Blue Archive: Visitor From Underground   作:暗黒星 堕零

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「サンズにも強化イベントがやって来たんですね!」


固有武器

 アリウスとの決戦から早数日。それぞれの学園も落ち着きを取り戻し、いつも通りの日常を送っていた。

 オレもアビドス高校に行ってはホットドッグを売り捌き、シャーレで先生の手伝いをする、そんなごくありふれた生活をしていた。

 

「ふぅ…今日の営業も終いだ」

 

 新たに売り出す事にしたチリドッグのお陰か今日は普段よりも一層客の入りが多く、閉店時間よりも前に店を閉める事に。ケチャップを飲まなきゃやってられない程には忙しかったな…と一日を振り返る。

 

「明日は休みだし…ゆっくり過ごすとするか。この時間帯でやってる面白い番組は、っと…」

「…スマホからか」

 

 無駄にだだっ広いリビングの中央に置かれたソファーに座りテレビを点け、番組表を吟味しようとした瞬間、スマホに通知が。

 

「サンズ!明日ヒマ!?」

 

 モモイからのモモトーク。彼女とはゲーム開発部の廃部を阻止する為に共に走り回って以来、時折新作ゲームのテストプレイを任されている。…その殆どが初代TSCよりかはマシ程度の地獄のような難易度のものだが。

 

「あぁ、暇だよ。またテストプレイのお誘いか?」

「ううん、今回はサンズにお礼がしたくてさ!何がとはまだ言えないけど、明日部室前に来てほしいんだ!」

「分かった。楽しみにしてるぜ」

 

 『お礼』か…彼女が一体何をくれるのかは想像がつかない。ゲームか?お菓子か?それとも全く違うもの?

 用事が出来たとなれば呑気にテレビを見ている訳にはいかない。軽い夕飯を食べ、風呂に入り、ふつふつと湧き上がる期待感を胸に眠りにつくのだった。

 

 

「よぉ、言われた通りに来た…」

「やっほー!サンズ!」

 

 翌日、訪れたのはミレニアムのゲーム開発部の部室前。テレポートで移動した途端、そこにはオレが目の前にやって来るのを予測していたかのようにモモイが抱きついてきた。

 

「…随分と熱烈な歓迎だな。早速だけど、アンタの言う『お礼』ってのは何だ?」

「それはね〜…」

 

 

 

「サンズだけの『武器』だよ!!」

 

 …キヴォトスっちゃキヴォトスらしいものだが、どうして今になって?と疑問に思う。

 

「武器…?オイラ一応武器は持ってるぞ?ほら」

 

 背中に背負うサブマシンガンをモモイに見せる。が、どういった訳か彼女は怪訝な表情をしたままこちらを見つめる。

 

「うん、それは知ってるよ?でも…」

「これはごくありふれた、普通のサブマシンガンでしょ?私が言いたいのは〜…これ!」

 

 オレがモモイに自身の武器を見せたように、今度はモモイがオレに彼女の武器を見せてくる。

 …今までしっかりと見た事が無かったから気づかなかったが、彼女の銃には『銃』のイメージとは正反対な鮮やかな桃色で彩られ、シールやらアクセサリーやらが付けられていた。

 

「ここだと自分の銃とかに自分流のアレンジを加えていって、世界に一つだけの武器を作り出すのが主流なの!」

「でもサンズは別の世界から来たんでしょ?だからそれを知らないかもって思ってたけど、そうだったみたいだね!」

 

 確かに…オレは魔法を使えるからと銃については疎かにしていた節がある。

 「銃を持ち歩いていないだけで街中で絡まれる」…なんて物騒な話を聞いてから常に持ち歩いているものの、使う機会はほぼほぼ無い。

 

「でもそれはそれで丁度良かったって感じ?私達の部活を存続させてくれて、テストプレイもしてくれて…ずーっとお礼がしたかったから!」

「じゃあ、早速行こっか?何だっけ…あっ!新聞は一見に如かずだからね!」

 

「それを言うなら『百聞は一見に如かず』だろ?というか何処に行く…うおっ!?」

 

 走り出したモモイに腕をぐいっと引っ張られ、なすがままに何処かに向かっていく。

 階段を上ったかと思えば下りて、幾つもの校舎を通過して、ようやく辿り着いたそこは───

 

 

 

「やぁサンズ、久しぶりじゃないか」

「…ウタハ?」

 

 エンジニア部の部室だった。

 

 

「注文の品はもう完成しているよ。妹のミドリから貰った原案がよく出来ていたお陰さ、モモイ」

「ありがとう!ウタハ先輩!」

 

 部室に居たのはエンジニア部の部長であるウタハ。彼女達エンジニア部には『鏡』の奪取作戦時に世話になったのを覚えている。

 彼女の作る発明品は、先生のミレニアムでの仕事を手伝う為に訪れる際によく見かける。…殆どが果たして実用性があるのか悩ましいものばかりだが、今気になっているのは耳に入った『原案』という言葉。

 

「今『原案』って言ったか?それにミドリが描いたって…」

「もしよければの話だけど…その原案を見せてくれないか?」

「うーん…本当は最後の最後まで秘密にしたかったけど…サンズ本人のお願いならいいよね!ウタハ先輩!アレって何処にあるの?」

 

「少し待っていてほしい。確かこの辺りに…よし、あった」

「はい、サンズ。コレがミドリの描いた、君の『固有武器』の原案だよ」

「コレは…」

 

「……ブラスター、か?」

 

 そこに描かれていたのは、ガスターブラスター以外の何者でもないイラスト。どの角度から見たらどう見えるのか…それら全てが精密に描かれていた。

 才羽姉妹にアレを見せたのは恐らく一度か二度程度。にも関わらずこの正確さ、思わず感嘆の声が上がる。

 

「アレを初めて見てから私が思いついたんだ!『ジェムマン』みたいに腕に装着したら絶対カッコいいだろうな、って!」

「…ジェムマン?」

「えっ、サンズジェムマンを知らないの!?あのカブゴン社から発売された名作アクションゲームを!?」

 

 モモイの目の開き様と輝き様。…あぁ、これからゲーマーである彼女の熱弁が始まるんだろうなと覚悟する。

 

「ジェムマンはね、デンキ博士に作られた正義のロボットなんだ!そのジェムマンの腕にあるのがジェムバスター!エネルギー弾だったり色んな技を使えるの!」

「なんで作られたかって?それは勿論、悪い事を企む奴が居るからだよ!そいつの名前はワルイー博士!沢山のロボットを作って世界征服を企んでいるんだよ!」

「あっ、ワルイー博士も対抗して似たようなロボットを作ってね、ニヒルっていう…」

 

「……モモイ?」

「…あっ!ごめんごめん!」

 

 次から次へと流し込まれる凄まじい情報量に圧倒される中、今回の趣旨とかけ離れていっていると感じたのかウタハが彼女の名前を呼ぶ事でハッと我に返った。

 

「…ゴホン。ではその原案を元に私達エンジニア部が製作したものをお見せしよう。こっちを見てほしい」

 

 ウタハが手を上げる方向に目をやると、彼女達が作り出した数々の発明品よりも一際大きい、周囲の白いシーツが被せられた四角い物体が。

 

「既に原案を見ているから分かっているとは思うけど、私達が君の為に作った武器は…これだよ」

 

 

 

「…すげぇな、まんまだ」

 

 シーツが取り払われ中から姿を見せたのは、ガラス張りのケースに鎮座する小さなガスターブラスター。原案で見たものがそのまま形になったような見た目だ。

 

「使い方はモモイの話で察してもらえたと思うけど、腕に装着するんだ。面白いだろう?」

「見た目はご覧の通り、構造自体も既に完成しているんだが…一つ問題があってね」

 

 ケースから小さなブラスターを取り出したウタハは話を続ける。

 

「これを動かす肝心の動力源が用意出来ていない状態でね。私達…というかキヴォトスの何処を探しても用意するのは不可能なものだ。…君を除いたら、の話だけどね」

 

「つまりオイラだけが持つ力…魔力だな?」

「そう、魔力さ。正直に言って魔力なんて非科学的なものを再現するのは無理だ」

「だから提供者に協力を要請するなんて以ての外だけど…この世界で唯一魔力を有する君の協力が必要なんだ」

 

 魔力は本来ならキヴォトスには存在しないもの。そんなものをサンプルも無しに一から作り出すなんて無理難題に決まっている。

 

「いいぜ。減るもん…ではあるけどオイラの体がある限り幾らでも湧いてくるからさ」

「…!ありがとう、助かるよ」

 

 …しかし、問題は形を持たない魔力をどのように調達するかだ。魔力で生成したものなら骨やブラスターがあるが、あれ自体に魔力は無いのが現実だ。

 ……いや、よくよく考えればあったな。明確な形を持つ魔力の塊が、オレの左目に…

 

「あー…今からちょっとした作業に入る。見てて気分の良いもんじゃないから見なくてもいいぜ」

 

 後ろを向き、通常の目と入れ替わるように現れた魔法の目を掴む。自分の目を掴むなんて何ともグロテスクな話だが、実際のところ痛みは無い。

 

「……よし、取れた。オイラの『目』だ」

「へぇー!目かぁー!」

 

 

 

「……ってええっ!?そ、そそそそれ取れたの!?嘘でしょ!?」

「それはちょっと…予想外だったかな」

 

 オレの手の平で水色と黄色に輝く『それ』を見てモモイは驚きのあまりひっくり返り、ウタハはあからさまに引いていた。…いや、まぁ、うん。それが普通の反応だろうな。

 

「これは膨大な量の魔力を有している。解析すりゃ魔力のサンプルなんて幾らでも手に入るさ」

 

 魔法の目、ブラスターに続くガスター博士の発明品の一つ。オレが魔法の制御を安定させる為に必要なものだ。これが無くともオレは魔法を使えるが…どうも不安定になってしまう。

 モモイとウタハにも説明したが膨大な量の魔力がこれには宿っている。結局そんな事は起きなかったが、いざという時には停止したコアの代わりの地下世界のエネルギー源に…

 

 

 

確̸̢͠実̴̢͠な҉̛͢獲̸̢͡物̸̧͡ (Assured Prey)の҈̢҇ご҈̢͡登̸̡͞場̵̡͡だ̷͢͝!̶͜͡」

 

 

 

 …?

 

 一瞬、何かが見えた。左目が真っ赤に充血し、頭が割れたオレに似た誰かが血塗れの骨で人間を突き刺して…

 …いや何を言っているんだオレは?今の事は…まぁとりあえず忘れておく事にしよう。

 

「と言ってもウタハ、きっとアンタは魔力の扱い方に慣れていない筈だ。オイラも締めの製作を手伝わせてもらうよ」

「言い忘れてたけどオイラ元々研究者だったんだ。だからこういう類のものは得意な方さ」

 

「研究者!?うぁー!サンズを驚かせようとしていたのに逆に驚かされっぱなしだよー…」

「…君には何から何まで感謝するよ」

 

「じゃあ早速、作業に取り掛かろうか?」

 

 こうしてオレとウタハ、モモイを交えた仕上げの作業が始まった。

 途中で漏れ出た魔力が暴走して部室の天井をブチ抜いたり、モモイがずっこけた弾みで部室が崩壊の危機に陥ったりとタマシイが縮こまりそうな出来事が多発したが…

 

 

 

「「「出来た!!」」」

 

 

 

 遂にオレの固有武器は完成を迎えた。

 

 

 

──────────────

 

 

 

「どうだいサンズ?着け心地は?」

「中々良い感じだぜ。まるで最初から付けていたみたいにフィットしている」

 

 危うくオレが塵になりかねないトラブルこそあったが小型ブラスターは完成、性能を試す事になった。

 

「試すって言っても何処でやるんだ?これ以上部室に被害が出るのはオイラ的には御免だが…」

「あぁ、ちょうどそれを試すのに適しているものがあるのを思い出したよ。備えあれば憂いなし、だね」

 

「…これどっかで見た事あるな?」

「…あっ!コイツ廃墟に居た奴じゃん!」

「察しが良いね。その通りだよ」

 

 ウタハが部室の奥から取り出してきたのは数体のオートマタ。ミレニアムの廃墟で散々見てきた奴に酷似…というか同一のものだろう。

 というのも彼女の話を聞くに、エンジニア部もあの廃墟に訪れ一部のオートマタを拿捕、ヴェリタスに内部データをハッキングを頼む事で完全に無力化したらしい。…彼女達の行動力には最早恐怖すら感じる。

 

「まずは基本攻撃である光弾だね。アレに狙いを定めて撃ってみてほしい」

 

 ウタハの指示通り、ブラスターを装着している左手を水平に構え、オートマタに狙いを定める。

 

「…はぁっ!!」

 

 オレの有する魔力とブラスターが有する魔力が連動、開いたブラスターの口から放たれる水色の光弾。反動で後ろに尻餅をついたが狙いは完璧、光弾が直撃したオートマタは粉々に砕け散った。

 

「初めてにしちゃあ…上出来じゃないか?」

「やるね、サンズ。でも試してもらいたい機能はまだまだあるんだ。次は光線だよ」

 

 ブラスターによる攻撃はオレの意思によって切り替わる。今度は先程破壊したオートマタとは別の奴に腕を構え、エネルギーをチャージする。

 

「…チャージ完了、食らえ!」

 

 左手から発射された光線はオートマタを貫通しても尚止まらず…おいちょっと待っ───

 

「…やべっ…」

 

 …部室の壁すら貫き、そこから外の風景が顔を覗かせていた。

 

「…まぁ気にしないで構わないよ。私達の部活ではよくある事だからね」

「こんな事が定期的に起こるとか他の生徒も気が気じゃないと思うがな…」

 

「さ、さて気を取り直して…次は『[[rb:剣 > ブレード]]モード』だ」

「そう、剣モード!!私が考えたんだよ!!」

 

 はしゃぐモモイを横目に、ウタハがタブレットを通じて見せてきたのは所謂『サーベル』と呼ばれる武器の一つ。

 

「ここの刀身を頭の中でイメージして欲しい。そうすればきっと、私達が望むものが…」

 

 彼女に言われる通りサーベルの細長い刀身を思い描くと、ブラスターにとある変化が現れる。

 口から青白い光の粒子が吹き出したかと思えばそれは徐々に剣の形を成し、いつしかオレの身長の半分はあるのではと思う程の『剣』が目の前に。

 

「やったー!成功だね!」

「問題は本物の剣のように斬れるかだ。常々彼らには申し訳ないと思うけど…先程同様攻撃を加えてみてくれ」

 

 …とは言っても剣の扱い方なんてこれっぽっちも分からない。アニメや漫画内で剣を使い戦う奴を見た事はあるが、当然それだけで使える訳が無い。

 

「…これから慣れれば良い話か」

 

 二人が見守る中それっぽい構えを取り、テレポートで懐に潜り込む。ガラ空きの体に向け振り下ろされた光の刃は───驚く程容易くオートマタの体を斬り刻んだ。

 

「すごーい!!ジェムマンを参考にしたけどこれはニヒルみたいだね!!」

「これも問題無し…と。さぁどんどんいこうか。まだ伝えたい事は山程あるんでね」

 

 

 あれからもウタハ達による実践を交えた解説は続いた。たとえ手元に無くともブラスターを思い浮かべればオレのテレポートの如く現れ自動的に装着される事、攻撃以外にもバリアを展開可能な事。

 因みにこれらの能力は全てオレの魔力に依存している為、魔力が尽きれば使用不可になる。気をつけなきゃな。

 

「一通り解説は終わったし…最後の仕上げといこう。それはズバリ、『名前』だよ」

 

「言い忘れてたけど、自分の銃にはオリジナルの名前を付けるのも主流の一つなんだよ!例えば私の銃は『ユニーク・アイディア』って名前で…」

「私のは『マイスター・ゼロ』さ」

 

 名前、それは最も身近で最も重要な、自身の存在を証明出来るもの。ガスター博士も真っ先に『サンズ』というオレの名前を決めた。

 今度はオレが名前を与える番、コイツに相応しい名前を慎重に考えなければ。

 

「そうだな…オイラの唯一(Only)の武器で、オイラの代名詞は(Bone)…」

 

「…決めたぜ、これの名前は───」

 

 

 

 

 

「『Bonely Blaster』だ」




【Bonely Blasterについて】
モモイの「あの大きい恐竜の頭みたいなの、ジェムマン(キヴォトスにおけるロックマン)みたいに腕に装着したらカッコよくない?」という発想から始まり、モモイとエンジニア部のウタハ、サンズの共同制作によって完成したサンズの固有武器。
サンズの意思に応じて何処からともなく出現して左腕に装着される。サンズの魔力を媒介として光線や光弾を放つだけでなく、光線を剣状に形成してビームサーベルを作り出し接近戦にも対応し、バリアを展開し防御も可能。
しかし当然ながら彼の魔力は有限であり、前述の通り魔力を媒介としているので魔力が枯渇すればこれら全ての機能は使用不可となる。
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