――ギルドに戻り、鉄の森に関する一件をマカロフへ報告したリィンたちは、調査を続けるべく、エルザが“ララバイ”に関する話を耳にしたという街へ向かうことになった。
「奴らの目的は不明だが……これ以上好き勝手にはさせん。鉄の森を叩くぞ!」
「ああ!偽の依頼だろうが、なんだろうが、妖精の尻尾に喧嘩売ったツケは――黒焦げで返してやんよ!」
(“ララバイ”……やはりどこかで聞いた記憶がある。だが、それが何だったのか――)
リィンは曖昧な記憶の断片を探るように、静かに目を伏せた。
◆ ◆ ◆
列車はゆっくりと停車し、汽笛の音が朝霧を裂いた。目的の街のホームが姿を現す。
「ここが……例の街か」
エルザは重々しく列車を降りながら周囲を見渡す。その目には、ただの任務以上の確かな目的意識が宿っていた。
「この街の居酒屋で、“ララバイ”と“エリゴール”という名前を聞いた。鉄の森の連中と関係してるなら――ここが始まりのはずだ」
「つまり、奴らの動きや、ララバイの所在につながる手がかりが、この街のどこかに眠っている可能性があるというわけか」
リィンが頷いて言葉を継ぐと、グレイも軽く肩をすくめた。
「じゃあ、さっさと情報収集といこうぜ」
「――って、あれ? ナツは?」
全員が反射的に振り返る。しかし、そこにいるはずの男の姿がなかった。
「……いなくない?」
「いや、確かに列車に乗ってたはずだぞ?」
「まさか……!」
エルザが目を見開き、ハッピーがぽつりと呟く。
「列車に……置いてきた?」
「いやいや、ありえないでしょ!? 気づくって普通!」
「でも、よく考えたら、ずっと静かだったような……」
リィンが腕を組み、思案する。
「たぶん、グロッキーだったんだろ。いつもの乗り物酔いで……」
「あちゃ~……」
ルーシィは思わず頭を抱える。
「なんてことだ……! あいつは乗り物に弱いというのに!」
「私の過失だ!誰か、とりあえず私を殴ってくれ!」
「いやいや、エルザ落ち着いて!?(ほんとに殴らせてくれそうで怖い!)」
(このギルド、ほんとにまともな人間いないんじゃないの……?)
ナツが町を破壊するし、グレイはまた上半身裸だし、エルザは何故か列車を止めるよう駅員に指示出してるし――。
ルーシィは、精神的疲労と共に心からのツッコミを天に投げた。
「俺は違うぞ」
「心読むな!そしてせめて服を着てから言ってくれない!?」
「とにかく急ごう。魔導四輪車で追えば、まだ追いつけるはずだ」
(やっぱりリィンだけが頼りだわ……!)
◆ ◆ ◆
――数時間後。魔導四輪車で列車に追いついた一行だったが、その直後――
ガシャアアアンッ!!
突如、列車の窓をぶち破ってナツが飛び出してきた。
そのままグレイの頭に直撃し、二人まとめて地面に転がる。
「いってぇぇえええ!! 何しやがんだナツ!!」
「うるせぇ!今の衝撃で記憶が飛んだ!……お前誰だ?」
「記憶喪失!? いや、なんか都合良すぎねぇか!?!?」
「まあいい。無事だったようで何よりだ」
「置いてくなんてひでぇぞエルザ!リィン!ルーシィ!ハッピー!」
「いやいや、あんたが黙って寝込んでたんでしょーが!」
怒涛の再会劇を終えた後、ナツは列車内で鉄の森の構成員と遭遇したことを語った。
「アイツら、列車の後ろの車両にいたんだよ。乗客のフリして、なんかゴチャゴチャ話してた。『次の駅を占領』とか言ってたな」
「駅の占拠……?」
「すまねぇ、途中で車掌に邪魔されて逃げられた……。だが、笛みたいなもんを持ってた。妙な形の、三つ目の髑髏がついてたやつだ」
「――三つ目の髑髏の笛……!」
ルーシィの背に悪寒が走った。
その名に、リィンもまた反応を示す。
「その反応……ルーシィも気づいたか」
「まさか……そんなはずないって思ってた。でも、あの特徴……まさか、アレが本物だったら……」
「そう。おそらく、それが“ララバイ”だ」
「なに……?リィン、それって……」
リィンは深く息を吸い、口を開いた。
「かつて存在したとされる“黒魔法・呪殺”。対象に呪いの死を与える禁呪……そして、その呪殺を媒介する道具として使われていたのが、“三つ目の髑髏の笛”だ」
「……それが、ララバイ?」
「さらにその笛は、数百年前、ゼレフという黒魔導士によって“音を聴くだけで死に至る呪い”へと強化されたとされている――それが、《ララバイ》だ」
一同の表情が凍りつく。
「つまり、それが事実なら……奴らは、それを“どこかで吹く”つもりなんだな」
「放っておけない。急がないと……!」