宇宙世紀マブラヴ   作:vault101のアルチョム

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【第3話】遺された力

ナレーション(永井一郎)

宇宙において、優位を保つ者は常に技術と情報を握る者である。

だが、時として運命は、それらを一瞬にして塗り替える。

 

そして今――ジオン公国は、異世界において連邦の牙城と出会った。

そこに眠るのは、かつての敵が未来に備えた“力”であった。

 

地球と月の中間軌道上──

そこに存在するのは、漆黒の宇宙に突如として現れた人工物。濃灰色の岩肌に無骨な装甲を纏い、外殻のあちこちに白く塗装された軍用番号が刻まれている。

 

宇宙嵐によってこの異世界へと転移された要塞――ルナツー。

本来は地球連邦軍の一大拠点であり、ジオン公国にとっては敵の牙城であったこの構造体が、いまや未知の世界において重要な戦略的意味を持ち始めていた。

 

要塞の内壁には、衝撃の痕跡も焦げ跡もなかった。まるで昨日まで正常に稼働していたかのような静けさ。ジオンの偵察部隊が足を踏み入れた時、彼らは異様な緊張感とともに、ある種の神聖ささえ感じていた。

 

「……報告。中央ドック区画にて、試作型MSを発見。白と黒を基調とした角ばった装甲、背面に高出力バーニアを装備。未登録のOSが動作状態にあり、緊急起動には一定のプロセスが必要とのことです」

 

「これは“連邦のモビルスーツ”だろう」

 

格納庫の奥に鎮座するその姿は、まさに威圧そのものだった。

巨大な二足歩行兵器。その装甲構造はザクとは明らかに異なり、無骨で角ばったシルエットが緊張感をもたらす。

 

「……この造形、性能。ジオン公国のモビルスーツに対抗するために開発されていた“カウンター兵器”か」

 

士官のひとりが低く呟いた。

 

「別区画からの報告です。中距離支援型の“ガンキャノン”という重装型モビルスーツも確認。戦車構造を持つ遠距離支援型、“ガンタンク”というタンクもどきの機体も存在。さらに、量産型と思しき設計データも別区画で発見。いずれも保存状態は極めて良好です」

 

「これが……連邦がジオンにぶつけるつもりだったモビルスーツ……。もしあれが前線に出ていたら、我々のザクでは……」

 

言葉を濁した士官に、技術士官のひとりが続ける。

 

「装甲は高密度複合材、駆動系は新型のフィールドモーター。頭部には近接防御用のバルカン砲、盾には対ビームコーティングの塗装。肩部と脚部には対爆補強。全体的な重心バランスも優れている」

 

技術者たちが食い入るようにコンソールを覗き込み、記録を読み解いていく。

 

その疑問に応えるように、上層フロアでは別の報告が届いていた。

 

「観測班より報告。地球軌道上に通信衛星を7機確認。いずれも現地のもので、構造は宇宙世紀の基準から見て約100年古く。しかし制御信号は生きており、すべて正常に稼働中です」

 

「さらに、いくつかの衛星には核弾頭を搭載した迎撃装置を確認。落着ユニット――BETAの突入型構造体を迎撃するための戦術と推測されます」

 

「……月面観測にて、生体反応多数を感知。巨大構造物も確認されました。ハイブと思しき異形の構造体……明らかに自然物ではありません。おそらく、すでに月面は全土BETAに制圧されています」

 

大型スクリーンに映し出された月面の映像には、不自然に隆起した黒い塊が、月のクレーターを覆い隠すように存在していた。

 

「……ならば、今我々が足を踏み入れているこのルナツーこそ、地球へ進出するための最前線。ジオン公国にとって、この地球圏における新たな“足掛かり”となるだろう」

 

士官たちの表情に緊張が走る中、ひとりの参謀が静かに言い放つ。

 

「ルナツーの技術資産を徹底解析し、連邦の遺産から我らの戦力を強化する手がかりを探れ」

 

戦闘を目的とした機体だけではなかった。

別区画ではシミュレーターや学習型OSの研究室も発見され、そこではパイロットの反応を取り込むフィードバック型システムが試験段階にあった。

 

「パイロットの反応を学習して成長させる……。未完成だが、これが連邦の“学習型OS”か」

 

「これも……我々ジオンとの戦争を想定していた証拠だろうな」

 

その時、ルナツー外縁に配置された観測機が、ユーラシア大陸の一部映像を送信してきた。

 

赤茶けた大地。緑なき大陸。破壊し尽くされたかつての都市は、瓦礫ひとつ残っていない。

 

「……ユーラシア大陸の大部分。文明の痕跡は、すでに失われている」

 

「これがBETAの侵略……か」

 

沈黙が支配する中、誰かがつぶやいた。

 

「連邦がここで、我々にこれらのモビルスーツをぶつける準備をしていたのか。あのまま宇宙世紀で戦争が続いていたら……果たして勝てたかどうか」

 

 

 

ナレーション(永井一郎)

それは、新しい兵器を作れども作れども

追い越し追い越されの繰り返し

戦争の本質が変わらぬことへの静かな恐怖でもあった。

 

そして、静かに眠るMS群の中で、最も存在感を放つ白と黒の機体が、わずかに光を反射した。

 

それは、連邦の希望でも、BETAへの抵抗でもない。

ただ、ジオンという敵に叩きつけるために作られた、冷たい鉄の“意志”だった――。

連邦も途中で転移した方がいいかな?

  • 一部隊
  • 一個艦隊
  • モブコロニー(生産性向上の為)
  • サイド7(天パと親父込み)
  • ジュピトリス(若いシロッコ込み)
  • 連邦なんて腐敗した奴らは要らん!
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