宇宙世紀マブラヴ   作:vault101のアルチョム

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第三章
【第16話】資源の海


ナレーション(永井一郎)

──宇宙世紀0079年1月28日、小惑星帯外縁部。

 

ジオン公国軍資源調査艦〈アイン・ソフ〉のメインブリッジに、低く重い沈黙が流れていた。

そこには、月面作戦の余韻と、次なる戦略拠点確保に向けた緊張感が同居していた。

 

大型の観測窓に映るのは、眼前に連なる幾千もの岩塊。宇宙の漂流者たる小惑星群──その奥に、探し求めた“希望の鉱脈”がある。

 

 

 

「エンジニアリング班より報告。対象領域No.147-Cにて高密度のヘリウム3含有反応を確認。推定埋蔵量、換算値で……2.1×10⁶標準トン」

 

「──よし、主本部に通達。分析班は続行。安全確認が取れ次第、降下部隊を編成しろ」

 

指揮を取るのは、ドズル・ザビの信任を受けた資源探査隊総監ロルフ・ベック少佐。彼は苛烈な月面戦から帰還したばかりの軍人でありながら、元は木星船団公社の技師だった異色の経歴を持つ。

 

彼の周囲には、転移に巻き込まれた旧木星圏船団の若手技術者たちが多数配置されていた。彼らは困難な状況下でも冷静に、次々とヘリウム3の反応点を割り出していった。

 

「今のデータを総合すると──この宙域だけで20年以上は戦える量のヘリウム3が眠っています」

 

「……それは確かなのか?」

 

「間違いありません。仮に精製効率を50%以下に抑えたとしても、20年分は確保可能です。戦時消費にも余裕で耐え得るでしょう」

 

その言葉に、ブリッジ内の空気が変わった。これまで“時間との戦い”を強いられていた彼らにとって、それは何よりの朗報だった。

 

すぐさま報告はズム・シティへと送信された。

 

 

 

数時間後、サイド3首都・ズム・シティ、最高評議会本部。

 

「……やったな」

 

ドズル・ザビ中将は、報告書を片手に豪快に笑った。

 

「資源確保の目途が立てば、我々の戦略は大きく広がる。地球との接触も、もう慌てる必要はない。焦らずじっくりと構えていけるぞ!」

 

「そうだな」

 

ギレン・ザビ総帥は、報告書に目を通したまま一言だけ呟いた。

 

その瞳には、ようやく得た“生存の保証”と、これから築くべき新たな秩序への確信が宿っていた。

 

「些か我々に都合の良い展開すぎるがな…。だが、まだ慢心するな。ヘリウム3は“手に入れた”のではなく、“見つけただけ”だ。確保、精製、輸送、そのすべてにリスクが伴う。我々が生き延びるには、これらを一つひとつ潰していかなければならん」

 

「了解だ、兄貴。宇宙軍としても資源防衛と物資輸送体制を同時に整備する必要がありるからな。」

 

「基地建設は急げ。だが慎重にな。あの宙域にBETAはいなかったが……奴らが“来ない”とは限らん」

 

 

──小惑星ベルト中央宙域、候補拠点“R-09”周辺。

 

無人観測機“ハイランド・タイプR”が、複数の視覚センサーで小惑星表面を走査する。粒子探査、熱反応、電磁変位、そしてBETA特有の生体反応──いずれも検出されなかった。

 

「……やはり、BETAは一定以上の質量を持つ天体にしか寄生しないようだな」

 

送られてきたデータを前に、ベック少佐はひとり頷いた。

 

「だが警戒は怠るな。奴らは未だ“未知”の存在でもある。何かの拍子に小惑星の中から湧いて現れんとも限らん」

 

一方、小惑星表面にはすでに先遣隊のパプア級運搬艦と民間徴用の小型貨物船が静かに降下していた。機材降ろしが始まり、軌道上のムサイ級からも建設資材が投下される。

 

「中性子偏向シールド展開、作業用ドーム設置開始……予定通りの進行です」

 

無骨なMS運用用格納庫、精製施設、居住ユニットなどを組み合わせた“仮設ミニ基地”が、わずか2時間でその骨組みを形にしていく。

 

 

同日夕刻、艦隊運用会議──チベ級旗艦〈ラ・グロワール〉艦内にて。

 

作戦参謀ラウリ少佐は、ホロモニターに浮かぶ航路図を指さしながら言う。

 

「現地小惑星群とサイド3間には安全なルートが複数存在しますが、物資輸送には最低6日、往復で12日を要します。この宇宙は我々にとっては未知の部分も多く不明勢力の存在も排除できません。護衛艦隊は必須です」

 

「足の速いムサイ級に加え、火力のある重巡洋艦のチベ級を再編して“資源防衛艦隊”として運用するのが現実的でしょうな」

 

「民間徴用の輸送船にも最低限の自衛兵装を搭載し、連携体制を強化する必要があります。第603技術試験隊に徴用されたヨーツンヘイムと同型艦ならペイロードもパプア級以上で設計に余裕があり適任かと存じます!運用に関しては我々軍ではなく運送のプロである彼らの判断を重視した独立運用制にも移行すべきと進言します。」

 

会議室の一角では、エンジニアチームが精製ユニットとヘリウム3の気体保存容器の設計図を突き合わせていた。

 

「宇宙での液体ヘリウム保存は極低温制御が課題になる。だがサイド3の旧冷却設備を転用すれば、予算内でなんとかなる」

 

「新しい放熱システムを組み込めば、パプア級にも最低限だが精製機能を搭載できるはずです」

 

その場の全員が、初めて未来に“戦い”ではない選択肢を感じ始めていた。

 

 

 

ズム・シティ、最高技術本部。

 

一報を受けたジオニック社の代表技術士官はこう語った。

 

「……これは、時間を得たということだ。敵はBETAだけじゃない。転移という現象も、そして資源の枯渇問題も我々の敵だった。だが、この猶予があるなら、我々は……」

 

彼の背後のモニターには、開発中の“学習支援型OS”と“ホバー機構付きMS脚部ユニット”の設計図が表示されていた。

 

 

 

ナレーション(永井一郎)

それは、宇宙における静かな戦いの始まりだった。

 

人類の希望は、ただ戦うことだけではなく、

“生き延びる”という選択に手を伸ばし始めていた。

 

地球を捨てたのではない。地球に戻るための第一歩。やがて訪れる、第二の“遭遇”に備えて今はただ邁進するのみ──。

 

連邦も途中で転移した方がいいかな?

  • 一部隊
  • 一個艦隊
  • モブコロニー(生産性向上の為)
  • サイド7(天パと親父込み)
  • ジュピトリス(若いシロッコ込み)
  • 連邦なんて腐敗した奴らは要らん!
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