宇宙世紀マブラヴ   作:vault101のアルチョム

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【第17話】農の道

ナレーション(永井一郎)

宇宙世紀0079年2月1日

 

激戦の続いた月面から戻ったジオン公国は、戦いの傷跡を抱えつつも、生きるための新たな選択肢に手を伸ばそうとしていた。

 

その一つが、かつて「旧式の工業拠点」に過ぎなかったスペースコロニーを、新たなる世界でも安定した生活を戻すための“揺り籠”に変えることだった。

 

 

 

ズム・シティ、技術省 第3会議棟。

 

「では、農業用コロニーへの転用プロジェクトの進捗を──」

 

会議の冒頭、司会が促すと、民間部門のコロニー公社から派遣された技術主任が立ち上がった。

 

「現在、旧型の工業用コロニー、通称“Type-A”と“Type-C”を農業転用可能な構造体として再設計中です。構造材の強度・圧力耐性に問題はなく、光合成効率を高めるための反射板システムと、温室施設の配置案を既に提出済みです」

 

壁面には設計図が映し出され、コロニーの内壁に反射板が並び、ドーム型の温室ユニットが整然と配置されていた。

 

「また、民間企業アルス・ファーム社が開発中でした栽培ユニット“デメテル”自動環境制御型システムを急ピッチで試作しています。」

 

その名は、豊穣を司る神にちなんで名付けられた。

ユニットは、気温、湿度、光量、CO₂濃度、土壌状態を自動で制御し、最適化された環境を小型ドーム内で再現する。これにより、作物は地球の温帯域に匹敵する速度で成長し、年複数回の収穫も現実味を帯びてきていた。

 

「驚くべきはその適応力です」

技術主任は続けた。

 

「この“デメテル”は、月面から持ち帰った土壌サンプルに含まれていた有害元素にすら対応可能です。これが完成すれば私たちは“汚染された大地の再生”をも実行できるのです!」

 

 

 

ズム・シティ、技術研究本部 第5分棟・環境制御開発室。

 

年老いた科学者が一人、研究ログの前で呟いていた。

窓の外には、遠く崩壊したマハルコロニーの姿が霞んでいる。

 

「……やはり、“あの名”でなくて良かったな」

 

彼は現在「地球再生」計画の主任研究員をしている。その計画の正式名称は今、「オペレーションE.D.E.N.」として始動を始めた。

だが本来、彼が私的に名付けていた仮称計画名は別にあった。

 

──“アスタロス”。

 

それは、本来破滅を象徴する名前だった。元の研究は「地球環境に壊滅的影響を与えるウイルス兵器の開発」であり、枯死を人工的に起こす兵器として生み出されかけた。

だが、転移を経て状況は変わった。

 

「“殺す”のではなく、“育てる”ものを作らなければならない。そう考え直したのは……どの時点だったか……」

 

幾度もの試験を繰り返し、やがて"アスタロス"は変異を重ねる。あれほど地球を破壊するウイルスを作ろうとした時には失敗の連続だったが、人を生かす為のウイルスを作ろうと思ったらトントン拍子に事が進んでいく…。

 

そして現れたのが、植物の光合成活性を通常の4倍に促進する変異株──ウイルス“エデン”である。

 

「結果だけ見れば、我々は『自然界の奇跡』を引き出してしまったようなものだな。

まだまだウイルス株の安定には程遠いが老い先短い人生だ。少しぐらい無理してやるかな…。」

 

だが彼の目は、どこか遠くを見つめて思う。

“人を殺すのではなく生かす為なら神は手を貸してくれるのだな。これは神の恩寵なのだろう”

 

信心深くない科学者が1人で名も知れぬ神に祈っていた…。

 

 

旧マハルコロニー宙域、記念区画“ミュート・メモリアル”。

 

吹き晒しの構造材の間に、小さな仮設墓標が並んでいる。

戦災で命を落とした家族の名を記した、それだけの碑。

 

その前に、戦闘服姿の数人が立っていた。

突撃機動軍海兵隊所属シーマ中隊である。

 

「……よ」

 

シーマ・ガラハウは、無言で墓標に花を置いた。

それはコロニーの栽培ユニットで初めて咲いた小さな白い花だった。

 

背後では、仲間たちも黙って花を手向ける。

誰も何も言わない。ただ、揺れる花だけが小さく応えていた。

 

「戦うために、じゃない。生きるために、なんだよな……」

 

仲間の一人が呟いた言葉に、シーマは短く頷いた。

 

「……そうさ。もうあんな場所に、二度と戻るもんか」

 

 

 

ズム・シティ、移民庁市民窓口。

 

「農業志願、ですか?」

 

「はい。軍じゃなくて……作物を育てる仕事がしたいんです」

 

少年のような青年が、窓口で真剣な表情を浮かべていた。

彼のような若者が、ここ数日で徐々に増え始めているという。

 

「戦うだけじゃなくて、“生きる手段”があるなら……それを選びたいんです」

 

そう語る声に、担当官は顔を綻ばせた。

 

「分かりました。農業訓練ユニットのリストをお送りします!」

 

 

 

宇宙空間、小惑星帯。

 

そこにはまだ多くの“未開の希望”が眠っている。

その一方で、ジオンの人々は戦いの傷を抱えながらも、確かに“生きよう”としていた。

 

 

 

ナレーション(永井一郎)

かつて、スペースコロニーは捨てられた人々にとって“地球”の代替として選ばれた場所だった。

だが今、人々はその宇宙で新たなる命を育てようとしている。

 

それは、銃ではなく鍬を。爆薬ではなく種子を。

そう選ぶ者たちの静かなる革命であった。

 

“E.D.E.N.”──

それは希望の名であり、かつての絶望を覆す挑戦の記録でもあった。

 

そして、この記録は、やがて地球と再び交わる未来へと続いていく。

連邦も途中で転移した方がいいかな?

  • 一部隊
  • 一個艦隊
  • モブコロニー(生産性向上の為)
  • サイド7(天パと親父込み)
  • ジュピトリス(若いシロッコ込み)
  • 連邦なんて腐敗した奴らは要らん!
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