歳月の半神にそっくりな少女をオンパロスに投入してみた実験作   作:SUMI

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第4話

さてまたもファイノンに見送られながら逝った美少女、エリシアちゃんなのですが、今週も懲りずにヤヌサポリスに滞在中です。

 

「んー?ここじゃないかしら?こっちのほうから呼ばれた気がしたのだけど」

 

死ぬ間際に何か、気になる何かが引っ掛かった。何かを捜し求める何か、迷子の子供が母親を見つけられずに悲しく泣きじゃくる、そんな感情。それを私も探していた。きっと、ずっと寂しくて独りぼっちで探しに行くことも出来ない閉塞感に満ちているそれを見ていられなくて

 

「あたしが探してあげるから、だから待ってて」

 

こうして危地へと身を投じている。それにファイノンなら、こうするだろうと知っている。でも未だに非力な私では戦闘をするには荷が重すぎるから、慎重に避けていく。下へ下へと下っていく、その足取りは宛ら冥界へと降りていくオルペウスのよう。

 

「ここ、なんだか寒いわね。魂まで凍っちゃいそうだわ」

 

体中が震えそうになる、されど物理的な冷却はない。超常的な何かを孕んだ空気に足がすくみそうになるけれどそれでもなけなしの勇気を振り絞って進む。

 

下りきった先に見たのは常闇と静寂に包まれた山々の間に存在する圧倒的な何か。私とは比べることすら烏滸がましいほどに神々しい存在

 

「なんて存在感なのかしら」

 

そう、目の前のがこのオンパロスを最初に世界を紡いだ原初の、運命を司る三柱の神。私が信仰する神

 

オロニクス(「歳月のタイタン」)

 

他の人ならばその存在感に圧倒されて、膝をつき頭を垂れるだろう。でも私の目には偉大なるタイタンではなく

 

「どうして、貴方は泣いているの?どうして、そんなに寂しがっているの?あたしもなんだか哀しくなってきちゃうわ」

 

1人寂しく泣いてる子供だった。どこにも安らげるものなんてなくて怖くて泣きじゃくる子供そのもの。

 

「ああ……汝、とても懐かしい。どうしてかは分からぬ……汝には嫌な気配がしない」

 

タイタンの囁き、それは言葉にあらず、常人には理解できぬ高次の呼びかけ。なのに私には聞こえる、感じられる、理解できるのだ。

 

「余は動けぬ、ここに居たくないのに余を縛り付けるのだ……」

 

「オロニクス……あなたは……」

 

「そうだ、余は寂しい……愚かな予言に騙され、躍らされて同胞たちが虐殺者(黄金裔)に殺されていく。余は怖い、いつも人は自分の都合で捨て去る」

 

きっとそれを知っている、火を追う旅、迫りくる暗黒の潮を払いこの壊れかけた世界を再生させるためにタイタンの神権を追う旅路。私もファイノンから幾度も聞いている。

 

「ごめんなさい……」

 

いつの間にか涙が溢れてくる。私もそれを止める理由がない。ヤヌサポリスでの難民たちと共にいたからこそ人々が火を追う旅の果てにある世界の再生を切望しているのが痛いほどに分かるの。

 

でも目の前のタイタンだってそうなのだ。超常の存在であるけれど根本のところは私たちと何一つ変わらない。兄弟と共に過ごし、喪失を恐れ、死におびえる子供そのもの。望まぬ役割と押し付けられて放り出すことすら許されない。

 

「あなたも、やりたくないことを無理やりやらされて、辛かったのね。でも、私は、私たちはきっと、きっと……」

 

最後にはファイノンたちはあなたを打ち倒すのでしょう。それを止めることは私には出来ないのだから

 

「よい……汝は懐かしいなにかを連れて余の為に涙した」

 

オロニクスもそれを分かっている。だからこそ最後の尊厳を守るために己の最後を決めたのだ。

 

「いずれ幕を引かねばならぬ時が訪れるならば余は……余が良きとする最後を迎えたい……汝……余の為に最後の唄を唄っておくれ……」

 

タイタンとして最後の願いは、とてもささやかなものだった。

 

「ええっと、あたし、その歌を知らないわ。知らない歌を歌えと言われてもどうしたらいいのかしら」

 

「問題はない……汝ならば憶えているはず、ただ思い出せないだけ……頼む、子守歌を」

 

ふと胸の内から何かが浮き上がる感覚が溢れている。

 

「ええ、分かったわ。あなたが安らげるようなとびっきりの唄を謳いましょう」

 

本当ならその唄なんて知らないはずなのに、いいえ、違うオロニクスが言ってる通り、ただ思い出せないだけなんだ。唄えない訳はない。息を整え…

 

「Ah~~♪」

 

オロニクスの為に唄おうとする言霊、それ自体が神跡になり唄に相応しいさざ波を過去から拾い上げていく。

 

「苦しくない、それに温かい……」

 

胸の内から込み上げてくるものを引き上げていく。ただただそれだけで旋律へと昇華していく。

 

 


 

 

時を同じくしてその場所に足を踏み入れる人物がいた

 

「足跡はここに続いてる。どうやら彼女はここに来ているのは間違いない」

 

ファイノンとトリビーの2人の黄金裔が難民たちによる嘆願によって訪れていた。だが、オロニクスのイタズラによって足止めされて思う様には進めずにいたが英雄たちの歩みを止めるには足らず。

 

「誰かが、歌っている?」

 

オロニクスの目前まで来た時に、歌が聴こえた。微かに聴こえてくる歌声、それは心が締め付けられるほどに聴き覚えがある。

 

それはあの懐かしき日の彼女がよく口にしていた鼻歌の……そんなはずはない。間違いなく彼女はあの日、黒衣の剣士に……

 

「驚きまちた。まさかあの詩を謳える人がいるとは」

 

「トリビー先生、これを知っているのかい?」

 

「とても昔のことになるけど、オロニクスがこの詩を聴きたいってことがあったの。みんな応えようとちたけど、でも誰も謳うことが出来なくてオロニクスの機嫌を損ねることから、禁忌とちて謳うことを禁じられた曰くつきなの」

 

一体どうしてオロニクスが謁見することを許したこととその少女が謳っているのか疑問がちらつくが歩みを進め

 

オロニクスへと歌ってる人物を見た時、僕は言葉を失った。そこにいたのはキュレネだった。もういないはずの幼馴染がそこにいた。

 

オロニクスへと唄う姿は神秘的でそれ自体が神跡へと変じて嘗て栄華を誇っていた過去の残照が彼女を照らしている。

 

ただただ彼女の歌声に僕もトリビー先生も聴き惚れていた。

 

歌が終わる。彼女を照らしていた神跡も閉じて暗闇と静寂が戻る様はまるで舞台の幕が閉じたよう。

 

その後の彼女とオロニクスの対話に僕もトリビー先生も手出しは出来ない。いや、してはならないと、それは自覚はないけれどもきっと火を追う黄金裔としての責務。確かに彼女は遂行しているのだ。

 

そう長くはない時間の対話を終え、オロニクスが消える、そこには一つの結晶だけがあり。彼女の手に降りていく、それは火種、タイタンをタイタンたらしめているもの、僕たちが追い求め継ぐべきもの。それがたった今、彼女に託されたのだ。

 

「あら?こんなところまであたしの歌を聴きに来てくれたの?」

 

彼女が微笑みながらこちらへと振り向いていく。一瞬だけ故郷の麦畑が見えた気がした。その笑顔も優しいまなざしも何一つ違いが見えないくらいに同じだった。

 

 

 

「……え?」

 

 

一体それは誰の声だったか、この場にいた全員が発したのかもしれない。

 

彼女の胸から剣が突き出した。何が起きたのか理解する暇なく崩れ落ちていく。その姿の後ろに見えるのは……あの日と同じ、黒衣の剣士だった……

 

まるで故郷の悲劇と同じようにあの黒衣の剣士にキュレネが斬られた事と重なる。

 

「貴様ぁーーーーーーー!!!!」

 

ただ激情が満たし、剣を手に斬りかかった。

 




エリシア:なんか気になるもの探してたら火種ゲットしちゃった子。ある意味オロニクスの抜けてたもの持ってきたので、快く譲ってくれたがフレスティ君にやられたと気づく前に殺された子。歌ってたのはネームレスフェイス

ファイノン:恐ろしいくらいに過去を刺激されて激おこになる。ただし実力差は隔絶してるのでいいようにあしらわれる模様、しかも火種まで奪われてしょんぼり。

フレスティ君:彼女がなんでかここにいたからちょっと様子見にきたら歳月を継ぎそうになったので泣く泣く手に掛ける。最初のキュレネが自身の存在掛けてやったことを無為に帰す事は絶対にしてはならない(鉄の意志)

どっかの機械:ちっ、惜しい
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