ギャンブル中毒者が挑む現代ダンジョン配信物   作:パラレル・ゲーマー

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【特集記事】装備の知識:知っているようで知らない、アイテムの不思議

【特集記事】装備の知識:知っているようで知らない、アイテムの不思議

 

 出典:週刊Seeker's Journal / 20XX年X月XX日号

 筆者:月島 蓮(つきしま れん) / ダンジョン経済・理論物理学ジャーナリスト

 

 先日、文部科学省から発表された「高等学校における、ダンジョン探索部の設立認可」。この歴史的な決定は、我々の社会に、新たな、そして計り知れないほどの大きな波紋を広げている。来月から、全国の若者たちが、これまで一部の専門家だけのものであった「探索者」という世界に、その第一歩を踏み出すのだ。

 彼らの瞳は、希望に満ち溢れている。JOKERのような伝説的な英雄の姿に、自らの未来を重ねている者も少なくないだろう。

 だが、この世界は、ただ剣を振り回すだけでは生き残れない、あまりにも深く、そして複雑な「理(ルール)」によって支配されている。

 そこで、本特集では、これから冒険を始める若い世代、そして改めて知識を整理したいベテラン探索者のために、我々が日々、当たり前のように使っている「装備」の、その知っているようで知らない、いくつかの不思議について、深掘りしていきたいと思う。

 

 まず、基本の「き」:なぜ、我々の剣は錆びないのか?

 まず、ダンジョン産の武器や防具が、摩耗やメンテナンスが不要なのは、基礎知識として皆さん知ってると思います。

 考えてみれば、これは異常なことだ。何百、何千というモンスターを斬り伏せた剣の刃は、こぼれることなくその輝きを保ち続け、ドラゴンのブレスを受けた鎧は、その防御力を一切失わない。

 ええ、これは物理法則に喧嘩を売ってるような物ですが、まあこれはおいておきましょう。この現象の根源は、ダンジョン内部に満ちる高密度の「魔素」が、アイテムそのものに恒久的な自己修復能力を与えているため、というのが現在の定説だ。

 

 そして、もう一つの基礎知識。

 また、装備者によって装備は自動変換されます。

 例えば、屈強な男性探索者が使っていた巨大なプレートアーマー。それを、華奢な女性探索者が手に取った瞬間、その鎧は彼女の体格に合わせて、瞬時に、そして完璧に、そのサイズを縮小させる。

 男性がローブを持つと男性用に調整され、女性が持つと女性用に変換されます。体格や身長も自動調整されます。

 これもまた、魔素による「所有者への最適化」現象の一種と考えられているが、その詳細なメカニズムは、未だ解明されていない。

 だが、この二つの大原則こそが、我々探索者が、安心してその身をダンジョンへと投じることができる、最も大きな理由の一つなのである。

 

 クラフターの常識「アイテムレベル」の罠

 さて、ここからが本題だ。

 さて、武器や防具、首輪や指輪、ベルトに、「アイテムレベル」というのが設定されてる事をご存知ですか?

 多くの探索者、特に戦闘を主とする者たちは、この数字を気にしたことがないかもしれない。ええ、これはクラフターしか必要がない知識ですが、アイテムレベルとは、装備レベルとは違います。

 装備レベルが、「そのアイテムを装備するために必要な、キャラクターのレベル」であるのに対し、アイテムレベルは、「そのアイテムが、どれほどのポテンシャルを秘めているかを示す数値」なのだ。

 具体的に言えば、アイテムレベルで、付与されるMOD(追加効果)のTier(等級)の上限が、開放されていきます。

 

 靴の移動スピードで見ていきましょう。

 例えば、あなたがクラフトで、最高の移動速度を持つ靴を作りたいと思ったとしよう。

 

 Tier6の移動スピード増加(10%)は、アイテムレベル1からでも付与される可能性がある。

 

 次に、Tier5(15%増加)を付与するためには、アイテムレベル15以上の靴が必要となる。

 

 この様に、アイテムレベルが上がるほど、上限が開放されます。最高のTier1(35%増加)を狙うのであれば、アイテムレベル86以上という、極めて高レベルのダンジョンからドロップした靴が、素材として必要になるわけだ。

 

「じゃあ、アイテムレベルが高い方が、良いの?」

 そう思うだろう。ここが重要です。答えは、それは違います。

 なぜなら、アイテムレベルが高いと、マジックやレアになった時に、装備レベルが、上がります。

 例えば、アイテムレベル86の靴に、運良く強力なMODがいくつも付与されたとしよう。その結果、その靴の装備レベルは、80を超えるかもしれない。もし、あなたのレベルが75だったとしたら?

 なので、装備出来ない!という事態が発生します。それは困りますよね。

 つまり、なのでクラフトする時は、適正レベルのアイテムレベルを選びましょう。自分のレベルと、そして狙うMODのTier。その、両方を天秤にかける、高度な戦略眼。それこそが、一流のクラフターに求められる、最初の資質なのである。

 

 世界の常識「隠しMOD」の存在

 さて、時々、隠しMODというのが存在していると思います。

 隠しMODとは、何か。それは、普通は省略されるが、アイテムによっては明記されているMODです。

 例えば、胴装備には、隠しMODとして「これを装備したら、もう新たに胴装備を装備しても効果がない」という隠しMODが付いています。

 首輪には、「これを装備したら、もう新たに首輪は装備しても効果がない」という効果があるというわけですね。

 当たり前だ。「鎧を二枚重ねで着ることはできない」。そんなことは、世界の常識だ。だから、こういう当たり前の事は、通常の鑑定では省略されます。

 だが、この「当たり前」こそが、MODの一種として、アイテムスロットそのものに、あらかじめ付与されているのだ。そして、これは、普通のMODの枠を消費しません。

 一応、覚えておきましょう。

 

 なぜ、こんな話をするのか。

 それは、時として、この隠しMODが、我々の常識を、裏切ることがあるからだ。

 例えば、特定のユニークアイテムには、「追加の胴装備を、一つ装備できる」という、この隠しMODのルールそのものを破壊する、神の領域のMODが存在する。

 また、ベースアイテムによっては、エナジーシールドが付いているはずなのに、隠しMODで「なし」になるパターンもあります。

 アイテムの見た目や、ベースタイプだけで判断してはいけない。その裏に隠された、世界の理を読む。それもまた、探索者に求められる、重要なスキルなのだ。

 

 神々の領域への入り口「ジュエルソケット」の深淵

 さて、次はジュエルソケットです。

 おそらく、これが最も複雑で、そして最も、探索者の頭を悩ませる要素だろう。

 ジュエルソケットは、通常のジュエルソケットと、アビサルソケットと、クラスタージュエルソケットがあります。複雑なので、付いてきて下さいね。

 

 まず、ジュエルソケットとは、ジュエルアイテムを装備出来るようになるソケットです。

 パッシブツリーにジュエルソケットがあるので、そこに装備する事が出来ます。

 パッシブツリー上の、あの空白のソケット。あれが、最も基本的なジュエルソケットだ。

 これは、通常のジュエルと、アビサルジュエルを装備する事が出来ます。

 

 次に、アビサルソケット。

 これは、装備に特殊なソケットを開けて、アビサルジュエルを装備出来るようになるという物です。

 特定のユニーク装備や、「アビス」の名を冠する特殊なダンジョンから手に入るアイテムには、この禍々しい緑色のソケットが空いていることがある。

 ここで、重要なルールがある。

 通常のジュエルは、アビサルソケットには、はまらない。

 だが、アビサルジュエルは、ジュエルソケットには、はまるのだ。

 ジュエルがジュエルソケットだけなら、アビサルジュエルは、ジュエルソケットと、装備にあるアビサルソケットに装備出来るというわけです。

 

 そして、最後に、クラスタージュエルソケット。

 クラスタージュエルソケットは、クラスタージュエルと、ジュエルと、アビサルジュエル、3つを装備出来ます。

 そう、クラスタージュエルソケットだけが、全てのジュエルを受け入れる、唯一無二の、至高のソケットなのだ。

 

 ここで、多くの初心者は、こう思うだろう。

「ジュエルソケットを大量に取れば、最強じゃん!」

 ハイ、そうです。

 その考えは、間違ってはいない。

 事実、ジュエルソケットをたくさん取るというビルドも、存在します。

 パッシブツリーの、移動経路を全て無視し、最短距離でジュエルソケットだけを目指し、そこに何十個もの強力なジュエルを嵌め込む。それは、一つの、完成されたビルドの形だ。

 特に、ユニークジュエルには、「腐敗済みマジックジュエルの効力を50%上昇させる」という効果のユニークジュエルもあります。

 そう、ただでさえ強力な、マジック等級のジュエル。その効果を、50%も、引き上げるのです。

 もし、その効果範囲に、10個のマジックジュエルを配置したとしたら?

 その伸び幅は、凄まじい事になります。

 まあ、ほとんど市場には出回りませんが。

 

 ◇

 

 以上、今回は、装備にまつわる、いくつかの深淵を、駆け足で覗いてみた。

 もちろん、ここに記したのは、膨大な世界の理の、ほんの入り口に過ぎない。

 だが、一つだけ、確かなことがある。

 この世界は、知れば知るほど、面白い。

 これからダンジョン探索部に入部する、未来の英雄たちよ。

 君たちが手にする、その一本の剣、その一つの盾。

 その裏に隠された、無限の物語と、可能性に、どうか思いを馳せてみてほしい。

 この世界で、本当に信じられる武器とは、その手にした剣ではない。

 君自身の、その飽くなき探求心と、知識なのだから。

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