歳月の半神にそっくりな少女をオンパロスに投入してみた実験作   作:SUMI

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何とか3.5前には間に合った


第9話

神殺しを成し遂げてから幾らか時間が経った後、私は何をしているかと言えば

 

「心地良いわね……」

モチ

 

思いっきり寛いでいる。いろんな種類の草木に、とても綺麗で清潔感がありながらも暖かな色合いの家具たち、お昼寝にちょうど良い柔らかさのクッション。可愛らしい小動物と戯れながら暖かな日差しが優しく差し込む庭園にて存分に癒されていた。体に溜まっている悪い物がなくなっていきそうだ。

 

「ここっていつ来ても、みんなが生き生きとしている素敵な場所ね……」

モチモチ

 

「エリたんもお疲れ様でした。襲撃で起きた被害はこれでほとんど収まりました、ゆっくりと休んでください」

 

今、私と一緒にいるのはヒアシンシア、背丈は私と同じくらいのとても小柄な少女で長い髪をツインテールにしてカールにした特徴的な人だ。皆からの愛称はヒアンシー。この庭園の管理者でもある。

 

ファイノンたちと同じくいずれ選ばれた黄金裔の1人。あの時はすごい柔らかそうに見えてその実、その内に秘めた意志は途轍もなく強靭な人だ。紛争の襲撃の際に出てしまった負傷者の為に急いで戻って来てくれた医者でもある人。

 

この御時勢では傷だけを癒しても心の傷を治しきれないと考えて心を癒す場所として昏光の庭を創り上げたすごい人でもある。

 

「それにしてもイカルンは抱き心地がいいわね。ずっと抱きしめていたくなちゃうわ」

モチモチモチ

 

胸に抱えるそれは簡潔に言えばデフォルメされたようなユニコーンな姿をしており小柄な私でも抱えられるマスコットとして充分通用できそうな彼女のパートナーであるイカルン。ヒアンシーは天空の民と呼ばれる民族の末裔と言われていて、その一族は空に都市を創り住んでた故に共に空を渡る事が出来る翼獣を生涯のパートナーにしているの。

 

この子の最大の特徴はなんと、すっごいモチモチしてるのだ。いつまでも触っていたくなるほどに

モチモチモチモチ

 

「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。きっとファイたんなら試練を乗り越えてくれるはずです……ですので、あのその、そろそろ……イカルンが」

 

今の彼女にとって私は癒やすべき心の病を持った患者なんだろう。抱えたイカルンを無心にモチモチしていないと不安で押し潰されそうなほどに。周りのみんなが見てられない位に。

 

「あら、あたしったら、ごめんなさいねイカルン」

 

イカルンは優しく鳴く、怒ってはなくてむしろこんな事で癒せるなら幾らでもと言わんばかりの優しさだった。

 

今、ファイノンはニカドリーの神性を継承する為の試練を受けている。それからはずっと私の胸にモヤモヤとした感情が渦巻いていてずっと気持ちが晴れない。

 

このオンパロスに降り立って長い時間かしら?が経ったけど思い返せば半分以上はいつも隣に彼が居てくれた。彼から離れたことなんて一度もなくていつも私が先に居なくなるばかりで、彼が居なくなる事が起きかねないのはきっと初めての経験なんだろう。

 

彼が居なくなる事にきっと恐怖を抱いている。私にとってファイノンという存在は大きかったんだなと改めて実感させられたんだ。

 

ヒアンシーには私が試練を乗り越えるか心配で胸一杯なんだと思っているけど

 

「違うわ、きっとあたしはね、ファイノンが無事に戻ってこれるかを心配なんだわ。「歳月」の予言がなくてもわかっちゃうの……ファイノンは「紛争」の試練を越える事はできない、絶対に。それで死んでしまわないか考えちゃうのよ」

 

「それは……」

 

ファイノン、いえカスライナが背負うべき火種は「紛争」(ニカドリー)ではなく「世負」(ケファレ)なのだから。彼の根底に抱える炎は「紛争」に相応しくないことをよく知っている。以前の周回で黒衣の剣士に斬り掛かった憎悪に満ちた表情を、籠められた殺意を、烈日に等しい熱を、何度も垣間見たのだから。

 

その直後にファイノンが救出されたと聞いて、気がつけば真っ先に駆け出していた。

 

 


 

 

最初に目にしたのは見慣れたオクヘイマの天井だった。

 

「そうか、僕は乗り越えられなかったのか」

 

僕は試練を乗り越える事が出来ずにモーディスに救出される所で気を失った。「紛争」の試練は陰惨極まるものだ、神性によって再現された故郷だった、暗黒の潮に飲み込まれ灰燼に塗れる光景も起きた悲劇すらも何もかもも

 

かつて暗黒の潮の造物に変えられた村のみんなを手に掛けた感触すらも全く同じだった。

 

2度と味わいたくない感覚を味合わされ、追い詰められた先に現れたのはキュレネを殺めた黒衣の剣士が見えた時、狂気に飲み込まれてた。そこから目につく全てを狂気に駆られるままに襲いかかり

果てには仲間であったはずのモーディスにも刃を向けるほどに正気を失っていたんだ。

 

―――――――――ファイ……ノン

 

ふと腕の辺りに重みを感じて視線を向けると、そこにはエリシアがベットに寄りかかりながら寝ていた。僕が目を覚ますまでずっと付きっきりで看病していたんだろう。

 

そっと触れるとくすぐったそうに寝息が溢れる。キュレネと鏡写しのようにそっくりな少女でありもうすぐ「歳月」を継ぐ黄金裔。

 

正直に言えばアグライアから紹介された時は自分自身の目を疑ったし、白昼夢でも見てるのではないかと考えていたくらいだ。それなりの時間を過ごしてみれば細かい仕草などは違って何とかキュレネとは別人だって飲み込めたんだと思っている。それでもふと重ねてしまう程に似ている。

 

そうだとわかってても受け入れてくれて優しく隣にいてくれる、そんな彼女の期待を裏切って心配させてばかりなことがとても申し訳ないとさえ感じてもいた。

 

その後にまたも懲りずにモーディスとの競争でネクタール(お酒)の飲み比べをして結果、もう一度エリシアの手を煩わされたのはご愛敬として。

 

かつての学舎であった神悟の樹庭が暗黒の潮に襲われたと聞かされたのは。もう一つ何かが起きて欲しくない事が起きてしまうような嫌な予感がしたのは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事の始まりは神悟の樹庭が壊滅させられた際に現れた暗黒の潮の軍勢の中でも一際恐ろしくも強大な存在でもある黒衣の剣士。樹庭に現れたのはトリスビアスの内の1人であるトリアンの「百界門」にてオンパロスの果てまで飛ばしたはずがそう時間が経たないうちにヤヌサポリスに現れたのだと。その結果、トリアンが死んだのだ。それは今の黄金裔たちにとって衝撃だった。

 

いろいろな観点からかの剣士の目的は火種であることが高いと推察されて放って置く事はできないと考えて、実際に対峙した人たちによって対策を考えているのだ。その人は樹庭の唯一の生き残りでもあり、ファイノンやキャストリスの恩師でもあり、襲撃の際には火種を奪われないために儀式を成さずに火種を取り込んだ大胆不敵なことも成した人でもある。

 

その名はアナクサゴラス、他称はアナイクス先生である。性格はまさに学者と言える程で信仰にて不可侵であるはずのタイタンであろうと真理の前にはと言わしめる程に探究者なのだ。

 

他の人たちは眉を顰める言動なのだが、お姉ちゃんからも自力でタイタンが黄金裔による代替わりだと辿り着いたとても賢い人だと聞いているので頼もしい事この上ないだろう

 

その人たちやファイノン達が考えた作戦はこうだった。

 

「あたしが過去の神跡を呼び出してその剣士を過去に閉じ込めるのね」

 

物理的な距離では時間稼ぎにもならない、ならば私の神跡にて切り離された何処でもない過去に飛ばすと言う。時間毎離せばいいなんて余りにも力技すぎる。それでも討伐するには被害が大きすぎると判断した上なんだろう。何か政治とかが関わっているけどそれは置いておこう

 

「ああ、この作戦の肝はエリシア。君にかかっている。ニカドリーの時と続いて大役だけどいけるかい?」

 

「任せて、みんなが驚くような神跡を見せてあげるわ」

 

そうして再び訪れたクレムノスは戦いの喧騒が広がっていた。先に現地入りした上で細工をしていたアナイクス先生と援軍としてきたオクヘイマに滞在していたクレムノス人たちが大勢いた。そんな物量差をモノともしない程に強力な存在なのだろう。

 

そして見えた黒衣の人物はよく知ってる人だった。ファイノンの故郷を焼いた仇でもあり、私にとっては何故か助けてくれる、どこかファイノンに似ている人。

 

対峙してようやく理解する事ができた、ゴーナウスと同じくあの人は別次元で強い。それに続いてどういう理屈かわからないけど自分の分身を呼びだす事で手数も増やしてるので1人で軍勢と同等の戦力へと昇華もしている。

 

と言うかさっきまではアナイクス先生を狙ってきたのに私が来た途端にそっちのけで狙い始めてくる。私自身反撃とか考えずにただただ凌ぐことで一杯いっぱいなんだし、ファイノン達も私を守ることに専念してるからまだ生き延びられているのだ。

 

みんな分かっている、このままだとジリ貧であると。でも確信出来た。黒衣の剣士が持っているあの儀礼剣には……

 

「今です!!」

 

アナイクス先生の仕掛けによって、策は成る。無数の鎖のような何かによって幾重にも拘束されていく、その直後にトリアンから権能を引き継いだトリビー先生が開いた百界門にて離脱して隔離するというのが今回の作戦だ。

 

拘束が成った以上後は、退散するだけだ。

 

けれど本体は動けないにしても分身が迫ってくる。そこには恐ろしいほどの執念が込められているのか途轍もなくしつこい。私を狙ってきたために囮として門から一番遠い私へ襲いかかる幻影を払い除けるファイノン。門へと入る直前に何度も何度も感じたあの嫌な感覚がして。

 

 

ごめんね、ファイノン

 

 

彼をそっと押し出す、驚きの表情と共に百界門へと入る直前、別の表情へと変わる。

 

「えっ?」

 

拘束から逃れた黒衣の剣士によって私が剣に貫かれる光景。それが今回のファイノンとのお別れ。またも私からお別れする事に慚愧の念にかられるけど。

 

これでいいの、こうでもしないとあなたとお話しできないから、そうでしょ?

 

 

 

――――――――カスライナ

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――――――――――――!!!!!!!!!!!!!」

 




エリシア:ようやくカスライナを見つけたけどその彼にお腹ぶっ刺された模様、次あるし即死してないので結果オーライな前向き仕様。最後に今回のファイノンに結構なトラウマを植え付けた事に気づいてない。

ファイノン:黒衣の剣士に防戦一方な末にトラウマ再びでメンタルに大ダメージ、側から見ればエリシアちゃんが命賭して諸共封印したにしか見えない。

カスライナ:なんかヤベーくらいにオロニクスの力を引き出してるエリシアちゃん居ったので絶対ぶっ殺さなきゃ(使命感) なんか自分の事知ってるのに驚いて他は後回しになった

どっかの機械:なんか何か裏目に出そう。
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