宇宙世紀マブラヴ   作:vault101のアルチョム

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【第18話】沈黙の距離

ナレーション(永井一郎)

宇宙世紀0079年2月5日。

 

ジオン公国は、月面での勝利と小惑星帯での資源確保という二つの大きな成果を得て、ようやく呼吸を整える時間を得た。

しかし、その静けさの裏には、ある種の“選択”が存在していた──すなわち、地球との交信を断っていたという、意図的な沈黙の選択である。

 

そして、それは一つの問いをもたらす。

「我々はいつ、その沈黙を破るべきなのか──」

 

 

 

ズム・シティ 地下第2会議室

 

投影スクリーンの前に、ギレン・ザビは腕を組んで立っていた。

その背後では、ドズルとキシリア、数名の参謀たちが資料ファイルを開き、黙々と準備を進めていた。

 

「……結局のところ、我々は“最初から”地球と連絡を取ろうと思えば取れた。違うか?」

 

ドズルの問いに、参謀の一人が頷いた。

 

「はい。転移直後、いくつかの既存衛星を捕捉できていました。周波数解析の結果、現地の通信プロトコルは極めて単純なものです。暗号化も旧式で、傍受・暗号の復号化も既に完了しております」

 

ドズルが眉をひそめる。

 

「じゃあなぜ……」

 

ギレンは、ゆっくりと背後を振り返る。

 

「我々は“未知の者”だ。あの地球に住まう者たちから見れば、いきなり月から、あるいは宇宙から出現した“新たなる侵略者”と映る可能性もある。人類共通の敵──BETAという存在があるとはいえ、まずは我ら自身の立ち位置を見極めねばならん」

 

「……なるほどな」

ドズルは腕を組んで頷く。「確かに、一歩間違えれば地球側からの先制攻撃すらあり得る。警戒されて当然か」

 

「だが」

その場にいたキシリアが、卓上のファイルを一枚抜き出す。

 

「“沈黙”が永遠に通じるわけではありません。我らとは地球の反対側で大型船を建造していると情報が入ってます。いずれ彼らがサイド3を“発見”する時が必ず来る。問題は──それがいつか。そして、その時、彼らは我々を“味方”と見るか、“敵”と見るかです」

 

 

 

静かな間。

 

やがてギレンが口を開く。

 

「キシリア。お前の提案を聞こう」

 

 

 

キシリア・ザビは一歩進み、プレゼン用パネルを起動する。そこに表示されたのは、ジオン公国軍が以前開発していた諜報用衛星“グリフォン観測機”の設計図だった。

 

「──地球の地表情報をリアルタイムで取得し、政体構造、軍事施設の有無、通信網の構築状況などを解析します。これらを踏まえて“いつ”“どのルート”で交信すべきかを見極める。すでに偵察衛星2機を再設計中。1週間以内に秘密裏に配備可能です」

 

「……確か開発は中止してたはずが…。連邦の情報網をかいくぐるための“見えない目”だったか」

 

ドズルが苦笑交じりに呟く。

 

キシリアは頷きつつも、その目に緊張の色を宿す。

 

「今回は違います。監視すべき対象は、旧来の連邦ではなく──“旧世代の国家群”です。BETAの侵攻を受け、彼らの文明がどう変化したのか。あるいは、変化していないのか。我々の判断材料は、まだ圧倒的に足りていません」

 

ギレンは短く言った。

 

「進めろ。最優先でな。」

 

 

 

──その後、極秘裏に偵察衛星“ヴァイス・アイズ1号機”と“2号機”が、ルナツー宙港から発進した。目的地は、かつて地球連邦軍の戦略中枢が存在したとされる“ユーラシア大陸・アメリカ大陸”上空。

 

 

 

同日夜 ズム・シティ中枢管制棟

 

管制オペレーターたちが、静かに作業を進める中──1人の若手士官が隣に控える上官へと尋ねる。

 

「中佐。どうして、今まで通信を封じてたんでしょうか」

 

「……それは…。“分からん”。だがその選択は正しかったかもしれん」

 

「なぜです?」

 

「どんなに美辞麗句を並べようが──先に動いた者は、疑われるものだ」

 

 

 

──“お前は何者だ”と、問われるその瞬間まで。

 

ジオンは、宇宙の闇にその存在を隠していた。

 

 

 

一方、小惑星帯採掘拠点“R-09”外縁部

 

「中継アンテナ、正常。試験波送信開始──」

 

開発部隊のエンジニアたちが、無人中継衛星と新型MS通信補助機の試験を行っていた。ミノフスキー粒子の影響下でも最低限のデータリンクを維持するための新技術だ。

 

「前回の月面作戦で得た教訓を元に、新型中継プローブ“セメタリー・バード”を投入予定。これなら散布濃度40%以上でも通信持続が可能だ」

 

「ランバ・ラル大尉の隊が実地試験に協力してくれるそうです。来週の演習で実装確認を──」

 

遠く離れた通信司令室でも、別の“静かな戦い”が続いていた。

 

 

 

ナレーション(永井一郎)

──敵に情報を与えないという選択は、しばしば“誤解”を生む。

そして、誤解は戦争の導火線になり得る。

 

だが同時に、“沈黙”には力がある。

それは準備を整える時間であり、未だ見ぬ相手と“対等”に対話するための静謐な間(ま)であった。

 

今、ジオン公国はようやくその沈黙を破る時を選び始めた。

地球の空に向けて放たれる、最初の“視線”と“言葉”を伴って。

 

──それはまだ、本格的な交信ではない。だが確かに“第一歩”だった。

連邦も途中で転移した方がいいかな?

  • 一部隊
  • 一個艦隊
  • モブコロニー(生産性向上の為)
  • サイド7(天パと親父込み)
  • ジュピトリス(若いシロッコ込み)
  • 連邦なんて腐敗した奴らは要らん!
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