の半神にそっくりな少女をオンパロスに投入してみた実験作   作:SUMI

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第16話

もう数万回も繰り返した終末が訪れる。時期は違えど起こることは決して避ける事はあたわず降りかかる。

 

「今回はちょっと珍しいわね、意外と残ってる人が多いわ」

 

そして何度繰り返したのかわからないほど、創世の渦心の前に待ち構えながら今回のお供にと考えを寄せる、ファイノンは確定としても今回はサフェルが生き残ってここへ向かってる。

 

それにカスライナの足止め役としてモーディスとキャストリス、さらにはアグライアやアナクサゴラス先生までもが加勢しているために少々時間が掛かってる。カスライナなら負けはないけど、最悪の場合も考えられるほどに戦力が整ってしまってる状態だ。万が一が起こらない様に私に備えるべきだ。

 

「仕方ないわね。アタシも本気、出さないとね」

 

取り出したるはオロニクスの火種、必ず私が確保して、お姉ちゃんが継ぐはずだった火種。隠しておくべきそれを私の心臓へと取り込んだ。

 

瞬間、体の底から込み上げる熱に歯を食いしばる。炎が身体を作り変えていく。

 

身体のうちから噴き出そうと錯覚させるほどの火種の熱が蝕んでいく、実際に内から燃やしてるのだろう。これこそが「壊滅」の種火、超常の力とは諸刃の刃そのものなのだから。それでもまだ温い、幾たびも重ねてきた死の冷たい熱さに比べればこの程度ならば耐えきれる。

 

幻覚の筈の炎は次第に本当の火となって包み込んでいきーーーーー

 

 

 


 

 

 

 

突如として終末が訪れた今、ファイノンたちは再創世を成すために駆けていた。「歳月」が欠けているために再創世そのものが機能不全になるかもしれないがそれでも成すしかない。たとえ不完全だとしても成さねば待つのは滅びしかないのだから。

 

「誰だっ!?」

 

誰もいない筈の創世の渦心の水盤の前に誰かが居た。本来ならばいてはいけない筈の部外者に皆警戒がはしる。

 

「遅かったわね。おかげで待ちくたびれちゃって眠っちゃいそうだったのよ」

 

美しい女性だった。腰まで届くほどの美しい長髪はまるで夜空を溶かし込んだ蒼と暖かい陽光の桃色のコントラストが映え、その肢体は余りにも女性的な美しさに溢れ、美の化身と呼ばれるアグライアとも勝るとも劣らないほど、平和だったオクヘイマならば声をかけぬ男はいないだろう程に蠱惑的な美女がそこにいた。

 

知らない筈の人物なのにファイノンは知っている、成長しても少女の面影を残す女性は……

 

「エリシア……なのか?」

 

成長したエリシアが存在していた。その問いをいつもと変わらない筈なのに今までにはないほどの蠱惑的な色気を孕んだ微笑みをもって返してくれた。

 

「素敵なサプライズは気に入ってくれたかしら。可愛い美少女改めて、これが「歳月」の半神としてのアタシよ」

 

驚きだった、いままでいなかった「歳月」が現れたこともそうだが、エリシアが担ってくれるならばこれで問題なく再創世が行えると歓喜が溢れていく、手を差し出そうとした瞬間に

 

火花が散り、甲高い衝突音が鳴り響く。

 

「あら、堪え性がない猫ちゃんね」

 

「やっと確信できた。あんたがそうだったんだね、エリシア!!!」

 

余りにも急展開にファイノンの理解が追いつかない。どうしてサフェルがエリシアに襲いかかったのか、初めから予期されたかの様にエリシアはそれを防いだのか。仲間なのにどうして?

 

「いけしゃあしゃあと! アンタ歳月の半神になったと言ってるけど、どうして火種を返還していないんだ!!」

 

視線を背後に移せば返還されたのならば灯される筈の「歳月」の座は沈黙している、まるで自身の永夜の帷に包まれた様に。

 

待ってくれと声を掛けようとしても自分が知らないことを前提に会話が繰り返されるために着いてくことが出来ない。そんな戸惑いだらけの思考が纏まらない。

 

「答えろ、救世の坊やを裏切らないって言ったのは嘘だったの!?」

 

世界が止まった気がした、サフェルの言い放ったことが遠く聞こえる。信じられない、だって「歳月」の半神として駆けつけてくれたんだ筈なんだ、その彼女が裏切り者な訳は……

 

「嘘じゃないわ。あたしはいつだってファイノンの味方よ」

 

「アタシたちは再創世を臨んでいるのにそれを邪魔する様な真似をするなんて裏切りも変わりないじゃないか!」

 

「ふふ、勘違いしているけどあたしにとっては再創世を完遂する事こそが彼に対する裏切りそのものなんだから」

 

今度こそみんなが止まった気がした。預言に謳われた裏切り者がエリシア? もうオンパロスは滅ぶ、唯一の安全圏であったオクヘイマは終末を迎え、今まで食い止めてきた暗黒の潮は流れ込み人々が死に絶えるまで一刻の猶予もない筈なのに?

 

「待ってくれ……再創世を阻むことが僕を裏切ることに繋がるなんてどういう事なんだ!?」

 

理解ができない、あんなに近くにいた筈のエリシアがどんどん遠くへと離れていくような錯覚を覚えてしまう。

 

「先生は言ってたじゃないか、再創世は幾度も繰り返されてきたって。その証明だってキャストリスがしてくれた、なのにどうしてなんだ!?」

 

再創世の真実についてはアナイクス先生が魂を賭けて暴いてくれた、キャストリスがその宿命を以って証明してくれた、それを否定することはその生を否定することに他ならずファイノンはそれを受け入れることは出来ない。

 

「そうね、先生の導き出した通り、再創世は主神になった黄金裔の記憶から再構築されるのは事実。それは間違いないわ……でもね、今回だけは違うのよ。これまで繰り返されてきた再創世は起こらない、絶対に」

 

そこから彼女の口から語られたのは残酷な真実だった、僕としては悪趣味としか言えない程に、滑稽なくらい真実を。

 

「このオンパロスはとあるものを生み出す為に創られたの、でもそれは完成には程遠い状態だったの。とてもじゃないけど実用なんて出来た物じゃないわ」

 

「だからとあるプロセスをもって完成度を高めていったの、再創世って言う名前が付けられたね、そこから気が遠くなるほどに繰り返したの」

 

「その果てにようやく完成に足る存在が産まれたの、NeiKos496とタグつけられた存在よ」

 

「本当に欲しいものはそれだけ、後は用済みの不要品。再創世が終われば棄てられるだけ」

 

「これがオンパロスにおける真実よ」

 

余りの残酷なもはや喜劇と言うしかない真実に閉口するしかない、火追いの旅の真実は破滅への旅路でしかないことに僕もサフェルさんもただただ受け止めるしない。

 

「ねぇ、エリシア……それにしては随分と落ち着いているね、アンタ。別の手段があるんでしょ?」

 

そうだ、仮にもこの真実を知っているならば何か対策をとっている筈。

 

「ええ、サフェルが考える通りに別の手段を取ってアタシたちは抗ってるわ。ある半神となった黄金裔が12の火種を使い、とある黄金裔の魂を触媒にしてこのオンパロスの時間を巻き戻して時間を稼ぐっていう方法をね」

 

だけど悲しいかなそれは、先延ばしの時間稼ぎでしかない。そして嫌な考えが繋がってしまった。考えすぎだとしても頭から離れない。

 

「これだけは教えて欲しいかな…………一体幾つ時巻き戻したの?」

 

「ふふ、何回繰り返したかは秘密よ。もしかしたら、これが2回目かもしれないし、ひょっとしたら数えきれないほどに繰り返したことかもしれないわね」

 

「僕からも一つだけ聞きたいことがある……オンパロスの時を巻き戻しているのはエリシア、君なのか?」

 

ただ、静かに哀しみが隠された慈愛の笑みが返答だった。それは脳裏に浮かぶ、ある仮説が真実へと近づいていくのが恐ろしい。

 

「まさか、巻き戻しをしているのは僕なのか?」

 

「それはどうかしらね? ひょっとしたら全く違う誰かかもしれないわよ」

 

だけど、僕が追求しようとするとエリシアは曖昧にしてはぐらかそうとする。

 

「どうして……どうして教えてくれなかったんだ! もっと早く教えてくれれば取れる手だって、もっと多くの人に相談をすればもっといい手段だって考えられたんじゃないか!?」

 

「そんなに僕が頼りなかったのか!? 答えてくれ、エリシア!!」

 

「ううん、そんなことはないわ。あなたがどれだけ頼もしいかよく知ってるわ」

 

「最初はそう考えていたわ。でもね、その果てに一つの結論に辿り着いたの。それはこのオンパロスの中に存在する要素だけではどうにもならないんだって」

 

その表情からはある種の諦観。僕が言ったことなんてどれだけ試したんだろう。だけど結果は今もこうしていることから無駄に終わってしまったんだろう事が言葉にしなくとも伝わってくる。

 

「長話もこれまでよ、今からあなたたちの火種を奪うわ。死にたくないなら抗って。此度のオンパロスは終焉を迎えた、されど残酷な運命に立ち向かう英雄は訪れず。時をさかしまに巻きましょう、何もかもね」

 

そう言ってエリシアが武器を、弓に矢を番える。語るべきことは全て語ったと言わんばかりに彼女から鋭い気配が満ちていく。あまりにも一方的な闘いの始まりだった。

 

 

 

 

「それそれそれぇ!」

 

そこからの戦いはほとんど一方的だった、彼女が操る弓術は絶技と他ならぬほどであり、その一射が吸い込まれるように……いや、まるで自分から当たりに行っているのではないかと錯覚させるほどの精密な攻撃を続け様に放ち続ける。

 

だがこれくらいでどうにか出来るほど英雄たちは軟弱ではない。2人とも自身に向けられた矢を切り払い肉迫せんと前進する。

 

だが恐ろしいのはこれからだ。到達するまで後数歩のところまで踏み込む直前に本能が警告を鳴らす。

 

「頭上ご注意よ」

 

2人揃って後退する、その直後に目の前から矢の雨が降り注ぐ。あのまま進めば2人とも矢の雨に晒されていただろう。

 

そこにはエリシアと同じ幻影が居た。先程の矢の雨はそれらが放った物。幻影だとしても放たれた矢は現実になっていた。

 

「くっ!? 近づくことすらままならないなんて」

 

それこそがエリシアが持つ過去を再現する「歳月」の権能。

 

「ほら、これだとジリ貧になっちゃうわよ? 早く追いつかないと穴だらけになっちゃうわよ」

 

厄介な事にエリシアは半神としての力を使い熟している。「歳月」の神跡によって過去のエリシアが隙を埋めるように別方向から射抜きに来る。また切り払って防ぐが再び距離を取られてしまう。

 

「いたずらはダメよ、イタズラ猫ちゃん」

 

放たれた矢がサフェルさんの手にあるコインを撃ち落とされていく。サフェルさんが切り返す一手、超速の発動を的確に潰されている。そして、そんな一方的な状況は続き、最悪のそれは訪れた。

 

「これで、チェック」

 

サフェルさんの真後ろ、エリシアの幻影がそこにはいた。たったこの為に誘導されていたんだろう。

 

気の抜けたような小さな声が響く、それは肺ごと心臓を貫いた為に漏れたそれだった。

 

この為に仕込まれた過去の残照の一矢にもたらされたサフェルさんの、呆気ない最後だった。

 

 

 

 

 

その直後に水袋を破いたような鈍く湿った音が響く。

 

「あら?」

 

エリシアの胸から腕が生えていた。背中から貫通するように突き出されていてその手の中には彼女の「歳月」の火種が握られていた。

 

「もう、せっかちなんだから」

 

間違いなくそれは致命傷だ。心臓を確実に潰されたからモーディスみたいな特別な素質がなければ死には十分なほどだ。

 

「どうして……お前が!?」

 

倒れゆく彼女を抱えたのは、処刑人。同時に彼女から火種を強奪したのもまた。

 

「もう、びっくりしたわよ」

 

でもエリシアは優しく信頼に満ちた笑顔を向けていた。心臓を貫き、致命傷を与えた相手なのにまるでハグをしてるのと変わらないような親愛のそれとして受け入れている。

 

「後はお願いね」

 

言葉は必要ない。お互いがやるべきことをやっただけなのだからそこには負の感情はなく、強い結びつきがそこにはあった。

 

「おやすみ、『また明日』」

 

それがエリシアの最後、なのにその死に顔はとても穏やかに安らぎに満ちていた。その直後に彼女の遺体は燃えて消え去る。

 

「そんな、まさかお前は…!?」

 

見えた、見えてしまったんだ。処刑人の顔を、それを見て僕は納得してしまったのだ。

 

処刑人は、僕だ。今にも燃え尽きかけている崩れかけの自分。それが処刑人の正体。このオンパロスを延命させるために燃え滓の体と意志で動く壊れかけの、否、壊れた英雄の末路だった。

 

エリシアが火追いの旅に背いたのか、それはもう1人の僕の負担を和らげようとしてたんだ。出来る限り手伝う事で火種を一箇所に集め、動く必要を減らすために彼女は火追いに身を置いていたのだ。

 

「ははっ……こうなると笑うしかないね」

 

側から見れば滑稽にも程がある。でもエリシアやもう1人の僕も足掻いていることは痛い程に伝わった。

 

「だけど、何故……エリシアを殺したんだ!!!!」

 

だからこそずっと寄り添ってきた彼女を殺した事が許せない。それを皮切りに最後の死闘が幕を開ける。

 

そして、僕の結末も幾度繰り返されたように同じ道を辿る。それは335ー万回目の永劫回帰の結末。




エリシア:ついにお披露目の半神フォーム。見た目的には3rdよりの姿でどちらかと言えば侵蝕よりのカラーリング。それによる戦闘方法は過去からこの姿で放った攻撃を再現して置き射撃をしたり、これで呼び出せる過去は周回のみとは言ってない。
ただこうなると火種確保のためにカスライナに心臓ぶっこぬかれるのであんまりやりたくはない。ある程度から火種を集める負担を減らすために火追いの旅に加わるようになった。一箇所に集めた後にまとめて狩れるようにと、そうでもしないとカスライナの肉体の限界が近くなっている事に薄々悟っている。
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