ギャンブル中毒者が挑む現代ダンジョン配信物   作:パラレル・ゲーマー

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第281話

【SeekerNet - 北米サーバー】

 スレッドタイトル: 【議論】「朱雀湊」のコピーキャットビルド現象について語ろうぜ Part. 1

 

 1: 名無しのSlayer

 なあ、お前ら。ちょっとマジな話をしようぜ。

 さっきBランクダンジョンの「鉄の遺跡」で5時間ぶっ通しで周回してきたところだ。

 で、誓ってもいいが、すれ違う戦士の半分は、あの日本のガキ、朱雀湊の完全なコピーだった。

 同じ巨大な斧、同じ「ヴォルカニック・フィッシャー」の連発、同じクソみたいな「ウォークライ」。

 誤解しないでくれよ、ビルド自体が化け物なのは認める。

 俺のパーティーがいつも苦戦するゴーレム・オーバーロードを、そいつらの一人がソロで倒してんのを見た。

 でも、他に誰かちょっと…飽き飽きしてるやつはいないか? これが本当に戦士っていうクラスの未来なのか? たった一つのビルドが全てを支配する、みたいな?

 

 2: 名無しのGladiator

 

 1

 間違ってないな。燎原の火のように広まってる。

 俺のギルドのDiscordも、「ミナトビルドのをくれ」って聞いてくる初心者でいっぱいだ。

 効果的なのは確かだ。否定はできない。

 

 3: 名無しのBerserker

 

 2

「効果的」なんて言葉じゃ生ぬるい。あのビルドはクソぶっ壊れてる。

 昨日、そのコピーキャットの一人とパーティーを組んだけど、あいつの火力はマジでイカれてた。文字通りチームをキャリーしてたぜ。

 

 4: 名無しのJuggernaut

 

 3

 その通りだ。で、何が問題なんだ? まあ、強いビルドをコピーして安定するのも良いんじゃないか?

 いいか、俺たちの99%はSランカーみたいなビルド構築の天才じゃないんだ。俺たちはただ生活のためにやってるだけだ。

 Bランクのコンテンツをソロで周回するのに、強くて、安全で、効率的だと証明されたビルドがあるんだぞ? そりゃみんな使うだろ。それは退屈なんじゃなくて、賢いってことだ。完璧なビルドがすぐそこにあるのに、なんでわざわざ全滅して一日の稼ぎを失うリスクを冒してまで、怪しげな新しいビルドを発明しようとするんだ?

 

 5: 名無しのSlayer

 

 4

 だってそれは松葉杖だからだ。クソ強力なやつだってのは認める。だが、それでも松葉杖に過ぎない。

 

 6: 名無しのTrickster

 

 5

 これ。まさにこれだ。

 JuggernautはBランカーの発想だな。一生Bランクにいたいなら、それでもいいだろう。オリジナリティがないと行き詰まるぞ?

 あのビルドはマグマロスみたいなBランクのボスを倒す、ただその一点において完璧に最適化されている。

 だが、Aランクのダンジョンに足を踏み入れたらどうなる? 火属性耐性が80%もあるモンスターに遭遇したら? 物理ダメージを反射したり、地面を叩きつけるために静止することを咎めるギミックを持つボスだったらどうする?

 こいつらコピーキャットどもは、なぜそのビルドが機能するのかを理解していない。ただガイドに従っているだけだ。適応する方法を学んでいない。

 とんでもない壁にぶち当たって、ビルドごと粉々になるだろうさ。相手のレベルが上になった時、どうするつもりなんだ?

 トップ層では、ステータスで相手を上回るだけじゃダメだ。思考で上回らなきゃならない。

 だというのに、こいつらは自分の思考を日本の16歳のガキに外注してるんだ。

 

 7: 名無しのJuggernaut

 

 6

 ずいぶん回りくどい言い方だが、要は「もっと腕を磨け(git gud)」ってことだろ。

 おいおい、言いたいことはわかる。だが現実を見ろ。

 俺たちの中で、実際にAランクに到達できる奴が何人いる? 10%? 下手すりゃもっと少ないだろ?

 俺たち大多数にとって、Bランクが仕事場なんだ。そしてこの仕事では、効率こそが王様だ。でも、クソ強いビルドだし、真似して良いんじゃないか?

 コンテンツをより速くクリアできるってことは、より多くのドロップ、より多くの金、そしてより良い生活を意味する。話はそれだけだ。

 

 8: 名無しのWitch

 はいはい、二人とも良いこと言ってるけど、一番大事なことを見落としてるわよ。

 このビルドがこんなに人気な本当の理由は、ただ強いからってだけじゃない。

 彼がいるからよ。

 

 9: 名無しのGladiator

 

 8

 彼? あのガキのことか? ミナト?

 

 10: 名無しのWitch

 

 9

 当たり前でしょ!

 みんな、ただビルドをダウンロードしてるんじゃない。スーパーヒーローのコスチュームを試着してるのよ。

 考えてみてよ。物語が最高すぎるじゃない。

 買い物袋も持ち上げられなさそうな、物静かで美しい少年が、2トンの斧を振り回して地面から火山を噴火させるのよ。

 どこからともなく現れて、伝説のJOKERの目の前で、初挑戦でBランクボスをソロ討伐しちゃう。

 これって、ただの強いビルドじゃない。伝説の始まりよ。

 みんながこのビルドをコピーするのは、その伝説のひとかけらを味わいたいから。自分がそのアンダードッグ(かませ犬からのし上がるヒーロー)になりたいのよ。

 

 11: 名無しのBerserker

 

 10

 マジか…。そう言われると…。

 確かになかなか壮大な話に聞こえるな。

 

 12: 名無しのSlayer

 

 10

 つまり機能じゃなくて、幻想ってことか。なるほどな。

 それでも、どこもかしこも同じキャラモデルなのはうっとうしいけどな。

 

 13: 名無しのWitch

 

 12

 もう、水を差さないでよ! それに、可愛いし、正義だろ?(男だけど)

 彼は究極のファイナルファンタジーの主人公みたいじゃない。巨大な武器を持った、美しくて中性的なヒーロー。これがお約束なのは理由があるのよ! 私たちは新しいアイコンの誕生を祝うべきだわ!

[画像:様式化されたアニメ風の朱雀湊を描いた、出来の良いファンアート。はにかみながらも決意を秘めた表情で、コミカルなほど巨大な、光を放つ斧に寄りかかっている。]

 

 14: 名無しのJuggernaut

 

 13

 …ああ、これはかなり良いファンアートだな。

 それに、うん、まあまあ可愛いな。男にしては。

 

 15: 名無しのTrickster

 

 13

 彼が少年であるという事実が、それをさらに良くしている。

 神秘性を増しているんだ。期待の究極的な裏切り。

 彼の存在そのものが、高レベルの戦略の一種だ。

 その容姿で敵を欺き、圧倒的な力で破壊する。

 見事だ。私は認めよう。

 

 16: 名無しのRanger

 このスレ、変な方向に進んでるな。

 でも、嫌いじゃないぜ。

 #チームミナト

 

 その、あまりにもアメリカ的な、そしてどこまでもインターネットカルチャーに根差した議論の脱線。

 それに、スレッドは一時、和やかな笑いに包まれた。

 だが、そのお祭りムードの中で。

 一つの、重い、そしてどこまでも本質を突いた分析が投下された。

 投稿主は、このサーバーでも一目置かれる、ベテランのビルド理論家だった。

 

 255: 名無しのPathfinder (ベテラン)

 …君たちは皆、正しい。そして皆、間違っている。

 現実主義者(Juggernaut)の言う通り、強力なメタビルドをコピーすることは、大多数のプレイヤーが安全かつ効率的に資産を築くための最も論理的な道筋だ。

 理論家(Trickster)の言う通り、その道には明確な上限があり、真の成長には理解と独創性が不可欠だ。

 そしてアーティスト(Witch)の言う通り、この現象の大部分は、スプレッドシート上の数字だけでなく、物語と偶像(イコン)の力によって動かされている。

 しかし、君たちは皆、根本的な点を見逃している。

 ビルドをコピーすることは終着点ではない。それは始まりだ。

 真の熟達への道の、第一歩なのだ。

 ギターの練習に例えてみよう。

 最初は、他人の曲を弾くことから学ぶ。実績のあるコード、スケール、テクニックを学ぶ。

 コピーキャットプレイヤーたちがやっているのは、まさにこれだ。彼らはスケール(音階)を学んでいる。

 だが、真のミュージシャンがそこで止まると思うかね? いや。

 基礎をマスターしたら、彼らは即興演奏を始める。ここのコードを変え、あそこのリズムを変える。

 彼らは「なぜ」と問い始める。なぜこのコード進行は機能するのか? このコードを別のものに置き換えたらどうなるのか?と。

 そして最終的に、彼らは自分自身の曲を書き始める。

 それこそが道なのだ。

 カバー曲を演奏するだけで満足してしまうプレイヤーは、永遠にBランクに留まるだろう。

 しかし、このコピービルドを教科書として使い、それを研究し、解体し、そして自分だけのユニークなものへと再構築する者たち…彼らこそがAランクに到達する者たちだ。

 彼らこそが、次のメタを作り出す者たちなのだ。

 では、ミナトビルドは良いものか? イエスだ。今のところ、それをコピーするのは良い考えか? 間違いなく。

 だが、それが最終的な答えか?

 断じて否。この世界で、真にSランク(S-tier)たるビルドは、君自身の頭の中にのみ存在するビルドなのだ。

 

 

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