宇宙世紀マブラヴ   作:vault101のアルチョム

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【幕間】月下の静謐(しずけさ)

宇宙世紀0079年1月8日・深夜/月面降下作戦 前夜

 

静まり返ったソロモン要塞の照明は夜間モードに切り替わり、廊下には淡い蒼白の光が灯っている。誰もが明日に控えた大規模作戦の緊張を、各々のやり方で受け止めていた。

 

 

 

ソロモン シャア・アズナブル 私室

 

無音の部屋。整然とした空間の中、シャア・アズナブルは軍服の上着を脱ぎ、ひとり壁際の端末モニターを見つめていた。そこには、部隊の戦力配置図と作戦時刻表。だが彼の目は、そこに映る情報ではなく、自らの内側にある何かを凝視していた。

 

「……俺は何をしている……?」

 

呟きは、静かに霧散する。

 

この世界に転移してからわずか数ヶ月。自らの野望は、奇妙な形で棚上げされ、人類という種の存続がその前に立ちはだかっていた。

 

「……キャスバル・レム・ダイクンが、ここで何を成すべきか……」

 

眼差しの先、整備ドックで赤いパーソナルカラーのザクが静かに佇んでいる映像に切り替わる。

 

「“シャア”として戦うのか、それとも……」

 

答えは出なかった。ただ、明日を迎えるしかない。

 

 

 

ソロモン ブリーフィングルーム裏の控室

 

薄暗い待機室。壁に貼られたマハルの衛星写真は、かつてあったはずの街並みが灰燼に帰した光景を写していた。

 

シーマ・ガラハウはひとり、スチールチェアに腰掛けて煙草を咥えていた。周囲では数人の隊員たちが静かに整備報告書を読み込んでいる。

 

「大尉、明日……無事皆帰還出来ると思いますか?」

 

若い隊員が問う。

 

「さあね……でも、やるしかないだろ。やらなきゃ、あたしたちが死んだあいつらに合わせる顔がない」

 

隣の机には、マハル戦で戦死した仲間たちの名札が並べられていた。誰かが静かに手を合わせる。

 

「明日は思いきりやれるな……市街地じゃねぇ。あいつらが隠れるところもねぇ」

 

シーマは立ち上がると、自分のザクの肩に白いペンで斜めの線を引いた。

 

「死人には見えやすい目印だよ。こっちはまだ生きてるって、言ってやらなきゃな」

 

 

 

ソロモン 第2整備区画/MSハンガー

 

機械油と冷却材の匂いが混じる格納庫内では、複数の整備チームが忙しなく動いていた。リフトアームが上下にうなり、ザクⅡの脚部を保持している。上部デッキでは、シャア専用機の赤い外装が露出しており、複数の整備員がチェックを行っていた。

 

「通常動作チェック完了。関節シーリングに異常なし、装甲接合部もクリア」

 

「油圧系も点検済み。シャア大尉機はリミッターカットされてるから最後に再確認頼むぞ、トラブルは許されん」

 

若い整備兵がヘルメットの汗を拭いながら言った。

 

「それにしても……本当にこのザクで勝てるのかよ、あの化け物どもに」

 

その隣でベテランの整備士が、片目を細めて配線を締め直しながら応じた。

 

「勝つんじゃねぇ。“止める”んだ。少しでも長く。人類が踏み潰される前に、逆に奴らを何体潰せるかが勝負ってわけだ」

 

「……やっぱり、“人類の盾”ってわけか、俺らがいじってるこの鉄の塊がよ」

 

「そうだ。このザクが止まれば、次はコロニーの都市が焼かれる。家族も何もかも……だから俺たちは、きっちり仕上げるしかねぇ」

 

シャア専用ザクの頭部センサーが静かに点灯した。赤い光が、どこか獣の目のように格納庫を照らす。

 

「赤い彗星は、ちゃんと応えてくれるさ。仕上げは万全にしてやらねぇとな」

 

 

 

ズム・シティ・旧中央広場/深夜

 

かつての祝典が行われた広場には、今や非常灯が淡く照らすのみ。だがその光の中、数人の市民が花束を抱え、祈りを捧げていた。

 

少年が母親の手を握りしめながら尋ねる。

 

「お母さん……戦いに行く人たち、怖くないのかな」

 

「怖いわ。でもね、それ以上に……守りたいものがあるのよ」

 

その隣で、老婦人がそっと花を地面に置く。

 

「うちの孫も出たんです。整備兵で……せめて、無事に帰ってきてほしい。それだけです」

 

 

 

ギレン・ザビ 私邸書斎

 

ギレンはひとり書斎で、各艦隊の発進ログを端末で確認していた。

 

「60隻の艦隊……192機のMS……これがジオンの総力ではない。だが“意志”を示すには充分だ」

 

キシリアが背後から現れ、言葉をかける。

 

「なぜドズルを出したの?」

 

ギレンはしばし沈黙した後、ゆっくりと答えた。

 

「この戦いは……生き残る力を示さねばならん。象徴が必要だ。我らザビ家のな、ドズルの兵達への“カリスマ”はそれに足る。だがドズルにはまだまだやってもらう事がある。無事に帰ってきて欲しいものだ」

 

「情を持ち出す兄上じゃないと思ったけどね」

 

「……人類がこの先生き延びる為なら、合理も感情も、時に同じ道を選ぶことがあるのだよ」

 

 

 

ルナツー研究棟・連邦兵器解析区画/技術士官

 

無人となった連邦の地下施設。薄暗い照明の中、白と黒の装甲に覆われた試作機が格納ブロックに佇んでいた。

その名も、ガンダム――RX-78-1。

 

技術士官たちが周囲に集まり、復元されたV作戦データと機体構造を突き合わせていた。

 

「コアブロック・システム……脱出機能の組み込みか。こいつら、パイロット保護を前提に設計してたんだな」

 

「ルナチタニウム、チタンセラミック複合材の装甲構造も興味深い。ザクの装甲より軽くて強度が高い……シールドなどの一部はビーム対策までされてる」

 

「キモは学習型コンピュータか……これはコストが高すぎるが、解析が進めば我が軍の操縦系にも応用できるかもしん。新兵でもエースパイロット並みに戦闘が可能になるかもな」

 

女性士官が端末に目を通しながら言う。

 

「これ……本当に私達ジオンと戦うためだけに造られた機体なの?完全にオーバースペックじゃない!でもパイロットの生存性や、稼働時間、整備性。全部が合理的だわ」

 

「そうだな。だがBETAと戦うなら、これほど理に適った設計はない」

 

別の技術将校が頷いた。

 

「V作戦の開発目的が“対ジオン”だったことは明らかだが、ガンダムの機体そのものはデータ取り用の採算度外視の試作機だがな。」

 

「逆に言えば、ジオンのザク系では対応できなかった単機で複数を相手取る高性能機をコンセプトに開発してたんだな!金持ちな連邦は羨ましいぜ!それに比べてジオンは…」

 

全員が無言になった。

 

「それはさておき、この技術いただくぞ。ザクに応用できる部分は全て洗い出せ。特に学習型コンピュータとフィールドモーター、センサー類の設計思想は最優先だ」

 

「了解。RX-78-1を解析した結果、ジオン製MSの再設計も視野に入れましょう。核運用機や重装甲機体にも応用可能です」

 

冷たい格納区画の中で、ジオン技術陣の視線は一点に集中していた。

 

連邦が築こうとした“勝利の方程式”――

それは今、BETAへの反撃手段として転用されようとしていた。

 

ナレーション(永井一郎)

U.C.0079年1月8日、ジオンの月面降下作戦前夜。

 

人々はそれぞれの場所で、それぞれの想いを胸に抱いていた。

 

それは恐怖でも、怒りでも、諦めでもなく──希望だった。

 

ジオンという名の旗のもと、人類の未来を賭けて戦う、無数の命たち。

 

次に訪れる夜が、再び訪れるとは限らない。

 

だが、彼らは信じていた。

 

「未来を切り拓くために、今を生き抜く」と──。

連邦も途中で転移した方がいいかな?

  • 一部隊
  • 一個艦隊
  • モブコロニー(生産性向上の為)
  • サイド7(天パと親父込み)
  • ジュピトリス(若いシロッコ込み)
  • 連邦なんて腐敗した奴らは要らん!
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