宇宙世紀マブラヴ   作:vault101のアルチョム

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【第61話】アプサラスⅡ起動

ナレーション(永井一郎)

それは、重力の檻の中で行われた“空飛ぶ兵器”の覚醒だった。

 

ジオンの叡智と、狂気の果てに生まれた《アプサラスⅡ》。

地を滑ることを拒み、空を支配せんとするその機体は、

かつてない規模のエネルギーを抱え、ついに新たな段階へと歩みを進める。

 

だがその裏で──

静かに、しかし確実に、一人の科学者の心が蝕まれていった。

 

その名は、ギニアス・サハリン。

 

彼の行動を駆り立てていたのは、空への憧れではない。忘れ去られた家名を再び歴史に刻む──その義務と執念だった。

 

それは再興のための炎。

だが、その炎はやがて、彼自身をも焼き尽くそうとしていた。

 

 

 

サイド3 実験コロニー

 

モニターに広がるのは、人工重力下に構築された広大な屋内試験空域。

強化ガラスの天蓋のもと、調整された空気がゆるやかに循環する。

 

中央の滑走路では、試作大型兵器《アプサラスⅡ》が静かに浮かび上がっていた。

 

全高20メートル以上の巨体。ドーム状のメインボディにミノフスキークラフトを搭載し、さらに前方には大型メガ粒子砲──

その姿は、まさしく“空飛ぶ要塞”だった。

 

「出力安定確認。ホバリング高度10メートルで維持中。姿勢制御、正常。推進ユニット、応答良好」

 

試験場の統制室に、緊張した技術者たちの声が飛び交う。

その中心で白衣姿のギニアス・サハリンは、無言でメインコンソールを凝視していた。

 

「大型メガ粒子砲、主回路通電。出力シーケンス問題なし……試験発射カウント開始!」

 

「3、2、1──発射!」

 

瞬間、青白い光束が前方へと放たれる。

地面を貫き、標的に何層にも施された臨界半透体が蒸発する。だが直後──

 

「警告! 浮上出力に乱れ発生! 水平軸、2度傾斜!」

 

「機体バランス喪失、補助スラスター起動──再安定化処理入ります!」

 

揺らぐアプサラスⅡの巨体。

発射の反動により出力バランスが崩れ、制御系に遅延が生じた。

 

「……またか」

 

低くつぶやくギニアスの表情に、苛立ちがにじむ。

 

「出力干渉か……推進系の抑制が間に合っていない……!」

 

制御課の主任技師が、おずおずと声をかけた。

 

「ギニアス少将、やはり新型ユニットの臨界反応に不安定な挙動が……我々としては、補助冷却系の強化か、エネルギー供給ラインの──」

 

「貴様らは、いつもそうだ!」

 

怒声が走った。

モニタールームの空気が一瞬で凍りつく。

 

「私の設計を否定し、修正し、骨抜きにする気か!? これは、サハリン家の未来を賭けた計画だ! 貴様らごときが口出しするな!」

 

技術者たちは沈黙するしかなかった。

 

ノリス・パッカード大佐は後方でそれを見つめ、アイナにそっと囁く。

 

「……アイナ様。最近のギニアス様、どうにも様子が……少々気になります」

 

「……ええ、わかっているわ。お兄様……また、あの頃のように……」

 

アイナの声には不安、そしてかすかな恐れが混じっていた。

 

 

 

サイド3・ズム・シティ地下区画 特別応接室

 

「──ギニアス・サハリンの現状について、報告を」

 

モニター越しにギレン・ザビが命じた。

情報局の責任者が映像を切り替える。

 

「最近の実験記録です。技術面では一定の成果が出ていますが……精神状態に不安定さが見られます」

 

ホログラムには、ギニアスの近影とともに「攻撃的発言の増加」「指示系統の逸脱傾向」といった文言が並ぶ。

 

「……宇宙放射線病の進行に伴う症状の可能性も否定できません。(※この病名は作者の独自設定です)」

 

ギレンは無表情のまま指示を下した。

 

「監視を強化しろ。最悪の場合、計画を継承できる人員を用意しておけ。

ジオンは“独断的な開発”には許容も容赦もせん」

 

「はっ。技術局には極秘で進めます」

 

通信が切れ、室内に静寂が戻った。

 

 

 

同日・技術局会議室

 

プロジェクターに投影されたアプサラスⅡの設計図を背に、ギニアスが新たな計画を説明していた。

 

「次段階では、大型メガ粒子砲を収束・拡散の両対応に改修する。

目的は、戦術柔軟性と射撃制御性能の向上だ。ビームコーティングかIフィールド装備により、大気圏外からの強襲、ハイブへの直接破壊が可能になる──」

 

その時だった。

彼の右手が、わずかに震え始めた。

 

静寂の中、彼の手からリモコンがカタンと落ちた。

 

やがて、目の焦点が合わなくなり、彼の顔色が明らかに変化する。

 

「……っ」

 

額を押さえながら、ギニアスはスライドの操作を続ける。

 

「実験は、サイド3近郊の暗礁宙域で行う。工程はすでに──すでに、調整済みだ……」

 

会議室の空気が微かにざわめいた。

技術将校たちは、互いに目を合わせながら、誰も口を開かない。

 

 

 

サイド3・サハリン邸・私室

 

夜。アイナはそっと兄の部屋の前に立っていた。

扉の向こうからは、金属の叩く音と、独り言が漏れてくる。

 

「……違う……これでは駄目だ……サハリン家の名は、こんなもので……!」

 

(……お兄様……)

 

扉に手を当て、ためらい、そしてそっと離す。

アイナの頬を一筋の涙が伝った。

 

彼女の瞳に映るのは、かつての兄。

優しく、聡明で、サハリン家を支えようとしていた兄の面影。

 

いま、扉の向こうにいるのは──

失われた栄光に取り憑かれ、創造物に全てを賭ける、孤独な亡霊だった。

 

 

 

ナレーション(永井一郎)

天才と狂気は、往々にして隣り合わせである。

 

ギニアス・サハリン。

彼の野望は、単なる兵器の完成ではなかった。

 

それは、消えかけた家名の再興。

かつて地に堕ちた名門が、もう一度、歴史に名を刻むための執念だった。

 

だが──

その執念は、本人すら飲み込み、ジオンの技術の光の裏に深い影を落とし始めていた。

 

アプサラスⅡの覚醒とともに。

誰にも気づかれぬまま、狂気の扉が開かれた瞬間だった。

連邦も途中で転移した方がいいかな?

  • 一部隊
  • 一個艦隊
  • モブコロニー(生産性向上の為)
  • サイド7(天パと親父込み)
  • ジュピトリス(若いシロッコ込み)
  • 連邦なんて腐敗した奴らは要らん!
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