歳月の半神にそっくりな少女をオンパロスに投入してみた実験作   作:SUMI

7 / 20
第7話

紛争の化身であるニカドリーに胸を貫かれた後、もう一度ニカドリーに挑むと言うよりまた襲われた結果、紙一重の差で敗北しました。

 

このままだと埒があかないと考えた私は、ちょっとアプローチを変えた結果、今……

 

「なるほど、彼女が「歳月」の……ええ、歓迎します。私はアグライア、皆から一時の指導者を任されています」

「あたちたちはトリビー、よろちくね。エリちゃん!」

「キャストリスと申します。共に歩める事を光栄に思います」

「モーディスだ。貴様が「歳月」を担うものか」

 

私は「歳月」の黄金裔として火追いの旅に加わっていた。あ、ファイノンもこの場にいるけど今現在頭が完全に止まっているわね。今周においては初対面だし、死んだはずの幼馴染が突然現れるとか理解するには時間がかかるしね。

 

何をしたかと言えば「歳月」の火種を手土産に火追いの旅の一員となることにしたのだ。別の案として神悟の樹庭にも行こうとは考えてもいたが今私が求めているのは再創世、火追いの旅とカスライナの行方だけが必要で、他は今の時点では必要ない。

 

もういっそのこと火追いの旅に深く踏み込む事にしたのだ。前の週で教えてもらったのだが火種を所持しただけでは神権を継ぐことにならず、それぞれに定められた試しを乗り越えて自身の身に取り込んで初めて半神になるのだ。そう、所持しているだけでは再創世は出来ない、半神になってこそ初めて行使出来るのだ。

 

オロニクスの火種の譲渡は初回よりもあっさりと進んだ、浮黎の一瞥を受けた事で更に特別な何かを宿しているのか、天父が汝を観ていると言って初回よりも快く譲渡してくれたのだ。問題は私は既に試しを乗り越えている、そう確信があること。きっと今すぐにでも儀を行えば成れるだろう「歳月」を担う半神へと。

 

カスライナを見つける為にいっそのこと私自身で誘い込むのもありかなと考えちゃっている。下手しなくても死ぬ危険マシマシなのではあるが数え切れない程に死んでるのでもう誤差の範囲であるのだろう。

 

「あたしはエリシア、偶然か必然かはわからないけど、「歳月」(オロニクス)に選ばれた黄金裔として、これからよろしくね」

 

誰も知らない片隅にひっそりと存在していた故郷が暗黒の潮によって滅ぼされた難民で流浪の旅の中、夢によりオロニクスに導かれ火種を譲られたとカバーストーリーは装っている。トリスビアスが最初の半神になったのもヤーヌスが彼女を選んだからだし、私もオロニクスに選ばれてるから大事な部分は本当なのでバレにくくしてある。

 

そうして私の黄金裔としての旅路が始まった……とは言いつつも実のところ、難民としてオクヘイマにいた時はほとんど変わっていない。ちょっとだけいいところに住んで何かが壊れたりしたらオロニクスの祈言で施設や道具を直して回ったりして暮らしのためのお金を稼いでって根本的な所は同じ。変わった点と言えばファイノンに連れられる時間が増えたとかアグライア様たちと一緒にお風呂入って親交を深めたりとか。

 

特にファイノンに関しては前周にあった遠慮がなく、ほんの少し引くくらいには積極的に誘ってくる。いままでだと難民と英雄だから連れまわすにはちょっと壁があったからか少し遠慮があったのかも、今周においては同じ黄金裔であるから遠慮なんて必要ないんだろうなと。

 

そうして黄金裔の皆と親交を交わしていく、あそこまで素晴らしい手腕を持つけれど誰よりも人を慈しむ心を持つアグライア様だったり、言葉の端々に経験があってまさに先生って人のトリビー、口調に反して根は生真面目で甘いものが好きなカワイイ一面があるモーディスだったり、色々な噂はあれど根っこはお淑やかで優しいキャストリス。彼らの素敵な一面を知ったのだ。

 

「これは思った以上に心が痛むわね」

 

だから辛いのがファイノンも含めた皆から期待と信頼の視線が予想よりもキツいところかな。継ぐことはとても厳しいことだからただ静かに待ってるけど、その言葉や感情に滲み出てるのだ、君ならばと。私は絶対に継がないし、継いではならない裏切り者であることがここまで心を苛むことになるとは。

 

黄金裔の皆は誰も彼も善き人で背負っている宿業はどれも想像を絶する重さはあれどそれを責めずにいる強さを持ち合わせてる英傑揃い。そんな英傑が一丸にならなければ為せぬ偉業なのだろう。

 

私はその尊きものを踏み躙り、なかった事にしなければならないの。

 

私だってお姉ちゃんから受け継いだ使命がある、あんな何もない場所で一人ぼっちで、同じ星神の一瞥を受けたから分かる、狂う事も出来ずに居続けなければならない苦行を課せられてまで阻止しなければならないのだから。やらない選択肢は最初から存在しないのよ。

 

「ままならないわね、それにしてもあなたは何処にいるのかしら。あなたに会って話したいことが沢山あるのにどうして会えないのかしら

 

 

カスライナ……」

 

早く、巡り合いたいなんて柄にない言葉は風に乗って消えていったその時、近くで物音が聞こえた。誰かが私の独り言を聞いていたみたいだ。ただ一番聞いてはいけない人だった。

 

「どうして、その名を……」

 

あらら、これはちょっとやらかしたのかな。余りにも軽率だったかなと改めて近くで盗み聴きしてたファイノンへと向き合う、嫌われることを恐れたのか今回は過去のトラウマを話していないのだ。

 

「ふふ、怖がらなくても大丈夫よ。実の所、あなたの本当の名前とあなたがあたしを通してキュレネって言う人を重ねているのも知ってるのだわ」

 

お姉ちゃん(キュレネ)の名前を出した途端、ファイノンは驚愕に染まる。

 

「あたしはね、オクヘイマに訪れる夢を何度も見るの。その夢ではね、あなたと出逢ってきたの、どんな夢にだって必ずあたしを見つけ出してくれるもの」

 

「それは……」

 

「そんなに心配そうな顔で見つめないで、あたしだってファイノンのことが大好きよ。そうじゃなかったら毎日なほどにあなたと一緒に居ないわ」

 

その言葉にファイノンの表情に安堵が映る、何度繰り返しても絶対に見つけ出すって言い換えれば絶対に逃げきれない恐怖の言葉だけど、逆に言えばどんなに繰り返しても見失いはしないってとってもロマンチックな言葉だもの。

 

「とは言っても毎回途中で起きちゃって、最後まで見届けられてないのは残念だわ」

 

「その中でね、あたしにそっくりな人と出会う夢を見たの。まるで双子の姉妹みたいできっとあたしにお姉ちゃんがいるならあんな人なんだろうって素敵なかわいい女の子」

 

「その夢でね、あたしは託されちゃったんだ。ファイノンと同じ名前を持つ人を探して力になって欲しいってね、もしかしたらあなたを助けて欲しいってことかしら」

 

 


 

 

一方、創世の堝心と呼ばれる場所にて2人の黄末裔が密談をしていた。その場所は特殊な手段でしか移動できない為に余計な部外者が入り辛く密談に適した場所でもある。

 

「お待たせ、ライアちゃん。相談ちたいことってもちかちて、エリちゃんの事?」

 

「師匠には見抜かれてましたか。その通りです、彼女に関して、とても気になることがあります」

 

「ライアちゃんも感じていたの?エリちゃんは良い子なんだけどあたちたちとは違う何かを抱えてるみたいだし、それにファイちゃん以外は一線を引いているのも気になるかちら」

 

そもそもトリスビアスを除いた火種を継ぐ黄金裔は殆どがアグライアとトリスビアスが予言などによって選ばれている。だからこそ自ら来たエリシアがいかなるものか計り切れていないのだ。

 

「私たちもそれぞれの運命を抱えていますが、彼女は何かを拒絶している事を金糸が伝えているのです。それも不安ではなく私たちと同じく使命と同じように確かな意志を持って」

 

「この事に関ちてはそれぞれに抱えてる物があるから彼女から話ちてくれるのを待つちかないかしら。それにファイちゃんが彼女に執着してる事も心配かちら」

 

まだ問題にまでなってないのはエリシアが根気よく付き合っているからだ。堕落させるどころかファイノンに寄り添って応援しているために下手をすれば彼女が来る前よりも好調だと言える。

 

「心配は及びませんよ、師匠。彼ならばきっと成せるのですから。それに彼女を下手に追求すれば、彼に良くない影響が起きるかもしれません。今は見守るしかないですね」

 

「それちかないわね。あたちたちも出来るだけトリアンやトリノンを側にいさせるわ」

 

とは言えどようやく見つけた最後の一人、思惑はあれどもまだやっていないのだから見守ることしかできないのだから。

 




エリシア:ちょっと手がかりなさ過ぎて、自分から火種をもって狙われに来た人。殺される確率高くなる自殺行為だが、何度も死んでるし一回や二回は誤差でしょの精神で敢行する。ただし黄金裔の皆が全員善い人すぎて後ろ冷たさを感じてる模様

ファイノン:唐突にキュレネにそっくりな少女から自分の本名を呟かれて驚いた。その前の言葉は聞こえておらず、カスライナだけしか盗み聞きできてない

アグライアとトリビー:なんか予言に記されてないオロニクスの黄金裔が表れて、なにかちょっと怪しんでるけどファイノンの付き添ってケアしてるので下手するとヒドイことになりかねないので追及できない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。