俺以外の奴が死ぬのはどうでもいいが、俺が死ぬのは絶対に嫌だ   作:最高司祭アドミニストレータ

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>NTRは正義なんだよ!!
>いいや純愛だね!!

ちょっと私の家で薄い本バトルしないでもろて?? タチバナと並行世界の私。


慧眼と高性能の親バカフィルター - (橘厳一郎 視点)

 沈黙。橘厳一郎は何も語らず、ただ猛禽のような鋭い瞳で、室内をゆっくりと見渡した。彼の視線は、まず部屋の隅に積まれた書類の山に向けられた。一見無造作に置かれているように見えるが、その角度や高さは計算され尽くされている。必要な書類を瞬時に取り出せるよう、機能的に配置されているのだと、厳一郎は一瞥で見抜いた。

 

 次に壁に掛けられた、作戦地図。そこには複数の色のピンが打たれ、複雑な情報が視覚的に整理されている。その緻密さは、生半可な指揮官では到底辿り着けない領域のものだった。部屋の隅の埃一つすら見逃さないかのような、鋭い視線が空気を重く圧迫していく。

 

 厳一郎はこの視察を、極めて真剣に捉えていた。息子の成長を確かめるため。息子が率いる特四という部隊の真価を、己の目で見極めるために。

 

 厳一郎の視線は次にこの部屋の主である、息子の圭一に向けられた。瞳がわずかに細められる。最後に会ったのは、いつだったか。あのプレゼンテーションの日以来だろうか。あの時も息子の成長に驚かされたが、今の圭一はあの時とは比べ物にならないほどの、変貌を遂げていた。

 

 

(ふむ…見違えたな圭一)

 

 

 厳一郎は内心で深く頷いた。以前の圭一には、どこか頼りなさがつきまとっていた。才能は認めるが決断力に欠け、どこか甘さがあった。

 

 けれど、今の圭一は違う。顔つきが精悍になり、その頬は以前よりも少しこけているように見える。それは厳しい戦場で、心身をすり減らした者だけが持つ勲章のようなものだ。

 

 そして何より、その瞳。そこには困難な任務を乗り越えた者だけが持つ、確かな自信と覚悟が宿っていた。あれはもはや、ただの若者の目ではない。幾多の修羅場を潜り抜け、部下の命をその双肩に背負う「将」の目だ。

 

 厳一郎は自分の突然の来訪に息子がどう反応するかを、注意深く観察していた。普通の若造であれば、上官である父親の抜き打ち視察に慌てふためき、醜態を晒すだろう。

 

 しかし、圭一は違った。突然の来訪にも一切動じず、堂々と迎え入れている。その落ち着き払った態度は、もはや単なる若造のものではない。厳一郎が部屋に入ってから数分経つが、彼は一言も発しない。ただ静かに、次の言葉を待っている。それは恐怖や萎縮から来る沈黙ではない。自らの部隊に絶対的な自信を持つ指揮官だけが持つことが出来る、静かなる威厳の表れだ。

 

 

(厳しい戦場が、あの子を真の『将』へと育て上げたか。ふっ、私の目に狂いはなかった)

 

 

 息子の成長という名の壮大な勘違いに、厳一郎は内心で深く満足していた。彼の高性能な親バカフィルターは、息子の恐怖による硬直を「不動の威厳」として、完璧に誤認していたのだ。そして彼の視線は、圭一の背後に控える三人の女性隊員へと移された。

 

 

(ほう…)

 

 

 厳一郎は思わず、内心で感嘆の声を漏らした。彼女たちの報告書には目を通している。黒澤麗奈。赤城陽菜。白石雪乃。いずれも類稀なる能力を持つが故に、組織からはみ出した問題児たち。それが厳一郎の彼女たちに対する、評価だった。しかし今目の前に立つ彼女たちは、その評価を覆すに十分すぎるほどの姿を見せていた。

 

 まずその規律。次長が入室すると同時、三人が寸分違わぬ動きで直立不動の姿勢をとった。その動きには一切の無駄がなく、まるで一つの生き物であるかのような完璧な連携が見て取れた。

 

 背筋はまっすぐに伸び、指先まで神経が行き届いている。恐るべき練度と規律。そこらの特殊部隊でも、これほどの緊張感を維持することは、難しいだろう。まさに、精鋭の名にふさわしい。

 

 そして何より、注目すべきは彼女たちの「目」だ。厳一郎は長年この世界で生きてきた。人間の本性は、目に現れることを誰よりも知っている。恐怖でもなく媚びでもない。彼女たちの瞳に宿っているのは、指揮官への絶対的な信頼と自らの任務への揺るぎない誇り。特に指揮官である我が息子を見つめるその瞳には、狂信的とすらいえるほどの忠誠心が燃え盛っていた。

 

 厳一郎は、一人一人を注意深く観察した。まず黒澤麗奈。旧華族の出身である彼女は、その瞳に怜悧な知性の光を宿している。プライドが高く、他人に従うことを良しとしない女だと聞いていた。

 

 だが、今の彼女は違うようだ。その視線はただひたすらに圭一に向けられ、彼の次の一言を待つ忠実な猟犬のように、鋭く研ぎ澄まされている。

 

 次に赤城陽菜。報告書によれば、その有り余る力で数々の器物損壊事件を起こしてきた、制御不能の破壊神。

 

 だが、今の彼女はその力を完全に内側に秘め、静かに佇んでいる。その姿は主の命令を待つ火山のように静かだが、その内側には計り知れないエネルギーが、渦巻いているのが分かった。彼女をここまで従わせるとは、一体どうやったというのだ。

 

 そして最後に白石雪乃。彼女は、対人恐怖症でまともに会話も出来ないと聞いていた。

 

 だが今の彼女は違う。その儚げな佇まいの中にも、確かな意志の光が宿っている。彼女の視線も、また圭一に注がれている。それはもはや、信頼や忠誠という言葉では言い表せない。まるで自らの存在理由の全てを、委ねているかのような絶対的な帰依。

 

 

(これほどの部隊を作り上げるとは…!)

 

 

 厳一郎は、戦慄に近い感動を覚えていた。

 

 

(いったいどのような調練をすれば、あの『問題児』たちがこれほど完璧な兵士に生まれ変わるのだ…!?)

 

 

 力でねじ伏せたのではない。それは彼女たちの瞳を見れば分かる。力で従わされた人間の目には、恐怖か憎しみが宿るものだ。だが彼女たちの目には、それがない。あるのはただ、純粋なまでの忠誠心と献身。

 

 

(心で従わせているのだ。圭一…お前は私が持たなかった『王の器』を持っているというのか…!)

 

 

 厳一郎は、息子への評価を改めなければならなかった。彼はもはや、自分の庇護を必要とするひ弱な若造ではない。自分とは違うやり方で人心を掌握し、最強の部隊を作り上げた一人の指揮官なのだ。その事実に、厳一郎は嫉妬にも似た誇らしさを感じていた。彼の親バカフィルターは、「お義父様…♡」という邪な視線を「狂信的な忠誠心」として、完璧に誤認し感動していたのである。

 

 どれほどの時間が経っただろうか。重い沈黙を破ったのは、厳一郎の方だった。彼はようやく重い口を開き、圭一に問いかけた。その声には自分でも驚くほどの、感嘆の色が滲んでいた。

 

 

「…見事な部隊だ、圭一。お前の部隊は、私の想像を遥かに超えていたようだ」

 

 

 それは彼が部下に対して口にする、最大限の賛辞だった。自分の息子が、自分の理解を超える領域の指揮官へと、成長したことをこの瞬間に確信したのだ。

 

 

(良い部下を持ったな圭一。いや…お前だからこそ、彼女たちもお前のために命を懸けられるのだ)

 

 

 厳一郎は心の中で深く頷いた。これだけの部隊を率いているのであれば、あの『ニーズヘッグ』との戦いも憂いはない。

 

 

(むしろこの戦いは、我が息子の伝説を更に確固たるものにするための、最高の舞台となるだろう)

 

 

 作戦の成功と息子の輝かしい未来を確信し、厳一郎の心は晴れやかだった。この視察は成功だ。いや、成功以上のものだった。息子の成長を、この目で見ることが出来たのだから。

 

 厳一郎は満足げに頷くと、今度は訓練施設や装備品のチェックへと向かうことを告げた。

 

 

「案内しろ圭一」

 

 

 その声には父親としての威厳と、上官としての厳しさが込められていた。厳一郎の背中は、後継者への信頼と満足感に満ち溢れている。彼の思考の片隅では、まだ父親としての顔が囁いていた。

 

 

(ふふ…だが、まだまだだ。私の眼鏡に適うかどうか、この目でじっくりと見定めさせてもらうぞ)

 

 

 父親としての厳しい仮面を再び被り直す。しかしその厳格な表情の裏で、彼の口元が僅かに綻んでいることに、彼自身は気づいていなかった。高性能親バカフィルターは、これからも息子の全てを美化し続け、その壮大な勘違いを更に加速させていくことになるだろう。慧眼とは時に最も近くにある真実を、見えなくさせてしまうものなのかもしれない。

 

 厳一郎は満足げに頷くと、息子に案内を促そうと一歩踏み出した。まさに、その時だった。

 

 それまで彫像のように微動だにしなかった三人の女性隊員たちが、まるで示し合わせたかのように同時にふぅっと長い息を吐いたのだ。そしてその頬は微かに上気し、潤んだ瞳は熱っぽく、こちらを真っ直ぐに見つめていた。

 

 厳一郎はその尋常ならざる視線に、一瞬だけたじろいだ。なんだこの視線は。値踏みするようなそれでいて、焦がれるような奇妙な熱量が込められている。

 

 そして次の瞬間、厳一郎の耳は信じられない言葉を拾った。

 

 

「「「おっふ…♡」」」

 

 

 それはほとんど、吐息に近いような小さな呟きだった。しかし静寂に包まれたこの部屋で、はっきりと聞こえた。麗奈も陽菜も雪乃も、三人揃ってうっとりとした表情でこちらを見つめ、甘いため息を漏らしている。

 

 

(おっふ…?)

 

 

 厳一郎の思考が停止した。聞き間違いか? いや確かにそう聞こえた。厳一郎は、長年の警察人生で数々の不可解な事件に遭遇してきたが、これほど理解不能な現象は初めてだった。精鋭であるはずの彼女たちが、なぜ揃いも揃ってそんな間の抜けた声を漏らすのか。しかもその視線は、明らかに自分に向けられている。

 

 

(なぜだ…? 私の顔に何かついているのか…?)

 

 

 厳一郎は、無意識のうちに自分の頬に手をやった。息子の成長ぶりに気を取られていたが、もしや自分に何か失態があったのだろうか。いやそんなはずはない。今朝も完璧に身だしなみを整えてきたはずだ。

 

 

(一体どういうことだ…? これが圭一の言うところの、特殊な訓練の一環とでもいうのか…?)

 

 

 厳一郎の頭脳が必死で、この不可解な現象を分析しようと試みる。だが答えは出ない。ただ一つ分かるのは、目の前の美女たちが自分に対して何らかの強い感情を抱いている、ということだけだった。

 

 厳一郎はわずかに眉をひそめ、その不可解な状況に戸惑いながらも、指揮官としての威厳を保ち、息子に視線を向けた。その息子の顔がなぜか絶望に染まっているように見えたのは、きっと気のせいだろうと彼は結論付けた。




作者の最高司祭アドミニストレータです。まず、経緯を説明させてください。投稿こそしてないのですが、私は「小説家になろう」にもアカウントを持っております。そのメッセージに、こんな内容のものを受信しておりました。

メール【突然すみません、お願いがあります】
作者「おっ、なんだ? ハッ、まさか…!?(ワクワク)」
メール【ハーメルンの『進撃の巨人の二次創作(ここに作品名)』という作品に最低評価を付けてもらえないでしょうか?】
作者「ん???(困惑いっぱい)」 

これって、多分どころか100億%ダメな行為でしたよね? こんなストレートにメッセージして来てるものですから、思わずお茶を吹き出してしまいました。当該小説を書かれてる作者様には、既にメッセージ送信済みです。事が事ですからね。

——

(11/25 23:42)
面接官することになったので、投稿ペース低下するかもしれません。ご了承ください。
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