ナレーション(永井一郎)
それは、重力の檻の中で行われた“空飛ぶ兵器”の覚醒だった。
ジオンの叡智と、狂気の果てに生まれた《アプサラスⅡ》。
地を滑ることを拒み、空を支配せんとするその機体は、
かつてない規模のエネルギーを抱え、ついに新たな段階へと歩みを進める。
だがその裏で──
静かに、しかし確実に、一人の科学者の心が蝕まれていった。
その名は、ギニアス・サハリン。
彼の行動を駆り立てていたのは、空への憧れではない。忘れ去られた家名を再び歴史に刻む──その義務と執念だった。
それは再興のための炎。
だが、その炎はやがて、彼自身をも焼き尽くそうとしていた。
サイド3 実験コロニー
モニターに広がるのは、人工重力下に構築された広大な屋内試験空域。
強化ガラスの天蓋のもと、調整された空気がゆるやかに循環する。
中央の滑走路では、試作大型兵器《アプサラスⅡ》が静かに浮かび上がっていた。
全高20メートル以上の巨体。ドーム状のメインボディにミノフスキークラフトを搭載し、さらに前方には大型メガ粒子砲──
その姿は、まさしく“空飛ぶ要塞”だった。
「出力安定確認。ホバリング高度10メートルで維持中。姿勢制御、正常。推進ユニット、応答良好」
試験場の統制室に、緊張した技術者たちの声が飛び交う。
その中心で白衣姿のギニアス・サハリンは、無言でメインコンソールを凝視していた。
「大型メガ粒子砲、主回路通電。出力シーケンス問題なし……試験発射カウント開始!」
「3、2、1──発射!」
瞬間、青白い光束が前方へと放たれる。
地面を貫き、標的に何層にも施された臨界半透体が蒸発する。だが直後──
「警告! 浮上出力に乱れ発生! 水平軸、2度傾斜!」
「機体バランス喪失、補助スラスター起動──再安定化処理入ります!」
揺らぐアプサラスⅡの巨体。
発射の反動により出力バランスが崩れ、制御系に遅延が生じた。
「……またか」
低くつぶやくギニアスの表情に、苛立ちがにじむ。
「出力干渉か……推進系の抑制が間に合っていない……!」
制御課の主任技師が、おずおずと声をかけた。
「ギニアス少将、やはり新型ユニットの臨界反応に不安定な挙動が……我々としては、補助冷却系の強化か、エネルギー供給ラインの──」
「貴様らは、いつもそうだ!」
怒声が走った。
モニタールームの空気が一瞬で凍りつく。
「私の設計を否定し、修正し、骨抜きにする気か!? これは、サハリン家の未来を賭けた計画だ! 貴様らごときが口出しするな!」
技術者たちは沈黙するしかなかった。
ノリス・パッカード大佐は後方でそれを見つめ、アイナにそっと囁く。
「……アイナ様。最近のギニアス様、どうにも様子が……少々気になります」
「……ええ、わかっているわ。お兄様……また、あの頃のように……」
アイナの声には不安、そしてかすかな恐れが混じっていた。
サイド3・ズム・シティ地下区画 特別応接室
「──ギニアス・サハリンの現状について、報告を」
モニター越しにギレン・ザビが命じた。
情報局の責任者が映像を切り替える。
「最近の実験記録です。技術面では一定の成果が出ていますが……精神状態に不安定さが見られます」
ホログラムには、ギニアスの近影とともに「攻撃的発言の増加」「指示系統の逸脱傾向」といった文言が並ぶ。
「……宇宙放射線病の進行に伴う症状の可能性も否定できません。(※この病名は作者の独自設定です)」
ギレンは無表情のまま指示を下した。
「監視を強化しろ。最悪の場合、計画を継承できる人員を用意しておけ。
ジオンは“独断的な開発”には許容も容赦もせん」
「はっ。技術局には極秘で進めます」
通信が切れ、室内に静寂が戻った。
同日・技術局会議室
プロジェクターに投影されたアプサラスⅡの設計図を背に、ギニアスが新たな計画を説明していた。
「次段階では、大型メガ粒子砲を収束・拡散の両対応に改修する。
目的は、戦術柔軟性と射撃制御性能の向上だ。ビームコーティングかIフィールド装備により、大気圏外からの強襲、ハイブへの直接破壊が可能になる──」
その時だった。
彼の右手が、わずかに震え始めた。
静寂の中、彼の手からリモコンがカタンと落ちた。
やがて、目の焦点が合わなくなり、彼の顔色が明らかに変化する。
「……っ」
額を押さえながら、ギニアスはスライドの操作を続ける。
「実験は、サイド3近郊の暗礁宙域で行う。工程はすでに──すでに、調整済みだ……」
会議室の空気が微かにざわめいた。
技術将校たちは、互いに目を合わせながら、誰も口を開かない。
サイド3・サハリン邸・私室
夜。アイナはそっと兄の部屋の前に立っていた。
扉の向こうからは、金属の叩く音と、独り言が漏れてくる。
「……違う……これでは駄目だ……サハリン家の名は、こんなもので……!」
(……お兄様……)
扉に手を当て、ためらい、そしてそっと離す。
アイナの頬を一筋の涙が伝った。
彼女の瞳に映るのは、かつての兄。
優しく、聡明で、サハリン家を支えようとしていた兄の面影。
いま、扉の向こうにいるのは──
失われた栄光に取り憑かれ、創造物に全てを賭ける、孤独な亡霊だった。
ナレーション(永井一郎)
天才と狂気は、往々にして隣り合わせである。
ギニアス・サハリン。
彼の野望は、単なる兵器の完成ではなかった。
それは、消えかけた家名の再興。
かつて地に堕ちた名門が、もう一度、歴史に名を刻むための執念だった。
だが──
その執念は、本人すら飲み込み、ジオンの技術の光の裏に深い影を落とし始めていた。
アプサラスⅡの覚醒とともに。
誰にも気づかれぬまま、狂気の扉が開かれた瞬間だった。
連邦も途中で転移した方がいいかな?
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一部隊
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一個艦隊
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モブコロニー(生産性向上の為)
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サイド7(天パと親父込み)
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ジュピトリス(若いシロッコ込み)
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連邦なんて腐敗した奴らは要らん!