宇宙世紀マブラヴ   作:vault101のアルチョム

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次章書いたらストック終わりです。何かアイディアあったらコメントください!よろしくお願いします!


【幕間】空白を継ぐものたち

ナレーション(永井一郎)

 

宇宙世紀0079年4月

月面に築かれたハイブを制圧してから、およそ四ヶ月の歳月が流れた。

 

ジオン公国は、軍事的勝利とともに“接触”という名の新たな戦場に足を踏み入れる。

地球との交信、そして横浜基地からの返信は、戦火とは異なる問いをジオンに投げかけていた。

 

果たして、戦うべきはBETAか──それとも、“人類”か。

 

そして、宇宙を駆ける者たちの心にもまた、静かな揺らぎが芽生えつつあった。

それは、誰もがまだ名付けられぬ“変化”の兆しである。

 

この物語は、戦士たちの槍を一時休めた、束の間の空白にこそ宿る。

やがて来たる新たなる嵐の前に、彼らは何を思い、何を見つめたのか──

 

 

 

第一節 赤い静寂(シャア・アズナブル)

 

照明の抑えられた室内プールに、水音だけが静かに響いていた。

 

ここはサイド3の士官用娯楽施設の一角にある、軍上層部に限定された休養エリア。戦後処理が進む中、短い休暇を与えられたシャア・アズナブルは、深く潜水したままゆっくりと水中を滑っていた。

 

──戦いが終わったはずなのに、心は穏やかではなかった。

 

水の中は無音だ。鼓動すら吸い込まれ、自分という存在の輪郭が薄れていく。シャアはそれを好んだ。戦場で溜まった“雑音”が、こうして沈黙の中に溶けていく感覚が。

 

だが──

 

(……まただ)

 

彼は水面へ浮上すると、ゆっくりとゴーグルを外した。プールの天井に取り付けられた照明が、ゆらゆらと歪み、幻のように滲んでいる。

 

「……誰だ?」

 

耳元に、微かに、女の声が響いたような気がした。

 

──シャア…シャア……?

 

声は確かに、直接鼓膜を揺らすものではなかった。心の奥、理性より深い場所に触れてきた。彼は周囲を見回す。プールに他の人間はいない。物音もない。

 

「……まさか」

 

あの戦いの中、確かにあった“勘”。敵の動きが予知できるような、空間が先に教えてくれるようなあの感覚。あれは、偶然でも、錯覚でもなかったのではないか。

 

(この先、俺は……)

 

シャアは黙ってタオルを手に取り、更衣室へと歩き出した。

 

思考は静かに、しかし確かに、新たな段階へと踏み込みつつあった。

 

 

 

第二節 沈黙の準備(ギレン・ザビ)

 

「……そうか。横浜との初交渉準備は整いつつあるか」

 

ギレン・ザビの声は低く、だが確信に満ちていた。

 

ルナツー司令部の最奥、外部との接触が極端に制限された作戦室。彼は数名の高官と共に、地球降下の最終調整を行っていた。端末には、地球の気象情報、地上BETA活動分布、交信可能なポイント、そして──横浜基地からの通信ログが次々と映し出されていく。

 

「我々の返答は予定通り、“調査団”という名目での視察。公式な外交ではなく、あくまで情報交換と非軍事的接触とする」

 

傍らの通信官が応じる。

 

「はっ。予定通り、0079年6月1日を目処にザンジバル級一番艦《ザンジバル》を地球圏へ降下させる予定です。連邦の遺した遺産のおかげでブースターを強化し単独での大気圏離脱も可能な様に改修予定です。」

 

「視察団は20名規模、うち3名が軍関係者、5名が科学技術研究員、残りは医療および分析要員です」

 

「よろしい、シャトルでは舐められるからな、大気圏内外両用艦なら丁度いいだろう」

 

ギレンは頷き、指先で画面を撫でる。表示されたのは、「香月夕呼」──横浜基地側から送られてきた署名データである。

 

「軍人ではない、博士か。だが、彼女の文章からは明確な意志が感じられる。“地球側に残る合理的な 理性”がどこに宿っているか……我々が最初に確認すべきは、その一点に尽きよう」

 

彼はわずかに椅子を傾けた。

 

「この視察の成功如何で、今後の地球攻略戦──いや、地球“理解”戦略が大きく変わる。相手は連邦ではない。我らは暴力をもって支配する者ではなく対話によって優位を築くのだ」

 

側近が慎重に口を開く。

 

「……ザビ家の方針として、地球降下を進めるということですか?」

 

ギレンは静かに首を振った。

 

「方針は未だ定まらぬ。だが、我らが動かねば、時代の主導権は地球に奪われる。最初の接触、その一手は……我が手で行うべきだ」

 

その瞳には、歴史を見据えるような強い光が宿っていた。

 

 

 

第三節 眠りと目覚め(ララァ・スンとマリオン・ウェルチ)

 

──白。

 

それは、現実とも夢ともつかぬ光の世界だった。

 

空も地もなく、ただ無限に広がる“何か”の中で、二つの存在がゆっくりと近づいていた。

 

ララァ・スン。柔らかな笑みとともに浮かぶその姿は、まるで水面に映る白鳥のように儚い。

 

そして、彼女の前に現れたもう一つの影──マリオン・ウェルチ。かつて感応者として研究され、深い眠りに閉ざされた少女。

 

「あなた……目を覚ましつつあるのね」

 

ララァの声に、マリオンは微かに首を傾ける。

 

「ここは……どこ?」

 

「境界の外。けれど、すべての中心でもある。あなたと私が、出会える場所」

 

「……あなたは、誰?」

 

「ララァ。宇宙の“声”に導かれて、ここにいる者」

 

マリオンの瞳が揺れる。自我と記憶が曖昧なまま、ただこの世界の“温度”だけを感じている。

 

「……外の世界に……何が起きているの?」

 

「あなたのいた場所は、まだ混沌の中。だけど……変わろうとしている。もうすぐ、あなたのような存在が必要になる」

 

ララァの視線が、遥か遠くを見るように遠くなる。

 

「……あの人が、そこにいる」

 

──シャア・アズナブル。

 

彼の姿が、意識の彼方に揺らめいた。

 

「彼に……何か伝えようとしたの?」

 

ララァは頷いた。

 

「でも、まだ“通じない”。彼の心は、開きかけているけれど……届かない。まるで、扉の前に立っているのに、鍵が合わないみたいに」

 

「なら……どうすれば?」

 

「あなたの記憶が戻れば、彼を導けるかもしれない。あなたの“視点”が、あの人を別の形で照らす」

 

マリオンはその言葉の意味を理解できたか分からない。だが、その声音には確かに“祈り”があった。

 

そしてララァもまた、うっすらと微笑みを浮かべながら語る。

 

「──私たちは、誰かを救うために生まれたのではなく、誰かに“出会う”ために存在しているのかもしれない」

 

二人の影がゆっくりと交わる。

 

それは、まだ目覚めぬ者たちが見た、始まりの夢だった。

 

 

ナレーション(永井一郎)

静けさとは、ただの停止ではない。

それは、嵐の前に張り詰めた弓のような、鋭く緊迫した“間”である。

 

宇宙と地球の狭間で、人類は今、二つの岐路に立っていた。

“対話”か、“隔絶”か──その決断は、やがて世界の命運を左右する。

 

シャアは、未だ届かぬ声に耳を澄ませ、

ギレンは、沈黙の中に策を巡らせ、

そして──まだ見ぬ者たちの魂が、静かに交錯し始めていた。

 

この“空白”の物語は、

やがて訪れる第三章の扉を、そっと開け放つことになる。




まぁガノタの皆なら言わずとも分かると思うけど、このララァ…なんと2週目ララァです!w

連邦も途中で転移した方がいいかな?

  • 一部隊
  • 一個艦隊
  • モブコロニー(生産性向上の為)
  • サイド7(天パと親父込み)
  • ジュピトリス(若いシロッコ込み)
  • 連邦なんて腐敗した奴らは要らん!
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