ナレーション(永井一郎)
時代が動く時、それは音を立てずに始まる。
一つの技術が、一つの理念が、一つの出会いが。
世界の秩序は、静かに、だが確実に形を変えていく
ジオン公国という異邦の存在は、すでに地球の政局に深く根を下ろし始めていた。
地球 国連本部
連日のように開催される臨時会議。
今やその議題は、単なるBETAへの対策だけではなかった。
「ジオンから提供された兵器の規格が、従来の戦術機とはまるで異なる。我が軍の整備班だけで扱えるとは思えんぞ!」
「問題はそこではない。我が国の北部戦線に必要な自走砲が、どうして中央アジアに優先配備されているのだ!」
「衛星回線の一部帯域がジオン由来の通信網に切り替わった件も、技術管理上問題がある!」
各国代表が怒号を飛ばし合い、議場は紛糾していた。
今や争点は、ジオンとどう連携するかではなく、「いかに利権を得るか」へと移りつつある。
既にジオン側より国連を通じて供与された武器は、戦術機用の実体弾兵装、専用整備ユニット、そして一部の旧式MS型シミュレーター群。
その多くは欧州連合、中東連合、アフリカ連合、東南アジア共同体へと優先的に分配された。
対照的に、アメリカ、ソ連、統一中華といった大国群にはごく限られた供給しか届かず、配備も後回しとされた。
アメリカ合衆国 国防総省地下会議室
「……やはり“香月夕呼”か。彼女のところが全情報を握っている。ジオンと通じてるかはともかく、抑えておかねば」
複数の高官たちが集まり、ジオンが地球に与えつつある影響と、その中心にいる“横浜基地”への監視強化を議論していた。
同様の会議は、ソ連クレムリンの地下、そして北京の軍事参謀部でも同時に行われていた。
三大国はそれぞれ、水面下で極秘の“工作員”を横浜基地に送り込む手筈を整える。
「たとえジオンと交渉できなくとも、内部情報さえ手に入ればこちらに主導権が戻る」
彼らはそう踏んでいた──だが、その目論見は、予想外の存在によって粉砕される。
横浜基地 香月夕呼の部屋
深夜の地下第5層 セクター3、地下は風の音すらない静けさ。香月夕呼はデスクで資料を繰っていた。
「……全く、こういう時に限ってコーヒー切れ……」
溜息をつきかけたその時――
唐突に、背後から聞き覚えのある声が響いた。
「ああ、これは失礼。香月博士、夜分遅くに」
「……また勝手に入ってきたわね、鎧衣(よろい)。何の用?今、機密文書の整理で忙しいんだけど」
「……いやね、先ほど観測データを確認していたら面白い現象がありまして。
基地裏の資材搬入口、温度センサーに“ドッペルゲンガー”が映っておりましてね?」
「……またUMA?幽霊?それとも今度は宇宙人か何かしら?」
「いえいえ、今回は少し趣が違うようで。
過去の記録と照合したところ、どうやらそのドッペルゲンガーは“実体のある人間”らしいのです──
ただし、既に失効しているはずの米軍のIDで、ですが…」
香月は目を細め、腕を組んだ。
「……やっと本題に入ったわね。スパイかしら?」
「おっと、お気づきでしたか。
念のため報告をと思いまして。昨夜、アメリカ防衛技術局の外交パスを使った侵入ログが補給搬入口に。
本来は2か月前に破棄されたはずのコードでしたが……おやおや、不思議なこともあるものですなあ」
鎧衣はわざとらしく肩を竦めながら、懐からクリアファイルを取り出し、机に滑らせた。
「ついでに申し上げますと──
ソ連側からも、極秘コードを用いた“技術資料請求”が複数件。
さらに統一中華の“技術視察員”が、なぜかジオンの《デメテル》保管区画周辺をウロウロと」
「……三つ巴ね。国連経由で装備品は提供したってのに。
まったく、まだジオンに接触できないのをいいことに、好き勝手してくれるわ」
「やれやれ、こうして覗き見を続ける生態──
人類という種は、どこまでいっても“監視欲求”に抗えないようで」
「監視されてるのは、向こうの方よ。……ウチの子がね、2〜3日前から“何か変だ”って感じてたの。
基地の中に、“余計な視線”が増えてきてるって」
鎧衣が眉を上げる。
「おやおや……博士の背後には、目に見えぬ精霊でも潜んでおいでなのですかな?
それでは我々のような胡乱な探り屋は肩身が狭くなります」
「あの子が言うんですもの、間違いないわ。
今回も、彼女の“違和感”がきっかけで検出範囲を広げた。
その結果、あんたの報告で“裏付け”がついたわ」
「それはそれは……僥倖ですな」
鎧衣は、意味深に笑みを浮かべた。
「それにしても香月博士。
このまま黙っていれば、ジオンにはバレずに済みましょうが──
さて、どうされますかな? 私としては、黙っていた方が“面白くなりそう”とは思いますが」
香月は椅子にもたれかかり、鼻で笑った。
「いいえ、逆よ。
これで“貸し”ができた。
アメリカにも、ソ連にも、中華にも──
ジオンが知らないうちに、こっちでまとめて“交渉材料”にさせてもらうわ」
「いやはや……怖ろしい。
怪異の類よりも、よほど人間の方が底知れませんな…」
数日後 極秘通信
アメリカ、ソ連、統一中華、それぞれの対外情報担当が、暗号通信を通じて香月夕呼と接触した。
「……我々の人間が不自然に“排除”されたと聞いている。説明していただこうか、香月博士」
「ええ、こちらとしても説明をいただきたいのよ。“なぜジオンの施設に工作員を送ったのか”──という説明をね」
「我々は貴国の安全保障に関心を……」
「それは結構。でも、これ以上私の基地で動けば、“その記録”がジオン側に渡ってしまうわね。お察しの通り彼らはああ見えて諜報にも長けていると思うわ。彼らは転移前に自国の三十倍の国力を持つ連邦政府に戦争を仕掛けようとしていたのよ? 諜報くらい、当然やってるわ」
香月は微笑を浮かべたまま、背後にあるデータチップを端末にかざす。
「──さて、あなた方は“ジオンに知られたくない”から、わざわざ私に交渉を持ちかけてきたのよね?」
沈黙が続く。香月は続けた。
「米国は、例のHI-MAERF計画で生み出された戦略航空機動要塞…確か……《XG-70》だったかしら?あれ、私の研究用途に提供してくれれば黙っていて“あげる”わよ」
「……!?」
「ソ連は確か、ESP能力保持者の実戦データをアラスカで蓄積中だったわね。あの子たち、名前は……スカーレットツインよね?あの子たちの保護──いえ、“譲渡”を検討してもらえるかしら。もちろん任務終了後で構わない。日にちはまだ未定でもいいわ」
「統一中華は……そうね。いずれ私の作戦が否決されるような“余計な票”が出ないように、しっかり動いてもらえると助かるわね」
「……これをネタに我々に譲歩を迫るつもりかね?その情報を盾にして」
「交渉よ。お互い大人なんだから」
画面越しの三国代表の顔は硬直していた。だが、いずれも応じざるを得なかった。
この件が公になれば、ジオンとの距離はさらに開き、国際的信用にも関わる。
通信が終わり、香月は静かに呟いた。
「──動かすのよ、世界を。少しずつ、私たちの望む方向に」
ナレーション(永井一郎)
ジオンとの協調、それはもはや理想論ではなかった。
戦力、技術、そして存在の重み。
地球各国は、その巨大な“現実”と向き合い始める。
だが、交わることで生まれるものは、希望だけとは限らない。
スパイが暴かれ、技術が取引され、少女たちは駒として動かされる。
だが──それでも世界は、動き出してしまった。
均衡は崩れた。
そして、新たな秩序が、その胎動を始めていた。
連邦も途中で転移した方がいいかな?
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一部隊
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一個艦隊
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モブコロニー(生産性向上の為)
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サイド7(天パと親父込み)
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ジュピトリス(若いシロッコ込み)
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連邦なんて腐敗した奴らは要らん!