宇宙世紀マブラヴ   作:vault101のアルチョム

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文字数少ないけど、毎日更新はちと疲れてきた…。


【第59話】豊穣のコロニー

ナレーション(永井一郎)

技術とは、破壊の道具にもなれば、希望の苗床にもなり得る。

ジオンがもたらしたのは、戦力だけではない。

それは種を蒔き、実を結び、星の命を再生させるための叡智だった。

 

コロニーに芽吹いた“緑”──それは、かつての地球には存在しなかった、新たな生命の姿。

だがその光の裏で、別の種──憎悪と猜疑が育ちつつあった。

 

 

 

サイド3・農業用コロニー《アグリ=アリア》

真空ガラス越しに広がるのは、かつて人工の光と栄養溶液だけで辛うじて成り立っていた実験農地──

だが今は、青々とした麦畑がうねり、変異種の果樹が実をつけ、穏やかな風までもが循環制御により生み出されている。

 

「環境制御ユニット《デメテル》第2系統、全自動運転に移行。CO₂・湿度・日照・微量栄養素、全項目において誤差範囲内……よし、安定運転だ」

 

ヘルムート・ラインハルト技術准将は、端末に表示されたモニタリングデータを確認しながら満足げに頷いた。

彼は農業研究部門の統括責任者にして、ジオン農業開発庁の経験を持つ叩き上げの科学者である。

 

傍らに立つ若き研究員が、控えめに声をかけた。

 

「准将、エデン株の第7世代、順調に繁殖中です。

とくにこの系統……根圏菌の共生率が驚異的で、土壌浄化作用も確認されました」

 

「……土壌そのものを“再構成”するとはな。さすがは“奇跡の株”だ。

アスタロスとは違い、制御可能な有機変異体──ようやく“生命を育むための手段”として扱える」

 

この変異種、正式名『アスタロス・エデン株』は、BETAの環境因子耐性を応用した植物構造体であり、

完全制御型の自動環境制御ユニット《デメテル》との併用によって、地球の極限環境における緑化を可能とする。

 

「シミュレーションでは、砂漠地帯での発芽成功率86.7%、1ヘクタールあたりの浄化時間は約18日。

──水さえ確保できれば、砂塵地帯すら“再生可能”です」

 

ラインハルトは黙って遠くを見つめ、静かに呟いた。

 

「……地球が、再び緑に覆われる日が来るかもしれんな」

 

 

 

サイド3・行政監察局 刑務調査室(機密指定)

 

一方その裏側で──

ひとつの陰謀が、水面下で阻止されていた。

 

暗い取調室の中、拘束された初老の男が、嗚咽混じりに何かを訴えている。

 

「ち、違うんだ! 我々は命令など受けていない……っ! あれは、そう!“純粋な信念”に基づく行動だ!」

 

監察局長補佐のセリナ・クレッチマー大佐が冷ややかに問い詰める。

 

「命令ではない? 勝手に研究所の保管庫から制御不可能な初期型アスタロスを盗み出そうとしたのか?

地球の環境を“破壊し尽くす”とされるウイルス株を使って何を企てていた?」

 

「貴様らには分からんのか!地球こそが腐敗の温床だ! ジオンの理想が踏みにじられたあの場所を、このまま受け入れてなるものか!」

 

容赦のない叩きつけの音とともに、机上に投げつけられたのは、没収されたデータチップ。

中身は、地球の特定環境圏に対する投下シミュレーション──森林帯の全滅、土壌の酸性汚染、淡水汚染による人口圏の壊滅。

 

「……バハロ派の一派だとは噂されていたが、彼の名義は一切出てこない。

だが、この計画が独断で動いていたにせよ、ジオンの“理念”を損なうものには変わりない」

 

そして、この一件は直ちに内局の判断でメディアに報道された。

「過激派による破壊工作未遂」「アスタロス流出計画」──

内容は伏せられたものの、“地球に対する潜在的敵意”が暴露された形になった。

 

報道では“破壊工作”とだけ伝えられ、アスタロスの正体や実害は明かされていなかったが、それでも国民の動揺には十分だった。

 

サイド3・ズム・シティ 市民層地区

「……あの連中のせいで、オレ達がどんな目で見られると思ってるんだ!勘弁してほしいぜ…」

 

市井の声は冷ややかだった。

地球との協力を期待する商工関係者、学術交流を望む若者層、果ては医療支援を求める庶民──

彼らの視線が今、ある人物に向かいつつあった。

 

 

 

ダルシア・バハロの執務室

 

彼は議会における保守強硬派の筆頭であり、過去に“地球への依存を拒否すべき”と何度も主張してきた人物。

今回の事件との直接関与は否定されていたが……世論はそうは見なさなかった。

 

「……民衆は、結果でしか政治家を見ない。彼の意志など、もはや問題ではない」

 

市民たちの声が聞こえているかのように ──

ダルシア・バハロは、議会の執務室で机に突っ伏していた。

 

顔色は悪く、側近の報告にも応じず、ただ虚ろな視線を彷徨わせている。

 

「……なぜだ……私は……ジオンを守りたかっただけなのに……」

 

ナレーション(永井一郎)

栄える技術と、しぼむ信念。

一粒の種が人類を救うとき、その影には、いくつもの野心が芽吹いていた。

 

《デメテル》と《エデン》は、確かに希望だった。

だが同時に、破滅の種子にもなり得る。

 

だからこそ、人がそれを“どう使うか”こそが、真に問われるのだ。

 

──地球の緑は、やがて蘇る。

それを豊穣と呼ぶか、侵略と呼ぶかは……人類次第である。

連邦も途中で転移した方がいいかな?

  • 一部隊
  • 一個艦隊
  • モブコロニー(生産性向上の為)
  • サイド7(天パと親父込み)
  • ジュピトリス(若いシロッコ込み)
  • 連邦なんて腐敗した奴らは要らん!
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