宇宙世紀マブラヴ   作:vault101のアルチョム

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【第30話】思想と統制

ナレーション(永井一郎)

宇宙世紀0079年4月24日。

 

ジオン公国はかつてない“内なる敵”と対峙していた。

 

それは砲弾ではない。

冷たい言葉と、硬直した凝り固まった思想。

そして老いによる“恐れ”であった。

 

地球を──信じてよいのか。

技術を──共有してよいのか。

そして何より、この戦争の“意味”とは──何なのか。

 

それを問う声が、いま、政庁中枢を揺らしていた。

 

 

 

サイド3・議会庁舎 特別審議室

 

重厚なドーム型天井。金属と大理石が組み合わされたこの空間は、ジオン自治共和国時代から続く「政治」の中枢である。

 

今、その場に緊迫した空気が張り詰めていた。

 

「私は断じて容認できん! 地球との技術交流? BETA由来物質? 馬鹿げているッ!」

 

壇上で吠えるのは、上級評議員ダルシア・ハバロ。古参の保守派議員であり、国粋主義の急先鋒である。

 

「彼らはBETAに追われ、星を失った敗者だ。そんな連中と肩を並べて、我々がなぜ“同盟”せねばならん!?

 我々は、宇宙で生きる“選ばれし民”ではなかったのか!!」

 

一部の保守派議員が拍手を送る。

その背後では、若い中堅議員たちが沈黙し、リベラル派は静かに目を細めていた。

 

——議会は今、揺れていた。

 

「公国が築いた技術、血と汗と犠牲の歴史、それを安売りしてよいのか!?

 やがて奴らは“ジオンの脳”を奪い、連邦の様に“地球に頭を下げろ”と言い出すだろう!」

 

誰かが小さく舌打ちする。

会場の片隅、キシリア・ザビが立ち上がると、冷たい声で告げた。

 

「……だからこそ、制御が必要です。どの技術を出し、どの情報を握るか。主導権はこちらが握ればよい」

 

ハバロが一瞬だけ怯む。

だが彼の目には、既に確信めいた執念が宿っていた。

 

「あなた方ザビ家は、この事態を利用して“地球に取り入る”つもりなのだろう! 絶対に認めん!」

 

キシリアの目が細められる。

 

静かに、冷たく、彼女は言った。

 

「それは“過去に生きる者”の台詞ですわ。ダルシア議員……あなたが“時代に斬り捨てられる”前に、引き際をお考えになった方がいい」

 

 

 

ギレン私邸・暗室

 

会議の後、ギレン・ザビは薄暗い私邸の奥にて、キシリアと二人きりで対峙していた。

 

「……議会の掌握、想像以上に早いペースで崩れ始めているな」

 

「地球との接触に怯えた者たちが、過去の栄光にすがっているだけです。あの世代はもはや切り捨てるべきでしょう」

 

ギレンは重い琥珀色のウイスキーグラスを回しながら言う。

 

「だがそれを民衆が“粛清”と受け取れば、革命は終わる。我々は正義でなければならん」

 

キシリアが小さく笑う。

 

「ならば、正義の形に仕立てればよろしい。ハバロは“情報漏洩の疑い”で……“拘束”してみせます」

 

「……そうか…やれ」

 

短い返答だった。

 

だが、それは“ジオン公国が民主制を捨て始めた”瞬間でもあった。

 

 

 

サイド3・第十三区 教会前広場

 

陽の当たらないコロニー最下層。年老いた退役軍人たちが、薄暗い喫茶室のラジオに耳を傾けていた。

 

「なあ……戦争が終わったとしてさ……」

 

ぽつりと、誰かが言った。

 

「……俺たちゃ、地球に帰れるんだろうか……?」

 

誰も答えなかった。

 

一人が、小さく笑った。

 

「もう“地球人”じゃない、ってことかもな……」

 

その笑いは、どこか自嘲と諦めを含んでいた。

 

「そういや、俺の孫は“地球って本当にあんの?”って聞いてきやがったよ」

 

「サイド3は月の裏だからな。コロニーから出た事無い奴らは知らんのさ…」

 

誰も、否定はしなかった。

 

 

 

サイド3・ザビ家邸宅 別館バルコニー

 

その日の午後。

シャア・アズナブル少佐は、珍しくガルマ・ザビ中佐と二人で過ごしていた。

 

紅茶の湯気が風に揺れる。

 

「……シャア、お前……最近少し変わったな」

 

「どういう意味だ?」

 

「……シャア、お前って昔はもうちょっと……壁を作ってた気がする。ザビ家っていうより、俺にもな。最近は……なんか、柔らかくなったっていうか」

 

シャアは笑わなかった。

だが、否定もしなかった。

 

「……あの頃の俺は、怒りで動いていた。今は、違う」

 

「それって……“許した”ってことか?」

 

「いや……“諦めた”のかもしれん。お前たちは……思っていたよりずっと、“愚かではなかった”からな」

 

ガルマがやや拗ねたように笑った。

 

「おい、それ褒めてんのか?」

 

シャアは少しだけ笑って言った。

 

「お前がそう受け取るなら、そう言う事だ」

 

二人の間に、春のような風が吹き抜けた。

 

遠く、ルナツーの研究ドームからは、また一つ新しい実験成功の報が届いていた。

 

 

 

ナレーション(永井一郎)

 

世界が変わる時、最も恐ろしいのは──

“敵”ではない。

 

それは、“味方の中にいる旧き者”だ。

 

だが同時に、若き者たちは確かに立ち上がっていた。

 

技術と理性を手に取り、未来を変えるために。

そして、それを静かに見つめる者がいた。

 

彗星の復讐の火は、少しずつ──

灰になりつつあった。

 

ジオンの空に、静かな変化の風が吹き始めているのかもしれない。

連邦も途中で転移した方がいいかな?

  • 一部隊
  • 一個艦隊
  • モブコロニー(生産性向上の為)
  • サイド7(天パと親父込み)
  • ジュピトリス(若いシロッコ込み)
  • 連邦なんて腐敗した奴らは要らん!
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