宇宙世紀マブラヴ   作:vault101のアルチョム

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【第31話】地球への扉

ナレーション(永井一郎)

宇宙世紀0079年6月1日。

ジオン公国がこの異界へと現れてから、半年が過ぎていた。

 

月面の死闘。ハイブの攻略。

そして、静かに始まった技術と知の交流。

 

だが──その距離はなお遠く、

心の深奥では誰もが「異なる世界」を測りかねていた。

 

その日、ジオンはひとつの“扉”を開けた。

それは戦争の扉ではない。希望と、畏れと、そして探究の扉であった。

 

地球へ。かつて人類が生まれた大地へ──

 

それは、ジオンがこの世界の“現実”と対峙する、初めての旅だった。

 

 

 

宇宙・ルナツー静止軌道宙域/特務艦《ザンジバル》

 

ブリッジには緊張と静寂が漂っていた。

 

視察団を乗せた強化型ザンジバル級巡洋艦《ザンジバル》が、今まさに重力井戸へと滑り込もうとしている。

 

「メインスラスタ確認。“ブースト・コンバータ”出力安定。

 熱交換系統も正常。再上昇圏内までの軌道維持、可能です」

 

航宙科士官が次々と報告を上げる。

 

《ザンジバル》──

それは連邦の技術を基に、ジオンが独自に再設計した「往還可能型」のザンジバル級である。

 

その艦尾には、異様な輝きを放つ四基の大推力ブースター。

地球の大気圏を従来の船のようにロケットブースターを取り付けなくても“単艦”で突破・離脱できる、唯一の試作艦だった。

 

艦内では、視察団の主要メンバーが静かにシートへと座っている。

 

・クルト・メルカ少将(外交局)

・レオノーレ・ヴァイス博士(技術官僚)

・リヒャルト・シェンク准将(防衛局代表)

・副技術主任数名

・護衛部隊指揮官シャア・アズナブル少佐

 

「……この艦なら、緊急時には即時帰還可能か」

 

「地上に囚われる事はありません。まさに“見せ札”ですな」

 

そう言いながら、メルカはブリーフィングパネルに映る地球を見つめていた。

 

かつて“青かった”と伝えられる星は、かつての青と緑の面影は消え失せ、ところどころ焦げ付いているようだった。

 

 

 

地球・横浜上空/大気圏突入直後

 

「耐熱制御、臨界値以下──」

 

「姿勢制御、安定。光学誘導、機能維持」

 

大気との摩擦が白いプラズマの炎となって艦体を包む中、ザンジバルは緻密な制御で降下を続けていた。

 

やがて視界を包んでいた火炎が消え、窓の向こうに「かつての都市」が姿を現す。

 

だが──

 

「……これは、都市の……廃墟か……?」

 

「違う。これは“跡地”だ」

 

レオノーレが端末を開き、表示されたデータを見つめる。

 

「G弾投下区域──瓦礫だらけで植物は一切存在していない……」

 

焦げた地表、捩れた地層、黒く枯れた森林、

そして何より、人の営みを一切感じさせない“沈黙”が、その光景を包んでいた。

 

横浜基地・降下パッド

 

ザンジバルがゆっくりと降下を終えると、静かに開かれるランプ。

 

待機していた国連軍の兵士たちが整列する。だが──武器は携行していない。

 

視察団がブリッジから降りると、まず前に出たのは通訳官。英語で名乗ろうとした、その瞬間──

 

「ようこそ、ジオン公国の皆様」

 

地球側の代表者が一歩前に出て、通訳を遮った。

 

その声は──ジオン公国の公用語である流暢なドイツ語だった。

 

「……!」

 

視察団の面々が一瞬、目を見開く。

 

「初めまして。私は香月夕呼。この基地の副司令兼オルタネイティヴ4の責任者ですわ」

 

彼女は翻訳機を通すことなく、完璧な発音で言葉を紡ぐ。

 

クルト・メルカが一礼する。

 

「貴女が……例の通信で名を聞いた香月博士か」

 

旧横浜都市圏第6区/ハイブ外縁部跡地

 

視察団一行が乗った車両が、かつての街の中心部へと向かう。

 

その場所は──焼け焦げた岩と、穴の空いた地層。

重力の乱れによる地形の隆起が、まるで“災厄”の彫刻のように広がっていた。

 

「これが、五次元効果兵器“G弾”の痕跡です」

 

香月が車内マイク越しに説明する。

 

「以前は空間座標の一部が物理法則から逸脱しており……質量異常、時間的歪曲、地下構造の消失が確認されてました」

 

レオノーレが息を呑む。

 

「……まさか……我々が転移した空間特性と……」

 

「理論的には、似たベクトルの重力変動が確認されています。ですが、それが“意図的な”因果かどうかは断定できません」

 

一行は、やがて巨大な陥没穴の前に降り立つ。

 

誰もが口を閉ざしたまま、その光景を見つめていた。

 

リヒャルト・シェンク准将が低く問う。

 

「……この地に、何人が生きていた?」

 

「……数百万。だけど今は一人もいません」

 

乾いた風が吹き、視察団のマントを揺らす。

 

その風には、血の匂いも、土の匂いも、なかった。

 

 

 

ナレーション(永井一郎)

 

“地球”──

 

かつて人類が夢見た楽園は、今や焦土と化していた。

 

だが、その焦土にも知が宿り、技術が芽吹こうとしていた。

 

ジオンと地球。異なる世界の者たちが“連携”の可能性を模索していた。

 

そして、彼らの背後で、さらなる“扉”が音もなく開こうとしていた。

人と人ではないものを隔てる、最後の壁──その向こう側へ。

 

この世界における“地球”との対話は、まだ始まったばかりである。

連邦も途中で転移した方がいいかな?

  • 一部隊
  • 一個艦隊
  • モブコロニー(生産性向上の為)
  • サイド7(天パと親父込み)
  • ジュピトリス(若いシロッコ込み)
  • 連邦なんて腐敗した奴らは要らん!
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