宇宙世紀マブラヴ   作:vault101のアルチョム

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【第58話】覚醒の刻(とき)

ナレーション(永井一郎)

これは一つの“魂”が、再びこの世界で息を吹き返す物語である。

 

魂は時に、世界を越える。

それは偶然か、あるいは宇宙の悪戯か。

 

時の狭間に囚われた少女は、未だ語られぬ記憶の彼方で、己の存在を問い続けていた。

その名はマリオン・ウェルチ。

 

一年戦争という歴史が存在しないこの世界において、彼女は戦慄の記憶と共に、ようやく目を覚ます。

 

だがその覚醒は、単なる再生ではなかった。

それは、並行する運命の“記録”が彼女に語りかける、始まりの鐘でもあった――。

 

 

 

サイド3 フラナガン機関 隔離病棟

暗闇の中。音も、重力もない静寂の海。

 

その虚空を漂うような夢の中で、マリオン・ウェルチは確かに「自分自身」の姿を見ていた。

 

血のように赤い警告灯の点滅。閉塞した格納フレームの中で、細い四肢に拘束具が嵌められ、無数のケーブルが神経と接続されていた。

 

苦痛。恐怖。孤独。

そして、自分の意志では止められない暴走する”力”

 

それはかつて別の世界に存在した彼女、“1年戦争”という起きるはずだった現実の世界線におけるマリオン・ウェルチだった。

 

彼女の目が開かれた先、モビルスーツのコックピットで血に濡れながら操縦桿を握る青年、ユウ・カジマの姿があった。

別の自分を止めるために命を懸けて戦う彼。

そして別の視点では、笑みを浮かべながらサーベルを構えるジオンの騎士ニムバス・シュターゼンの姿があった。

 

私を守ってくれた人…。

私を利用した人……。

でも…誰でもいい…。誰かに……呪縛から解き放って欲しかった…。

 

「……嫌……」

 

掠れた声が、現実の世界に微かに漏れる。

 

そしてその瞬間、視界が切り替わった。

夢の終わりと共に、現実の”まぶしさ”がマリオンの閉じられていた瞼を照らす。

 

病棟の天井。心拍モニターの電子音。

微かに漂う医療用アルコールの匂い。

 

目蓋がゆっくりと持ち上がり、薄青の瞳が現実を捉えた。

細い腕が震えながら動き、喉から空気を吸い込む音が漏れる。

 

「……ここは……?」

 

声は弱々しく、まるで幼子のようだった。

長い昏睡の果てに、彼女はようやく目を覚ましたのだ。

 

傍らにいた医療スタッフが驚きと歓喜の表情を浮かべ、即座に端末へと走る。

モニターが点灯し、アイソレートされた室内の情報が中枢へと送られていく。

 

マリオンの視界はぼやけていたが、脳裏には先ほどまでの夢の名残がこびりついていた。

 

ユウ・カジマ…

ニムバス・シュターゼン……

私を戦いに変えた”あの機械”の名…EXAM。

 

その語彙は、彼女が元いた世界では確かに存在していた。だがこの世界では、まだ存在していないもの。

 

身体は満足に動かず、彼女はそのままリクライニングベッドの中で視線をさまよわせた。

 

(……夢だけど…夢じゃなかった……)

 

と、確信するように呟いた。

 

それは「並行世界の残滓」が、マリオンの精神に何らかの形で刻まれている証左でもあった。

 

 

 

──その時。

病室のドアが静かに開き、白い衣を纏う少女が一人、ゆっくりと入ってきた。

 

その瞳は慈しみに満ち、笑みは母のように優しかった。

彼女の名は、ララァ・スン。

 

その存在は、確かにマリオンの”痛み”を感じ取っていた。

 

「おはよう。マリオン……もう大丈夫。あなたは、ここにいる」

 

「……あなた、誰……?」

 

ララァは一歩、マリオンのそばに歩み寄ると、静かに言葉を紡いだ。

 

「覚えてないかしら?私はあなたと同じように、“本来いるべきではない場所”に来てしまった者……一度、刻(とき)の狭間へ行き別の世界に来れた…」

 

マリオンの眉がかすかに動く。

 

「あなたには……本来なら出会うはずだった、大切な人がいた…。でも、彼はこの世界にはいない。けれど――」

 

ララァは振り向いて、窓の外の空を見つめた。

 

「……あなたの居場所は、この世界にもあるわ。私の……いえ、“シャア”が、あなたにその居場所を与えてくれるはず」

 

「……シャア……?」

 

ララァは微笑み、手を取ることもなく、ただその場に立っていた。

 

「彼は不器用だけど、誰かを守るためなら、きっとすべてを懸けるわ。

……あなたのことも、きっと」

 

マリオンの胸に、どこか懐かしいぬくもりが灯る。

それは記憶ではなく、共鳴のようなものだった。

 

 

 

そして、その時。

 

別の空間――意識の奥底で、三つの精神が触れ合う瞬間が訪れる。

 

シャア・アズナブル。

ララァ・スン。

マリオン・ウェルチ。

 

何もない空間で、三人は互いを認識する。

言葉を交わさずとも、そこにあるのは確かな繋がり。

 

マリオンはゆっくりと、自分の名を口にした。

 

「……私の名前は、マリオン・ウェルチ。……また、生きて……いいの?」

 

ララァが微笑み、シャアは何も言わず頷いた。

 

彼女の目から、一筋の涙が零れ落ちた。

 

 

 

その頃、ルナツー・地上型試験演習施設。

 

人工重力がかけられた演習区画で、地を蹴るようにして疾走する一機の試作型モビルスーツがあった。

 

肩部に特徴的な冷却フィン、鋭角なシルエットの頭部。

両腰に携行されたヒートサーベルと試作型ショットガン。

その機体こそ、MS-08TX《イフリート》――近接格闘戦を想定した試作型モビルスーツである。

 

その操縦席にいたのは、鋭い眼光と整えられた髪を持つ、異様な威圧感を纏った男――ニムバス・シュターゼン大尉。

 

彼の周囲を囲むようにして、3機のザクIIが模擬戦形式で展開していた。

しかし、ニムバスの機体はその動きに一切怯むことなく、むしろ獰猛な獣のように前へ出る。

 

「……その間合いでは遅い! 仕掛ける前に首を落とされるぞッ!」

 

地を抉るような急制動、地面を滑るホバー走行を駆使して、イフリートが右斜め前へ跳び出す。

回避した直後、左手のヒートサーベルが閃き、模擬シールドを持つザクの肩を叩いた。反応が遅れ、バランスを崩す。

 

「格闘戦とは、殺意を“間合いごと”叩き込む戦いだ。技だけでは届かん!気迫をぶつけろ!」

 

「は、はい大尉!」

 

模擬弾を発射するザクの後方に回り込み、イフリートの脚部ブースターが地面をえぐる。

側面に回ったその一撃は、明らかに「止めを刺す」一撃であり、訓練であっても容赦がない。

 

高所にある管制棟で、その様子を視認していた試作機開発班の技術者たちは、思わず息を飲んでいた。

 

「……あの動き、まるで野生動物だな。人の乗る機械とは思えん」

 

「ただの暴れ馬ってわけじゃない。反応速度、ブースター出力、格闘感覚……全部が研ぎ澄まされてる。扱いづらい奴だが、あれは“本物のエース”だよ。ジオンの騎士を自称するだけあるな…」

 

格闘戦における“間”を、ニムバスは完全に掌握していた。

彼にとってモビルスーツは“鎧”であり、“剣”だった。

そして、自身はその内に座す騎士――それも、「誰かのために剣を振るう騎士」ではなく、

「誇りと戦技をもって戦場に立つ孤高の騎士」だった。

 

 

 

演習終了後。

格納庫に戻ってきたニムバスは、ヘルメットを片手に機体から降り立つ。

額には薄く汗が浮いていたが、その眼差しは一切揺るがず。

 

補佐官の若い士官が近寄り、声をかけた。

 

「大尉、今日の動きは圧巻でした。試作機との相性も良好かと」

 

「ふん……当然だ。あれは“俺のため”に造られた様なものだ。俺にしか乗りこなせん」

 

「ですが……この機体、まだ本採用の予定は――」

 

「ならば、俺が証明してやるさ。この“イフリート”が、戦場で最も美しい死を敵に与えられる機体であることをな」

 

その言葉に、士官は息を飲む。

だがニムバスの目には、戦いへの狂気ではなく、確かな信念が宿っていた。

 

それはジオンの騎士としての誇り。

命令されるままに殺すだけの兵士ではなく、己の流儀と矜持を貫く、戦士としての生き様。

 

──だがこの時、彼はまだ知らなかった。

 

自分の運命が、目覚めた少女――マリオン・ウェルチと、やがて交錯することを。

 

そしてその出会いが、戦士としての彼の在り方を、深く揺るがすことになることを。

 

 

 

ナレーション(永井一郎)

命を預けるための“剣”を握る男と、命を弄ばれた“少女”。

 

二つの魂が、同じ空の下で歩み始める。

それは、まだ出会ってはいない。

だが、交わることを避けられぬ運命の軌道は、静かに近づいていた。

 

騎士の誇りと、少女の記憶。

その邂逅が、やがて世界に何をもたらすのか?

 

次なる章へ、時代は静かに歩を進めていく。

連邦も途中で転移した方がいいかな?

  • 一部隊
  • 一個艦隊
  • モブコロニー(生産性向上の為)
  • サイド7(天パと親父込み)
  • ジュピトリス(若いシロッコ込み)
  • 連邦なんて腐敗した奴らは要らん!
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