宇宙世紀マブラヴ   作:vault101のアルチョム

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【第20話】隔たれし知性

ナレーション(永井一郎)

宇宙世紀0079年2月23日。

ジオン公国は、未だ見ぬ“地球”と向き合う準備を進める一方で、自らの内に眠る未知──すなわち、“人の可能性”にも目を向けはじめていた。

 

その研究はかつて「眉唾」とされ、連邦でもごく一部の者しか関与し得なかった領域。

しかし、今この世界ではそれが――現実となりつつあった。

 

 

 

ダーク・コロニー 第6調整区・地下第7会議室(通称:グレー・ルーム)

 

薄暗い密室に、軍服姿の数名が静かに集っていた。壁には監視カメラもなければ記録装置も存在しない。あらゆる記録から“存在を抹消された”会議である。

 

「よく来てくれたな、諸君」

 

キシリア・ザビは、卓の上に置かれた一枚の書類を指先で撫でながら、ゆっくりと言葉を発した。

 

「これは……“サイコ・シーカーMk-I”の稼働試験結果?」

 

向かいに座る男――グレッグ・パウゼル博士。元フラナガン機関の設立幹部の一人であり、今もなお“人の精神の深層”に挑み続ける数少ない人物である。

 

「はい。結果から申し上げますと……」

パウゼル博士は、手元の書類を広げた。

 

「ミノフスキー粒子の濃度が通信機能を無力化する領域、すなわち40ppm以上の環境下でも……この装置は微弱ながら“精神波”のようなパターンを確かに捉えました」

 

キシリアの眼差しが細くなる。

 

「……念話、ということか?」

 

「そこまでは断定できません。ですが、被験者の情動の変化と完全に一致する波形が出た。しかもそれは、通常の脳波や生体信号とは異なる、極めて高次の“構造パターン”だったのです」

 

パウゼル博士は椅子に背を預けながら言葉を続けた。

 

「我々が“ニュータイプ”と呼んでいる現象……それは、脳の一部が“異常に適応”した結果生まれる可能性があります。だが重要なのは、“どうすれば適応が起きるのか”だ」

 

別の研究員が小さく息を吐き、口を開いた。

 

「結論から言えば、それには“極限状態”が必要です」

 

「極限?」

 

「生存本能を越える瞬間です。例えば、宇宙戦闘の中で完全に孤立したとき、あるいは死の淵にある他者の感情が“心の奥”に直接流れ込んできたような……。そういう体験を経た者だけが、稀に目覚める」

 

キシリアは腕を組み、天井を見上げるようにして呟いた。

 

「それは……戦場か。それとも……」

 

数秒の沈黙が会議室を包む。

 

「……まれに、生まれながらに持っている者もいます。ですが、覚醒するには引き金が必要です。」

 

「引き金、か」

 

キシリアは小さく頷き、次の指示を出す。

 

「“Mk-II”の開発を急がせなさい。もし戦場で“感応能力”が実現できるならば、それを測定し、制御しなければならない。人類の未来のためにも──ジオンの勝利のためにもね…」

 

「了解しました」

 

フラナガン機関の面々は、静かに立ち上がる。

 

 

 

同日夜 ダーク・コロニー 第5研究区画・NT研究室

 

暗い実験室の中で、白い医療衣を纏った少女が一人、ベッドに座っていた。

彼女の名はまだ広く知られていない──ララァ・スン。転移前、噂を聞きつけたフラナガン博士が直々に地球に降りて連れ帰った稀有な能力をもったニュータイプの少女だ。

 

傍らのモニターには、静かに波形が浮かび、彼女の精神状態を映し出している。

それを監視する研究者が、思わず小さく呟いた。

 

「この波形……先ほどの被験者とは全く次元が違う……」

 

ララァは静かに目を閉じたまま、何かを感じていた。

だが、その表情は穏やかで、怖れも、不安もなかった。

 

「……あなたの声が聞こえる。遠いけど、ちゃんと……いつ…か。シャ…」

 

 

 

ズム・シティ高官用居住区・キシリア私邸

 

その夜、キシリアは私室で一人、窓辺に立っていた。

静かな都市の灯が、眼下に広がっている。

 

(精神感応……ニュータイプ……)

 

(それが兵器ではなく、“橋”になり得るとしたらダイクンの言っていた…──)

 

(沈黙の中でも繋がる手段……それが、ジオンの未来を変える鍵になるかもしれない)

 

ふと、机の上に置かれた一枚の報告書に目をやる。

 

『OMNIA-AUTO 統合設計自動支援システム』

──ルナツーで発見された連邦の遺産。その発見は偶然ではなく、必然だったのではないか。

 

「思考と感覚を、直接機械で変換する時代が来るのか……」

 

「そしてそれを操るのは、きっと“新しい人間”……」

 

その時、キシリアの通信機が控えめに音を鳴らした。

 

「フラナガン博士からの定時報告です」

 

「繋げ」

 

画面に映ったのは、あの穏やかな笑みを浮かべる男だった。

 

「キシリア様。ご報告がございます。例の“彼女”……ララァ・スンの感応波、確認できました」

 

「確証は?」

 

「……間違いありません。彼女は、確かに“聞こえている”」

 

キシリアの口元に、ごくわずかな笑みが浮かぶ。

 

「面白くなってきたわね」

 

 

 

ナレーション(永井一郎)

かつて、人の心は最も曖昧で、最も信じがたい“力”だった。

 

だが、ジオン公国はその内なる力に可能性を見出した。

それは銃でも、爆弾でもない。──“理解”のための力。

 

そして、その力を持つ者は、いずれ戦場で“言葉を超えて”何かを伝えることになる。

それが、対話か、争いか、それとも予言か──

 

ジオンは今、静かに、その未来への扉を開こうとしていた。

連邦も途中で転移した方がいいかな?

  • 一部隊
  • 一個艦隊
  • モブコロニー(生産性向上の為)
  • サイド7(天パと親父込み)
  • ジュピトリス(若いシロッコ込み)
  • 連邦なんて腐敗した奴らは要らん!
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