Blue Archive: Visitor From Underground   作:暗黒星 堕零

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すっかりこちらの更新を忘れていました…申し訳ありません。これからは定期的にこちらでも投稿していくので宜しくお願いします。


新入生「サンズ」

「…オイラも、アンタらの手助けがしたい」

 

 その言葉を聞いた対策委員会の面々と先生の表情は先程までの歓喜から一転、驚愕へと変わる。

 

「…サンズ君、それ本当に言ってるの…?」

「ん、気持ちはありがたいけど…別の世界から来た人にまで、私たちの問題を押し付ける訳にはいかない」

 

 こう言われる事は覚悟していた。…それでも。

 

「頼むよ。オイラは今まで、何も出来なかった日々が長年続いていたんだ。自由になった今、何もしない訳にはいかない」

「どうか、オイラに恩返しをさせてくれ。これはオイラ自身の『意志』だ」

 

「………」

 

 周囲には静寂が訪れる。余計なお世話だ、部外者が首を突っ込むな、と思われているのだろうか。悪い予感が頭をよぎる。

 

「…すまん、やっぱり今のは無しに…」

 

「いや、ここまで言われたら…受け入れるしかないよね?おじさんはそう思うな」

「…えっ?」

 

 思わず自責の念で閉じていた瞳を見開く。

 

「…私達がここに入学を決めようとした時を思い出しました。ねっ、セリカちゃん?」

「そっ、そうね!やっぱり地元だし見捨てられないっていうか…」

“仲間が増えるのは良いに越した事はないからね。私も賛成だよ。”

 

 皆から返ってくるのは、オレが想定していたものとは全く異なる歓迎の言葉。

 

「本当に…良いのか?」

 

 無理を承知での申し出…そればかりに拒絶されると思っていた為、聞き返してしまう。

 

「手助けをしたい、って言ったのはサンズ君でしょ〜?何なら新入生として入学していいんだよ?」

「良かったですね、アヤネちゃんにセリカちゃん!後輩さんが出来ましたよ〜☆」

「ちょ、ちょっと!?まだ入学するとは決まって…!」

“私は既に承諾しているし、最後は本人確認だね。サンズ、どうする?”

「…ならありがたく、入学させてもらうよ」

「…決まりましたね」

 

 決まってしまった。

 

「…いや、流れで言っちまったが大丈夫か?」

“うん。私の大方の権限は連邦生徒会ってところに引き渡したんだけど、この程度なら私だけでも何とかなると思うから。”

「じゃあ入学はほぼ確定したようなものだね〜。ほら、皆サンズ君を囲んで〜!」

「えっ、急にどうしたんだアンタ達…」

「せ〜〜〜の……」

 

 

 

「ようこそ!アビドス高等学校へ!」

 

 

 …勢いで決まってしまったオレのアビドス高等学校への入学。無論嫌ではないし嬉しかったのだが。

 今は「新入生には学校を案内するのが当然」とホシノ達に連れられ学校内を散策していた。ここに訪れた当初は疲労困憊が故に辺りの光景を注視していなかったが、プールや図書館といった、本で見た施設が存在した。…どこも最近になって使われた形跡は無かったが。

 そうして次の施設へと移動している最中に、オレは自分の隣を歩いているアヤネが時折こちらを見ている事に気づき声をかける。

 

「どうしたアヤネ?オイラの顔に何か付いてるのか?」

「あっ…いっ、いえ、実は質問したい事があって…大丈夫ですか?」

「…?あぁ、構わないぜ」

 

 どうやらアヤネはオレに質問をしたいらしい。彼女は改めてこちらを向くと、話の続きを始めた。

 

「サンズさんは自身の事を『モンスター』と仰っていましたよね?」

「そうだな」

「あの…失礼を承知でお聞きしたいのですが、サンズさんはゲームに登場するモンスターのように、特別な『能力』をお持ちなのでしょうか…?」

 

 『ゲーム』という言葉に一瞬動きが止まるが、すぐに気を取り直し質問に答える。

 

「能力…そうだな、オイラは『魔法』が使える」

「魔法ですか〜?私、気になります☆」

「へぇー?おじさんも気になってきたよ〜?」

 

 一人、また一人と歩みを止め、校内散策はいつの間にかオレへの質疑応答の時間へと変わっていた。

 

「あの時の一瞬消えて、気づいたら私の横にいたのも魔法?」

「あぁ」

「具体的にはどんな魔法なの?」

「まぁ…無難に攻撃魔法だな」

“合体魔法は!?ほら、メドなんとかー!って…”

「それは色々とマズいからやめておいた方が良いぜ…」

 

 …待て、立派な大人であろう先生も混じって何を言ってんだ?

 

「…アンタら、そんなにオイラの魔法が見たいのか?」

「ん、勿論」

“……そうだね。一度見ておくのも良いかも。戦力の増強に繋がるかもだし。”

“…という訳でサンズ、差し支えなければ君の魔法を見せてくれないかな?”

 

「…ハァ、見世物じゃないんだが…まぁオイラの力がアンタらに貢献できるのなら披露してやるよ」

 

 

“いやぁ…楽しみだなぁ…”

「なんで大人なアンタが一番ワクワクしてるんだ?」

 

 場所は一転して外にある運動場。移動したオレの数メートル先にあったのは人型の的。射撃訓練用の的だろうか。皆が見守る中、オレは左手に魔力を込め一本の骨を生成する。

 

「骨だ…」

「骨ですね〜」

「シロコちゃん、取りに行っちゃダメだよ〜?」

「…私は砂『狼』だけど狼じゃない」

 

 そこから更に回転をかけ投擲の準備をする。残像が見える程の速度に達し、十分な勢いがついたところで…

 

「…食らえ」

 

 的に照準を合わせ全力で投げる。

 

 

────ポコンッ。

 

 

 的に直撃した骨は、的にこれといった傷をつけることもなく弾き返され、オレの頭上を通過した後に空の彼方へと消えていった。……それもそうなる筈だ。だってオレの攻撃力1だし。

 

「……えっ??」

 

 …周囲の視線が痛い。きっと見間違いだろうと誰しもが思っているだろうし、もう一度骨を生成し的に投げる。

 

 

────ポコンッ。

 

 

 ……だろうな。結果はまるで変わらない。パピルスなら的を粉砕する事ぐらい容易いのだろうが、生憎オレはパピルスじゃない。最弱のステータスを持つモンスターだ。

 

「…これがオイラの実力さ」

「……何というか、拍子抜けというか…」

「やっぱり、世の中そう上手くいくもんじゃないね〜」

 

 周りから向けられる冷ややかな視線に苦笑いを浮かべる事しか出来ない。しかし先生だけは何かを考え込んでおり、何かを思いついたのかこちらに近づき話しかけてきた。

 

“…ねぇサンズ、その骨を地面から出す事って出来るかな?”

「…?あぁ、もちろん」

 

 地面をジッと見つめ左手を振り上げる。地面から勢いよく複数の細長い骨が突き出してくる。その骨を先生は軽く叩き、「これなら…」と呟く。

 

“シロコ、この骨に向かって一回撃ってもらってもいいかな?”

「ん、分かった」

 

 オレ達は流れ弾が飛んで来ないように一旦その場を離れる。十分な距離を取れた事を確認すると、シロコは背負っていた銃を構え骨に向けて銃弾を発射する。その乱射っぷりは凄まじく、辺りには煙と薬莢の香りが立ち込めていた。

 

「先生、もう大丈夫?」

“うん、もう止めていいよ。”

 

 シロコの銃撃が止む。

 

“…やっぱり、私が思った通りだった。”

 

 自分でも驚く事に、煙の中から姿を見せた骨には傷一つ付いていなかった。ここまで耐久力があったとはオレも想定していなかった。

 

“これなら遮蔽物として使えるかもね。”

「遮蔽物…?」

“うん。銃撃戦において、遮蔽物の存在は凄く重要になるんだ。いくら銃弾を受けても平気なキヴォトスの皆でも、流石に受け続けたら倒れちゃうしね。”

“サンズが骨で遮蔽物を作って、そこに皆が隠れる。これなら戦術の幅が広がるし、勝率も更に上がるよね?”

「…へぇ、流石は『先生』と言ったところだな」

「普通の先生なら戦法を思いついたりしないと思うけど…」

 

 今までの主な活用は攻撃か妨害、そこから守るという転用法を編み出した先生には感心するしかなかった。

 

“ちなみに…他に何か使えたりはするかな?”

「いや、オイラが出来る事は……」

 

「……現状は、これだけだ」

 

 …当然オレの能力はこれで終わりじゃない。重力操作、かつて共に研究に励んだ博士の名を冠する『ガスターブラスター』。これらの能力はこの世界に来て使用不可だとか、制限がかけられた訳じゃない。

 

 

 

 ……使いたくないんだ。

 

 

 

 …きっとこの理由を聞いた奴はふざけていると言いたくなる筈だろう。オレもそう思うよ。だがここに来る最中に遭遇した不良達に能力を使おうとした瞬間に『それ』は起きた。

 

 

 

「あ…あなた…わたしをそんなににくんでいるの?」

トリエル。

 

「で…でも…きさまのことはしんじてるよッ!」

パピルス。

 

「このせかいは、いきつづけるのだ…!」

アンダイン。

 

「キ…キミは…ボクのファンクラブにはいるつもりは…なさそうだね…」

メタトン。

 

「あぁ、やめて、やめてくれ」

「どうして、どうして」

「おれたちが、いったいなにを」

 

 

「………ッ!!うぐッ……!!げほッ……」

 

 ……オレが元居た世界での忌々しい記憶。数え切れない程目の前で塵となっていった友人、家族。そして身の毛もよだつような笑顔で凶刃を振り回す人間ですらない「何か」。能力を使おうとする度にそれらが想起され、手の震えが始まり動悸が止まらなくなる。トラウマとして植え付けられた記憶が、オレの能力の使用を阻害してた。

 

 

 

“………ズ?”

「……」

“……ンズ!”

「……」

 

“……サンズ!!”

 

「……っ、あ、あぁ。どうしたんだ?」

“ボーッとしていたから声を掛けていたんだけど返事が無くて…大丈夫?”

「…すまん、ちょっと考え事をしていた。気にしないでくれ」

 

 適当な理由で取り繕う。先生は少しの間こちらを見つめた後、何かを察したのかその後は何も聞く事は無く対策委員会の皆と話し始めた。

 

“じゃあ…サンズの役割も決まった事だし、皆は何かやりたい事とかある?”

「せんせーいっ☆」

“はい、ノノミ。”

「せっかくサンズさんが新入生としてやって来たことですし…久々に新入生歓迎会をやってみたいんです!」

“新入生歓迎会…いいね!じゃあ何処でやろうか?”

「では…柴関ラーメンでやるのはいかがでしょうか?」

「柴関ラーメン……ってちょっと待って!?そこ私のバイト先なんだけど!?」

「いいんじゃな〜い?後輩に良いところを見せるチャンスだよ、セリカちゃん?」

「私も賛成。まだお昼ご飯を食べてないからお腹空いてるし…」

「じゃ、じゃあ私も…賛成ってことで…」

「へへっ、宜しく頼むぜ、センパイ?」

 

「…も〜〜〜っ!!みんなして私をおちょくって!!分かった、分かったから!そうとなればさっさと行くわよ!」

 

 ヤケクソ気味に叫びながらバイト先のある方向へと歩き出したセリカの後を、オレ達はついて行くのだった。

 

 

「おっ、早いねセリカちゃん!…ん?今日はお友達を連れて来たのかい?」

「…はい、大将。新入生歓迎会って事で…」

「新入生!?アビドスに新入生が来るなんていつ以来だっけな…」

 

 柴関ラーメンという名の店へと訪れたオレ達。セリカと話している人物は、アビドスに訪れる以前に見かけた人々と同じ、小柄な犬だった。グリルビーズに入り浸っていたロイヤルガードの兵士の顔が自然と浮かび上がってくる。

 

「おっと、君がその新入生かい?ようこそ柴関ラーメンへ…ってどうしたんだい?そんな感傷に浸っているような顔をして…」

「……あぁ、すまない。アンタを見ていると、昔の知り合いの事を思い出しちまった。まぁ…気にしないでくれ」

「…どうやら色々と訳ありと見たよ。でも安心しな!ウチのラーメンを食べれば、悩みもすぐに吹っ飛ぶからさ!」

 

 店主に励まされ、オレ達は複数人用の席へと移動する。どれを頼むのかメニュー表を見せられたものの、正直何を頼めば良いのか分からない。何も食べない訳にはいかないので、オレは先生が頼んだものと同じ『ショウユ』味のラーメンを頼む事にした。

 

「え、えっと…ラーメンをお持ちしました…」

「ほらセリカちゃん、もっと威勢良く〜!」

「……ラーメンをお持ちしましたっ!!!」

 

 オレ達の前に運ばれてきたのは細長い麺に濃厚な香りが漂うスープ…確かにラーメンだ。だが薄く黒い紙のようなものや、肉をスライスしたもの、白い物体の中心に桃色の渦巻きが描かれてある何かだったりと、オレが知っている『ラーメン』とは大きく異なるものだった。

そして最大の疑問は…

 

「……何だこれ」

 

 目の前に置かれている細長い二本の棒。他の皆はそれを使って器用にラーメンを食べているが、オレはまるで使い方が分からない。見様見真似で持とうとするも上手くいく筈がない。そんな違和感に真っ先に気づいた先生は、向かいの席から話しかける。

 

“どうしたのサンズ?食べないの?”

「いや、食べたいのは山々なんだが…『これ』が一体何なのか…」

「あ〜、サンズ君、箸の使い方が分からない感じ?」

「普段はフォークを使って食べていた感じでしょうか…?」

「…まんまその通りだ」

 

 ホシノを中心に、『ハシ』と呼ばれる道具の使い方が分からない事が広まっていく。…凄まじく恥ずかしい。すると隣に座っているノノミが声を上げた。

 

「セリカちゃん、小鉢はありますか〜?」

「は、はい。…どうするつもりですかノノミ先輩?」

「それはヒミツです♪」

 

 セリカはノノミに言われた通りに小さな容器を持ってくる。

 

“…その小鉢は?”

「はい、サンズさんに私が食べさせてあげようかなぁ〜って!」

「食べさせる……」

 

 

 

「…はぁ!?」

 

 衝撃の提案に思わず立ち上げる。冗談だと思いたかったが、彼女の瞳からは『本気』が伝わってくる。

 

「いいねぇー。おじさんも気になってきたよ〜?」

「私はもう食べ終わった。だから見る事に集中できる」

「そういう事です☆はいサンズさん、あ〜ん♪」

 

 容器に取り分けたラーメンをハシで持ち食べさせようとするノノミ。必死に先生に目線で助けを求めるが、穏やかな顔で見つめているだけだった。

 

「ぐっ……うぅっ……」

 

 逃げ出したい。これを受け入れれば人としての尊厳を失ってしまうだろう。だが自分の為に出してくれた料理を食べない訳にはいかない。

 

 ……意を決して麺を食べる。…美味しい。美味しい、のだが…

 

「どうですか?美味しいですか?」

「………うん、美味しいよ。本当に…」

「うへ〜、サンズ君顔真っ赤だよ〜?照れてるのかなぁ?」

「やめてくれ…言わないでくれ…」

 

 羞恥心でタマシイが破裂しそうになる程脈動している。顔が紅潮しているのが嫌でも伝わってくる。しかし当然これで終わりではなく、完食するまでオレはノノミに食べさせられ続けた。

 

「私はまだバイトがあるから、みんなとは一旦ここでお別れね」

「…………」

「どうしたんですか〜?サンズさん?顔色が悪いですよ〜?」

「…多分ノノミ先輩が大いに関わっていると思うんだけど…」

 

「面白い後輩くんが新しくできておじさんは嬉しいけどなぁ〜?」

「私もホシノ先輩に同じ」

“じゃ、じゃあ私達は学校に戻ろうか…”

「そ、そうですね…それではセリカちゃん、バイト頑張ってください!」

 

 元居た世界では翻弄する側だったばかりに、いざ自分が翻弄されるとなると途轍もなく疲れる。学校に戻る道中でも揶揄われたが、何もかもな新鮮なこの世界では治安が最悪な事に目を瞑れば全てが面白く感じられた。

 ……この後に起きる新たな問題を除けば。

 

 

 

──────────────

 

 

 

 ラーメン屋から学校へと戻り、借金などの話し合いを行い、気づけば外は夕日が差し込んでいた。治安の悪いこの世界でも夜が危険なのは共通認識で、それぞれが自宅へ帰る準備をしていたところに異変は判明した。

 

「セリカちゃんが…行方不明…!?」

 

 『モモトーク』と呼ばれる、相手とチャット形式で会話出来るアプリでアヤネがセリカにメッセージを送るも既読は無い。連絡も通じない事に違和感を感じたアヤネが彼女の家に行くも不在、彼女のバイト先であるラーメン屋にも電話をかけるも定時には店を出たという。

 その後先生が始末書を覚悟で秘密裏に権限を使い、連邦生徒会のセントラルネットワークなるものにアクセス、連絡が途絶えた場所を割り出す事に成功した。場所は砂漠化が進行しているという市街地の端、シロコ曰くチンピラが蔓延っている場所らしい。そしてセリカを誘拐した犯人は、先生や対策委員会の面子は勿論、ここに来て間もないオレも大方の予想はついていた。

 

「…ヘルメット団、だな?」

「サンズ君は察しがいいねぇー。おじさんもそう思っていたところだよ」

「学校を襲うくらいじゃ物足りなくて、人質を取って脅迫しようってことかな」

「考えていても仕方ありません!急いでセリカちゃんを助けに行きましょう!」

「よっしゃー、そんじゃ行ってみよー!」

“出発!”

 

 こうしてオレ達は、セリカ救出作戦に乗り出した。

 

 

「セリカちゃんを輸送している車両を発見しました!」

「初陣が先輩の救出作戦なんてな。ま、頑張るよ」

“…サンズ、大丈夫?君は…”

「他の皆とは違って、一発でも銃弾を受けたらアウト…って言いたいんだろ?その通りさ」

「でもオイラは弱いとはいえ、そう易々と倒されるつもりはないぜ?あの時に見た正確無比な指揮をまた見せてくれよ、先生?」

“…分かった。じゃあ皆…作戦開始!”

 

 合図と共にシロコが車両の前方に向け手榴弾を投げる。爆風に巻き込まれた車両から運転役のヘルメット団の一員、そしてセリカが放り出される。…少々強引な気もするが。しかし彼女は目視で確認する限り、特にこれと言った負傷は見られなかった。

 

「セリカちゃん発見!生存確認しました!」

「……あっ、アヤネちゃん!?」

「こちらも確認した、半泣きのセリカを発見!」

「なにぃー!?うちの可愛いセリカちゃんが泣いてただと!?そんなに寂しかったの!?ママが悪かったわ、ごめんねー!!」

「う、うわああ!?う、うるさいっ!!な、泣いてなんか!!」

 

 再会を喜ぶ生徒達。今にも戦闘が始まりそうだというのにも関わらずこの穏やかな空気感…これが強者の余裕というものだろうか。そう思っているとセリカがこちらに気づく。

 

「な、何で先生とサンズまで!?どうやってここまで来たの!?」

“ダテにストーカーじゃない。”

「……オイラは違うからな?まっ、先輩が困っていたら助けるのが後輩の役目ってもんだろ?」

「ふ、ふざけないでよ!この変態教師!!…サンズはありがと。会ったばかりなのに…」

「へへ、これが噂に聞く『ツンデレ』ってやつかな?」

「……もうっ!!感謝して損した!!」

 

 …オレも一瞬忘れていたが、まだここは敵陣のド真ん中。喜ぶのも束の間、ヘルメット団の増援が接近してくる。オレ達は戦闘の準備を整え、本日二度目となるヘルメット団との戦いが始まるのだった。

 

“サンズ、頼むよ!”

「分かってるさ」

 

 先生に指示された通りにランダムな位置に骨を出し遮蔽物を作る。シロコ達はそこに隠れ射撃を開始する。

 

「…何だあの骨は!?」

「関係ない!あの裏に奴らが隠れているのなら破壊するまでだ!」

 

 ヘルメット団達が骨に向けて銃を乱射するが、骨には傷一つ付いていない。我ながら骨の強度にボーンっと驚かされる。

 

「か、硬い…攻撃が通らな…ぐあぁっ!!」

「驚いてる暇じゃないよ」

「悪い子達にはお仕置きです〜☆」

 

 想定外の骨の出現に困惑している連中は先生の的確な指揮とホシノを筆頭とした生徒達の『少数精鋭』という言葉を体現したような実力により、次々と薙ぎ倒されていく。楽勝かと思われていたその時、遠くから援護をしているオレでもはっきりと聞こえる爆発音が響き渡る。

 

「…皆、大丈夫か!?」

「あ、あれよ!改造された重戦車!」

「あんなものを何処から調達してきたのかなぁ〜…?」

 

 前方から現れたのは、見る者を圧倒させる巨大な機体を持つ戦車。たとえ体が丈夫なこの世界の住民でも、あれから撃ち出される砲弾に直撃すれば無傷では済まないだろう。皆が次の砲撃に備えている中、オレはある事を思いついた。

 

「なぁアヤネ、戦車が砲弾を発射するタイミングでオイラに合図をしてくれないか?」

「合図…ですか?」

「あぁ。オイラに良い案がある」

「…分かりました。私に任せてください」

 

 

 辺りに響くのは、銃弾を装填する音と、戦車が稼働する重々しい音。合図はまだだ。

 

……

 

 主砲がホシノ達に向け動き出す。今すぐにでも『コレ』を発動したいが、失敗する可能性を踏まえアヤネに合図を要請したのはオレ。まだその時じゃない。

 

………

 

「…今です!」

 

 アヤネの合図と同時に主砲の真下に青い骨を出す。主砲を貫く形で骨が戦車の前にそびえ立つ。

 

“青い…骨?”

「あれは動かない相手には何の効果も無い。だが───」

 

 

 

ドカァァァン!!!

 

 

 

 オレが言葉を言い終える前に戦車は爆発、残骸と共に戦車内で操作していた少女達が吹っ飛んでいく。オレの予想通り、青い骨に触れた砲弾が発射される直前に戦車内で爆発したのだろう。

 

「うへ〜、サンズ君やるねぇ〜」

「ここは先輩として、後でちゃんと褒めてあげないとですね!」

「むぅ…私がドローンで爆発させる予定だったけど…あれはあれで格好良かった」

「…魔法って、凄いわね」

 

「ヘルメット団全員の撤退を確認。セリカちゃん救出作戦、成功です!」

 

 

 ヘルメット団との戦闘は無事勝利。足取りがおぼつかないセリカを支えながらオレ達は学校へと戻ってきた。教室に入り、緊張が解れたセリカはソファーにバタリと倒れ込む。

 これといった外傷は無いものの、ホシノが言っていた対空砲を食らったのに加え、長い間狭い車内に拘束されていたのもあって疲れが蓄積していたのに違いない。

 

「…あ、れ……?先生とサンズ!?ど、どうしたの?」

 

 その夜、療養中のセリカの見舞いに、オレと先生は保健室を訪れた。

 

「……ああ、私なら大丈夫。いつまでもこうしちゃいられないし」

「アヤネちゃんや他のみんなも心配しているし……バイトにも行かなきゃだし」

「無理は禁物だぜ、先輩?後輩が出来た事だし、多少はゆっくりしてもいいんじゃないか?」

“サンズの言う通りだよ。”

「……うん」

 

 少しの間考え事をしていた彼女だったが、何かを思い出したのか口を開く。

 

「…そういえば、先生達にはちゃんとお礼を言ってなかったよね」

「あ、ありがとう……色々と……」

 

 顔を赤らめながらオレ達に感謝の意を伝える。

 

「実は…二人の事、最初に会った時は信用していなかった。でも、危険を承知で助けに来てくれて…本当に嬉しかった」

“ふふっ…”

「ちょっ…何ニヤニヤしてるのよ!?」

「…と、とにかく、これから二人とは長い付き合いになると思うし…宜しくね、先生、サンズ」

「あぁ」

 

 オレは左手を差し出し、セリカも同じく左手を出す。お互いの手を交わし、友情の握手を…

 

 

 

ブゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!!

 

 

 

「あっ」

 

 ……マズい、仕込んだままのブーブークッションの存在を忘れ───

 

「………最ッッッ低!!!!」

「ヴッ」

 

 顔を真っ赤にしたセリカに思い切り引っ叩かれる。この世界に流れ着いてから一番『死』を実感した瞬間かもしれなかった。

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