宇宙世紀マブラヴ   作:vault101のアルチョム

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【第32話】断絶と理解

ナレーション(永井一郎)

宇宙世紀0079年6月1日

ジオンと地球。かつて交わるはずのなかった二つの世界の勢力。

今まさに“言葉”という名の架け橋を試みようとしていた。

 

その場所は、かつて焦土となり、今なお癒えぬ傷を抱える横浜基地。

 

だが──

その荒廃の只中に立つ者たちの瞳には、確かに“火”が灯っていた。

 

それは、希望という名の炎か。あるいは──再び燃え上がる断絶の予兆か。

 

 

 

横浜基地・第3格納区画前広場/合同式典会場

 

式典会場の壇上には、二本の旗がはためいていた。

ひとつは国連軍の青い地球旗。もうひとつは、ジオン公国の深紅の旗。

 

司会官の呼びかけとともに、基地の全将兵が整列する。

その正面に、ジオンの視察団一行が整然と並んでいた。

 

視察団長クルト・メルカ少将は、厳しい表情のまま周囲を見渡す。

隣にはレオノーレ・ヴァイス博士、防衛代表のリヒャルト・シェンク准将も控えている。

 

そこに、基地司令のパウル・ラダビノット准将が姿を現す。

 

「ようこそ、ジオン公国の皆様。ここが、私たちの“前線”です」

 

彼もまた翻訳機も通訳も使わず、完璧なドイツ語で挨拶した。

その声に、周囲の兵士たちがざわつく。

 

通訳官が一瞬動こうとしたが、メルカがそれを手で制した。

 

「……司令自らとは、光栄です。ラダビノット准将。我々も今回の視察は地球側と友好の輪を築こうと思っております」

 

 

 

式典終了後・基地格納区画

 

式典の余韻が残る中、基地の将兵たちとジオンの随行技術者、MSパイロットたちが格納区画で自然と言葉を交わし始めていた。

 

「……そのモビルスーツって、あれだろ?“戦術機”みたいなやつ」

 

英語で話しかけてきたのは、連絡用装甲車の運転手の一人。

ジオン側のMSパイロットが軽く頷いた。

 

「ああ、“ザク”だ。だが……艦内に置いて来てある。今日持ち込んだのは別の機体だ」

 

そう言って、彼が指を差したのは、簡易クレーンに吊るされた濃緑の人型兵器。

四肢はコンパクトで、頭部にはカメラアイが3つ。

ジオンの随行技術者が横で補足する。

 

「アーマード・トルーパー、略称AT。我々が実験投入している軽量型MS……“サブMS”の試作機だ」

 

それを見た香月夕呼が、ふと近づく。

 

「……これが、あなた方が言っていた“小型機体”?」

 

「左様です。極地や閉所、あるいは地下坑道での機動戦闘に対応するため……」

 

夕呼は、無言で足を止めた。

 

細部を舐めるように目で追い、膝の可動部や脚部ローラーに注目する。

 

「……なるほど。脚部は小さい無限軌道が付いてこれで進むんですね?速度はどのくらい出るのかしら…。

重装甲じゃないのは、機動優先か。……これは──」

 

「はい、その通りです。ローラーダッシュ時は巡航速度70km、最大速度は110kmを記録しております。……また、バックパックブースターを装備すれば、三次元機動も可能です。」

 

一歩、歩を進め、言い切るように呟いた。

 

「これは……ハイブ攻略において、希望になるかもしれませんね」

 

技術者が軽く驚きつつも、礼を返す。

 

「そう言っていただけると光栄です」

 

傍に黙って静観していたシャアは、その一言が“ただの外交辞令”ではないことを理解していた。

 

 

 

基地応接室・ジオン視察団内部協議

 

その夜、視察団は横浜基地の応接室を借りて、内部会議を開いていた。

 

「……歓迎の体制としては、上々と言えましょうな。香月博士の姿勢も誠実だった」

 

クルト・メルカ少将の言葉に、レオノーレ博士は無表情で頷く。

 

「だが、あくまでこれは“見せ場”でしかない。本質的には、彼らは我々に対する信頼を確立していない。逆もまた然り…」

 

「ならば我々は、どう振る舞うべきか」

 

防衛局代表のシェンク准将が言葉を挟む。

 

「基地将兵の態度は悪くなかった。むしろ、親しみすら感じたほどだ。

……彼らは、この戦争に疲弊しきっている。我々とて、それは同じだろう」

 

「だからといって、技術を軽々しく開示すべきではありません」

 

レオノーレが冷たく言う。

 

「この先、彼らが“信用に足る”と判断されるまでは、情報の共有は慎重に進めるべきです」

 

その言葉に、メルカは一度静かに目を閉じた。

 

──この場にいないキシリア、そしてギレンの指示を思い出す。

 

「“見せ札は出すが、全てではない”。我々は、この地球という存在を“試す”のだ」

 

会議は数分の沈黙を挟み、やがて結論を迎えた。

 

「……ジオン代表団は、地球側との協議を“継続”とする」

 

その一言に、誰も異を唱えなかった。

 

未来は、なお遠く。

だが、その“可能性”は、わずかに──動き出していた。

 

 

 

ナレーション(永井一郎)

断絶か、理解か。

 

世界の壁を越えた者たちは、今ようやく──

言葉と技術を手に、相手の“真意”を見極めようとしていた。

 

その手が届くには、まだ時間がかかるだろう。

 

だがその距離は、確かに──

昨日よりも近づいていた。

連邦も途中で転移した方がいいかな?

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