宇宙世紀マブラヴ   作:vault101のアルチョム

16 / 70
【第14話】未知のBETA

ナレーション(永井一郎)

U.C.0079年1月10日 午後。

ジオン公国軍は、月面フェイズ5ハイブ攻略作戦の最中、未曾有の脅威に直面していた。

それは“人”や“MS”ではどうにもならぬ、絶望の出現。

 

BETA――その中でも分類不能の超大型種。

それは戦車級や突撃級を無限に吐き出す、“地獄の門”そのものだった。

 

そしてこの日、ジオンは初めて“人類の生み出した禁断の炎、メギドの火”の投入を決断する。

 

 

 

「前方の振動パターン、変化ッ!……これは……ッ!?」

 

月面に設けられた臨時観測室のオペレーターが叫ぶ。

観測機器のスクリーンには、これまでにない“波”が現れていた。

しかもそれは、ハイブ外郭から部隊が進行中のハイブ坑へと向かう。

 

「これは……掘削振動!? 巨大な質量が、地中から……上がってくるだと……!?」

 

誰かの声が、戦慄混じりに呟く。

 

直後、地面が、裂けた。

 

大気のない月面でありながら、まるで雷鳴のような“地響き”が戦場に轟く。

そして――それは現れた。

 

「……っ、バカな……あれは、なんだ……!」

 

それは、グロテスクで、巨大で、異形だった。

全長1000メートル超、胴体直径150メートル以上。

巨大な“円筒”のような有機生命体が、地表を突き破って出現したのだ。

 

「あ…ああ……、ハッ!み、未確認超大型BETA出現!!!」

 

ある者は“絶望”を叫び、ある者は“呪詛”を呟いた。

 

だが、その瞬間。

 

その“口”が、開いた。

 

轟音を伴って開かれた“吐出孔”から、戦車級、突撃級が――“吐き出された”。

 

数百、いや数千――流れ出すかのように、無限の敵があふれ出てくる。

 

「未確認超大型種……仮称“吐出級(エジェクター級)”、形式番号BETA-X-05とする!」

 

 

 

旗艦〈ファルメル〉艦橋

「……これが、やつらの“切り札”か……!」

 

ドズル・ザビ中将は、戦術スクリーンに映るその異形の姿を見つめながら唸った。

 

「閣下! このままでは戦域全体が崩壊します!」

 

「前線部隊が飲み込まれるのも時間の問題です!」

 

次々と寄せられる悲鳴と映像。ザクの部隊が突撃級の奔流に押し潰され、戦車級が縦横無尽に跳躍しながら装甲を食い破る。

 

「我々が手をこまねいていれば、全軍崩壊もあり得ます!ご決断を!」

 

「――核だ。核を撃て!」

 

沈黙を破ったのは、ドズル・ザビその人だった。

 

「今撃たねば、奴は補給基地も飲み込み、地上部隊の全滅もありうる!ここで仕留めねばならんッ!」

 

幕僚たちがざわめく中、ただ一人進言したのは――補給基地に戻ってきたアナベル・ガトー中尉がモニター越しに発言する。

 

「閣下。核装備のザクⅡC型を1機、ご用意いただきたい。私が仕留めます」

 

「……お前が行くのか?」

 

「ええ。死地と知ってなお突撃するのが、我ら大義あるジオンの軍人かと」

 

ドズルは黙った。数秒の静寂のあと、拳を強く握る。

 

「……行け。奴を止められなければ、どの道ここで我が軍は崩壊する。全隊、ガトーの道を切り拓けぇーい!」

 

 

 

臨時補給基地格納庫

ザクⅡC型――核バズーカ装備仕様。

ガトーはその機体に乗り換え、最後の出撃へ赴こうとしていた。

 

「各員!ガトー中尉の核搭載機はC型ザク……機動性に劣ります。全隊、援護しつつ前線を押し広げて下さい!」

 

通信を聴き、シャアらエース部隊が先行して周囲を掃討する。

 

「了解、護衛任務に入る!各隊、持ち場を死守しろッ!」

 

吐出級に呼応するかの様に次々とハイブ坑から現れるBETAの群れを、近接戦と連携で押しとどめる。

 

「左前方、接近!俺が抑える!コズンは左翼の援護に向かえ!」

 

ラルのザクが飛び出し、ヒートホークで斬り伏せる。

 

その背後、三連星が連携してマシンガンとクラッカーを投擲。敵の勢いを削ぐ。

 

「マッシュ、左後方だ!」「了解、援護に入る!」

 

黒い三連星の連携は、まさに戦場の舞踏。密集する突撃級の中を縫うように滑走し、斬撃と射撃を交差させる。

 

「右からも来るぞ!」「オルテガ!それからヒヨッコ!お前もだ!構えろ!」

 

戦場はまるで“肉の津波”――突撃級と戦車級が止めどなく湧き出し、護衛線を幾度も押し返す。

 

それでも彼らは退かない。

 

「核搭載機が射線に入るまで、絶対に突破させるな!!」

 

 

 

シーマ・ガラハウ大尉のザクⅡS型が、新たに降下中に投入してきた海兵隊とともに左翼を死守していた。

 

「こう至近距離じゃバズーカ部隊は撃てやしない……だったら、あたしらが体で止めるしかないじゃないか!」

 

両腕のマシンガンを乱射しながら、正面に跳び出す。

 

味方機が次々に撃破される中、F型ザクの脚部に付けた即席の爆薬コンテナを抱えた僚機が、突撃級の群れに投擲する。

 

「今だ、時限信管作動!」「了解、起爆まで5秒!」

 

爆炎。一瞬の空隙。

 

「隙間が出来たッ!シーマ様!今の内に下がってくだせぇ!」

 

「バカ言うんじゃないよ、コッセル!ここで止めなきゃ何のための海兵だい!海兵隊は道を切り開くもんさ!!」

 

再び跳躍、ヒートホークで要撃級の首を斬り裂く。

 

だが、シーマ隊の損耗率はすでに50%を超えていた。

 

 

 

中央ではシャア・アズナブルが護衛線の指揮していた。

 

「ライデン、ドナヒュー、前線まであと約100秒。対艦ライフルで吐出級の“咽頭部”を狙え」

 

《ダメだシャア!……あれは“ライフルで撃ってどうにかなる相手”じゃない!》

 

ライデンのASR-78が何発撃ち込もうが、吐出孔から流れ出る戦車級が止まらない。

その“数”が、物理的に防衛線を“押し潰し”にかかっていたのだ。

 

「仕方ない、ここは俺が抑える!デニム、スレンダー行くぞ!」

 

シャアのザクが猛加速し、敵群の只中に飛び込む。

 

120mmマシンガンを撃ち尽くし、クラッカーを撒き、ヒートホークで突撃級を叩き斬る。

 

「全隊、前進!前線を押し上げろ!もうすぐだ!」

 

 

 

「搭載完了。……まさか、こんな形で核を使うことになるとはな」

 

アナベル・ガトー中尉が、核バズーカを搭載したザクⅡC型に乗り換え、静かに呟く。

 

「狙うは吐出級ただ一体のみ!」

 

彼の機体が中央戦線に向けて滑走し始める。

 

シャアから通信が入る。

 

《ガトー中尉、核の照準位置、咽頭部最奥。構造的に、そこなら例え映画に出てくる怪獣/KAIJUでも確実だ!》

 

「フッ、あのシャアアズナブルが洒落とはな。了解です。大尉!これより最終段階に入る」

 

 

 

最終防衛線は崩壊寸前、護衛部隊はすでに限界だった。

 

三連星は弾薬を使い果たし、オルテガのザクは片腕をもがれている。

 

シーマ隊は通信圏内に4機しか残っていなかった。

 

「……時間を稼げ、あと60秒で撃てる!」

 

「60秒……地獄の長さだな……!」

 

爆発。煙。断末魔。

 

それでも誰一人退こうとはしなかった。

 

 

 

そして、その時が来た。

 

「こちらガトー。目標確認、発射体勢入る――距離、1500、1200……射角、固定」

 

「核バズーカ――発射ッ!!」

 

閃光。

 

地響き。

 

そして、吐出級の咽頭部に、核の閃きが突き刺さった。

 

沈黙。

 

次の瞬間、巨大な爆炎と衝撃が戦場を呑み込んだ。

 

 

崩れる巨体と、押しつぶされるBETA達。

 

吐出級は断末魔のように身をよじり、そのままゆっくりと崩れ落ちていく。

 

体内から吐き出されかけた要塞級もろとも、月面の地表に激突。

 

砂と灰の雲が舞い、戦場に一時の静寂が訪れる。

 

通信が復旧し、各機の生存信号がひとつ、またひとつと戻る。

 

シャアのザクは膝をつきながらも、モノアイを明滅させた。

 

「……やった、のか……?」

 

 

 

ナレーション(永井一郎)

かくして、ジオン公国軍は

のちに地球側のコードネーム“母艦級”なる

未知の存在を核にて撃破した。

 

だがそれは“栄光の勝利”ではない。

それは“苦し紛れの勝利”に過ぎなかった。

 

そして誰もが知ったのだ――

この敵に、人類の常識は通用しないと。

連邦も途中で転移した方がいいかな?

  • 一部隊
  • 一個艦隊
  • モブコロニー(生産性向上の為)
  • サイド7(天パと親父込み)
  • ジュピトリス(若いシロッコ込み)
  • 連邦なんて腐敗した奴らは要らん!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。