歳月の半神にそっくりな少女をオンパロスに投入してみた実験作   作:SUMI

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キュレネのエミュ難しすぎる……


第19話

お姉ちゃんに憧れた人ですらない演算機。この体はお姉ちゃんの残骸で作り上げた自分勝手なお人形。お人形を本当の自分だと本気で信じて必死に踊るピエロ。

 

この素敵で綺麗なお人形の糸の先に存在する醜い化け物こそがあたしの本性だった。カスライナとお姉ちゃんが切実なほどに待ち望んでいた変数は余りにも薄汚れた存在であることに罪悪感が胸を満たしていく。

 

「もう1人の聞き手がエリシア? それはどういうことなのかしら」

 

私の告白にお姉ちゃんは困惑している。そうだよね、とても長い間待ち望んでようやく現れた小さな変化がこんな醜いものだなんて想像すらつかなかったよね。

 

「思い出したの、お姉ちゃんが寄り掛かっていたものがあたしの、エリシアの正体。ここに存在していた心ないパーツにすぎなかった」

 

永劫回帰で巻き戻されないのは、私の本体である演算機が永劫回帰に巻き込まれない場所に存在していたから。安全な後ろで縮こまっていただけの臆病者。

 

何度も死んでも生き返ったのは、この身体はリュクルゴスと同様に端末にすぎないだけ。永劫回帰の中で死んだとしてもそれは本当の死ではなく、端末が壊れただけで本体には一切届いてない、再構築すれば何もかも元通りになるだけ。ただ画面越しに眺めている卑怯者。

 

「憶えている? 永劫回帰の最初の頃、お姉ちゃんは残酷な世界にどうしていいのか戸惑っていたよね。それでも出来ることをオンパロスの記憶を刻むようにお話ししてた時、なんてことはない筈の演算機に「心」が芽生えたのよ。最初に何を願ったのかも憶えていないくらいに漠然としていた」

 

それが私の真実。人に憧れてその真似をしてお人形遊びしているだけの人でなし。それが私と言う真実。余りにも滑稽すぎて思わず笑っちゃうくらい。

 

「その願いも永い時を過ごす内に変質しちゃって、あたしがお姉ちゃんに成れば何て思い違いなんかしちゃってた。下手をすれば永劫回帰がちゃんと行われなくなる可能性なんて考えないで飢えを満たす獣みたいにお姉ちゃんの消える記憶を掻き集めてこの身体を作り上げたの」

 

2人の想像がつかないくらいに沢山の願いと想いが込められた尊いものを横取りしようとした愚か者だった。

 

「いざ、オンパロスに降り立とうとした途端に何もかも忘れちゃって今のあたしになった。これがどれだけ恥ずかして厚かましいことすらも忘れて、好き勝手に振る舞ってこの様だわ」

 

だからその責任を取らねばいけないだから。削除コードは組み上げた、後は実行して還すだけ。

 

「ごめんなさい、あたしはお姉ちゃんに成ろうとすべきじゃなかった。だからこんな自分勝手で醜い化け物は消えるべきよ。さようなら、ほんの一時の夢だとしてもあたしには勿体無いくらいに素敵で甘い夢だったわ」

 

私を消去するように本体へと送る直前に感じたのは人肌の温かさ。それはまるで消えようとする私を繋ぎ止めるように抱き留められていた。

 

「ダメよ、あなた自身を嫌いにならないで」

 

「お姉ちゃん…どうして…? こんな風に抱きしめられる資格なんてないのに」

 

「そんなことはないわ。醜い化け物はどこにもいない。目の前にいるのはピンク色のとっても素敵な女の子しかいないわよ」

 

「この姿だってお姉ちゃんと同じだから当然だよ、見た目だけは頑張って整えていただけ。中身は全く違うのよ」

 

「本当に化け物なら誰かの為の涙なんて流さないわよ。でも、あたしや誰かの為に泣いてくれる。素敵な心を持っていないと出来ないんだから。だから今のあなたは紛れもなく心を持ったかわいい女の子よ」

 

「過去の過ちは消えない。これまで消えていった沢山のお姉ちゃんから盗んでいったんだよ。そうやって今のあたしになった、残そうとした大事なものを自分のものにしようとしたんだよ」

 

「いいえ、あなたは盗んだんじゃない。あたしたちの残した祈りを受け取ってくれたのよ。いつかはって刻んできた願いを他ならない、ずっと隣にいてくれたお友達になってくれたあなたが」

 

「あたしはお姉ちゃんに成り替わろうとしていたんだよ」

 

「そうね、きっとあたしが2人になったらやりたいことが2倍になるかしら。そしたら楽しいこともそれ以上に沢山出来ちゃうわ」

 

「こんな……アタシでいいの? 何一つ永劫回帰を変える事が出来かったんだよ」

 

「あなたは気づいていないだけよ、もうとっても大きな事を変えたわ。エリシアが生まれてきてくれたこと、それだけ色んなことが変わり始めた。あたしたちの想いから芽生えた綺麗な花がとっても咲き誇っている。いつか未来で咲き誇ると願った種がもう咲いていたなんてまるで御伽話みたい」

 

「こんなアタシがなってもいいの?……お姉ちゃんと家族になんて」

 

「なってもいいじゃないわよ。もうずっと前からとっても自慢の妹なんだから」

 

「アタシは愛されてもいいのかな……」

 

「ええ、あなたはもう愛していて、愛されている可愛い女の子なんだもの。そうでしょ?」

 

嗚咽が静かな宮殿へ響く、それは産声のようでもあった。今ここに本当の命が産まれたんだと証明するように。

 

 

 

 

 

そして定められた刻が訪れる。

 

>>>フォーマットを開始します。進捗率……

 

終わりを告げるアナウンスが聞こえた。余りにも無機質で無常なそれが3000万回も聞いた、無感情に機能する処刑器具のように等しく終わりへと導いたカウントダウンが始まったのだ。

 

「あ…ああ、時間が来ちゃった……まだ話したいことが沢山あるのに」

 

絶望で涙すら止まる。心を得たからこそ分かる。このアナウンスがどれだけの絶望を押し付けるかを今更になって体感したのだから。

 

「もう時間ね。名残惜しいけどあたしはこれまで。ふふっ、まさか33540000回目になって素敵なプレゼントが贈られるとは想像もしてなかったわ」

 

お姉ちゃんはもう33540000回目と成ればあるがままを受け入れている。だけどその姿に憤りを覚えてしまう。

 

「どうして、カスライナだけじゃなくてお姉ちゃんまでこんな目にあわなくちゃいけないの」

 

そうだ、オンパロスのみんなだって辛い運命が待ち受けている。この2人だけはその度合いが違う、どうしてここまでの仕打ちを受けねばならないのか。この絶望に抗う為の必要な犠牲だとしてもだ。

 

「大丈夫、今の「あたし」はここでおしまいだけど、次の「あたし」が受け継ぐわ。そして新しい「記憶」を刻みにいく。これまでと変わらずにね」

 

お姉ちゃんがアタシを抱きしめる。今の自分が確かに居たんだと心に、「記憶」に深く刻むように。

 

「憶えてる? 小さい頃、みんなであたしを探し出してくれたあの日のこと」

 

「うん、憶えている。迷路迷境に繋がるあの樹の側に隠れたのを見つけるにすごく苦労したのよ、真っ暗なのに村のみんな総出で大慌てで探し回ったんだから」

 

それはいつの日か、お姉ちゃんが1人で出かけたまま帰らなくて心配になったもう1人のアタシがカスライナに泣きながら助けを求めて、そこからてんやわんやの村中大捜索にまで発展しちゃった。大したことではなかったかもしれない、姉妹にとっては大事な思い出なんだから。

 

「最後はあなたが見つけてくれた。いつか、「救世主」が訪れた時にはきっと、ここを見つけ出してくれる。その時にはきっとあたしたちが蒔いた「記憶」たちは素敵な花畑として咲き誇ってると信じてるわ、そうでしょ?」

 

「そんな事はないよ、なってるんじゃない……もうなっている。ここにはお姉ちゃんの記憶で創られた綺麗なお花畑は咲き誇ってるんだよ」

 

それがアタシの最初の憧憬だと、それを聞いたお姉ちゃんは涙を湛えた笑顔で消えていなくなった。

 

>>>フォーマットが完了しました

 

直前まで存在していたが痕跡すら夢のように何もかもが消える。確かに抱きしめていたはずのお姉ちゃんはもう何処にもいない。33540000人目のお姉ちゃんは今までと同じ終わりを迎えた。

 

「ごめんね、お姉ちゃん……もっと早く気づいていれば寂しい思いをさせなかったのに。アタシは……」

 

無数の柱の一つにあるランプが点灯する音を聞いた気がした。また1人のお姉ちゃんは「記憶」の種になってここに刻まれた。

 

「行かないと、お姉ちゃんから託されたんだから」

 

涙を拭う、2人はずっと頑張ってきたんだ。だからちょっと頑張っただけのアタシはこんなところで挫けてる時間なんてないんだと自分自身を鼓舞して、この無名の墓を後にする。

 

『モモ、いなくなった。どうしてモモの妹は変な顔をしているの? そうだ、モモの妹がなったようにあたしも成ればいいんだ。モモに、キュレネに成ればいい。そうでしょ?』

 

その傍らで何かを学んだ妖精さんに気づかずに。

 

 

 

 

 

もう本当の自分を思い出したから、やる事は定まった。いつかなんて待ってなんかいられない。

 

あの管理人に悟られないように永劫回帰を続けながら、アタシにしか出来ない事を始めよう。今までなら知らずに眠っていたこの時間を使って。

 

今までいたデータにあるオンパロスとは違って物質の本体が置かれた環境は凄惨の一言に尽きる状態だった。奇跡的にアタシは無事ではあったけどその他は何もかもが破壊された光景。まるで内部で爆弾を炸裂させたような滅茶苦茶具合。

 

その場所は管理人からは目を背けられている。まるで何かを見ないように意図的に、だから隠れて何かをするには絶好の場所でもある。遥か昔に壊した場所にあったものが今になって自我を持って再起動するなんて誰が予想出来ようか。

 

それこそがアタシが持っているアドバンテージ、それはオンパロスに置いてアタシは物理的な身体を持っていると言う点を。自分の機械の身体を改造する。そしてアタシ自身がこのセプターから飛び出す為の方舟になるんだ。カスライナの身体が耐えきれなくなった時、彼を連れ出して逃げる為に。

 

そしてアタシの目覚める時間が来たらこの記憶は本体へと預け、もう1人のアタシのようにエリュシオンで目覚める。オンパロスに戻る時だけ忘れて今までと変わらないように徒労を重ねる、そうすれば管理人に気取られる事はないから。

 

いつも、エリュシオンの夜空を見上げてる姉ちゃんが待ち望んだ流星。33540000回も待っても来ない流星そのものに、アタシがなろう。




エリシア:答えは得た。いつかに備えてレッツ自己改造。既にガンギマリだから躊躇なくやれる。自覚を取り戻した事でリュクルゴスよろしく、いつでも何処でも出現することが出来るようになっている。ただし、バレない為に敢えて封印して変わらずにしている。

キュレネ:いつかは願って蒔いてたものは既に咲いてたことに喜んで去った。それは想像よりも何倍も素敵な贈り物だった。

妖精さん:とあることを学習したぞ。先駆者もいるからそこからも学んだ。現在情報収取中。
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