ナレーション(永井一郎)
これは一つの“魂”が、再びこの世界で息を吹き返す物語である。
魂は時に、世界を越える。
それは偶然か、あるいは宇宙の悪戯か。
時の狭間に囚われた少女は、未だ語られぬ記憶の彼方で、己の存在を問い続けていた。
その名はマリオン・ウェルチ。
一年戦争という歴史が存在しないこの世界において、彼女は戦慄の記憶と共に、ようやく目を覚ます。
だがその覚醒は、単なる再生ではなかった。
それは、並行する運命の“記録”が彼女に語りかける、始まりの鐘でもあった――。
サイド3 フラナガン機関 隔離病棟
暗闇の中。音も、重力もない静寂の海。
その虚空を漂うような夢の中で、マリオン・ウェルチは確かに「自分自身」の姿を見ていた。
血のように赤い警告灯の点滅。閉塞した格納フレームの中で、細い四肢に拘束具が嵌められ、無数のケーブルが神経と接続されていた。
苦痛。恐怖。孤独。
そして、自分の意志では止められない暴走する”力”
それはかつて別の世界に存在した彼女、“1年戦争”という起きるはずだった現実の世界線におけるマリオン・ウェルチだった。
彼女の目が開かれた先、モビルスーツのコックピットで血に濡れながら操縦桿を握る青年、ユウ・カジマの姿があった。
別の自分を止めるために命を懸けて戦う彼。
そして別の視点では、笑みを浮かべながらサーベルを構えるジオンの騎士ニムバス・シュターゼンの姿があった。
私を守ってくれた人…。
私を利用した人……。
でも…誰でもいい…。誰かに……呪縛から解き放って欲しかった…。
「……嫌……」
掠れた声が、現実の世界に微かに漏れる。
そしてその瞬間、視界が切り替わった。
夢の終わりと共に、現実の”まぶしさ”がマリオンの閉じられていた瞼を照らす。
病棟の天井。心拍モニターの電子音。
微かに漂う医療用アルコールの匂い。
目蓋がゆっくりと持ち上がり、薄青の瞳が現実を捉えた。
細い腕が震えながら動き、喉から空気を吸い込む音が漏れる。
「……ここは……?」
声は弱々しく、まるで幼子のようだった。
長い昏睡の果てに、彼女はようやく目を覚ましたのだ。
傍らにいた医療スタッフが驚きと歓喜の表情を浮かべ、即座に端末へと走る。
モニターが点灯し、アイソレートされた室内の情報が中枢へと送られていく。
マリオンの視界はぼやけていたが、脳裏には先ほどまでの夢の名残がこびりついていた。
ユウ・カジマ…
ニムバス・シュターゼン……
私を戦いに変えた”あの機械”の名…EXAM。
その語彙は、彼女が元いた世界では確かに存在していた。だがこの世界では、まだ存在していないもの。
身体は満足に動かず、彼女はそのままリクライニングベッドの中で視線をさまよわせた。
(……夢だけど…夢じゃなかった……)
と、確信するように呟いた。
それは「並行世界の残滓」が、マリオンの精神に何らかの形で刻まれている証左でもあった。
──その時。
病室のドアが静かに開き、白い衣を纏う少女が一人、ゆっくりと入ってきた。
その瞳は慈しみに満ち、笑みは母のように優しかった。
彼女の名は、ララァ・スン。
その存在は、確かにマリオンの”痛み”を感じ取っていた。
「おはよう。マリオン……もう大丈夫。あなたは、ここにいる」
「……あなた、誰……?」
ララァは一歩、マリオンのそばに歩み寄ると、静かに言葉を紡いだ。
「覚えてないかしら?私はあなたと同じように、“本来いるべきではない場所”に来てしまった者……一度、刻(とき)の狭間へ行き別の世界に来れた…」
マリオンの眉がかすかに動く。
「あなたには……本来なら出会うはずだった、大切な人がいた…。でも、彼はこの世界にはいない。けれど――」
ララァは振り向いて、窓の外の空を見つめた。
「……あなたの居場所は、この世界にもあるわ。私の……いえ、“シャア”が、あなたにその居場所を与えてくれるはず」
「……シャア……?」
ララァは微笑み、手を取ることもなく、ただその場に立っていた。
「彼は不器用だけど、誰かを守るためなら、きっとすべてを懸けるわ。
……あなたのことも、きっと」
マリオンの胸に、どこか懐かしいぬくもりが灯る。
それは記憶ではなく、共鳴のようなものだった。
そして、その時。
別の空間――意識の奥底で、三つの精神が触れ合う瞬間が訪れる。
シャア・アズナブル。
ララァ・スン。
マリオン・ウェルチ。
何もない空間で、三人は互いを認識する。
言葉を交わさずとも、そこにあるのは確かな繋がり。
マリオンはゆっくりと、自分の名を口にした。
「……私の名前は、マリオン・ウェルチ。……また、生きて……いいの?」
ララァが微笑み、シャアは何も言わず頷いた。
彼女の目から、一筋の涙が零れ落ちた。
その頃、ルナツー・地上型試験演習施設。
人工重力がかけられた演習区画で、地を蹴るようにして疾走する一機の試作型モビルスーツがあった。
肩部に特徴的な冷却フィン、鋭角なシルエットの頭部。
両腰に携行されたヒートサーベルと試作型ショットガン。
その機体こそ、MS-08TX《イフリート》――近接格闘戦を想定した試作型モビルスーツである。
その操縦席にいたのは、鋭い眼光と整えられた髪を持つ、異様な威圧感を纏った男――ニムバス・シュターゼン大尉。
彼の周囲を囲むようにして、3機のザクIIが模擬戦形式で展開していた。
しかし、ニムバスの機体はその動きに一切怯むことなく、むしろ獰猛な獣のように前へ出る。
「……その間合いでは遅い! 仕掛ける前に首を落とされるぞッ!」
地を抉るような急制動、地面を滑るホバー走行を駆使して、イフリートが右斜め前へ跳び出す。
回避した直後、左手のヒートサーベルが閃き、模擬シールドを持つザクの肩を叩いた。反応が遅れ、バランスを崩す。
「格闘戦とは、殺意を“間合いごと”叩き込む戦いだ。技だけでは届かん!気迫をぶつけろ!」
「は、はい大尉!」
模擬弾を発射するザクの後方に回り込み、イフリートの脚部ブースターが地面をえぐる。
側面に回ったその一撃は、明らかに「止めを刺す」一撃であり、訓練であっても容赦がない。
高所にある管制棟で、その様子を視認していた試作機開発班の技術者たちは、思わず息を飲んでいた。
「……あの動き、まるで野生動物だな。人の乗る機械とは思えん」
「ただの暴れ馬ってわけじゃない。反応速度、ブースター出力、格闘感覚……全部が研ぎ澄まされてる。扱いづらい奴だが、あれは“本物のエース”だよ。ジオンの騎士を自称するだけあるな…」
格闘戦における“間”を、ニムバスは完全に掌握していた。
彼にとってモビルスーツは“鎧”であり、“剣”だった。
そして、自身はその内に座す騎士――それも、「誰かのために剣を振るう騎士」ではなく、
「誇りと戦技をもって戦場に立つ孤高の騎士」だった。
演習終了後。
格納庫に戻ってきたニムバスは、ヘルメットを片手に機体から降り立つ。
額には薄く汗が浮いていたが、その眼差しは一切揺るがず。
補佐官の若い士官が近寄り、声をかけた。
「大尉、今日の動きは圧巻でした。試作機との相性も良好かと」
「ふん……当然だ。あれは“俺のため”に造られた様なものだ。俺にしか乗りこなせん」
「ですが……この機体、まだ本採用の予定は――」
「ならば、俺が証明してやるさ。この“イフリート”が、戦場で最も美しい死を敵に与えられる機体であることをな」
その言葉に、士官は息を飲む。
だがニムバスの目には、戦いへの狂気ではなく、確かな信念が宿っていた。
それはジオンの騎士としての誇り。
命令されるままに殺すだけの兵士ではなく、己の流儀と矜持を貫く、戦士としての生き様。
──だがこの時、彼はまだ知らなかった。
自分の運命が、目覚めた少女――マリオン・ウェルチと、やがて交錯することを。
そしてその出会いが、戦士としての彼の在り方を、深く揺るがすことになることを。
ナレーション(永井一郎)
命を預けるための“剣”を握る男と、命を弄ばれた“少女”。
二つの魂が、同じ空の下で歩み始める。
それは、まだ出会ってはいない。
だが、交わることを避けられぬ運命の軌道は、静かに近づいていた。
騎士の誇りと、少女の記憶。
その邂逅が、やがて世界に何をもたらすのか?
次なる章へ、時代は静かに歩を進めていく。
連邦も途中で転移した方がいいかな?
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一部隊
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一個艦隊
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モブコロニー(生産性向上の為)
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サイド7(天パと親父込み)
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ジュピトリス(若いシロッコ込み)
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連邦なんて腐敗した奴らは要らん!