ギャンブル中毒者が挑む現代ダンジョン配信物   作:パラレル・ゲーマー

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第463話

 その日の世界の空気は、二人の少女が成し遂げた「神殺し」の余韻に、まだ浸っていた。

 アリスと小鈴。彼女たちが、JOKERに続く第二、第三のアルトリウス討伐者となったことで、世界のトップランカーたちの間には、新たな希望と、そして熾烈な競争の炎が再び燃え上がっていた。

 誰もが、次なる戦いに向けて、自らのビルドを、その魂を、磨き上げていた。

 その、あまりにもストイックな、そしてどこか予測可能だったはずの日常。

 それを、破壊する、新たな「理」の顕現。

 その最初の兆候は、いつも通り、何の前触れもなく、そして世界のあらゆる場所に、同時に、その産声を上げた。

 

 ◇

 

【SeekerNet 掲示板 - 総合雑談スレ Part. 1725】

 

 1: 名無しのA級戦士

 …おい。

 …おい、お前ら。

 ちょっと待て。

 俺、今、いつものようにA級の【ミノタウロスの洞窟】の前で準備してたんだが。

 なんか、オベリスクの横に、見たこともねえモンが生えてる。

 

[画像:黒曜石のオベリスクの隣に、静かに鎮座する、黄金と黒曜石でできた禍々しくも美しい祭壇の写真。祭壇の中央には、空間そのものが歪んでいるかのような、球形の亀裂が、ゆっくりと回転している]

 

 なんだよ、これ…。

 

 2: 名無しのゲーマー

 

 >>1

 は!?なんだそりゃ!?

 

 3: 名無しのA級魔術師

 

 >>1

 いや、待て!釣りじゃねえぞ!

 俺は今、アジールにいるんだが、こっちにも同じものが出現してる!

 広場の、ど真ん中にな!

 

 4: 名無しの週末冒険者

 

 >>3

 本当だ!楽園諸島のサンクチュアリ・ポートにもあるぞ!

 なんだよ、これ…!また、神様の気まぐれなアップデートかよ!

 

 その、あまりにも唐突な、そしてどこまでも不可解な、書き込みの数々。

 それに、スレッドの空気が、一瞬にして、トップスピードへと加速した。

 世界の、全てのA級ダンジョンの入り口、そして探索者たちの拠点となる場所に、全く同じ、謎の祭壇…マップデバイスが出現したのだ。

 その、混沌の中心で。

 もう一つの、そしてより重要な「事件」が、報告された。

 

 155: 名無しのB級タンク

 …おい、お前ら。

 祭壇のことも驚いたが、こっちもヤバい。

 俺、今、A級ダンジョン【キメラ研究所】でキメラしばいてきたんだが。

 なんか、変なもん落とした。

 石ころだ。

 

 彼は、震える指で、その神々の遺産のスクリーンショットを、スレッドへと投下した。

 その、あまりにも美しい、そしてどこまでも謎に満ちた石ころ。

 それに、スレッドの全ての住人が、息を呑んだ。

 

 名前:

 マップストーン

(Mapstone)

 

 種別:

 異界(いかい)欠片(かけら) (Fragment of Another World)

 

 外見:

 掌に収まるほどの、滑らかに磨かれた円形の石。表面には、まるで未知の世界の地図のように、銀色の線が複雑な模様を描いている。

 

 効果テキスト:

 この石はクラフトによって生成可能である。

 この石をマップデバイスに設置することで、忘れ去られた領域へのポータルを開くことができる。

 このマップストーンで開かれる領域のランクは、常に「1」である。

 領域の深部に潜む守護者を倒すことで、より高ランクの領域へと繋がる、新たなマップストーンを入手できる可能性がある。

 

 フレーバーテキスト:

 

 これまで君が歩んできた道は、

 全て誰かが敷いたレールの上だった。

 

 だが、この石が示すのは、まだ誰も見たことのない、

 無数の、そして無限に広がる、夢の世界。

 

 さあ、最初のコンパスを手に、一歩を踏み出せ。

 

 アトラスへの旅の、開始だ。

 

 静寂。

 数秒間の、絶対的な沈黙。

 そして、その静寂を破ったのは、一人の、天才的な発想力を持つゲーマーの、あまりにも的確な、そしてどこまでも興奮に満ちた、一言だった。

 

 165: 名無しのゲーマー

 …待て。

 待て待て待て待て。

 祭壇と、石ころ。

「マップデバイスに設置することで、ポータルを開くことができる」

 …おい、お前ら。

 マップデバイスに入れて使うって事か?

 

 その一言が、引き金となった。

 スレッドは、爆発した。

 

『なんだこれ!?』

『アトラスへの旅!?新しいダンジョンか!?』

『フレーバーテキスト、かっこよすぎだろ!』

 

 その、熱狂の、まさにその中心で。

 一人の、あまりにも勇敢な、あるいは、ただの好奇心旺盛な馬鹿が、その声を上げた。

 

 255: 名無しのA級戦士

 …面白い。

 面白えじゃねえか。

 じゃあ、やってみるか。

 俺が、人柱になってやるよ。

 この、アトラスってやつが、一体何なのか。

 この目で、確かめてきてやる。

 見てろよ、お前ら!

 

 その、あまりにもヒーロー的な、そしてどこまでもワクワクさせる提案。

 それに、スレッドは、熱狂した。

『うおおおおお!マジかよ!』『行ってこい!』『生きて帰ってこいよ!』

 その声援に送られ、彼は、その未知なる冒険へと、その最初の一歩を、踏み出した。

 

 ◇

 

 数十分後。

 スレッドは、固唾を飲んで、勇者の帰還を待っていた。

 そして、その沈黙を破るかのように。

 あのA級戦士が、帰ってきた。

 その書き込みは、もはやただの報告ではなかった。

 一つの、新たな世界の扉が開かれたことを告げる、神の啓示だった。

 

 311: 名無しのA級戦士

 ――ただいま。

 そして、お前ら。

 これは、ヤバい。

 マジで、ヤバい。

 

 312: 名無しのゲーマー

 

 >>311

 おかえり!

 どうだったんだよ!

 

 315: 名無しのA級戦士

 

 312

 …異世界だ。

 あそこは、俺たちの知ってるダンジョンじゃねえ。

 俺が入ったのは、「ランク1:汚染された運河」って場所だった。

 中は、入り組んだ水路と、崩れかけたレンガ造りの建物が、どこまでも続いてる。雰囲気は、最高だ。

 そして、敵だ。

 敵は、A級ぐらいって所だな。

 一体一体が、これまでのA級下位ダンジョンの雑魚より、明らかに強い。数も、多い。

 だがな。

 まあ、倒せない敵じゃないぜ。

 俺のパーティでも、なんとか進むことはできた。

 

 その、あまりにも生々しい、そしてどこまでも具体的なレポート。

 それを皮切りに、どんどんお試ししてみる冒険者が、マップを周回し始める。

 スレッドは、世界中から集まってくる、リアルタイムの攻略情報で、溢れかえった。

 

『俺が入ったのは「ランク1:禁断の森」!植物系のモンスターが、ヤバい!』

『こっちは「ランク1:火山島」!熱すぎる!火耐性ないと、即死だぞ!』

 

 その、混沌とした情報交換の、まさにその中心で。

 あの、最初の発見者であるA級戦士が、最後の、そして最も重要な「爆弾」を、投下した。

 

 401: 名無しのA級戦士

 …そして、最深部には、ボスがいた。

「汚染の化身」とかいう、ヘドロの塊みてえな化け物だった。

 そいつを、倒したらな…。

 見てくれよ、これ。

 

[画像:インベントリ画面のスクリーンショット。そこには、禍々しいオーラを放つ、一枚のマップストーンが映っている。だが、その名前は、こう記されていた。【ランク2:埋没した都市】]

 

 マップ中に、ランク2のマップが落ちた。

 …おいおい、マジかよ。

 どんどんランクを上げて行けって事か?

 

 その、あまりにもシンプルで、そしてどこまでも、ハクスラ中毒者たちの魂を揺さぶる、結論。

 それに、スレッドは、本当の意味での「爆発」を起こした。

 もはや、それは賞賛ではない。

 一つの、新たな、そして最も中毒性の高い、無限のやり込みコンテンツの誕生への、畏敬の念だった。

 世界の、全ての探索者が、その日、一つの共通の夢を見た。

 自らの手で、未知の世界の地図を広げ、そしてその最深部へと、その足跡を刻み込む夢を。

 新たな、そして最も熾烈な、冒険の時代の幕開けだった。

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