ギャンブル中毒者が挑む現代ダンジョン配信物   作:パラレル・ゲーマー

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第292話

物語(ものがたり)は10(ねん)(まえ)ダンジョンが(あらわ)れる当日(とうじつ)(もど)る】

【ダンジョン出現(しゅつげん)()3ヶ(げつ)経過後 - B級ダンジョン攻略開始】

 

【SeekerNet 掲示板 - 黎明期雑談スレ Part. 48】

 

 1: 名無しのC級戦士

 スレ立て乙。

 …はぁ。

 今日も一日、D級墓地で骨拾いだったぜ。

 B級ゲート出現してから、もう一週間か…。

 結局、誰もクリアできてねえんだろ?

 

 2: 名無しのC級魔術師

 

 1

 乙。

 当たり前だろ。

 あれは、無理ゲーだ。

 全耐性-30%の呪いだぞ?

 C級ですらまともに潜れなくなったってのに、それ以上の地獄に誰が行けるってんだよ。

 

 3: 名無しのC級盗賊

 

 2

 だよな。

 俺たちの冒険は、C級で終わり。

 そういう、神様からのお告げなんだよ。

 諦めるしかねえのさ。

 

 お通夜状態の掲示板。

 数日前までC級制覇の熱狂と、バラ色の未来への希望で満ち溢れていたスレッドは、今やB級の呪いというあまりにも巨大な壁を前にして、深い、深い絶望と諦観の空気に支配されていた。

 誰もが思った。

 人類の快進撃は、ここで終わりなのだと。

 だが、その絶望の暗闇を切り裂くかのように。

 一つの小さな、しかしどこまでも力強い光が灯された。

 

 121: 名無しのトップランカー

 …行ってきたぞ。

 

 そのあまりにも短い、しかしどこまでも重い一言。

 それに、スレッドが一瞬にして静まり返った。

 そして、次の瞬間。

 爆発した。

 

『は!?』

『マジかよ!行ったのか!?B級に!』

『誰だよ!あんた、もしかしてあの時のビルド研究家さんか!?』

 

 125: 名無しのトップランカー

 ああ。

 仲間とパーティを組んでな。

 ダイヤモンドスキンを取って、ありったけの耐性装備を買い占めて、なんとか全員の耐性を50%まで引き上げた。

 なんとか全耐性-30%を受けても、50%に抑えられるエリート探索者達が、攻略を開始する。

 そのあまりにも無謀で、そしてどこまでも勇敢な報告。

 それに、スレッドの全ての視線が集中した。

 

 131: 名無しのゲーマー

 

 125

 で、どうだったんだよ!?

 中の様子は!

 

 135: 名無しのトップランカー

 

 131

 …地獄だ。

 

 そのたった一言。

 それが、全てを物語っていた。

 

 136: 名無しのトップランカー

 敵が、くっそ強い。

 B級【古竜(こりゅう)寝床(ねどこ)】に入ったんだがな。

 道中に出てくる、ただの竜人族(りゅうじんぞく)の雑魚兵士。

 あいつの一撃が、俺たちC級のトップランカーのHPを3割は持っていく。

 耐性50%あっても、だ。

 ブレスを食らったら、即死しかけた。

 一戦ごとに、フラスコは空になる。

 一戦ごとに、ポータルでダンジョンの外に帰還しないと、次がない。

 だがな…。

 

 彼はそこで、一度言葉を切った。

 そして、その絶望の報告の中に、一つの強烈な希望の光を灯した。

 

 138: 名無しのトップランカー

 ――ドロップも美味い。

 B級の魔石は、一個売るだけで100万になった。

 C級の5倍だ。

 それに、いい装備もドロップする。

 俺が今まで見たこともないような、強力なMODが付いたレア装備が、ゴロゴロ落ちてる。

 

 そのあまりにも甘美な、そしてどこまでも危険な報告。

 ハイリスク・ハイリターン。

 その言葉が、スレッドの住人たちの忘れかけていた闘争心に、再び火をつけた。

 そして、その熱狂の炎にさらに油を注ぐかのように。

 彼は、最後の、そして最大の「発見」を報告した。

 

 155: 名無しのトップランカー

 …そして、これだ。

 これが、俺たちの世界を再び変えるかもしれん。

 

[画像:手のひらに乗せられた一つの鈍い銀色の光を放つオーブ。その内部にはまるで職人の魂が宿っているかのような複雑な歯車の紋様が浮かんでいる]

 

 158: 名無しのゲーマー

 

 155

 なんだ、これ!?

 新しいオーブか!?

 

 161: 名無しのトップランカー

 

 158

 ああ。

 鑑定結果は、【熟練工のオーブ】。

 効果は、『装備のソケットを追加する』だ。

 

 静寂。

 数秒間の、絶対的な沈黙。

 そして、次の瞬間。

 スレッドは、本当の意味での「爆発」を起こした。

 

『は!?』

『ソケットを!?追加する!?』

 

 そのあまりにも革命的な発見。

 だが、本当の衝撃はここからだった。

 

 188: 名無しのトップランカー

 まだだ。

 まだある。

 これを見ろ。

 

[画像:手のひらに乗せられた一つの小さな、しかし確かな炎の力を宿した赤い宝石]

 

 191: 名無しのビルド考察家

 

 188

 …なんだ、これは?

 スキルジェムとは、違うようだが…。

 

 195: 名無しのトップランカー

 

 191

 ああ。

 こいつの名は、【ルーン(小)】。

 そして、その効果は…。

 

 彼は、震える指でその神のテキストをスレッドへと投下した。

 

【効果:防具のソケットに装着することで、火耐性を+10%する】

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』

 もはや、言葉はなかった。

 ただ、魂の絶叫だけがスレッドを埋め尽くしていく。

 絶望の淵に突き落とされた全ての探索者たち。

 その目の前に、あまりにも眩しい、そしてどこまでも確かな「希望」の光が差し込まれた瞬間だった。

 

 255: 名無しの最初の戦士

 …救済措置か?

 マジかよ…。

 ギルド、いや、神様も捨てたもんじゃねえな…。

 

 258: 名無しの現実主義者

 

 255

 いや、待て。

 喜ぶのは、まだ早い。

 いやでも、B級の呪いを受けた先にこれがあるってのは、少しイジワルだよなぁ。

 まるで、毒を盛られてその後に解毒剤を渡されるようなもんだぜ。

 マッチポンプじゃねえか。

 

 261: 名-無しの聖歌隊員

 

 258

 何を言うのですか!

 は?神の救済なんだが?(宗教過激派)

 これは、B級という試練を乗り越えた勇気ある者だけが手にすることを許された、神からの祝福です!

 疑う者は、地獄に堕ちるでしょう!

 

 そのあまりにも極端な、しかしどこまでもこの時代の空気を象徴するかのような議論。

 それに、スレッドは再びその熱を取り戻していく。

 そして、一人のビルド研究家が、その興奮を鎮めるかのように、冷静な分析を投下した。

 

 301: 名無しのビルド考察家

 まあ、それはともかく。

 重要なのは、**これで後続の耐性問題はなんとかなるんじゃないか?**ということだ。

 熟練工のオーブでソケットを開け、そこにこの耐性ルーンをはめ込む。

 これが、今後のビルドの基本になることは間違いない。

 問題は、ソケットの数だが…。

 

 305: 名無しのトップランカー

 

 301

 ああ、それならもう分かってる。

 俺たちが拾った装備を鑑定しまくった結果だ。

 手、足、頭はソケット1個まで、胴はソケット2個まで。

 つまり、全身で5個のソケット。

 単体耐性を積めるのは、強いだろ。

 これだけあれば、B級の呪いを受けても、耐性75%のカンストを目指すことも夢じゃない。

 

 そのあまりにも具体的で、そしてどこまでも希望に満ちた情報に、スレッドは再び歓喜の渦に包まれた。

 だが、その熱狂の火に冷水を浴びせるかのような、一つの現実的な情報が投下された。

 

 355: 名無しの市場ウォッチャー

 …お前ら、浮かれてるところ悪いが。

 マーケット見てみろ。

 もう、地獄だぞ。

 

 358: 名無しのゲーマー

 

 355

 は?

 

 361: 名無しの市場ウォッチャー

 

 358

 なお、お値段。

 すでに、熟練工のオーブは市場で200万円とかになってます…。

 ルーンも、一個50万からだ…。

 

 そのあまりにも無慈悲な現実に、スレッドは再びお通夜状態へと逆戻りしかけた。

 だが、今の彼らはもう以前の彼らではなかった。

 一度、絶望の淵から這い上がった彼らの心は、もう簡単には折れなかった。

 

 401: 名無しの最初の戦士

 …チッ。

 まあ、しょうがねえか。

 需要があるんだから、値段が上がるのは当たり前だ。

 文句を言ってる暇があるなら、潜るしかねえ。

 

 405: 名無しのトップランカー

 

 401

 ああ、その通りだ。

 まあ、そこは結構ドロップするから、その内値が下がるだろ。

 今は、我慢の時だ。

 

 411: 名無しのビルド研究家

 

 405

 そうだ。

 道は、見えた。

 答えは、示された。

 あとは、俺たちがその道を歩くだけだ。

 

 とにかく、B級はなんとか、なんとかだが、攻略を進めていくという感じだな。

 そのあまりにも前向きで、そしてどこまでも力強い決意の言葉。

 それに、スレッドの全ての住人が、静かに、しかし力強く頷いた。

 彼らの本当の戦いは、まだ始まったばかりだった。

 その輝かしい未来の始まりを、誰もが祝福していた。

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