Blue Archive: Visitor From Underground   作:暗黒星 堕零

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審判者と預言者、相見える。


骨身に応える大決戦

「いい加減、しつこいんだよ…っ」

「…ハァ、少しでも『ボーン』やりしてると命取りだな、こりゃ」

 

 真紅に染まった空の下。建物は崩壊し、割れた大地から迫り出した禍々しい水晶に圧倒されながら、先生が『大人のカード』で召喚した生徒達と共にD.U.地区に出現した謎の敵と交戦していた。

 

「…しっかし何だあのカラーリング。奇抜ってレベルじゃねぇぞ」

 

 敵の見た目自体は何度も見た事のあるドローンやオートマタ。しかしその色合いは夜空をそのまま貼り付けたような…名状し難いもの。更に久々に見た聖徒会まで居る始末、苦労してもしきれねぇ。

 

"サンズ!残りの敵は前方の敵だけだよ!"

「ようやくか。オイラの骨、骨粗鬆症になっちまうよ」

 

 最後は盛大に青い骨で動きを封じ、ブラスターで一掃する。敵が全滅した事を確認すると、召喚された生徒達は各々好きなポーズを取った後に消えた。

 

「…相変わらずあのホシノはどうして水着姿なんだろうな」

 

 

 とりあえずはやるべき事は終わったという事でシャーレに帰還する。そこには連邦生徒会のリンとアユムとモモカ以外に、先程までは居なかった面々が居た。

 

「久しぶり、サンズ」

「おっ、便利屋の頭脳派じゃねぇか」

 

 カヨコ。

 

「…一目見ただけでアンタだって分かったよ」

「…それは一体どういう意味でしょうか?」

 

 アコ。

 

「あらあら…♡」

「今みたいな緊迫した状況には…アンタの下ネタがむしろ清涼剤になるかもな?」

 

 ハナコ。

 

「一人で飛び出してから連絡が一向に取れなくて…心配したんですよ!?」

「すまんすまん…オイラも必死だったからさ」

 

 アヤネ。

 

「…今更だけど、アリスちゃんの件はありがとう」

「こっちもな。助かったよ」

 

 ユウカの計五人。彼女達は所属する学園こそバラバラ、だが共通点を挙げるならばそれは『秀才』な事か。

 

「ハナコ、アンタは…頭が良いと思われるのは嫌じゃなかったのか?」

「…はい。ですが今は緊急事態、変にプライドに拘っている場合ではありませんので♪」

 

 そんな会話をしながらオレ達は会議室へと足を運ぶ。各々が『虚妄のサンクトゥム攻略戦』と書かれた書類を抱えながら。

 

「結論から申し上げますと、あの塔を2週間以内に破壊しなくてはなりません」

 

 リンの言う『あの塔』とは、突如としてキヴォトス各所に出現した真っ赤な螺旋状の塔の事を指す。会議室に行く際に目に入った窓からでも視認可能なデカさだ。

 

「現在、キヴォトスに出現した六つの塔。それらを今から『虚妄のサンクトゥム』と命名します」

「崩壊したサンクトゥムタワーに成り替わるように現れた塔、分かりやすい名前だな」

 

 『虚妄のサンクトゥム攻略戦』と銘打たれた作戦の内容は単純明快、今言った虚妄のサンクトゥムタワーをブッ壊す。それだけだ。

 …内容自体は簡単だが、それを遂行するには途方もない労力が必要だ。なんせキヴォトス各所にあるんだ、無数の学園が手を取り合わなきゃ成し遂げられない。そしてこんな事を引き起こした元凶とも言える存在は───

 

「『色彩』、か…」

「ありふれた言葉だってのに、嫌な気分にさせる響きだな」

 

 ティーパーティーとシスターフッドが協力し、古書館から発見したデータにあった名前。更にそんな色彩がもたらしたタワーから放たれた光には、精神を錯乱させる効果があるとミレニアム陣営からの報告が。

 ついでに約300時間後に臨界点に到達し、キヴォトス全域にそれが広がる時間制限付き。

 

「まとめますと、『虚妄のサンクトゥム』はこのままでは約2週間後に臨界点到達の見込みになります」

「そうなったら…」

「世界は終焉を迎える…全てが終わりですね」

 

「…また世界の危機に晒されるってのか」

"『また』…?"

「あー…いや、何でもない。聞かなかった事にしてくれ」

 

 フラウィによる世界の掌握、絶対的な存在と化したアズリエルのリセット…そして、プレイヤーの虐殺。平和な世界を望むオレの想いとは正反対に、何処もかしこも滅びそうになってやがる。

 

「───『虚妄のサンクトゥム』は、計6か所存在します」

「アビドス砂漠、D.U.近郊の遊園地、ミレニアム郊外の閉鎖地域、トリニティとゲヘナの境界付近、ミレニアム近郊の新しい土地───そして、D.U.の中心地点」

 

 それらをブッ壊せば事は終わるが、そう上手くいかないのが現実だ。通信で現れたヒマリの調査によると、塔を壊されないよう律儀に守っている奴らが居るという。

 

「『虚妄のサンクトゥム』を守っている存在───あれらは今までキヴォトスに出現した、奇怪な現象の全てが凝縮されているのです」

「デカグラマトンの預言者、トリニティの複製、そして先日ミレニアムの廃墟で発見された『Divi:Sion』…そう───」

 

 

 

「デカグラマトン第3の預言者『ビナー』」

 

「スランピアに複製されたアミューズドール『シロ&クロ』」

 

「『聖徒の交わり』───『ヒエロニムス』」

 

「デカグラマトン第4の預言者『ケセド』」

 

「デカグラマトン第8の預言者『ホド』…」

 

 

 

「…やれやれ、一筋縄ではいかないって事か」

 

 中には初耳の奴も居るが、その殆どがこれまで戦いを交えてきた強敵ばかり。特にデカグラマトンの預言者は…以前ヒマリとエイミの特異現象捜査部と共にデカグラマトンを調査する際に対峙した覚えがある。

 まさかあんなデカい機械共を従えていたのが廃墟の自販機に搭載されていたAIだったとは、今でも驚くばかりだ。

 

「───それぞれの守護者を倒さなければ、『虚妄のサンクトゥム』を破壊する事は出来ません」

「…まぁでも、要は各地の守護者を倒せば万事解決なのよね?」

「そういう事ですね。時間も無いですから、すぐにでも準備を───6つのエリアを同時攻撃…連合作戦を想定して動きましょう」

「そうだね。時間も限られているし」

「…待て、ならそこに居る市民達はどうするんだ?」

 

「サンズの言う通りだよ〜。やる気があるのは分かったけどさ、ちょっと話聞いて?」

「この作戦を進行するなら、各自治区の市民や生徒の避難先の確保、それと同時に自治区の治安維持もしなきゃいけなくなるんだよ」

 

 危惧していた通りだ。敵は守護者だけじゃない、さっきまで戦っていた奴らが各地に出現している。オレ達にとっては雑魚でも、戦う力を持たない市民にとっては十分生命に関わる。

 

「それについてはご心配なく」

「各自治区の治安維持は私達が対応いたします。───これこそが本来、私達の務めですので」

「異論はありませんよね、ミカさん、セイアさん?」

 

「あははっ♪ま、そんな感じで任せちゃってよ☆」

「今回はちゃーんと大人しく、ナギちゃんとセイアちゃんが言う通りに動くからさ。トリニティの方は心配しないで」

 

 続けて通信から聞こえてくるティーパーティーの面々の声。それからもゲヘナなら風紀委員会、レッドウィンターなら事務局、百鬼夜行なら陰陽部と、各地から支援の声が。

 

「全ての学園が団結して世界を守る…良いな、オイラこういう平『ボーン』だけどアツい展開は嫌いじゃないぜ」

 

 

 

「こりゃ、もう怠け者じゃいられないな?」

 

 

 

──────────────

 

 

 

「…では、作戦通りサンズさんは市民の皆さんの避難誘導をお願いします」

「任せておきな」

 

 場所はシャーレから変わりアビドス自治区。オレに与えられた、いや自ら立候補した役目は市街地に現れた敵の殲滅と市民の避難誘導。

 …あぁ、パピルスと同じだ。スノーフルの奴らを避難させて、自分は殿を務める。やっぱりオレ達は、兄弟なんだな。

 

「サンズ君、本当に一人で大丈夫なの?」

「安心しな。オイラは弱いとはいえ…」

 

「そう易々と倒されるつもりはない、でしょ?うへ、ちゃ〜んと覚えてるよ?」

「ま、そういう事さ。あん時と比べて、オイラもそこそこ強くなったんでな」

 

 一方オレ以外の対策委員会の面子はアビドス砂漠に居る。便利屋と共にビナーを迎え撃つ算段だ。因みにスクワッド達はヘルメットを被ったサオリと共にトリニティの支援に向かった。

 

「兄貴ーッ!!」

「…ん?」

 

 声が聞こえた方向へ目を向けると、三体のオートマタがこちらに走ってくる光景が。

 

「よ、ようやく見つけましたよ…ここに居たんですね…」

「…アンタら、誰だ?」

「誰って…俺達の事覚えてないんすか…?」

 

 そんな有象無象のオートマタの内の一人や二人、覚えている筈が───

 …いや、三人?違う、覚えている。いつぞやの夜、オレの後を付けてきた…

 

「…まさかアンタら、カイザーをクビになったとか言ってた…」

「そうです!覚えていてくれて嬉しいです!」

 

 そうだ、間違いない。スクワッド達を捕まえるとか抜かしてオレにやられた元カイザーPMCの奴らだ。…にしてもどうしてコイツらが?

 

「というか何でオイラの事覚えてんだ?アンタらの思考データを弄って忘れさせた筈じゃ…」

「そうなんすけど…あの化け物共から逃げてる最中に三人仲良くすっ転んだら思い出したというか…」

 

「…あっ、ですが心配は無用です。俺達兄貴のお陰で変われたんで!今までの自分達が如何にクソみたいな事をしていたのか理解して…」

「今は傭兵として働いているんです!決して裕福じゃありませんけど、前と比べたら最高の生活を送ってます!」

 

 …嘘をついているようには思えない。そもそも嘘をついているならわざわざオレの元に来たりなんかしないだろう。

 

「だから…俺達を変えてくれた兄貴に恩返しがしたいんす!戦力になるのかは分かんないけど…どうかお願いします!」

「…分かった、正直助けが欲しかったところなんだ。アンタらも居たら心強いよ」

「…!ありがとうございます!兄貴の為に、全力で頑張ります!」

 

 こりゃ想定外の助っ人だ。コイツらの事は初めて会った時に損傷していた部位から『カシラ(頭)』、『カタウデ(片腕)』、『キョーブ(胸部)』と勝手に頭の中で呼ばせてもらおう。

 

「さて、いつまでも駄弁ってる訳にもいかねぇか。避難誘導に敵の処理に…」

 

「いくぜ」

「「「了解!!」」」

 

 迫り来る敵の群勢の中心にテレポートし、重力操作で周囲の敵をまとめて浮かせ、渾身の勢いで地面に叩きつける。

 

「少しでも兄貴の助力になれ!!」

 

 仕留め損なった分はオートマタ三人組がすかさず処理する。アサルトライフルから撃ち出される銃弾が容赦なく撃ち抜いていく。

 

「アンタらは早く逃げろ!」

「市民の皆さん!こっちっす!」

「安全は俺達が保証します!」

 

 一時的に敵の数が少なくなってきたところで市民の避難を開始。パニックに陥る市民が誤った道を行かないよう骨で誘導し、性懲りも無く現れる敵は即座に始末する。

 

「わっ…!…うぅっ…痛い…」

「…あっ…」

 

 

 

「…ガキを狙うならそれ相応の覚悟は出来てるんだろうな?」

 

 転倒した子供に真っ先に向かっていく一体の無名の守護者。その中心に光刃をブッ刺しバラバラに斬り刻む。…誰も傷つけさせはしねぇよ。

 

「大丈夫か、ガキんちょ?」

「うん…あっ!ホットドッグのお兄ちゃんだ!」

「オイラの店に来た事があるのか。ありがとさん」

 

「…安心しな、オイラ達が必ず平和にホットドッグを食える日常を取り戻してやる。だからアンタも避難しな」

「分かった!じゃあね!」

 

 手を振り避難所へ走っていく子供を見届け、戦闘と避難誘導を再開する。確かに大変ではあるが…これもオレが怠けられる為、皆を守る為だ。

 

「…ぐぅっ!?痛ってぇ!?」

「またお前片腕持ってかれたのかよ!?これで何回目だ!?」

「もう慣れちまった!それに…」

 

「…ほら、コイツの腕を代わりに使えば良いんだよ!」

 

 叫び声が聞こえ思わず振り返ると、そこには色彩に染まったオートマタの左腕を換装し意気揚々と自慢するカタウデの姿が。

 

「…アンタそんなもん使って大丈夫か?」

「大丈夫っす!今まで色んなもんと取り替えてきましたけど問題なかったんで!」

 

「…でも仮にヤバい事になったら、その時はどうか兄貴が介錯してくださいっす!」

「そんな汚れ役兄貴に任せられる訳ねぇだろ!!」

「ぐえっ」

 

 これがオートマタの利点と言うべき…か?そんな事を思いながら避難誘導を続けていると、『ズドン』という地響きと共に一際巨大な兵器が現れる。六つの脚に巨大な尻尾、鋏の無いサソリみてぇな姿だ。

 

「あれも無名の守護者関連の奴か…?」

「何かヤベぇ奴が来ちまった…!」

「だからと言って臆するんじゃねぇ!行くぞお前ら!」

「…あ、あぁ!!」

 

 力関係も分からない奴に突っ込んでいくのは果たして『勇敢』と言えるのか?…いいや、『無謀』だ。

 三方向から放たれる銃撃に一切動じる事無く、敵は尻尾にエネルギーを溜め───

 

「…っ!?避けろッ!!」

「えっ───」

 

 禍々しい光を放つ、エネルギー弾を発射した。

 

「チッ、世話の焼ける奴らだ…!」

 

 三人を重力操作で一箇所に集め、左手のブラスターから展開されるバリアで攻撃を真正面から受け止める。

 多少押されたがこの程度じゃバリアは割れねぇ、完全に防ぎきった事を確認するとお返しと言わんばかりに放った光線が敵の体を貫く。

 

「…次からは自分の身の丈に合った奴に挑め。ああいう奴はオイラに任せておけ」

「あっ…ありがとうございます!」

 

「まだ助けを必要としている市民は居るんだ。気を抜くんじゃねぇぞ?」

「勿論です!俺達まだまだやれるんで!」

 

 オレ達四人はそれから何度も敵を倒し、市民を避難させ。まさかの共闘戦線は順調に進み…

 

「…これで市民の避難は大方完了したな」

「ふぅ…オイルが底を尽きそうですよ…」

 

 敵の姿は見当たらなくなり、殆どのアビドス自治区の市民は指定された避難所へと到着したとの報告が。

 

「そっちの方はどうだ、アヤネ?」

「はい!たった今ビナーの撃破に成功しました!」

「ふふっ…このぐらいの事、私達にとってはお茶の子さいさいよ!」

「便利屋の皆もありがとさん」

 

 アビドス砂漠での作戦も無事成功し、各地からも守護者を倒したとの報告が。兎にも角にも、これで残りはD.U.の中心地点にある塔のみ───

 

「…待ってください!ビナーが復活しました!」

「…はぁ?」

 

 予想だにしない情報に目を見開く。悪い冗談だと思いたかったが各地から次々と守護者が復活したという報告が耳に入ると同時に、殲滅した筈の市街地の敵が再び湧き始めた。

 

「復活するなんて聞いてないぜマジで…笑えねぇジョークだな」

「あ、兄貴…どうしましょう…!」

 

 今すぐにでも救援に行きたいところだがオートマタ三人で対処出来るとは思えない…が、向こうも連戦で疲弊しているに違いない。

 畜生、どうしてこうも世界はオレに究極の選択やらを強いてくるんだ…

 

 

 

「おらぁっ!!」

 

 

 

 どちらを選ぶべきか苦悩している中、快活な掛け声と共に聞こえてきた銃声が暴走したドローンの内一体を撃ち落とした。

 

「大丈夫かい、サンズ君?」

「…し、柴大将!?」

 

 予想外に次ぐ予想外の援軍にタマシイが飛び出しそうになる。…度々世話になっている柴大将が銃を構えて佇んでいたのだから。他にもオレの家の近所や常連客の人々が一人、また一人と次々と駆けつけてくる。

 

「サンズ君の助けに来たよ!」

「アンタら…どうしてここに…」

「子供達が頑張っているのに、大人が逃げてばかりなんて駄目だよなぁ!」

「あんな奴ら、砂嵐に比べちゃどうって事ないぜ!」

 

 各々が銃を、或いは鈍器を持ち…気づけばオレ達を支援しに来た人数は数十人規模のものとなっていた。

 

「兄貴ーッ!!すいません留守にしちまって!」

「…おいおい、それカイザーの兵器だよな?何処から持ってきたんだよ?」

 

「えーっと…廃棄予定だったものを盗ん…いや拝借して改造したんです!これさえあればもっと戦えますよ!」

「…へぇ、やるじゃねぇか。中々抜け目ないな、アンタら?」

 

 姿を消していたキョーブが敵を蹴散らしながら、なんとカイザーのゴリアテに搭乗し現れる。アビドスの市民に元PMCの傭兵、誰がこんな並びを予測出来たんだろうな?

 

「他のアビドスの子達も困ってんだろ?ならここは俺達に任せておきな!」

「市民の皆さんと協力して守ってみせるっす!」

 

「…分かったよ。市街地はアンタらに頼んだぜ」

「おい皆、今からそっちに行くから待っていてくれ」

 

 市民達と別れを告げ、ブラスターに乗る。対策委員会の皆が居るアビドス砂漠へと振り落とされんばかりの速度で向かっていくのだった。

 

 

「うぅっ…!復活するなんて聞いてないわよ!」

「ビナーによって飛ばされた岩石が落ちてきます!気をつけてください!」

 

「…きゃあっ!?」

「いったた…目の前に落ちてくるなんて聞いて───」

「…高出力のエネルギー反応を確認!熱線が来ます!」

「セリカちゃん!早く体制を立て直してください!」

 

「(しまった…!セリカちゃんとの距離が…!)」

「(ここからじゃ盾を展開するのが間に合わな───)」

 

 

 

「まだオイラと同じ骨にするのは早ぇよ」

 

 

 

 躓いたセリカ、そんな彼女に向け熱線を放たんとするビナーの間に召喚したブラスターの一撃がビナーに直撃する。

 顔面にモロに食らった事でビナーは大きく仰け反り地中に潜る。

 

「…大丈夫か、先輩?」

「サ、サンズ!来てくれたのね!」

「良かったぁ〜…助けてくれてありがとね、サンズ君」

「うんうん♪やっぱりサンズさんが居ないとですね☆」

「サンズさん、只今到着しました!」

 

 尻餅をついているセリカに手を差し伸べる。他の皆も無事そうで何よりだ。

 

「やれやれ、あなたが居なくとも私達だけで十分なのに…」

「とか言って、さっきまでアルちゃん復活した時は大慌てしてたよね?」

「そっ、それを言わないでちょうだい!?」

「た、助けに来てくれて…ありがとうございます…」

「…最早このメンバーが定番になったね」

 

 便利屋のメンバーも遠隔から支援しているカヨコも含め集合する。…オレがキヴォトスに来たばかりの時に、アビドス自治区に現れたゲヘナの風紀委員会を共に迎え撃った事を思い出すな。

 

「さて、揃ったはいいが…」

 

「…ビナーが地中から姿を見せたみたいだよ」

「あの程度じゃアイツはくたばらねぇよな」

 

 再び姿を現したビナーが先程の攻撃に苛立っているように、無い耳を塞ぎたくなる咆哮を上げる。

 

「へへっ、『審判者』対『預言者』か。胸が躍るな?オイラ胸無いけど」

「…じゃあオイラ達とお前で…」

 

 

 

「甘『ビナー』時間にしようじゃねぇか」

 

 ここまで来たならもう出し惜しみは無用、後方に召喚した無数のブラスターから一斉に発射される光線が眼前の標的目掛け襲いかかる。

 だが向こうも意思を持っている以上黙って攻撃を受ける訳が無い。鈍重な見た目には似つかわしくない俊敏な動きで往なし、夥しい数のミサイルを降り注がせてくる。

 

「オイラが骨で相殺する!だけど見逃した分は…」

「まっかせておきなさい!私が撃ち落とすから!」

「わ、私も微力ながら…!」

 

 ケチャップを飲み身体に宿る魔力をフル稼働、限界まで生成した骨を上空へと撃ち出す。

 聴覚を通じて届く音は爆音で満たされ、赤い空が爆風と骨の破片で覆い尽くされる。やはり中には煙を突き抜け向かってくるミサイルもあるが、セリカとハルカ達が残さず撃墜した。

 

「ビナーって弱点はあるのかしら…?」

「これといったものはねぇ。前に戦った事があるから分かる」

 

「…だから今から弱点を作る。そこに狙撃してくれ、アル」

「しょ、承知したわ!私に任せなさい!」

 

 ブラスターに乗り死角からビナーへと接近する。[[rb:コレ > 光刃]]で奴の装甲に傷を付け、対策委員会と便利屋の皆の総攻撃で奴に大ダメージを与えてやる。

 

「ブッ刺さり…やがれッ!!」

「…入った!!」

 

 一か八かの賭けだったが見事装甲に突き刺さった。だが奴がそれに気づかない筈も無く、体を激しく震わせ砂を巻き上げる。

 

「畜生、砂嵐が…」

 

 体重の軽いオレにとっては余りにも重過ぎる負担。刺さっている左手を軸に体が恐ろしいぐらいに揺れる。意識が、遠のきそうだ…!

 

「サンズ君!!」

「だけどこの程度で挫けるオレじゃ…」

 

「ねぇんだよ」

 

 自らを青い骨で固定し、ビナーの動きが止まるまで何としてでも耐え切る。

 …数十秒後、ようやく動きが落ち着く。骨を解除し、左手に力を込める。

 

「青色が何を意味するのか、分かるか?『誠実』だよ」

「ジャンプ…ターン…華麗に舞い踊り、窮地を切り抜ける色さ」

 

 真下に降下、落下の勢いに任せ振り下ろした光刃は遠くから見ても分かる程の深い切り傷を装甲に刻んだ。

 

「今だ!ブチ込め!」

「皆さん!総攻撃開始です!」

 

 アヤネの言葉を機に開始する総攻撃。ホシノ、ノノミ、アヤネ、アル、ムツキ、ハルカ、事前に用意していたブラスターに乗った彼女達の猛攻がビナーの頭上から降りかかる。

 

「なぁ、砂漠って暑いよな」

 

「仕上げにシャワーでもどうだ?」

 

 無論ブラスターの役目はこれだけでは終わらない。重力操作で彼女達を地上に避難させた後、今の攻撃で動きが鈍ったビナーへと標的を定めた計六つの光線が───直撃する。

 

「…当たったね。いくらデカグラマトンの預言者と言っても、ただでは済まないでしょ」

「や…やった、やったわよね!?」

「セリカちゃ〜ん、それ言わない方がいいよ〜…」

 

 周囲は爆風と砂煙に包まれる。正直ここら辺で終わらせたかったが、煙の中からゆらりと現れた巨大な影が緊張感を再度高める。

 

「再びビナーの口付近にエネルギー反応が!熱線が来ます!」

「…良いじゃねぇか。この際どっちのビームが強いか試してやるよ」

 

 所々から内部構造が露出し、電流が迸り、深刻なダメージを負っても尚動くビナーの口元が輝き出す。ならばこちらもとブラスターを召喚、互いに『必殺技』を出す準備は完了してるって事を教えてやるよ。

 

「…ハァッ!!」

 

 同時に撃ち出された光線と熱線がぶつかり合う。それによって生じる風圧は、自身を骨で固定していないと吹き飛ばされかねない程。

 

「へへっ…やっぱ一つだけじゃ厳しいか」

「…なら追加だ。存分に…味わいな」

 

 押されかけていると判断しもう一つ召喚、それでも無理ならと更に召喚、計三つのブラスターの光線が押し合いを過熱させる。

 

「くっふふ〜、大変そうだねサンズ?ムツキちゃんが助けてあげよっか?」

「了承を得る必要は無い、やってくれ!」

「りょーかいっ!」

 

 そう言ってムツキが前方に向けて何かを放り投げる。それは彼女が日常的に持ち歩いている巨大なバッグだった。

 

「アルちゃーん!後はお願い!」

「ふっ、勿論よ!」

 

 バッグが対象の元に近づいた瞬間、アルの銃から放たれた一発の銃弾がバッグを貫く。

 …途端猛烈な爆発がビナーを襲う。爆薬か何かを詰め込んでいたのか、投げたムツキ本人でさえ軽く驚く火力はビナーすら怯ませた。

 

 

 

「じゃあな、『ボーン』ボヤージュ」

 

 

 

 熱線が消えた今、最早彼ら(ブラスター)を妨げる障壁は無い。光の束はビナーの体を次々と貫いていき───

 

 

 

 虚妄のサンクトゥムタワーと共に、その姿は消滅した。

 

 

 

──────────────

 

 

 

 改めて各地から守護者の撃破と、虚妄のサンクトゥムタワーが消滅したとの報告が入る。

 メイド部と正義実現委員会にレッドウィンター事務局はケセドを、ゲーム開発部とRABBIT小隊とヒナはシロ&クロを、シスターフッドとアリウススクワッドはヒエロニムスを、セミナーにヴェリタスと温泉開発部はホドを。

 

「サンズ、サクラコって人が凄い格好をしてた」

「シスターフッドの長がか?どんな格好だったんだ?」

「うーん…『覚悟』だった」

 

「…覚悟?」

 

 …『覚悟』とは何を指しているのか気になるが、最後のD.U.中心地域に現れた守護者とそれを倒した奴も衝撃的な奴だった。最後の守護者は『ペロロジラ』と呼ばれる巨大なペロロの姿をした怪物。色彩特有のカラーリングも合わさり、可愛さなど何処にも無くただただ気味悪さだけがそこにあった。

 そんな奴を倒したのが…キヴォトスで指名手配されているカイテンジャー。アイツらが乗るロボットが脈絡無く巨大化して、ペロロジラと殴り合った後に勝利を収めた。…何かのテレビ番組でも見てるんじゃないかと思ったぜ。

 

「見ろ先生、空が…」

"元に戻ってる!"

 

 空に目を向けると、不気味な程に赤く染まっていた空が元の清らかな水色へと戻っていた。

 まだ崩壊した自治区の修復等の問題もあるが、これでキヴォトスの平和は守られ───

 

 

 

「───ッ!?」

 

 

 

 今まで聞いた事の無い、奇妙な音がシャーレに轟く。何事かと音のした方向へと振り返ると、衝撃的な光景がそこには広がっていた。

 

"あれは…シロコ?"

「シロコ…シロコなのか…?」

 

 シロコ…と思われる少女が佇んでいる。つい先程までここには居なかったのに。

 …だが違う。オレの知る『シロコ』とは違う。髪は床に届かんばかりに伸び、黒いドレスを見に纏い。そして何より、ヘイローが変化している。一部が欠け、黒く歪み…そもそも目の前に居るのはシロコ、なのか?

 

「…先生、ここまで来たんだ。流石だね」

「でも、未来を変える事は出来ない。キヴォトスが終焉を迎える事は、決まっている」

"待って…!シロコ、本当は───"

 

「───違う」

「私は、色彩に操られてなんかない…違うよ、先生」

「これは私自身の『本質(いし)』」

「この世界を、定められた未来へと導く───その役割を私が担当しただけ。色彩はその手段の一つに過ぎない」

「…むしろ、私の方が色彩を利用しているのかも」

 

 本質?色彩を利用?何を、何を言っているんだ?シロコに、一体何があったと言うんだ?

 

「私の役割は、全ての命を『別の場所(あの世)』に導く事。これは砂狼シロコが、この世界に存在した時点で確定した未来」

「定められた運命を変える事は出来ない───それが、この世界のルール」

 

「…でも、私は先生を傷つけたくない。だから、キヴォトスから居なくなってほしい」

「そうすれば、先生に銃を向けなくて済む」

「…最初に先生を『キヴォトス』に導いたのも、最期を見送るのも…それが、私に与えられた『本質(やくわり)』なんだと思う」

 

「いつ、その時が来たとしても…私は迷わないよ」

 

 そう言って『シロコ』は先程の音と共に…空間に歪みを作り出し、そこに溶け込むように消えていきそうになる。

 

「シロコ、アンタの身に一体何が…」

「……あなたは誰?」

 

「誰って…オイラだよ、スケルトンのサンズだ。アビドス高等学校1年生のさ。ほら、アビドスのネクタイを付けてるだろ?」

「…あなたは私の『世界』には居なかった。それだけ」

 

 やたらと余所余所しい態度。…いや待て、『私の世界』?もしかしてだが、この世界にもガスター博士の言っていた並行世界が…

 

"待って、シロコ!"

 

 唐突に頭の中に浮かび上がったある仮説に思い悩んでいる中、先生がシロコの消えた空間へと飛び込む。当然オレも彼女を放っておけない、続いて先生と同様に空間へ飛び込むと───

 

「これ、は…」

 

 頭に直接流れ込んでくる情景。空間にぽっかりと空いた穴、上空に浮かぶ黒い球体、白いローブを纏う謎の存在、そして。

 

「(あれは…人か?)」

 

 開けた空間に鎮座する、人らしき『何か』。オレ達よりも遥かに巨大な体躯に顔に仮面を付け。…何故か、先生と同じ雰囲気を感じて───

 

"うっ…!"

「…ぐうっ!?」

 

「…先生、サンズさん!」

「わわっ!?先生達、大丈夫?」

「せ、先生…サンズさん…シロコ先輩は…一体…」

 

 意識が明瞭としてきた頃には、オレ達は既にシャーレに戻っていた。さっきまでの出来事は果たして現実なのか、分からないままに。

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