ギャンブル中毒者が挑む現代ダンジョン配信物 作:パラレル・ゲーマー
その日の日本最大の探索者専用コミュニティサイト『SeekerNet』は、奇妙な静けさと、水面下で沸騰するような熱気に包まれていた。
事件は、いつも通り、最もありふれた、そして最も見過ごされがちな場所で、その産声を上げた。
【SeekerNet 掲示板 - B級ダンジョン総合スレ Part. 425】
1: 名無しの鉱夫見習い
スレ立て乙。
はぁ…。今日も一日、B級【
結局、一度も会えなかった。マジで、確率どうなってんだよ…。
2: 名無しのC級(見学中)
1
乙。
A級の連中ですら、一日一回会えるかどうかだって言ってますもんね…。
俺たちB級には、まだ早いテーブルなのかもしれません。
3: 名無しの鉱夫見習い
2
だよな。
まあ、愚痴っててもしょうがねえか。
今日の周回、始めるわ。
…ん?
その、あまりにも唐突な、そしてどこまでも不穏な一言。
それに、スレッドの空気が、わずかに変わった。
4: 名無しのゲーマー
3
どうしたんだよ、鉱夫ニキ。
また、変なロボットでも見つけたか?
5: 名無しの鉱夫見習い
4
いや、違う。
なんか、ドロップ品が、おかしい。
さっき、B級の警備ドローンを倒したんだが、魔石とガラクタレアの他に、見たこともねえ石ころが落ちたんだ。
[画像:インベントリ画面のスクリーンショット。薄暗い鉄の床の上に、青黒く、そして内側から微かな光を放つ、拳大の鉱石が一つ置かれている]
なんだ、これ…?
新種の、エッセンスか…?
その、あまりにも奇妙な報告。
それに、スレッドがざわめいた。
だが、本当の衝撃は、ここからだった。
15: 名無しの鉱夫見習い
おい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
お前ら、ちょっと待て!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
俺、今ダンジョンの奥で、そろそろ帰ろうと思ってポータルスクロール使ったんだが!!!!!!!!!!!!!!!
そしたら、なんか、見たこともねえ選択肢が増えてる!!!!!!!!!!!!!!!
[画像:ARウィンドウのスクリーンショット。【自宅へ帰還】【ダンジョンの外へ】という見慣れた選択肢の下に、第三の選択肢として【――デルヴ鉱山へ】という荘厳なテキストが、青白い光を放って表示されている]
…なんだよ、これ…。
デルヴ…鉱山…?
その、あまりにも未知なる単語。
そして、世界の理そのものが変質したかのような、異常な現象。
それに、スレッドは爆発した。
『は!?』
『なんだ、それ!?新ダンジョンか!?』
『ポータルの行き先が増えるとか、聞いたことねえぞ!』
その混乱の渦の中で、最初にその価値を嗅ぎつけたのは、やはりあの男たちだった。
125: ハクスラ廃人
おい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
これ、マジかよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
あの石ころ…アズライト鉱石が、フラグか!
そいつを持ってると、ポータルに新しい行き先が追加されるのかよ!
128: 名無しの市場ウォッチャー
125
ああ、間違いない。
俺も、今、海外のフォーラムを漁ってきた。
アメリカでも、ヨーロッパでも、ほぼ同時に、同じ鉱石とポータルの報告が上がり始めてる。
そして、そのアズライト鉱石ってやつ、すでにマーケットに出品されてるぞ!
価格は…。
彼は、そこで一度言葉を切った。
スレッドの全ての住人が、固唾を飲んで彼の次の言葉を待っていた。
131: 名無しの市場ウォッチャー
――200個で、10万円だ!!!!!!!!!!!
静寂。
そして、爆発。
『は!?』
『なんだよ、その中途半端な数は!』
『でも、10万!?ただの石ころが!?』
その熱狂の、まさにその中心で。
あの、最初の発見者である鉱夫見習いが、一つの、あまりにも勇敢な、あるいは、ただの無謀な決断を下した。
255: 名無しの鉱夫見習い
…面白い。
俺が、人柱になってやるよ。
この、デルヴ鉱山ってやつが、一体何なのか。
この目で、確かめてきてやる。
見てろよ、お前ら。
その、あまりにもヒーロー的な、そしてどこまでも死亡フラグに満ちた宣言。
それに、スレッドは、熱狂した。
『うおおおおお!マジかよ!』『行ってこい!』『生きて帰ってこいよ!』
その声援に送られ、彼は、その未知なる冒険へと、その最初の一歩を、踏み出した。
数時間後。
スレッドは、お通夜状態となっていた。
あの勇敢な鉱夫見習いは、帰ってこなかった。
彼が残した最後の書き込みは、「ポータル、開いた。中は、真っ暗だ。行ってくる」という、あまりにも不穏な一言だけだった。
『…ダメだったか』
『だから、言わんこっちゃない。無謀だって』
『R.I.P. 名もなき勇者よ…』
その、あまりにも重く、そしてどこまでも悲しい諦観の空気。
それが、唐突に、そしてあまりにも劇的に、断ち切られた。
611: 名無しの鉱夫見習い
――ただいま。
その、あまりにも短い、しかしどこまでも力強い、生還の報告。
それに、スレッドが、爆発した。
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!』
『生きてたのか!』
『おかえり!おかえり、勇者よ!』
その、温かい祝福の嵐の中で。
彼は、その震える指で、自らが体験した、あまりにも常軌を逸した冒険の、その一部始終を、語り始めた。
615: 名無しの鉱夫見習い
…やばい。
…やばいぞ、あそこは…。
ポータルをくぐった先は、ダンジョンじゃなかった。
ただの、真っ暗な、何もない空間だ。
そこに、一台だけ、古びた機械と、変なジジイがいた。
機械はクローラー、ジジイはジャスパーって名前らしい。
そいつに、さっき拾ったアズライト鉱石を見せたら、『ほう、ようやく地上の人間も、この『本当の宝の山』への鍵を見つけたか』とか、意味深なこと言いやがった。
そして、その機械のヘッドライトが照らす、一本の光の道だけを頼りに、俺は、無限に続く、地下の坑道を、ただひたすらに、下へ、下へと、進んでいったんだ…。
621: 名無しのゲーマー
615
なんだよ、それ!
完全に、新しい世界じゃねえか!
625: 名無しの鉱夫見習い
621
ああ、そうだ。
そして、その闇の中には、化け物がいた。
これまでのどのモンスターとも違う、光を嫌い、闇に潜む、おぞましい奴らがな。
**クローラーの光の外に出たら、一瞬でHPが蒸発する。**マジで、死ぬかと思った。
だがな…。
彼は、そこで一度言葉を切った。
そして、その絶望の報告の中に、一つの強烈な希望の光を、灯した。
628: 名無しの鉱夫見習い
――報酬が、美味い。
美味すぎる。
道中の、壁の裂け目から、カレンシーオーブが、どっさり出てくるんだ。
それに…。
彼は、最後の、そして最大の「発見」を、報告した。
635: 名無しの鉱夫見習い
これだ。
これが、俺たちの世界を、再び変えるかもしれん。
[画像:インベントリ画面のスクリーンショット。そこには、太古の生物の骨のように見える、禍々しいオーラを放つ【
638: 名無しのクラフトマニア
…は!?
なんだ、これ!?
化石!?共鳴器!?
まさか…。
641: 名無しの鉱夫見習い
638
ああ。
鑑定結果によれば、この二つを組み合わせることで、化石クラフトが解禁されるらしい。
これまで不可能だった、特定のMODを、確定で付与できる、禁断のクラフトがな…。
その、あまりにも革命的な発見。
それに、スレッドは、再び、歓喜の渦に包まれた。
絶望の淵に突き落とされた、全てのクラフターたち。
その目の前に、あまりにも眩しい、そしてどこまでも確かな「希望」の光が、差し込まれた瞬間だった。
そして、その熱狂は、やがて一つの、巨大な「ビジネス」へと、その姿を変えていく。
888: 名無しのA級商人
…おい、お前ら。
話は、聞いた。
その、アズライト鉱石とやら。
俺が、言い値で、全部買う。
そして、その化石と共鳴器もだ。
これは、金になる。
とんでもねえ、金になるぞ。
その、あまりにも直接的な、そしてどこまでも純粋な、欲望の宣言。
それが、この新たな時代の、本当の幕開けだった。
世界の、全ての探索者が、その日、一つの共通の夢を見た。
闇の底に眠る、無限の富と、そして失われた古代の叡智を、その手にする夢を。
新たな、そして最も深い、ゴールドラッシュ。
その、あまりにも静かで、そしてどこまでも熾烈な、競争の時代の幕開けだった。