ギャンブル中毒者が挑む現代ダンジョン配信物   作:パラレル・ゲーマー

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第412話

 その日の世界の空気は、一つの巨大な「祭り」の喧騒によって、完全に上書きされた。

 楽園諸島のサンクチュアリ・ポートに突如として出現した、巨大な朱色の鳥居。その奥に広がる、永遠の夕暮れに包まれた夏祭りの世界**「幽世(かくりよ)祭壇(さいだん)」**。

 戦闘が一切なく、国籍や言語の壁すらも取り払われる、そのあまりにも優しく、そしてどこまでも楽しい空間。

 その報は、瞬く間に世界中を駆け巡り、熾烈なリフト戦争に疲れた探索者たちの心を、瞬く間に鷲掴みにした。

 そして、その熱狂の、まさにその中心にいたのは、この新しい時代の寵児たち。

 VTuber探索者だった。

 彼女たちにとって、この場所は、もはやただのダンジョンではない。

 自らの魅力を、その魂の輝きを、世界の全てに知らしめるための、最高の舞台(ステージ)だったのだから。

 

 X(旧Twitter)トレンド - 日本

 1位: #V夏祭り

 2位: #癒月アリア

 3位: #るなみかんデート

 4位: #今日のてぇてぇ

 5位: #眠れる鬼姫

 

【The Grand Opening of the VTuber Summer Festival】

 

 @WeeklyDungeon_News

【速報】常夏の幽世・夏祭りに、ナロウライブ、カクヨムライブ所属のVTuber探索者が一斉に参加。各々が特別配信を開始し、SeekerNet及びXはサーバーダウン寸前の大規模なトラフィックを記録しています。 #V夏祭り

 

 @Dungeon_Gamer_Taro

 やべえwwwタイムラインが浴衣姿のVTuberで埋め尽くされてるwww

 仕事が、手につかん! #V夏祭り

 

 @V_Fan_Aoi

 もう、天国かよ…。

 推しが、推しが浴衣着て、りんご飴食べてる…。

 俺は、この光景を見るために、生まれてきたんだ…。

 

 @Build_Kousatsu

 …なるほどな。

 この「季節祭典」、戦闘能力が一切不要なため、純粋な「企画力」と「キャラクター性」だけで勝負が決まる。

 これは、VTuberという存在にとって、まさに独壇場だ。

 既存の探索者配信とは、全く違うエコシステムが、今、生まれようとしている。

 

【Chapter 1: The Healing Saintess's Summer Night Serenade】

 

 @Aria_Fanclub_Bucho

 今日の #アリア様配信 は、伝説になる…。

 見てくれ、この光景を。

 

[画像:夏祭りの会場の、喧騒から少し離れた、穏やかな川辺のスクリーンショット。川には無数の灯籠が流れ、その柔らかな光が、水色の紫陽花が描かれた真っ白な浴衣姿で正座する癒月アリアのアバターを、優しく照らし出している。彼女の膝の上には、ペットの白熊「わたあめちゃん」が、気持ちよさそうに丸くなっている]

 

 @V_Fan_Aoi

 うわあああ…綺麗…。

 アリアちゃん、戦闘服じゃなくて、水色の紫陽花が描かれた、真っ白な浴衣着てる…。

 髪飾りも、小さな銀の鈴になってる…。

 天使か?いや、女神か? #アリア様聖女

 

 @Gamer_Tetsu

 アリアの配信、始まったな。

 今日のテーマは、「川辺で線香花火をしながら、皆さんとお話します」か。

 相変わらず、平和だな、この子の配信は。

 だが、それがいい。リフト戦争でささくれた心が、浄化されていく…。

 

 @Aria_Live_Watcher

 アリアちゃん「ふふっ…。綺麗ですね、線香花火。小さくて、すぐに消えてしまうけど…。だからこそ、こんなに美しいのかもしれませんね」

(アバターが、小さな線香花火の光を、愛おしそうに見つめている)

 

 ああてぇてぇ…。 #アリア様聖女

 

 @US_Fan_John

(自動翻訳)

 Aria-san's stream is so peaceful... I've been grinding Rift for 12 hours straight and my soul was about to break. This is... healing. Thank you, Saintess Aria.

(アリアさんの配信、すごく平和だ…。リフトを12時間ぶっ通しで周回してて、魂が壊れそうだった。これは…癒やしだ。ありがとう、聖女アリア)

 

 @Aria_Live_Watcher

 アリアちゃん「あら、海外の方も、見てくださっているのですね。こんばんは。日本の、夏の夜へ、ようこそ」

(コメント欄の英語のコメントを、完璧な発音で読み上げる)

 アリアちゃん「『魂が、壊れそうだった』…ふふっ。大丈夫ですよ。あなたの魂は、まだこんなにも温かい。その光を、失わないでくださいね」

(スパチャの嵐)

 

【Chapter 2: The Chaotic Summer Date of Luna & Mikan】

 

 @Luna_Mikan_Oshi

 始まったあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!

 るなちゃんとみかんちゃんの、浴衣デート配信!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 もう、開始5秒で、てぇてぇが致死量なんだが!!!!!!!!!!!!!!!!

 #るなみかんデート #V夏祭り

 

[画像:ピンク色の朝顔柄の浴衣を着た夢見るなと、オレンジ色の金魚柄の浴衣を着た星川みかんが、二人で腕を組んで、カメラに向かって満面の笑みでピースしているスクリーンショット]

 

 @Gamer_Tetsu

 地獄の始まりだ…(最高の褒め言葉)。

 この二人が揃うと、絶対に何かやらかす。

 俺は、詳しいんだ。

 

 @V_kirinuki_ch

【速報】るなちゃん、綿あめを食べようとして、その半分をみかんちゃんの髪の毛にくっつける。

 #るなみかんデート

 

 @LunaFan_No1

 るなちゃん「わわわわわ!ご、ごめんね、みかんちゃん!」

 みかんちゃん「もー!るなちゃんったら、ドジっ子なんだからー!」

(二人でキャッキャしながら、髪についた綿あめを取り合っている)

 俺は、何を見せられているんだ…?天国か?

 

 @Dungeon_Gamer_Taro

 射的屋台に来たぞwww

 これは、ヤバい予感しかしないwww

 

 @V_kirinuki_ch

【悲報】星川みかんさん、射的で特賞のぬいぐるみを狙うも、その弾丸は隣の屋台のたこ焼きに命中。たこ焼き屋の蛸入道(たこにゅうどう)の親父さん、ブチ切れる。

 #るなみかんデート

 

 @Luna_Mikan_Oshi

 みかんちゃん「あーーーーっ!ごめんなさーい!」

 るなちゃん「だ、大丈夫だよ、みかんちゃん!るなが、なんとかするから!」

(るなちゃん、得意の愛嬌で蛸入道に謝罪。最終的に、二人でたこ焼き100個お買い上げで、許してもらう)

 なんだ、この平和な世界は。

 

 @US_Fan_Bob

(自動翻訳)

 I don't understand a single word they're saying, but I know one thing. This is PEAK entertainment.

(彼女たちが何を言ってるか一言も分からないが、一つだけ分かることがある。これは、最高のエンターテイメントだ)

 

【Chapter 3: The Sleeping Demon Princess and the Mountain of Prizes】

 

 @Ruru_Fan_Tomo

 今日の #るる様配信

 開始5分で、夏祭りの会場の、あまりの人の多さに、「…人酔い、した…。眠い…」と言い残し、画面からフェードアウト。

 いつものことだ。

 

 @Gamer_Tetsu

 いや、今日のるる様は、一味違った。

 フェードアウトした先が、射的屋台の、景品棚の、一番奥だった。

 特賞の、巨大な熊のぬいぐるみの影で、ガチで寝始めた。

 #眠れる鬼姫

 

 @V_kirinuki_ch

【伝説の切り抜き】鬼灯るる、射的屋台の景品棚で熟睡する。

(動画リンク:巨大な熊のぬいぐるみに寄りかかり、そのアバターがすやすやと寝息を立てている映像。時々、「むにゃ…おにく…」と寝言を言っている)

 #るる様配信 #今日のてぇてぇ

 

 @Ruru_Fan_Tomo

 店主の天狗も、あまりにも気持ちよさそうに寝てるから、起こすに起こせないで、困ってるじゃねえかwww

「お客さん…あの…そこ、商品なんですが…」って、小声で言ってるの、面白すぎるだろwww

 

 @Dungeon_Gamer_Taro

 おい、事件が起きたぞ。

 るる様が寝てる、その振動で。

 景品の、木刀が、バランスを崩して、棚から落ちた。

 そしたら、その木刀が、ドミノ倒しみてえに、他の景品を、次々と叩き落とし始めたんだがwww

 

 @V_kirinuki_ch

【奇跡】鬼灯るる、寝てるだけで射的の景品を全て獲得してしまう。

 #眠れる鬼姫

 

 @Ruru_Fan_Tomo

 店主の天狗、号泣www

 るる様、目を覚まして、目の前に積まれた景品の山を見て、一言。

「…ん…?これ、くれるの…?ありがと…」

 そして、その景品を全部、近くにいた子供たちに配り始めた。

 …なんだ、この子は。

 神か?

 

【The Grand Finale of the Festival】

 

 その、あまりにも平和で、そしてどこまでも人間的な、熱狂。

 その中心で、VTuberという新たな文化は、ただひたすらに、その根を深く、そして広く、この世界の土壌へと、広げていった。

 それは、もはやただの一過性のブームではない。

 一つの、巨大な、そしてどこまでも魅力的な、「日常」の風景へと、その姿を変えようとしていた。

 祭りは、まだ始まったばかりだった。

 その輝かしい未来の始まりを、誰もが祝福していた。

 

 

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