【第56話】女狐と女狐
ナレーション(永井一郎)
外交とは、剣よりも鋭く、砲よりも重い。
利害と策謀が交差する中で、真に動くのは、野心と信念である。
地球に降り立つは、ジオンの策謀家──キシリア・ザビ。
迎え撃つは、“第四計画”を統べる頭脳──香月夕呼。
両者が求めるは、“未来”を読む鍵──
人知を超えた力を巡り、静かなる火花が散る。
そして、その交渉の果てに結ばれようとするは、
宇宙と地球、人類という種の運命をも揺るがす、重大なる契約であった。
地球圏降下船・ジオン特使艇《ガルミッシュ》
成層圏を滑るように抜けた艦は、慣性軌道を終え、慎重に降下を開始していた。艦内には緊張感のない静謐が流れている。
窓外の青い地球を眺めていたキシリア・ザビは、モニターに表示された資料に視線を移した。
「……鑑純夏。この世界のニュータイプと思われるESP発現体の一人。能力の起源は不明──だが、“あの手の資質”を持つ者が地球側に存在するという事実は、見過ごせない……」
彼女の指が、テーブルに投影されたホログラムをなぞる。
そこには、香月夕呼の名と“Alternative Ⅳ”に関する概要が記されていた。
横浜基地 研究中枢棟・応接ブース
先に到着していた香月夕呼は、わずかに口元を緩めながらキシリアを迎えた。互いに笑顔は崩さずとも、内心では鋭い剣を突き付け合うような緊張感が漂う。
「ようこそ、キシリア閣下。“我々の地球へ”」
「貴女が“Alternative Ⅳ”の責任者、香月夕呼博士。……聞き及んでいます。極めて優秀で、抜け目ない方だとか」
「まあ、閣下も言葉遊びがお上手ですこと…」
ふたりの会話はまるでチェスのように静かに、だが着実に読み合いを進めていた。
「……率直に申し上げましょう。地球側に存在する“能力者”について、私どもも関心を持っています」
「ニュータイプとESP発現体。あるいは、似て非なるもの──でしょうか?」
「そのあたりの分類は、むしろ貴女の領分かと。いずれにせよ、“オルタネイティヴⅣ”に所属している鑑純夏という存在。可能であれば、直接面会を希望します」
「……あいにくですが、彼女は現在、物理的な“接触”が困難な状態にございます」
キシリアは目を細めながら問う
「……それは、どういう意味かしら?」
「文字通りです。鑑純夏は……今や肉体を持たず、私たちの定義する“人間”として存在しているとは言いがたい状況にあります」
「……まるで“精神のみの存在”とでも?」
「その解釈で間違いではありませんが──正確ではありません。
彼女は、脳と脊髄だけの“不安定な意志”として存在している。精神だけが…ある次元から情報を受信していると言っても良いでしょう」
「興味深いわ。では、会えない代わりに……その意志とやらの“観測データ”を拝見することは可能かしら?」
「観測可能な“波形”は、確かに存在しています。ただし、それが“彼女”そのものかどうかは……判断に迷うところですね。
今の所こちらに所属している“とあるESP発現体”を通して断片的な情報を得ているに過ぎません」
「媒介を通して、ということかしら?」
「ええ。直接の接触ではなく、“リーディング能力者”を介して“彼女”の感情に触れる──今は、そういう段階です。
科学が“意志”というものをどう捉えるべきか……まさに実験と検証の途上でして」
国会議事堂 特別応接室
後日。舞台は内閣総理大臣・榊 是親が待つ政府施設へと移る。
「ジオン公国の皆様より賜りました技術とご支援につきまして、我が国といたしましても、深く感謝申し上げます。
本日をもって、両国間の“実務連携協定”の締結に向け、正式な準備に入らせていただきたく存じます」
「光栄に存じます。もっとも、我がジオン公国としても、日本の持つ人材・文化、そして潜在力には注目しております」
内閣府の大臣らが同席する中、キシリアは常に一歩引いた外交姿勢を取りながらも、一言一言が含意に満ちていた。
「……やや我々の側の受益が大きくなるかもしれませんが、将来的には人的資源の相互交流や、技術支援・訓練・協定等の枠組みにつきましても、ぜひご検討いただければと考えております。
地球と宇宙とでは常識や技術体系も異なりますが、互いに学び合える点は非常に多いはずでございます」
「興味深いお申し出です。我が国としても、地球における拠点整備は避けられぬ課題であり……
日本列島、とりわけ東アジア圏における軍事・生産インフラの構築は、今後の連携においても要となるでしょう」
彼女は指で軽く円を描きながら、スクリーンに表示された列島地図の一点を指した。
「……例えば、日本海側に面し、一定の距離を保ちながらも海上輸送に適し、人的負担の少ない“島嶼部”などが候補に挙がるかもしれません。
仮に日本帝国の防衛観点から“攻略作戦”が必要であっても、我々は自前で行動できます。
その後の“租借”という形で、共通運用の拠点とすることも検討に値すると考えております」
名指しこそしないが、明らかに「佐渡島」を示唆した発言だった。
皇宮内密談室
夜、煌武院家の皇宮施設の一角にて。
政威大将軍・煌武院悠陽との会談が密かに行われた。
「貴国の勇断に、帝国の政威大将軍として、いえ、一日本人として深く感謝を申し上げます。ジオン公国がこの地に手を差し伸べてくださったこと、我らは決して忘れません」
「……殿下におかれましては、帝国の象徴にして、我々ザビ家と同じ“民の頂”に立つお方。あくまで対等なる立場と認識しております」
「光栄です。……姫君と呼ぶべきでしょうか? キシリア・ザビ殿」
「お好きなように。ですが――ジオンは異邦の存在であれど、同じ人間の国家。“人類圏”の一角として、共に未来を拓く存在でありたいと思っております」
悠陽は一瞬だけ瞳を伏せ、それから力強く応えた。
「なればこそ、私たちもその未来に歩みを合わせましょう。人類が共に生きる未来を、見逃すわけには参りません」
話題が一巡し、静けさが戻った頃──悠陽が改めて口を開いた。
「ところで……宇宙での生活というのは、どのようなものなのですか? たとえば、あの“コロニー”とは……都市そのものが宇宙に浮かんでいると聞きました」
「ええ。コロニーは円筒形の居住構造体で、人工重力と循環型生態系を備えています。人口十億を超える我がジオン公国の民も、日々快適に暮らしておりますよ」
「十億……! それだけの人々が宇宙で……。では、食糧は? 酸素はどうして?」
「農業用のコロニーで作物を育て、リサイクルによって大気と水も循環させています。地球からの依存はほとんどありません。宇宙に生きるとは、すなわち“完結した世界”を築くことなのです」
「まるで一つの国が天空にあるようですね……素晴らしい。是非いつか、その世界をこの目で見てみたいものです」
「その時が来れば、殿下を喜んでお迎えいたしましょう。我がジオンのあるサイド3へ――」
夜の研究棟。静寂の中、香月は一人きりでラボに佇んでいた。
「……あの女狐、本当に底が見えないわね」
そして、仮面の姫を思い返しながら、口元に笑みを浮かべる。
「でも、こういう交渉、嫌いじゃないわ」
ナレーション(永井一郎)
それは、対話という名の闘争であった。
仮面をかぶる者と、理を紡ぐ者。
心の内を決して晒さぬ者たちの、静かなる探り合い。
しかし、その交差点にこそ、未来は芽吹く。
信頼ではなく、利害の一致──
だが、それでもなお、人類の灯を繋ぐに足る価値が、そこにはあった。
宇宙と地球が、ようやく“同じテーブル”に着いた今──
人類の歴史は、新たな頁を開こうとしている。
連邦も途中で転移した方がいいかな?
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一部隊
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一個艦隊
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モブコロニー(生産性向上の為)
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サイド7(天パと親父込み)
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ジュピトリス(若いシロッコ込み)
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連邦なんて腐敗した奴らは要らん!