歳月の半神にそっくりな少女をオンパロスに投入してみた実験作   作:SUMI

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第2話

「あれ?……あたしどうしてここに?」

 

まるで夢から目覚めるように意識が浮上する。目前に広がるのどかな光景、なだらかに舗装された坂道。ふと遠くを見渡せばそこには四本の腕を持つ巨人がちっぽけな私たちを見守るようにそこに存在する。あれこそがオンパロスにおけるタイタンの主神、ケファレの御神体がそびえる神秘的な光景に私はよく憶えている。

 

「ここはオンパロスに来た初めての場所よね……どうしてここにいたのかしら?」

 

私1人だけでは何も情報なんて一つも得られないからとにかくオクヘイマに行こう。何をするにしてもまずは情報を得るために行動しないと。

 

戻ってきたオクヘイマは相変わらずにそこに存在していて、まるで初めから紛争の襲撃なんてなかったかのようにその白亜の町並みはそびえたっていた。

 

そのことに私はわずかながらの安堵を覚えながらの一人の守衛を声を掛ける、以前から懇意にしている人でかつて難民だった私をいろいろと気をかけてくれた恩人である人。だが彼からの返事は

 

「誰だ貴様は?」

 

「………………え?」

 

まったく知らぬ人への対応だった。まるで歳月が何もかもを消し去るように私のことを忘れされられたように。全てが元通りになってたのだ。

 

そのあとに何とかかわいい美少女スマイルで煙に巻いた後に、情報を集めてみた結果驚くことが判明したのだ。今は私がこのオクヘイマに初めて来た時と同じ年だったの。

 

彼に見送られて儚いも悪くはない人生だったなと思ってたら、歳月の奇跡が起きたのか、タイムスリップするなんて不思議体験を経験して二度目のエリシアちゃん人生及び三度目の人生をもう一度歩むなんてとても贅沢な事をしているの。

 

「かわいい美少女司祭のエリシアちゃんはくじけないわよ!」

 

ちょっと、ううん、想像以上に初めましてと言われるのは心に来るものがあって一日くらい寝込むくらいに凹んじゃった。これがあの時ファイノンが感じたことなのかと実感させられたのよね。

 

そんなかわいいエリシアちゃんはそんな辛い経験にも耐えられる強い子なのです。……いえ、そう強がらなければ折れちゃいけないなにかが折れそうだから。きっと、私なりの強がりなんだと思っている。

 

そうして難民の身分でオクヘイマに流れ着き、歳月の祈言を使って日々の糧を稼ぎ、ファイノンと出会って振り回されて…

 

 


 

 

 

そして、また私が死んだはずの日が訪れたの。そうファイノンが遠征に赴いた隙を狙う襲撃が、予定調和のようにそれは訪れる。

 

甲高い音が響く、硬いもの同士がぶつかり合った音だ。タイタンの眷属、全身が石材で構成されるそれは何一つ持っても人を超える質量と硬度故に全てが凶器となる。その一撃を防いでも衝撃までは防げない。踏ん張れないからあえて吹き飛ばされて転がることで衝撃を受け流していく。

 

「もう、せっかくのお洋服が汚れちゃうじゃない!」

 

その対策として選んだのは盾。とにかく生き残ることが一番だと考えた私は敵は倒せなくてもよくてケガをしないためにも手に取った。

 

敵を打ち倒す鉾じゃなく守る盾を選んだのはきっと私は信じてるだろう。いつの時か間に合いは出来なかったけどそれでも駆け付けてくれたあの白髪の少年を。

 

小さな体を何度も転がしては土に汚れながらも相手の攻撃を受け止める。市民を逃がす事は出来てるが目の前の眷属は私を逃してはくれない。このまますると眷属が仲間を呼ぶ可能性だってある。

 

攻撃は防げはしたもののついには疲れで盾を取り零してしまう。相手は無機物であるがために疲れを知らないが私はすでに疲労困憊で動きすら緩慢になる。もう次の一撃は避けられずに前と同じように私を死に至らしめるだろう。

 

視界が遅くなっていく。きっとそれは走馬灯と言われてるそれなんだろう、奇しくも前回で致命傷を負った一撃とよく似ていた。私はそこで諦めがついたのだろう。結局また間に合わなかったな。その死神の手は届きーーーーー

 

「きゃ?!」

 

黒い風が吹き荒れた。それはタイタンの眷属なんていなかったようにたったひと振りで水を切るようにあっさりと両断する一連の動きなんて私には見えないくらいに洗練させた剣技を持って、黒衣に身を包んだ長身の剣士がそこにはいた。その後ろ姿を知っている、語っている。一瞬だけ彼の後ろ姿が重なったのだ。

 

今度こそ間に合ったとーーーーーーーーーー「……ファイノン?」

 

そんなはずはあり得ない。きっと間に合ったのならこんな黒づくめな恰好するはずないし、もっと安心させるような言葉とともに現れるはずだ。黒衣の剣士はただ佇んでいる。

 

「えっと……その、あなたのおかげで助かったわ。本当にありがとう」

 

「礼など別によい、君が無事ならばそれでいい……なぜ笑っている?」

 

「あれ?本当だわ。でもあなたはとても怖そうな人なのに、なんだか安心しちゃうの、そっけないのがどうしてか照れ隠しに思えちゃって。気に障ったらあやまるわ……それにしても、どこかで会ったことがあるのかしら?」

 

目の前の剣士の動きが固まる、この質問をされるのが予想外なのかどうやら返答に困ってるようだった。

 

「…………間違いなく初対面だ。だが故あって君を助けた。これから安全な場所へと送ろう。件の黄金裔も戻ってきてると聞いている。そこならば安全だろう」

 

私を安全な所まで送ろうとしたその瞬間、私のなにかか歳月のタイタンがきまぐれなのか、この瞬間に予言じみた危機感が知らせてくる、黒衣の剣士に脅威が迫ってくると、言葉にする前にそれはやってきた。

 

ォォォォォォオオオオオオ!!!!!

 

黒い影が疾走する、全貌は見えないがとても鋭い何かを抱えて黒衣の剣士に向かって猛突する。気が緩んだのかそれに彼は気づいてない。このままでは無常にもこの人は凶刃に倒れてしまうだろう。今この街を襲う暴力に抗える人が減ることは絶対にいけないんだと。

 

「ダメっ!!」

 

気がつけば体が動いていた。動き始めた途端に世界が薄紫にそまる。私を除いた全てがゆっくりになっていく、その感覚は歳月の祈言と同じ、この窮地にオロニクスが力を貸してくれたのか私以外の周辺の時間の流れが遅くなっている。

 

「あっ……」

 

ただ悲しいかな、非力な私では黒衣の剣士を押し出すことすら出来なくて、私に赦されたのは身を挺して盾とするだけ。硬い鋼が私の胸を裂き心臓を破壊し、骨を断つ感覚。痛みなんてなくただただ熱いとも冷たいとも感じるだけの感覚を知っている。それは死の気配、紛れもなく致命に至る傷。

 

(どうして……あなたが?)

 

肺も断ち切られた為か言葉を口にすることは許されずにただ血を吐くことだけ、私の黄金の血を浴びた襲撃者は

 

 

ファイノンだった

 

 

今回の死に際の光景はファイノンの疑問と唖然と絶望が入り混じった表情で私を見つめる姿と死にゆく姿に理解が追いついてない黒衣の剣士の姿で、前と比べればロマンチックな終わり方じゃないなと場違いな感想を最後に意識が闇へと落ちていった。

 

 

 


 

 

 

カスライナにとってエリシアは最初は故郷の少女を重ねていた。初めて目が合った時は理性では否定したのに感情が、キュレネだと言ってる矛盾した感覚に僕自身が振り回されてた。無我夢中で追いかけて、やっぱりと言うべきかエリシアと言う生き写しなほどに似ているだけの少女だった。

 

「やあ、エリシア」

 

別人だとわかっていたとしても無意識でキュレネを重ねていて。今までの欠けてた時間を取り戻すかの様に共にしていた。だけれどそれはエリシアをひどく侮辱しているのではないかと内心恐怖を覚えていた時もあったのに、そんな独りよがりな僕のことを

 

「ファイノンがあたしを通して別の誰かを見ていたのは最初から気づいてたの。でもね、あんな顔をしてあたしを見つめる人を放っておくなんて出来なかったわ」

 

「それにね、あたしは難民だったからここに来た時はひとりぼっちで寂しかったの。でも、あなたがいてくれるようになってからそんなこと感じなくなったのよ」

 

そう言って優しく微笑んでくれた彼女に僕は胸の内に感じていた空虚が満たされていくのを感じたんだ。彼女と一緒にいる時だけはファイノンではないカスライナで居られる唯一の時間だった。

 

だからこそ紛争によるオクヘイマ襲撃に焦燥の念が燻る。ヤヌサポリスへ赴く前に彼女から相談を受けていたのだ。何か嫌な予感がすると残ってほしいと引き止められてた。だがヤヌサポリスにも困っている人がいるならば僕は放っていくわけにはいかなかった。この事自体は微塵の後悔もないが早く戻ってきていればともどかしさを感じてもいた。

 

数多の眷属たちを切り捨てながら市街を駆け抜ける、彼女の無事を祈りながら我武者羅に探し続ける。その光景は僕の考える以上に最悪だった。

 

ようやく見つけ出したキュレネ(エリシア)と傍にいるキュレネの殺した敵(黒衣の剣士)を見た時、頭が考えるよりも体が動いてた。かつて故郷を滅ぼされたとき、僕の目の前で彼女が切り捨てられた光景は今でも目に焼き付いている。もう二度とあの光景は繰り返させない。あの時の無力な少年でなくなったからこそ取った行動だったのだろう。護るために敵を排除する行動は今までの人生の中で一番の鋭さを持って駆けた。

 

だからこそ結果が、理性も感情も魂も何もかも受け入れない、いや受け入れることを否定したがってる。

 

「…………どう、して」

 

無情にも突き刺したのは黒衣の剣士ではなく、エリシアだった。理解しがたいが黒衣の剣士を庇ってその身をもって盾としたのだ。

 

「エリ、シア……」

 

力なく垂れさがる顔には生気などなく、かつては優しく僕を見つめていた瞳は何も写さず、手に滴る黄金の血が宿っていたはずの命が流れ消えていく。それは既に魂のない肉塊でしかない。

 

肉を断ち、血の流れる感触が絶望を叩き付けてくる。黒衣の剣士への殺意を込めた一撃は少女を即死させるには余りある威力が秘められてたのだ。

 

黒衣の剣士が彼女を盾にしたのだと感情が記憶をすり替えようとする。だが顔に浴びた血の温かさが、自分へと向けられた光なき瞳の死に顔が嫌が応にも真実を突き付けられる。

 

「ち…………ち、がう。僕はただ、ただ……!?」

 

救いたかっただけなんだ。いや、違わないカスライナ(ファイノン)キュレネ(エリシア)をこの手に掛けたのだ。黒衣の剣士への無謀な憎しみの憤怒に身を任せた対価に彼女を永遠の眠りに送り届けたのだ。

 

「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

 

ただただ慟哭がオクヘイマの片隅に響きわたる。それはまたひとりぼっちになった少年の泣き声のように

 




エリシア:ファイノンから故郷が黒衣の剣士に滅ぼされたことは聞いてるが目の前の本人と結びつかなかった結果曇らせ発生させちゃった困ったちゃん

ファイノン:そうだ、英雄。お前が殺した。この週のファイノンは人型に剣を向けることが困難になった模様(向けることが出来ないとは言ってない)

フレスティ君:今までの記憶から彼女が今までにはいない新たな因子と発覚、素体が素体としてのこともあって人間性を取り戻して助けようともう少し頑張ってみる、普段は面倒なためやらないアグライアの金糸も排除するなんてこともやったけど、結局失敗しちゃって落ち込んで崩れたファイノンはどうでもよかった。ただ次あるからそっちに意識が行ってる。ちょっと困ったことにあいつ心折れてるのではと心配(杞憂)

都合のいいときだけ傍観者名乗る機械:いい感じに負荷がかかってご満悦
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