これはくだらない遊びのはずでした

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第1話

 見ることができても慌てず叫ばない、この方法は霊を自らに縛り、霊の力を強くすることで10分だけ見えるようにしている、そのうえで霊は1週間あなたに何もできない。

 

 用意するものとして、体を映す鏡、霊を押し付けられる人。

 

 時間は問わない、ただ行うときは太陽の光が入らない部屋で一人行うこと。

 

 自分の体を見ることができる鏡の前に蝋燭や線香などを立て火を灯す。

 

 目をつむり手のひらを合わせおつきくださいと唱える。

 

 両方の手のひらで首を絞めるように触れ大きく息を吐く。

 

 目を開き鏡を見る。

 

 体に取り憑いている霊が見えるようになる。

 

 霊を見た後誰かに押し付ける。

 

 押し付けるときは自分の体に憑いていたところと同じ場所を押し付ける人に触れさせる。

 

 ただし頭や背中に隠れているもの、小さいものなど霊が見やすいとは限らない。

 

 1週間を超えたあたりから害をなし始めるため放置はしないこと。

 

 これは友達が持ってきた紙に書かれていたことです。

 

 そんな紙を持ってきたのは中学生のころ友達だったAです、当時この紙を持ってきたAにこれはなにと確認したところ、学校で行った資源回収の時、回収コンテナの中に落ちていたのを見つけて、気になって持ち帰ったと言っていた覚えがあります。

 

 その時は気になるのは仕方ないとして持ち帰るのはやばいなと感じました、唯一の救いは拾った場所がゴミ捨て場じゃなくて回収コンテナだったこと、ゴミ捨て場なら汚いから即捨てでした。

 

 「おもしろそうだから一緒にやってみようぜ、俺は母さんが家でよく見てる鏡使おうかな」

 

 Aは紙に書かれている儀式のようなものをやる気満々。

 

 私はどちらかというと幽霊などは信じている人間なので、こういう行為をあまりやりたくはありませんでした。

 

 でも当時の私はA以外に友達はいなかったため、楽しそうなAに向かって怖いからやりたくないなんて言うことはできませんでした。

 

 体を映す鏡が必要だったので私も上半身が映る母の使っている化粧台を使ってその日の夜に行いました。

 

 椅子に座り手順通り行い、大きく息を吐き緊張しながら目を開く、広がった視界にはいつも通りの自分がいました。

 

 すこし体をずらして背中のほうを見てみましたが、何かがついていることなどありませんでした。

 

 紙に書かれた儀式のようなものは誰かが書いただけのいい加減なものなんだと思い安堵しました。

 

 次の日Aに報告をしに行くとAは途中で親にバレて怒られたそうでできなかったみたいでした。

 

 何か見えたかと肩に両手をつけて聞いてくるAに、私は何も見えなかったことを伝えるとそっかとため息をつき椅子に座り違う話を始めたので興味を失ったようでした。

 

 紙には誰かに押し付けると書いてありましたが、私の体には霊が見えませんでしたし、誰かが適当に作っただけで特に効果などない、そう考え気にすることなくいつも通りの日々を過ごしていました。

 

 しかし儀式から10日ほど過ぎたあたりから体に違和感を感じ始めました。

 

 最初は寝つきが悪くなったなと感じる程度でしたが、だんだん疲れが取れなくなり足取りは重くなっていきました。

 

 その日から一向に体調は良くならず顔色が悪かったのか、そのうち先生やAに心配され体育の終わりに早退してしまうほどでした。

 

 早退した後体調は悪かったですが汗をかいたまま寝られないからシャワーだけでもとお風呂場に入った時、鏡に映る自分の姿を見て私は動けなくなりました。

 

 お風呂にある鏡の中に映る私の左足に何かが映っていました、それは生まれたての赤ちゃんのように小さく、影のように黒い何かが私を見上げるよう形で巻き付いていました。

 

 私が下を向くとさっきまでは見えなかった何かが左足にいました、水のように波打つ体でも触れているのかわからない感覚、顔のような形をしているのに目や口などのパーツはなにもない、ただただ黒いなにかがいました。

 

 体調を崩し始めたのがあの行為から10日後で、それがいる左足は座っていた私から見ていた鏡には映らない場所です、つまりあの紙に書かれていたことが本当なら、あの時私はこいつを見逃していたのです。

 

 ここ最近の体調不良はこいつのせいなのだと結論が出たとき、私は恐怖よりも怒りが強くなりました。

 

 こんな奴のせいで体調不良になっていると責任転嫁をし近くにあった洗剤をぶつけるように投げました、でもそいつには当たることはなく自分の足に当たり、痛みを感じさらに怒りが強くなり右足でそいつを踏みつけました。

 

 すり抜けようとも当たる感覚がなくとも何度も何度も右足で踏みつけ、何回か繰り返した後、水をかけようとシャワーに視線をそらし、シャワーを取った後再び左足を見たときそいつは消えていました。

 

 お風呂の鏡で全身を見てみましたが黒い何かは映ることはなかったです。

 

 その時は怒りが勝っていたので悔しい気持ちになりましたが、少し冷静になったらどうしようと恐怖が強くなりました、誰かにこの霊を押し付けなければならない、でもどうしたらいいと考えました。

 

 クラスメイトに押し付けようと思いましたが、Aが儀式のことを知っているため、学校でほかの人に押し付けようとしているところを見られたらなんて言われるか考えたくもなかったです。

 

 しかも押し付けられた方がどうなってしまうのかは書いてありませんでした、もしかしたら押し付けた人に良くないことが起きるかもしれません。

 

 それでも私は誰かに押し付けてでも自分は助かりたかったのです、もしかしたら何事もなく過ごせるのかもしれません、希望的ですが自分についていることのほうが耐えられませんでした。

 

 アイツを見た次の日、なぜか多少体調がよくなり今のうちにどうにかして自然に触らせる方法はないのかと一生懸命考えて学校生活を送っていました。

 

 そんなことを考えて上の空だったからか、私は階段を踏み外してしまいました。

 

 あと数段しかないことやとっさに手すりを摑めたのが不幸中の幸いで保健室の先生に見てもらうと左足首の捻挫程度と言われ、一応病院で検査しましたが同じく捻挫と診断されました。

 

 その結果に付き添いで心配していた母も安心していましたし、私も嬉しかったです。

 

 でも嬉しかったのは大きなけがではなかったことではなく、私は左足を触れてもらえたことを喜びました、紙の通りなら私はどちらかに霊を押し付けることができたと達成感でいっぱいでした。

 

 次の日から私の体調は良くなりあの日以降鏡に霊が映ることはありませんでした、それは社会人になった今でも変わりません、私は押し付けることができたのでしょう。

 

 しかし押し付けたのが原因なのか保険室の先生はその年に辞めました、当時はたまたまタイミングが被っただけと現実逃避するように気にするのはやめました。

 

 でも成人式に出席した時、当時の担任の先生に保険室の先生のことをそれとなく聞いてみましたが、今どうしているかわからないそうでした。

 

 もしかしたら押し付けたアイツのせいでなにか問題が起きたかもしれません。

 

 でもそれは思い過ごしできっとどこかで元気にしていると思いたいです。

 

 私は悪くない、そもそもAがやろうって言わなければ、あんな紙を書く人がいなければ、私に憑いている霊がいなければよかったのです。

 


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