宇宙世紀マブラヴ   作:vault101のアルチョム

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【第52話】因果律の記録装置

ナレーション(永井一郎)

精神と物理、理論と感応。

人は見えぬものに名を与え、理解しようとする。

 

だが、見えぬがゆえに、それは時に“力”と呼ばれ、時に“忌むべき異常”として扱われる。

 

二つの世界に存在した二人の少女──ララァ・スンと鑑純夏。

その存在を知る者たちが、今、対話の場を持とうとしていた。

 

それは、偶然ではない。

運命が交差した結果に他ならない。

 

 

 

サイド3 フラナガン機関 会議室

低い照明に包まれた会議室のモニターに、二人の科学者の姿が映し出されていた。

 

「……ようやく直接、対話の場が持てましたね。フラナガン博士」

 

画面に映るのは、フラナガン機関の責任者フラナガン・ロム博士。

くたびれた白衣を着た中東系の顔立ちをした男性が疲れた様な表情で相手を見ている。

だが彼の目は、確かな目的を宿していた。

 

対するもう一人──画面の向こう、国連軍特別顧問としての立場で会話に応じているのは、香月夕呼博士。

白衣の下にタイトなスーツを纏い、鋭い視線を画面越しに投げかけていた。

 

「……貴方も、あの“精神世界”に居たわよね」

 

「ええ……私の被験者は“ララァ・スン”という少女です。ニュータイプとは可能性の塊そのもの、これ程研究していて知識欲を刺激する対象はありません。」

 

「私の被験者は“鑑純夏”──同じく、思念による接触と、他者との“重なり”を貴方の所のララァ・スンが経由して私も経験したわ」

 

香月の口調はやや早口だったが、それをフラナガンは否定せず、ただ頷いた。

 

「思念の交差……“意思の重なり”こそが鍵。

人の意識を記録し、観測し、可能ならばその“交信”すら再現できる機材があれば……ニュータイプ研究はより進みます。それこそ並行世界の情報を覗き見る事も…」

 

「……ええ。私も、それを考えていたところよ。俗にいう。アカシックレコードにすらアクセス出来そうな可能性…。大変興味深いわ」

 

二人の科学者が見据えるのは、人知を越えた“波動”の可視化と記録装置。

この日──ジオンと国連軍の垣根を超えた、奇跡の共同研究が正式にスタートした。

コードネーム──《サイコ・レコーダー計画》。

 

 

 

ソロモン 防衛研究施設

鋼鉄のゲートがゆっくりと開き、白衣の男が現れた。

クルスト・モーゼス博士──かつてEXAMシステム開発の中心に立ち、その非倫理性から表舞台を退いた男。

 

「……クルスト博士。ギレン閣下より、再調査の命令だ」

 

報告書を手渡したのは、ギレン直属の情報参謀官だった。

 

「……EXAMシステムの初期プロトタイプはすでに破棄されたはずだが?」

 

「我々は、破棄されたとは聞いていない。少なくとも“抹消はされていない”。」

 

無表情にそう返され、クルストは僅かに眉をひそめた。

 

「……まさか…マリオン・ウェルチ。あの少女は……まだ生きているのか?」

 

参謀官は沈黙のまま立ち去る。

残されたクルストは、報告書を手に取ると、やがて静かに呟いた。

 

「……ギレン・ザビ……ふざけた真似を」

 

だが──その表情は、かつてのような狂気ではなかった。

代わりに、ある種の諦念と覚悟、そして僅かな希望が宿っていた。

 

《次世代型EXAMシステム開発準備──学習型コンピュータとの併用により、適正者をエースパイロットに限定》

 

そう記された備考に、彼は初めて口元を歪めた。

 

「……“使える者だけが使えばいい”ということか。随分と分別が付いたじゃないか、閣下…。

まぁいい。プロトタイプEXAMシステムは暴走の危険性の方が高かったからな…」

 

だが彼はもう、命令を拒む立場にはなかった。

彼が今できることは、せめて──かつての“あの少女”に報いる形で、安全なEXAMを模索することだった。

 

「……マリオン。もう一度だけチャンスがあるのなら…科学者として君に誠実でありたい」

 

 

 

ソロモン 執務室

シャア・アズナブル少佐は、静かに一つの報告書に目を通していた。

 

『EXAM関連被験者記録:個体名 マリオン・ウェルチ』

 

「……マリオン?」

 

声に出した瞬間、シャアの眉がわずかに動いた。

どこかで、確かに聞いたことのある響き。

 

だが、それが誰なのか、思い出せない。

 

かつて彼が出会った、感応のような気配──

ララァとも異なる、誰かの“声”のような存在。

 

思い出せない名が、胸の奥を鈍く疼かせた

 

「……まさかな」

 

彼はそのまま報告書を閉じ、立ち上がる。

 

その背に、沈黙のまま薄明かりが差し込んでいた。

 

 

 

ナレーション(永井一郎)

 

人が、人の内に秘めるものを探るには──あまりに多くの代償を伴う。

 

それでもなお、知ろうとする者たちがいる。

かつての過ちを繰り返さぬために。

あるいは、未来に“繋ぐ”ために。

 

そして今、新たな記録装置が──記憶と想念の狭間に、静かにその胎動を始めていた。

連邦も途中で転移した方がいいかな?

  • 一部隊
  • 一個艦隊
  • モブコロニー(生産性向上の為)
  • サイド7(天パと親父込み)
  • ジュピトリス(若いシロッコ込み)
  • 連邦なんて腐敗した奴らは要らん!
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