宇宙世紀マブラヴ   作:vault101のアルチョム

32 / 70
第四章
【第28話】開発会議


ナレーション(永井一郎)

宇宙世紀0079年4月15日。

月での戦いの勝利からおよそ四ヶ月──

ジオン公国は、新たな課題に向き合っていた。

 

それは、敵との戦いではなく、

自らの技術と理性とを問い直す静かな戦い。

 

そしてその最前線に立つのは、

兵士でも将校でもない。

名もなき研究者、技術者たちだった。

 

 

 

サイド3・第3技術省統合会議室

 

鋼鉄とガラスで構成された会議ホール。

複数のプロジェクターが天井から吊り下がり、壁面には各研究機関からの実証データが映し出されていた。

 

会場にはジオニック、ツィマッド、MIP──

ジオンを代表する主要開発企業の主任技師と、軍技術本部から派遣された実務責任者たちが一堂に会している。

 

その中央、壇上に立つのは技術省長官代理、ハイゼン・リッケルト技術准将。

 

彼は、深く一礼したのち、開口一番こう告げた。

 

「本日の議題は三点。

 第一に、地球側との技術的連携の検討。

 第二に、現在進行中の戦術・技術開発の進捗報告。

 そして第三に……我が公国が向かうべき“戦略”の再定義だ」

 

ざわ……と会場に微かな緊張が走る。

 

スクリーンに、鮮やかな青で浮かび上がる三つの技術計画が表示された。

 

 

■計画一:学習支援型OS “AOS-79” 試験実装

 

ジオニック社から派遣された青年技術士官が立ち上がる。

 

「本プロジェクトは、鹵獲されたルナツーの機体──いわゆる“V作戦”系列機から回収された学習型コンピュータに着想を得たものです」

 

「ただし我々は、これを“AI”とするのではなく、“兵士を支援する補助脳”として位置づけています」

 

複数の技術者が頷く。

AIではなく、あくまで「学習支援型」──

それは、兵士の意志と判断を補完する道具であり、制御者ではない。

 

「訓練データを蓄積し、パイロットの癖を分析、操作性を最適化する。現段階ではザクⅡF型への限定実装で、平均反応速度が24%向上しています」

 

ツィマッドの主任が思わず眉を上げる。

 

「……24%? 本当か、それは……もはや機体のリミッターを超えている」

ジオニックの担当官は誇らしげに頷く。

「現時点では訓練機だけですが、条件次第では更に伸びます」

 

「学習型コンピュータは?OSのみなのか?」

 

「搭載予定はありません。あくまで“OS”のみ搭載でハードは既存の物を改修するくらいです」

 

会場がざわつく空気が広がった。

懸念されていた「懸念されていた高コストコンピュータ搭載」は、これで払拭されたかに見えた。

 

 

 

■計画二:ホバー換装MS “ZAKU-HV改” 初期試作完了

 

次に立ち上がったのは、月面部隊から帰還したオリヴァー・マイ技術中尉。

彼は実際に突撃級BETAとの交戦記録を解析したうえで語る。

 

「突撃級に対抗するには、跳躍力と再加速力が鍵になります。従来の脚部スラスターでは能力不足です」

 

スクリーンに、改修型ザクの足元が映る。

ホバー推進用のインテークと補助スラスターが取り付けられた機体だ。

 

「これにより、接地摩擦を抑えつつ、突撃級との衝突を回避しやすくなります。

 また、砂塵環境での被視認率低下にも効果があります」

 

ツィマッドの主任が苦笑する。

 

「ウチで試作してた熱核ジェットエンジンが役に立ってよかったよ」

 

静かに、だが明確に“戦い方”が変わろうとしていることを示していた。

 

 

 

■計画三:AT(アーマード・トルーパー)局地仕様開発計画

 

最後に映し出されたのは、小型MSことAT(Armored Trooper)のシルエット。

 

「ATと呼ばれてきたこの歩兵支援兵器に、局地戦仕様を追加する計画が始動しています」

 

「AGS-04 “Assault Glide System”に次ぐ派生型として、寒冷地・砂漠・高重力用を順次開発予定です」

 

「さらに、既存のバーニア推進装備により、短距離跳躍・緊急離脱・バーティカル展開が可能となります」

 

ジオニックとツィマッドの技術者が、珍しく頷き合う。

 

「……これは面白い」

 

「戦線維持の即応兵力として、重宝されるだろうな」

 

 

 

会議終盤・香月夕呼からの通信文

 

そして、会議も終盤に差しかかったころ。

 

一人の通信士官が手を挙げた。

 

「失礼します。本日、横浜基地より新たな通信が届いております」

 

会場の空気が一変する。

 

スクリーンに表示されたのは、香月夕呼の名を冠した正式な外交文書だった。

 

≪To: Zeon Principality – Science Ministry

Regarding: Protocol for Mutual Bio-Sample Exchange

From: Yukko Kouzuki, Chief Science Officer, Yokohama Base

Date: UC2001/4/15≫

 

「内容は……“生体試料交換の正式プロトコル案”とのことです」

 

「……ついに来たか」

 

誰かがぽつりと呟いた。

 

添付資料には、以下の三項目が明記されていた:

1. BETA種族に関する非感染性サンプルの相互提供

2. 分析技術および測定器具の型式開示

3. 試料交換時の医療的・倫理的ガイドラインの遵守

 

技術者たちの間にさざ波のようにさまざまな意見が飛び交う。

 

「まさか、ここまで早く……」

 

「彼らも、“理解しよう”としている……」

 

しかし──その空気を断ち切ったのは、サブスクリーンに映るギレン・ザビ総帥の音声だった。

 

画面越しに、重厚な声が響く。

 

「“見せ札”は出してよい。だが“ミノフスキー物理学”は出すな」

 

会場が静まり返る。

 

 

「理性なき進歩は、滅びを早めるだけだ。あの地に、それを悟れる者がいるか──」

 

「地球は、試すべき対象だ。

彼らが我らを理解するのに足る理性を持つか。

それを見極めるまでは、主導権を渡してはならん」

 

その言葉に、誰も異を唱えなかった。

 

 

 

ナレーション(永井一郎風)

 

人類は、戦うことでしか進めなかったのか。

あるいは、理解しようとする者たちも確かにいたのか。

 

技術とは、兵器か。希望か。

それを決めるのは、“使う者の意志”だけである。

 

今、宇宙と地球を結ぶ細い線が、初めて“理性”でつながれようとしていた。

 

だが、それは同時に──

“信頼”という、もっとも不安定な戦場の幕開けでもあったのだ。

連邦も途中で転移した方がいいかな?

  • 一部隊
  • 一個艦隊
  • モブコロニー(生産性向上の為)
  • サイド7(天パと親父込み)
  • ジュピトリス(若いシロッコ込み)
  • 連邦なんて腐敗した奴らは要らん!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。